回生ブレーキの仕組みとは?燃費性能とブレーキパッド寿命を伸ばす運転方法
回生ブレーキとは、車が減速する際に生じる運動エネルギーを電気エネルギーとして再利用し、車両を動かすための駆動用バッテリーに充電するシステムを指します。この回生ブレーキは、駆動用モーターが搭載されているハイブリッドカー(HV)や電気自動車(EV)にのみ備わっている、燃費・電費性能の鍵となる機能です。
「ハイブリッドカーは走行中にどこで充電しているのだろう?」と疑問に感じていた方もいるかもしれませんが、ハイブリッドカーはエンジンが発電機を回して充電する方法以外にも、この回生ブレーキによって効率的に電力を蓄えています。減速時の捨てられていたエネルギーを有効活用するため、燃費性能が大幅に向上します。回生ブレーキの仕組みや、減速エネルギーを再利用する具体的な方法、そして燃費を向上させる使い方を解説します。
回生ブレーキとは減速エネルギーを電力に変えるシステム
回生ブレーキとは、車が減速する際の運動エネルギーを回収し、モーターを回すことで発電機として機能させ、その電力を車の駆動用バッテリーに蓄えるシステムです。「回生」という言葉には「失ったものを取り戻す」という意味があり、走行に使用したエネルギーを減速時に取り戻すことを意味しています。
この仕組みは、自転車の車輪の回転を利用してライトを点灯させるダイナモ発電をイメージすると分かりやすいです。駆動用モーターは、外部からの力(この場合は車輪の回転力)で回転させると発電する特性があるため、車の車輪の回転力をモーターに伝えることによって、バッテリーに電力を充電します。この発電の際、モーターには抵抗が発生し、それがブレーキとして作用します。
回生ブレーキは、マニュアル車のエンジンブレーキのような感覚で減速効果を生み出すため、ドライバーはフットブレーキを踏まずに車速を調整できます。ハイブリッド車は、回生ブレーキの他にもエンジンの力で発電機を回して充電することもできますが、その場合はガソリンを消費するため燃費性能が低下します。一方、回生ブレーキは車の減速という「無料のエネルギー」を利用して充電するため、ガソリンを一切使いません。したがって、ハイブリッド車やEV車の燃費(電費)を向上させるには、この回生ブレーキをいかに効率良く使うかがカギとなります。
燃費性能が向上する回生ブレーキの効果的な使い方

回生ブレーキは、車が減速する力を利用してモーターを回し、電力を充電します。ハイブリッド車やEV車などの電力を使って走る車の燃費(電費)を向上させるためには、この回生ブレーキを最大限に活用することが非常に重要です。「回生ブレーキの使い方」「回生ブレーキのコツ」を実践することで、燃費計の数字を大きく改善できます。
車種によって回生ブレーキの作動のさせ方や強さには違いがありますが、基本的な仕組みは共通しています。もし具体的な作動状況を知りたい場合は、ご自身の車のディーラーに確認するのも良いでしょう。ただし、回生ブレーキはモーターのバッテリーが満充電の状態ではそれ以上動作しません。そのため、満充電の際は回生ブレーキの効果が薄くなることを考慮し、前走車との車間距離はガソリン車以上に取ることも大切です。
ここでは、燃費を向上させるための回生ブレーキの具体的な使い方を紹介します。
アクセルを離すだけで回生ブレーキが作動する

多くのハイブリッド車やEV車では、ドライバーがアクセルペダルから足を離すと、すぐに回生ブレーキが作動を開始します。この際、車体がエンジンブレーキのように「引っかかる」ような減速感を感じることがあります。日産のノートe-POWERやリーフなどの一部の車種では、回生ブレーキが非常に強めに設定されており、フットブレーキを使わずにアクセルの調整だけで発進から停止までを運転できる「ワンペダル操作」が可能です。
アクセルを離すだけの簡単な操作で回生ブレーキを感じることができますので、誰でも簡単に実践できます。メーター内の燃費(電費)計やエネルギーモニターを見ながら運転し、体で感覚を掴むと「今、効率よく回生ブレーキが効いて充電できているな!」と感じられるようになり、楽しくドライブを続けることができます。「ワンペダル」は、回生ブレーキを最大限に活用する運転方法として知られています。
ブレーキを軽く踏むと回生ブレーキに切り替わる車種もある

トヨタのプリウスやアクア、C-HRなどのハイブリッド車では、ブレーキペダルを軽く踏むことで、まず機械的なブレーキ(ブレーキパッドによる制動)ではなく、回生ブレーキが優先的に作動するように設計されています。この仕組みを「協調回生ブレーキ」と呼びます。ドライバーはブレーキペダルを踏んでいる時間を長く取る(早めにブレーキを軽く踏み始める)と、その分、より効率的に長く充電することができます。
前方の信号や交通状況を早めに察知し、車間距離を調整しながら、ゆっくりとブレーキを踏むことで回生時間を延ばしましょう。これにより、燃費を大幅に向上させるエコな運転が可能になります。
ハイブリッド車は回生ブレーキがあるためブレーキパッドが減り難く経済的

通常のガソリン車では、ブレーキペダルを踏むと、油圧によってブレーキパッドがタイヤのディスクローターを挟み込み、摩擦力で車を減速・停止させます。しかし、回生ブレーキが搭載されているハイブリッド車は、ドライバーがブレーキを踏んだ際に、機械的なブレーキパッドによる制動よりも先に回生ブレーキが優先的に作動します。そのため、日常的な減速のほとんどを回生ブレーキが担い、ブレーキパッドはあまり使用されません。
その結果、ブレーキパッドの摩耗がガソリン車と比較して極めて遅いため、交換頻度を大幅に減らすことができます。これは非常に経済的です。ブレーキパッドの交換費用は高額で、車種によっては数万円が必要です。ハイブリッド車には、燃費性能の向上だけでなく、回生ブレーキによるメンテナンス費用を抑えられるという大きなメリットもあります。
Bレンジは強い回生ブレーキがかかるため長い下り坂の運転に活用する

オートマチック車のシフトレバーには、通常、前進するためのDレンジ(ドライブ)、駐車するためのPレンジ(パーキング)、後退するためのRレンジ(リバース)などがありますが、トヨタのアクアやプリウスなどのハイブリッド車には「Bレンジ」(ブレーキ、またはエンジンブレーキの意)が設定されていることがあります。
このBレンジは、通常のDレンジよりも強くエンジンブレーキを効かせるモードです。ハイブリッド車においては、このBレンジにシフトを入れることで、回生ブレーキの強度も最大に近い状態まで高まります。これにより、アクセルの強弱操作のみで、より強い減速と充電を行うことができます。ただし、バッテリーがすでに満充電に近い状態の場合は、それ以上充電することができません。その場合は、主にエンジンブレーキの減速効果を得るためのモードとして機能します。
通常走行はDレンジで運転し、長い下り坂などでフットブレーキの使いすぎによるフェード現象を防ぎたい場合のみ、Bレンジに入れてエンジンブレーキと強い回生を利かせるようにすると、安全かつ効率的にドライブを楽しむことができます。
ハイブリッド車のバッテリーは日々進化し、寿命が延びています

1997年に初めて市販された初代プリウスでは、駆動用バッテリーが5年ごと程度の交換が必要であり、その交換費用が高額になることが問題視されていた時期がありました。トヨタでは、初代プリウスの初期モデル(製造番号NHW-0001001から0039786まで)の一部について、バッテリーを恒久保証とし無償交換するという対応を行ったことがあります。
しかし、現在、トヨタをはじめとする各メーカーは、新車登録から5年間、または走行距離100,000kmまでの駆動用バッテリー故障に対する保証を提供しています。さらに重要なのは、ハイブリッド車に使われるニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった駆動用バッテリーが、日々技術革新により進化しているという点です。これらのバッテリーは、この保証期間を過ぎる走行距離150,000km以上の走行でも、故障しないように耐久性を持たせて設計されています。
現在新車販売されているハイブリッド車は、150,000km以上の走行となると、一般的に車の買い替え時期にも入るため、多くの場合、車の寿命までバッテリー交換の必要はないと言えます。過度にバッテリー寿命を心配する必要はありません。
回生ブレーキを使いこなすと燃費性能も安全性も向上する

回生ブレーキの仕組みや、燃費性能を上げる適切な使い方、そしてメンテナンスのメリットについて紹介しました。ホンダが販売車種の電動化を進めるなど、今後の自動車業界はハイブリッド車やEV車といった電動車が主役となっていきます。
ガソリン仕様車を運転している方にとっては馴染みのない回生ブレーキですが、ハイブリッド車に乗り換える際に混乱しないように、回生ブレーキの仕組みや燃費性能が向上する使い方(特に早めのアクセルオフや軽いブレーキ操作)を事前に覚えておくことが大切です。回生ブレーキを上手に活用することで、環境に優しく、経済的で、さらにブレーキパッドの摩耗も抑えられる賢い運転を実現できます。





























