リフトアップするための知識

リフトアップ車を安全に楽しむためのカスタマイズ知識

車高を上げるのにリフトアップするにはどのような方法があるか。リフトアップ可能な車種なのかを確認。リフトアップとは何かという基本的なことから、メリットとデメリット、カスタマイズ方法や金額、車検が通るための車高の基準値など具体的なリフトアップの知識。

リフトアップ車を安全に楽しむためのカスタマイズ知識

リフトアップとは?安全に楽しむための知識

リフトアップされた車は車体が大きく見え、迫力のある外観が魅力です。しかし、ローダウン(車高を下げるカスタマイズ)とは異なり、リフトアップはカスタマイズできる車種が限られているため、正しい知識が必要です。

「リフトアップしたい」とお考えの方に向けて、そのメリットとデメリット、対応している車種、車検に関する重要な疑問について解説します。

リフトアップは車高を高くするカスタマイズです

リフトアップされたジムニー

リフトアップはハイリフトとも呼ばれ、車の車高を上げるカスタマイズです。元々は1970年代頃に、未舗装路やオフロードを走行するために、最低地上高を上げ走破性を高める目的で広まりました。

車高を高くすることで得られる迫力のある外観や、通常よりも大径のタイヤ・ホイールを装着できることから、1980年代以降はドレスアップ目的でのリフトアップも一般的になりました。現在では、ドレスアップと実用性(走破性向上)の両方を兼ねたカスタマイズとして人気があります。

本格的なリフトアップはラダーフレーム構造の車種が適しています

悪路に強いラダーフレーム構造

リフトアップ、特に車高を大幅に上げるカスタマイズ(ハイリフト)は、車種のフレーム構造に大きく依存します。車体を持ち上げるためには、高い剛性を持つ「ラダーフレーム構造」の車種が最も適しており、安全に走行するためにも推奨されます

モノコック構造(ボディとフレームが一体化した構造)の車では、サスペンションの変更によるリフトアップは可能ですが、フレームとボディを分離して高さを稼ぐ大掛かりなリフトアップは構造上非常に困難です。

現在販売されている代表的なラダーフレーム構造の日本車には、以下のような車種があります。

     
  • トヨタ:ランドクルーザー、ランドクルーザー・プラド、レクサスLX
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  • スズキ:ジムニー、ジムニーシエラ

(※過去の車種例:FJクルーザー、ハイラックスサーフ、サファリなど)

これらの車種は、ボディ剛性が高く、本格的なオフロード走行性能を持っていることが特徴です。特にジムニーやランドクルーザー系は、リフトアップのベース車両として高い人気を誇っています。

リフトアップのメリット:迫力と走破性の向上

リフトアップして大迫力になったランドクルーザー

リフトアップの最大のメリットは、その外観にあります。車体が大きく見えるため、迫力が増し、カスタマイズされた車としての個性を強くアピールできます。

実用面では、車高が高くなることで最低地上高が上がり、未舗装の道路や岩場、浅い川などを走行する際の走破性が向上します。アウトドアやクロスカントリー走行を趣味とされる方にとっては、実用も兼ねたカスタマイズと言えます。

また、積雪が多い地域などでは、車体下部が雪や氷塊と接触してダメージを受けるリスクを最小限に抑えることが可能です。洗車時も、車体下部に高圧洗浄をしっかりと当てられるため、日常のメンテナンスが楽になるという利点もあります。

リフトアップのデメリット:走行安定性の低下と乗り心地の変化

急斜面を下るランドクルーザー

リフトアップにはデメリットも伴います。車高が高くなるということは、車両の重心が高くなることを意味します。これにより、カーブを曲がる際などに車体が左右に大きく傾く「ロール」が増加し、走行安定性や直進安定性が低下する傾向があります。リフトアップ直後は、特に慎重な運転操作が求められます。

また、リフトアップの方法によっては、サスペンションの設計が変わり、乗り心地が硬くなったり、不安定になったりすることもあります。

カスタマイズを依頼する業者選びも重要です。リフトアップには車両構造に関する専門知識と高い技術が必要です。確かな技術と実績を持ち、リフトアップ後の走行性能変化やアフターケアについてもしっかりと説明・対応してくれるプロの業者を選ぶことが、安全に楽しむための前提となります。

リフトアップの主な方法:サスペンションリフトとボディリフト

車高調の交換をする整備士

リフトアップの主な方法には、大きく分けて「サスペンションリフト」と「ボディリフト」の2種類があります。

1. サスペンションリフト(車高を上げるサスペンションの組み込み)

既存のサスペンションを、車高を上げるための専用品(リフトアップコイルやリフトアップショックアブソーバーなど)に交換する方法です。サスペンションの交換に伴い、ショックアブソーバーの長さや、ブレーキホース、プロペラシャフトの角度などを適切に調整する必要があり、部品代や工賃が高くなる傾向があります。しかし、足回りの構造そのものを変更するため、リフトアップと同時に乗り味や走行性能の調整が可能です。

2. ボディリフト(フレームとボディの間にスペーサーを挿入)

主にラダーフレーム構造の車で行われる方法で、フレームとボディを分離し、その間に車高を高くするための専用のブロックやスペーサーを挿入します。サスペンションの交換は伴わないため、足回りのジオメトリー(構造上の配置)への影響が少なく、比較的安価にリフトアップできる傾向があります。ただし、ステアリングシャフトやシフトリンケージなどの延長が必要となる場合があり、手間がかかります。

リフトアップの費用は方法と高さによって大きく異なります

リフトアップのカスタマイズをする車

リフトアップにかかる費用は、どの程度車高を高くするのか、また、どのような方法を採用するのかによって大きく変わります。

簡単なサスペンションの変更のみであれば、比較的安価な5万円前後から可能なケースもありますが、専用部品のワンオフ作成や、大幅なサスペンションリフト、ボディリフトを行う場合は、50万円以上の高額になることもあります。車種や施工方法、依頼する業者、必要な部品数によって価格差が広がるため、施工前に必ず詳細な見積もりを提示してもらい、具体的な内容を十分に確認することが、トラブル防止に繋がります。

車検の基準:構造変更の必要性

車検をする自動車整備士

リフトアップを行う際に最も重要なのが「車検に通るか」という点です。車の高さを変更する場合、道路運送車両法で定められた範囲内の変更でなければ、車検(継続検査)に合格できません。

車高の変更については、指定部品(サスペンションのスプリングやショックアブソーバーなど)の交換により、車検証に記載されている車高から±4cmの範囲で変更された場合、そのまま車検に合格することが可能です。

しかし、車高の変更が4cmを超える場合や、指定部品ではない方法(例:ボディリフト)で車高を変更した場合は、車検の前に運輸支局などで「構造変更申請」を行い、公的な検査を受ける必要があります。構造変更が認められれば、新しい高さで車検証が書き換えられ、その後の車検はその新しい高さで継続的に受けることができます。

リフトアップを依頼する業者の中には、構造変更を前提としているにもかかわらず、「車検は通る」とだけ説明する場合もあります。ユーザー自身が「4cm以内の変更」と「4cmを超える変更による構造変更」の違いを理解し、業者と綿密な打ち合わせを行うことが、車を安全に維持していく上で不可欠です。

リフトアップのカスタマイズは安全性を最優先した業者選びが肝心です

車高が低い車は一般的に走行が安定しますが、車高をリフトアップして高くすると、特に高速走行時やカーブでの安定性が低下します。そのため、車高の変更については、陸運局(運輸支局)でも厳しくチェックされています。

ユーザーの安全を第一に考える優良な業者であれば、決して無理なリフトアップは勧めません。安全性と法規適合性を確保した上で、お客様の要望に応じたカスタマイズを提案してくれます。

安全にリフトアップのカスタマイズを楽しむためには、「車検に通る基準(構造変更を含む)」や走行安定性の変化を理解し、実績と信頼のある業者としっかり相談することが最も肝心です。