車のワックスの効果は? ボディ用とタイヤ用のタイプ別特徴とコーティングとの違いについて
「塗装面の保護」「艶と光沢感の向上」などを目的として塗布する車のワックス効果を、ボディ用とタイヤ用のタイプ別に分けて紹介します。
水性タイヤワックスや油性タイヤワックス、固形ワックス・半塗りワックス・液体スプレータイプの特徴だけではなくて、混同されやすいコーティングとの違いや塗布の仕方についても取り上げます。
ボディ用のワックス~固形タイプ・半練りタイプ・液体タイプの特徴
ボディ用のワックスは、含有成分等の違いによって「固形タイプ」「半練りタイプ」「液体(スプレー)タイプ」の3種類に分けられます。このセクションでは、それら3種類の特徴について解説していきます。
カルバナ蝋が含有される固形タイプのワックスの艶出し効果は最高レベル
拭き取りは大変だが深い艶が期待できる固形ワックス
固形タイプのワックスは、単価水素化合物の一種であるパラフィンに、カルバナ椰子(やし)から摂取される樹脂「カルバナ蝋」を混ぜ込むなどして、艶出し効果を高めます。同タイプのワックスは研磨剤を含まないため、黒などの細かな傷が目立ちやすい塗装色を採用している濃色車への利用が推奨されます。
ブラジル原産の椰子に含まれるカルバナ蝋を含む商品ほど高価格帯となりますが、使用後には深みのある艶やかさをボディに与えられます。天然原料で人体や環境に優しいカルバナ蝋は、カーワックス以外では化粧品などにも使われています。
固形ワックスは、塗りムラが生じやすく、ボディの隙間に入ったワックスを取るなど、使用の際にはそれなりの時間と労力が必要になりますが、特有の匂いが好き・仕上がり後の光沢感は圧倒的に美しいなどの理由から、根強い人気を保ち続けています。
研磨剤を含んでいる「半練りワックス」には塗装面の傷を目立ちにくくする効果も期待
塗りやすくふき取りも楽な半ネリタイプ
日本のメーカーが開発した半練りワックスは、半世紀にも渡り支持されているロングセラー商品です。半練りワックスは、固形タイプよりも柔らかいために塗りやすく、拭き取り作業にも手間がかかりません。塗布後には十分な艶出し・撥水効果を期待できるなど総合面で優れています。
半練りタイプの商品は研磨剤を含んでいるため、白などの薄色ボディの車の塗装面に付いた浅い傷ならば目立ちにくくする効果も期待できます。ただし、強くこすり過ぎてしまえば塗装面にダメージを与えてしまう恐れもあるため、注意が必要です。
固形タイプは約2ヶ月効果が持続すると考えられているのに、対して半練りタイプの効果が持続する期間は約1ヶ月と言われているため、耐久性においては固形タイプの方が優れています。
汚れを付着しにくくするクリーナー効果も期待できる液体タイプのワックスは手軽に利用できて便利
耐久性は劣るが抜群に塗りやすい液体タイプ
液体タイプのワックスには、液剤を容器に混入してスプレーで照射する商品と、ウェットティッシュのように液剤をしみこませて塗装面をふいていく商品とがあります。どちらの商品も初心者にとっては利用しやすくて、拭きあげも楽などの理由から人気を集めています。
ボディに付着する汚れが酷くなければ下地処理を不要とする「液体タイプ」の耐久性は3タイプの中では最も劣ってはしまうものの、艶出し・撥水効果もある程度は期待できて、汚れを付着しにくくするクリーナー効果も備えるなど高品質化しています。
ワックスの利用効果を最大限に発揮させるためには自車のボディカラーに適した商品選びも重要
塗装面を保護するために利用するボディワックスには、各塗装色に適応するように専用開発された商品が多数販売されています。黒などの濃色を採用するボディカラーの場合には、艶出し効果や施工後にムラの発生しにくい成分が含まれているダーク&メタリック用と表示されているタイプが適しています。
一方のホワイトやシルバーなどの汚れが目立ちにくい塗装色を採用している車両には、クリーナー性能が含まれているワックスの方が適しています。その他には、メタリック塗装をしている車両の場合には、メタリック用と表示されている商品を選びましょう。
ワックスの効果を最大限に発揮させるためには、自車のボディカラーに適した商品選びも重要です。
カーワックスの表示内容 | 車の塗装色 |
---|---|
ダーク&メタリック用 | 黒、緑、青、緑、濃色車 |
シルバーメタリック用 | シルバー等、淡色車 |
パールホワイト用 | パールホワイト |
ホワイト&シルバー | ホワイト、シルバー、淡色車 |
ホワイト車用 | 白(パールホワイト以外)、黄色、ベージュ |
全色対応 | 全塗装色 |
ワックスがけの効果を最大化させるために用意すべきアイテムと綺麗に仕上げるためのコツ
ワックスがけの効果を最大化させるためには、利用する商品選びだけではなくて、塗布の仕方も重要なファクターとなります。
このセクションでは、ワックス(固形タイプ)がけを行う際に用意するアイテムと、ムラなく綺麗に仕上げるためのコツと手順を紹介します。
ワックスがけ(固形タイプ)の際に用意するアイテム
- スポンジ
- ネル地の布
- 極細布
- クロス布
- ゴム手袋
- バケツ
- 竹串
1. ワックスがけの前に洗車を行って汚れなどを綺麗に落とす
ワックスがけの前は必ず洗車したい
ワックスがけは洗車後に行うのが理想的です。前に塗っていたワックスが残っていれば上手には塗れませんし、微細な鉄粉が付着したままだと変色の原因にもなりかねません。また、砂や埃はヘアースクラッチの原因となります。
洗車及びワックスがけは、汚れても平気かつ動きやすい恰好で行いましょう。薬剤を利用する際に手が荒れてしまう方はゴム手袋を利用して、ゴム手袋を使わない方は時計や指輪を身に着けていれば、作業中にボディを傷つけてしまう恐れがあるので注意しましょう。
2. スポンジに付けるワックスの分量は缶の中に軽く押し当てて1~2回転させて取れる量が理想的
洗車に用いたカーシャンプー等の薬剤をワックスの下に閉じ込めてしまえば、紫外線と反応した際にボディの劣化が進みやすくなるため、そういった薬剤を洗い流してからワックスがけ作業をスタートさせます。
固形ワックスを均等に塗るために、先ずはスポンジを一旦水で濡らしてから絞っておきます。そうすれば、スポンジに含まれる水分が潤滑剤の役割を果たすため、薄くムラなく塗り伸ばしやすくなります。
スポンジに付けるワックスの分量は、缶の中にスポンジを軽く押しあてて1~2回転させて取れる量が理想的です。現在販売されている固形ワックスは伸びが良くて少量でも十分に効果を発揮します。ワックスをボディに付け過ぎてしまえば、拭き取り作業が面倒となり、乾きにくくなってしまいます。付け過ぎたと思ったら、缶のへりの部分でそぎ落としましょう。
3. ワックスは直線方向の運動を意識してガラスやエンブレムに付かないように注意して塗っていく
ワックスは一方向に塗るのが正しい
円を描くように塗るのはNG
ルーフやボンネットは車のフロント側に向かって一定方向で塗っていき、ドア部分は地面に向かうようにして垂直方向の縦ラインで塗っていく、薄くボディ全体にワックスを塗った後には、今後は横方向に重ねるようにして上塗りしていくのが、ワックスの効果を最大限に発揮させる塗り方のコツです。
ボンネットやルーフといったボディの広いエリアは、縦・横40cm~50cmくらいずつのブロックに区分けすれば、塗り残しを防ぐことができます。
円を描くようにしてワックスを塗ってしまえば、力が一定とはならずにムラが生じやすくなってしまいますので、ワックスがけは直線方向の運動を意識して行いましょう。またワックスが、ガラス・バンパーの未塗装部・エンブレムにつかないように注意して行う事も大切です。
4. ワックスを拭き取る際には目の粗い布・細かい布の順にして使い分ける
ワックスの拭き取り作業には数種類のマイクロファィバークロスを用意しとくと便利
塗布したワックスが白く乾燥し始めてきたら、ワックスを拭き取ります。乾燥するまでの時間の目安は、夏場が5分~10分・冬場が15分~20分です。
先ずは、目の粗いネル地の布でボディ全体に付着したワックスを軽く拭き取っていきます。次は、ネル地より繊維が細く柔らかい極細布を用いて、ムラなく丁寧に拭き取っていきます。最後に超極細繊維(マイクロファイバー)クロスを用いて、塗装面上部に形成された新たな被膜を均一化させれば、ボディに鏡面のような美しい光沢感を与える事ができます。
エンブレム等にワックスが詰まってしまった場合には、布を下にあてて、その上から竹串を押し当てて掻きだせば、綺麗に取り除けます。
ワックスとボディコーティング剤の大きな違いは効果の持続性であった
ボディに塗布する市販品であるワックスとコーティング剤は、どちらの商品も塗装面に酸性雨や紫外線などの環境物質によるダメージを与えにくくする、等の利用目的が同一であるため混同されがちです。
ワックスの持続効果は1~2ヶ月程度で、塗布後にボディに深みのある艶が出て抜群のドレスアップ効果が加えられるのに対して、コーティング剤を利用した際にはワックスよりも艶や光沢感は劣るもの、耐久性の面では優れて効果は3ヶ月以上も継続していたのが、両商品の違いでした。
しかし、最近の市販化されている商品を比較すれば、3ヶ月以上も効果が持続するワックスや艶出し効果に優れたコーティング剤も登場しているため、「ワックス」と「コーティング剤」との差はなくなりつつあるのが現状です。
塗装面の保護はワックスではなくてコーティングが主流となりつつある
3年間の効果持続をうたうガラスコーティング剤
ワックスもコーティングも新たな被膜を塗装面の上に形成させて保護するために実施します。ワックスがけによって形成された新たな被膜の硬度は弱く、洗車する際や降雨によっても落とされる事もあり効果の持続性は期待できません。
一方の新車購入時などに業者が実施する「ポリマーコーティング」「ガラス系コーティング」「ガラスコーティング」は、ワックスと比較すれば形成された被膜と塗装面との結合力が強いため、効果の持続期間は長くいです。被膜硬度が最も優れるガラスコーティングは5年以上も効果が持続すると言われています。
ワックスがけを丁寧かつ慎重に行ってもヘアースクラッチと呼ばれる細かい擦り傷ができてしまって、その積み重ねによってボディが痛んでしまう。あるいはワックスをぬった後には、有機系の汚れが付着しやすくなるなどメンテナンス面での難しさも指摘されています。
そういった面倒さやネガティブな面を嫌って、新車購入時などプロに依頼してコーティング実施してもらうという選択をする人達が増え始めています。
ワックス | コーティング | |
---|---|---|
持続期間 | 短い | 長い |
メンテナンス | 面倒 | 簡単 |
耐ダメージ性 | 弱い | 強い |
防汚性 | 弱い | 強い |
光沢感・艶 | 自然 | 人工的 |
費用 | 安い | 高い |
「ガラスコーティング」などをしている車のボディへのワックスがけは逆効果となるので不要
新車購入時などに「ガラスコーティング」をして、ボディ表面に強固な被膜を形成させている車両には、ボディへのワックスがけは必要ないと言われています。
ガラスコーティングは、塗装面を保護する・ボディに汚れや傷を付着しにくくするという意味においては最高水準に達している施工法です。その効果を最大限に発揮させるためには、ボディワックスなどで新たな被膜を作らせない配慮も大切です。
ガラスコーティング施工後に、汚れが落ちづらくなった又は光沢感が失われる等のトラブルが生じた際には、ワックスは利用せずに、ガラスコーティングを実施してくれた専門店などメンテナンスチェック等を依頼しましょう。
「ガラス系コーテイング」や「ポリマーコーティング」においても施工後に、効果が弱まってきた際にもワックスを塗布するのではなくて、業者にメンテナンスチェック等を依頼した方が安心です。
車のボディに使うワックス以外にもタイヤに使うワックスもある
ワックスと聞くと、車のボディ用に使う艶出しワックスをイメージする方も多いでしょう。実はタイヤに使うワックスも存在します。
タイヤ用ワックスはタイヤそのものの艶だし効果や、ひび割れなどを防ぎ長く使えるようにする効果などもあるため、施工するユーザーが増加しています。
タイヤワックスの水性と油性の違い、スポンジタイプとスプレータイプの違い、実際の塗り方や注意点などを紹介します。
艶出し効果やロングライフ効果が備わるタイヤワックスには水性タイプと油性タイプの2種類がある
油性タイヤワックスの施工例
「タイヤワックス」を利用すれば、装着しているタイヤに艶や光沢感を与えられるだけではなくて、色あせをしにくくなって、ゴム成分が硬くなるため劣化しにくくなります。
車のボディにワックスを定期的にかけて艶や光沢感を維持していても、タイヤが汚れていれば、全体的な美しさは損なわれてしまいます。タイヤにもボディと同様に美しさを求める方は「タイヤワックス」を利用すれば、足回りから車全体を美しくドレスアップする事ができるだけではなくて、タイヤのロングライフも実現できます。
タイヤワックスはシリコンを、何を溶剤として溶かしているかによって性質が異なってきます。このセクションでは、水分質で溶かしている「水性タイヤワックス」と、石油系溶剤で溶かしている「油性タイヤワックス」のタイプ別の特徴を紹介していきます。
「水性タイヤワックス」はロングライフ効果に優れているが梅雨時にはワックスが落ちやすい
シュアラスターの水性タイヤワックス
「水性タイヤワックスタイヤ」には、タイヤにストレスを与える原因物質である石油系溶剤は含まれてはいないため、美化効果とロングライフ化が同時に実現されます。油性タイヤワックスよりも割高な「水性タイヤワックス」は、雨などの水分に混じってワックスが流されやすいので、梅雨時の利用は控えるという方もいます。
「油性タイヤワックス」は艶出し効果と持続効果には優れているが利用頻度が多ければひび割れの原因となってしまう
カーメイトの油性タイヤワックス
「油性タイヤワックス」のメリットは、主成分が石油系溶剤であるために雨が降っていてもワックスが落ちにくい事、水性タイプよりも利用しやすく光沢感が優れている事です。
油性タイヤワックスは艶出し効果などに優れているが使い過ぎるとひび割れが起こりやすくなる
デメリットは利用頻度が多くなれば、内部に混入されているタイヤを柔らかくする油脂成分が、ワックスによって形成された新たな層によって閉じ込められてしまうため、硬化や劣化が進行してひび割れが起こりやすくなってしまうという事です。
タイヤワックスには塗布の仕方が異なる「スプレータイプ」と「スポンジタイプ」の2種類がある
タイヤワックスには、溶液を照射する「スプレータイプ」と付属される専用スポンジなどに液剤を含ませて、塗り込んでいく「スポンジタイプ」の2種類の塗布の仕方があります。
このセクションでは「スプレータイプ」と「スポンジタイプ」の商品の特徴と、利用する際の注意点についても紹介します。
「スプレータイプ」のタイヤワックスは車のメンテナンスに詳しくない方でも利用しやすい
塗布が簡単なスプレー式
「スプレータイプ」のタイヤワックスは、溶液をタイヤに噴射するだけという簡便さが評価されています。同タイプのワックスは、事前にタイヤ表面に付着している汚れを綺麗に洗い落とした後に、乾いたウェスで水分質をふきとってから溶液を照射すれば、艶出し効果などが向上します。
スプレータイプの商品を利用した際に、ホイールなどに溶液が付着してしまった場合には、シミの原因ともなってしまうため拭き取りましょう。
「スポンジタイプ」のタイヤワックスを利用すれば本来の艶やかさと光沢感を取り戻せる
シュアラスターは付属の専用スポンジで液剤を塗布
「スポンジタイプ」は、付属されるスポンジに溶剤を付着させて、タイヤ表面に塗布していきます。スプレータイプと比較すれば、ボディやホイールへ溶剤が飛び散ってしまう恐れはありません。
本来の艶や光沢感を取り戻せる効果が備わる「スポンジタイプ」のタイヤワックスは、溶剤を塗布する量が多すぎてしまえば、5kmほど走行しただけでも外側に漏れ出してしまう場合もあります。そのため、あまりにも表面がテカテカしている場合には、ウェスを用いて伸ばすという工程も必要です。
車のお手入れを趣味とする方は仲間と集まってのワックス塗りを楽しもう
洗車場に車好きの方達が集まって、自慢の車の綺麗にした後にボディワックスやタイヤワックスを塗布しているシーンをよく見かけます。車のお手入れを趣味とする方にとっては、手間と時間がかかると言われるワックスがけは楽しい作業であり、自分の知識とテクニックによって愛車の艶やかさと光沢感を取り戻せる満足感に浸れます。
車の塗装面を保護するという意味においては、コーティングの方が勝っている部分も多いですが、ボディに塗布した後の深みのある艶やかさと、美しさの伴う光沢感によるドレスアップ効果はワックスの方が上です。
車のお手入れを趣味とする方は、これからも仲間たちと情報交換をしながらボディやタイヤへのワックス塗りを楽しんでいきましょう。