コンパウンドの使い方を習得し車の浅い傷をDIYで修復する方法
どんなに注意していても、車には飛び石や接触などで傷がついてしまうものです。車の傷をそのまま放置しておくと、塗装の保護機能が損なわれ、サビ(錆)の原因になってしまうことがあります。
もし傷が塗装の最も表面にあるクリア層に留まる程度の浅いものであれば、コンパウンド(研磨剤)を利用して目立たなくすることが可能です。今回は、コンパウンドの基本から、正しい使い方、使用前の注意点までをご紹介します。使い方を知れば、車の傷はご自身で対処できるようになります。
コンパウンドとは:塗装面を磨き平滑化する研磨剤

コンパウンドとは、車体の塗装面を磨いて傷を目立たなくさせるための研磨剤のことを言います。コンパウンドは、非常に細かい研磨成分(粒子)と、油脂性などの化学物質で構成されています。
車の塗装は、通常、下地の上にカラーベース層があり、その上に透明なクリア層(トップコート)で保護されています。コンパウンドは、このクリア層の表面を削り、傷のフチを滑らかにすることで光の乱反射を防ぎ、傷を目立たなくする原理を利用しています。
使用目的に合わせて、研磨剤の粒子のサイズ(粗さ)が調整されており、粒子が粗いほど研磨力が強くなります。
コンパウンドで対処できる傷とできない傷
コンパウンドは車の傷を目立たなくすることはできますが、残念ながら傷そのものを完全に消すことはできません。コンパウンドが有効なのは、主に以下のようなケースです。
- 塗装の最も表面にあるクリア層のみが削られた浅い傷
- 擦った際に相手側の塗料や樹脂が薄く付着してしまった擦り傷
- 洗車傷やコーティング剤のムラなど、微細な傷
逆に、指の爪が引っかかるほど深い傷や、塗装の下地(カラーベース層)を通り越して金属面が露出している傷は、コンパウンドでは対処できません。これらの深い傷は、タッチアップペンやパテなどを使った補修が必要です。
コンパウンドを実際に使う前に確認したい注意点
コンパウンドには使用するに際してのいくつかの注意事項がある
1.塗装が薄くなることを理解しておく
コンパウンドは研磨剤であるため、使用すれば傷の周囲の塗装を削り取ることになります。この研磨作業によって傷は目立たなくなりますが、研磨した分だけ塗装は薄くなります。特に古い車や再塗装された箇所は、過度な研磨に注意が必要です。
2.作業は日陰か屋内で行う
コンパウンドを使った研磨作業は、車のボディが熱を持っていない状態で行うのが鉄則です。炎天下で作業を行うと、ボディの熱と作業による摩擦熱が加わり、コンパウンドが乾燥しやすくなったり、必要以上に塗装面を削ってしまう恐れがあるためです。
3.コンパウンドは塗装面のみに使用する
コンパウンドは、塗装が行われている金属部分への使用が適切です。ゴム製品や未塗装の樹脂素材(バンパー下部など)に付着すると、成分によっては化学変化を起こして変色したり、除去しにくくなったりする恐れがあります。作業前にマスキングテープなどで保護しましょう。
4.作業前に洗車をして車を綺麗にする
肉眼では見えなくても、車のボディには砂や鉄粉などの汚れが付着しています。汚れが残ったままコンパウンドを使用すると、研磨剤と汚れが混ざり、かえって車体全体に新たな傷をつけてしまいます。必ず事前に洗車を行い、車を綺麗な状態にしてから作業を始めてください。
5.粒子の細かいものから順に使う
コンパウンドは、研磨力の強い粗い粒子からではなく、最も粒子の細かい(目の細かい)タイプから試していくのが基本です。いきなり研磨力の強いものを使うと、そのコンパウンドでついた傷(磨き傷)が残ってしまうため、徐々に粒子の荒いものへ切り替えましょう。
コンパウンドの使い方の手順~車の傷を目立たなくするための方法
コンパウンドに組み合わせるスポンジに文字を彫っておくと便利
1.マスキングテープで作業範囲の周りを養生する
作業範囲の周辺を傷つけてしまわぬようにマスキングテープで養生する
コンパウンドの付着を防ぐため、研磨を行わないドアの隙間、未塗装の樹脂パーツ、ゴムパーツなどの周辺をマスキングテープで保護(養生)します。テープで隙間を埋めることで、コンパウンドが車内やパーツの奥に侵入しにくくなります。広範囲を作業する場合は、ビニールシートなども併用してタイヤなどを保護しましょう。
2.スポンジに水を含ませて絞る
作業時に発生する摩擦熱を抑えるためスポンジに水を含ませる
研磨作業において「熱」の管理は重要です。乾いたスポンジで作業すると多量の摩擦熱が発生し、塗装を剥がす力が強くなりすぎたり、コンパウンドがすぐに乾燥してしまったりします。スポンジに水を含ませ、軽く絞って湿らせた状態で作業を行うことで、熱の発生を抑え、コンパウンドの伸びを良くすることができます。
3.コンパウンドをスポンジにつける
用意したスポンジにコンパウンドを数滴付ける
まずは最も粒子の細かい(仕上げ用の)コンパウンドを、湿らせたスポンジにつけます。一度に大量につけず、少しずつ使用するのがコツです。コンパウンドの種類ごとに、必ず別のスポンジを使い分けてください。これにより、粗い粒子のコンパウンドが混ざるのを防ぎ、磨き傷をつけずに済みます。
4.傷周辺にコンパウンドを均等に塗り拡げる
傷周辺にスポンジを軽く押しあててコンパウンドを均等に塗り拡げていく
傷周辺にスポンジを軽く押しあて、力を入れずに数回動かし、コンパウンドを均等に薄く塗り拡げます。これにより、研磨作業を均一に行うことができ、仕上がりが綺麗になります。
5.スポンジの研磨面で傷を磨いていく
縦方向や横方向に直線的にスポンジを動かしていくのが磨き方のコツです
コンパウンドが均等に塗布されたら、スポンジの研磨面を使って磨いていきます。磨く時のコツは、縦方向または横方向へ直線的にスポンジを動かすことです。
円を描くように磨くと、磨き跡がサークル状の擦り傷(オーロラマーク)として残りやすくなり、仕上げ後に目立つ原因となります。力を入れすぎず、コンパウンドの滑りを活かして丁寧に磨きましょう。
6.コンパウンドを拭き取りながら、傷の状態を確認する
クロスを使って傷の状態を確認しながら表面に付着しているコンパウンドを拭き取ります
乾いたマイクロファイバークロスなどで、ボディに付着しているコンパウンドを拭き取ります。コンパウンドの拭き残しは、新たな汚れやムラの原因になるため、念入りに拭き取りましょう。拭き取る際も、直線的にクロスを動かすのがコツです。
同時に傷が目立たなくなっているか確認します。傷が残っている場合は、ワンランク粒子の粗いコンパウンドに切り替えて、再度同じ手順で丁寧に磨いてください。
7.艶を出すために仕上げ磨き(最終仕上げ)を行う
最終仕上げは粒子サイズが最も小さな研磨剤が配合されたコンパウンドを使います
粗いコンパウンドで磨き傷がついた場合は、最後に最も粒子の細かいタイプのコンパウンド(仕上げ用)を使って仕上げ磨きを行います。この工程で、先に使った粗いコンパウンドによる微細な擦り傷を消し、塗装面に深みのあるツヤを出すことができます。この最終仕上げの後に、マスキングテープを剥がしましょう。
最終仕上げはマスキングテープを剥がして行います
コンパウンドの種類と特性
コーティング剤が配合され・全塗装色に対応する商品も販売されている
コンパウンドは、配合されている成分によって「油溶性」と「水溶性」に分けられます。それぞれの特性を理解し、用途に応じて使い分けることが重要です。
油溶性コンパウンド:初心者におすすめだが一時的な効果に注意
油溶性コンパウンドは、石油系成分やワックスなどの艶出し成分を多く含んでいます。油分を多く含むことで研磨作業時の滑りが良くなるため、初心者の方でも扱いやすいタイプです。

油分が傷の内部に入り込んで一時的に傷を埋める効果があるため、作業直後に傷が目立たなくなる即効性があります。しかし、時間が経過し油分が抜けてしまうと、再び傷が目立ってくる場合があります。作業を正確に行うには、途中で脱脂剤を使用し、油分による傷隠し効果ではないことを確認する必要があります。
油溶性コンパウンドを使うメリット
- 作業に慣れていない人でも使いやすい
- 作業中の摩擦が少なく、慎重に作業を行える
油溶性コンパウンドを使うデメリット
- 油分が抜け短時間で効果が消える場合がある
- 油分で周囲を汚したり、衣服に付着する恐れがある
水溶性コンパウンド:プロも使用する研磨効率の高いタイプ
水溶性コンパウンドは、石油系溶剤などの油分を最低限必要な配分量に抑え、水で希釈して使用できるタイプです。油分が少ないため、研磨カスが飛び散りやすいという特徴がありますが、研磨する力を効率的に塗装面に伝えられるため、作業時間を短縮できます。
水溶性コンパウンドを使うメリット
- 研磨する力を効率的に伝えられる
- 周囲に溶液が飛び散っても後処理が比較的簡単である
水溶性コンパウンドを使うデメリット
- 天候によっては、乾燥しやすい
- 研磨カスが発生しやすい
コンパウンドに含まれる研磨粒子の大きさと用途
コンパウンドに含まれる研磨剤の粒子のサイズは、「番手」や「μm(マイクロメートル)」で示され、サイズに比例して塗装を削り取る力が強まります。一般的に、複数の粒子のコンパウンドを段階的に使用します。
| 粒子のサイズ(分類) | 研磨力と使用目的 |
|---|---|
| 粗目(#1000〜#1500相当) | 深い洗車傷や、塗装面の足付けに使用。研磨力が非常に強い。 |
| 細目(#1500〜#3000相当) | 中間研磨剤として使用。粗目でついた傷を消す。 |
| 極細目(#3000〜#9800相当) | 最終仕上げ前の微調整に使用。濃色車ではここから使う場合もある。 |
| 超微粒子(#10000以上) | 仕上げ磨きに使用。艶出し、オーロラマークの除去に使う。 |
愛車についた傷は自分で綺麗にしましょう
車の傷を目立たなくする作業は、未経験の方が多いかもしれません。しかし、今回ご紹介した注意点や手順をしっかり確認し、力を入れすぎずに粒子の細かいコンパウンドから段階的に試していくことで、ご自身で浅い傷に対処することができます。
コンパウンドを使った研磨作業の基本手順
- 作業範囲の周りをマスキングテープで養生する
- スポンジを湿らせてコンパウンドをつける
- 傷周辺にコンパウンドを均等に塗り拡げる
- 縦または横方向に直線的に磨く
- コンパウンドを拭き取りながら傷の状態を確認する
- 最も粒子が細かいコンパウンドを使って仕上げ磨きをする
車に傷はつきものですが、見つけた時には今回紹介したコツや手順を参考に、自分の手で愛車を綺麗にしていきましょう。





























