1970年代の国産スポーツカーの名車一覧
1970年代のスポーツカーを語る上で避けては通れないのが「自動車排出ガス規制」です。本格的な車社会が到来したことで、1960年代後半から車による大気汚染は問題視されており、70年代に入るとオイルショックも重なり、大排気量のスポーツカーへの風当たりは年々厳しくなっていきました。
自動車メーカーは単に速いだけでなく、排ガス規制をクリアできる車を作る必要があったのです。
日産 ローレルハードトップ2000GX(1970年)
2ドアハードトップ2000GX KPC30型
ファミリカーといえば1.6Lクラスまでだった60年代を経て、1.8Lクラスの「ハイオーナーカー」を名乗って70年にデビューした初代ローレル。排気量を2.0Lまで拡大した2ドアハードトップの2000GXは最上級グレード。新たな購買者層の開拓に成功。
ダイハツ フェローMAX(1970~1980年)
フェローMAX 4ドアセダン
フェローMAX中期型ハードトップ
フェローMAX後期型ハードトップ
人気軽カーだった初代フェロー。2代目L38型はMAXのサブネームがつき、FRからFFに変更。ホンダ N360によって始まった馬力競争だったが、フェローMAXの最上級グレードSSは40馬力とN360・Tシリーズの36馬力を超え「軽で最もパワフル」の称号を手にする。
ホンダ Z SA型(1970~1974年)
ホンダ Z 中期型
ホンダ Z 中期型リア
軽自動車のスペシャルティカーとして企画されたクルマ。2ドアクーぺ風のデザインだが、大人4人がちゃんと乗れて、36馬力・最高速度120km/hと高性能。コンセプトは大成功だが、リアガラスの黒い樹脂製の枠がユニークすぎて「水中眼鏡」「電気掃除機」のあだ名がついた。
トヨタ セリカ1600GT(1970年)
セリカ1600GT TA22型
セリカ1600GT TA22型リア
元祖スペシャルカーとして愛されたダルマセリカの最上級グレード1600GT。搭載された2T-G型エンジンはDOHCの名エンジンとして後にカローラレビンやスプリンタートレノなどの車種にも搭載される。より走りを強化したGTVモデルはレースでも活躍。
三菱 ギャランGTO・MR (1970~1972年)
ギャランGTO 1600MR
コルトギャランから派生したハードトップクーペ。後に三菱の最上級スポーツグレードを指す「MR」の名前がはじめてついた車で、三菱初のDOHCエンジン搭載。米車マスタングによって流行したリアエンドが盛り上がるヒップアップテールのデザインが特徴。
トヨタ カリーナ1600GT(1971年)
カリーナ1600GT TA12型 2ドアセダン
セリカとシャシを共用するセダンタイプの姉妹車カリーナの最上級モデル。セリカ1600GTと同じ2T-G型直4DOHCエンジンを搭載し、「足のいいやつ」のキャッチコピーで人気を集める。基本メカニズムはセリカと同様だが、価格は約5万円安く設定されていた。
三菱 ミニカスキッパーGT(1971年)
ミニカスキッパーGT サイド
ミニカスキッパーGT(A101型)
ホンダZなどをライバル車とした軽自動車クーペ。三菱がギャランGTOに採用したリアエンドを切り落としたような直線基調のカットオフテールを流用。全高1275mmは当時としてはかなり低く、CMでも「こしゃくにもクーペです」とスタイルの良さをアピール。
スズキ フロンテクーペ (1971年)
フロンテクーペ GX-CFグレード LC10W型
いすゞ117クーペをデザインしたジウジアーロが原案を描き、スズキ社内で最終案をまとめた。1200mmの車高は当時の国産車のなかでも群を抜いて低い。当初は2シーターのみだったが、2+2を追加すると人気が集中。2シーターの製造は中止に。
マツダ カペラ・ロータリークーペ(1971年)
S122A型カペラ・ロータリークーペ
マツダ50周年記念モデルとしてエンジンやサスペンションを新開発した傑作クーペ。滑らかかつ静かな12A型ロータリーエンジンによりゼロヨン加速15.7秒を記録。ポルシェ911とも比較される出来で、「風のカペラ」のキャッチコピーも納得。
日産 フェアレディ 240 ZG(1971年)
S30型の限定車フェアレディ 240ZG
初代フェアレディZは世界総販売台数55万台、国内8万台の大ヒットスポーツカーだが、240ZGは国内限定発売のレア車。エアロパーツ装着し、高速性能に優れたラジアルタイヤをフェアレディとして初装備。日産が神奈川県警に寄贈し、「最強のパトカー」としても話題を呼んだ。
トヨタ カローラレビンTE27型(1972~1974年)
カローラレビンTE27型 前期モデル
カローラレビンTE27型 前期モデルのリア
カローラをベースにセリカの2T-G型DOHCエンジンを搭載した通称27レビン。ゼロヨン16.3秒と抜群の加速力を誇る。一方855kgの軽量ボディはパワーを持て余すのか、乗り心地は実にワイルド。価格が安価だったため、粗削りさも好意的に受け止められ人気車種に。
日産 ローレルハードトップ2000SGX(1972年)
ローレルKHC130型 2ドアハードトップ2000SGX
ローレル 2ドアハードトップ2000SGXリア
独特のリアスタイルから「デカ尻」「ブタケツ」の愛称がついた2代目ローレルのハードトップ。2000SGXは最上級グレードにあたり、内装もウッド調で洗練された美しさをアピール。ゆっくりと優雅に走ることを目的に作られたクルマ。
スバル レオーネクーペ1400RX(1972年)
レオーネクーペ1400RX
スバルの新たな基幹車種として71年に登場したレオーネに追加されたホットモデルRXは、若者を中心に人気を博した。水平対向4気筒OHV、5速クロスミッション、トヨタ2000GTが初採用して以来の4輪ディスクブレーキ搭載車となった。
マツダ サバンナGT(1972年)
サバンナGT 前期型
ロータリーエンジン搭載車。サバンナの高性能モデルで、アメリカでRX-3の名前で販売されていたモデルを国内用に手直ししている。市販化に先駆けて「サバンナRX-3」の登録名でレースに出場し、ハコスカGT-Rの連勝記録を49でストップさせる。以降レースで大活躍。
日産 スカイラインHT2000GT-R KPGC110型(1973年)
スカイラインHT2000GT-R KPGC110型
スカイラインHT2000GT-R KPGC110型リア
排ガス規制のため発売から4か月で製造中止、総生産台数197台。今では2500万円以上の値が付く幻の車ケンメリGT-R。後にスカイラインの伝統となる丸型4灯のテールランプを初採用。先代ハコスカGT-Rより重量が増し、安定した走りが持ち味。
三菱 ギャランGTO 2000 GSR(1973年)
ギャランGTO 2000GS-R
MRに代ってギャランGTOのトップグレードとなった2000GSR。2.0LのアストロエンジンはMRと同じ125馬力で、ゼロヨン16.5秒を記録。ワイルドなルックスで注目を集めるも、保安基準改正で75年2月以降のモデルはタフさの象徴だったオーバーフェンダーがなくなる。
日産 バイオレットHT 1600SSS(1973~1977)
バイオレットHT 1600SSS KP710型
バイオレットHT 1600SSSリア
ブルーバードが高級&ハイスペック方面に進むなか、サニーとの間を埋めるべく投入したバイオレット。曲線シルエットで外観は似ていないが、スポーツグレード1600SSSはブルーバード510型のエンジンやサスペンション形式を受け継ぎ、ラリーでも活躍した。
日産 チェリークーペ1200X-1・R(1973年)
チェリークーペ1200X-1・R(KPE10型)
日産初のFF車だった初代チェリーに追加されたクーペ。1200X-1・Rはオーバーフェンダーとラジアルタイヤを装着し、内装もタコメーター等を装備したスポーティーモデル。645kgの車両重量に、80psのエンジンで、抜群の存在感を示す!
三菱 ギャランクーペFTO 1600 GSR(1973年)
ギャランクーペFTO 1600 GSR(A63型)
ギャランクーペFTO 1600 GSR(A63型)リア
ギャランGTOの弟分として登場。ファストバックとノッチバックの両方の魅力が味わえるスタイル。最上級グレード1600GSRにはオーバーフェンダーが装着され、ラジアルタイヤ、LSD、固めの強化サスペンションと走りのためのアイテムがてんこ盛り!
トヨタ セリカ LB2000GT(1973年)
トヨタ セリカ LB2000GT(RA25型)
トヨタ セリカ LB2000GT(RA25型)リア
初代セリカに追加されたリフトバックに、マーク2 2000GSS搭載と同じ18R-G型DOHCエンジンを積んだ人気車。ギャランGTO同様、デザインはマスタングの影響が感じられるが、米国では「日本のマスタング」とオマージュとして好意的に受け止められた。
トヨタ パブリカスターレット(1973年)
パブリカスターレット 1200SRクーペ
パブリカスターレット クーペリア
初代セリカで採用したエンジンや変速機等の組合せを選べるフルチョイスシステムを簡略化したフリーチョイスシステムを導入。外装3種類、内装5種類、エンジン2種類、トランスミッションは5速MT、4速MT、2速ATから選択可能なパーソナルカー。
トヨタ コロナ2000GT(1973年)
コロナ2000GT後期型
5代目コロナのスポーティーモデル2000GT。5代目がクルマの安全性をアピールし「安全コロナ」の愛称で親しまれるなか、2000GTはセリカLB2000GTやマーク2 2000GSSに搭載した2.0Lの直4DOHCエンジンを積み、最高速度200km/hと走りに振ったセダンとして人気に。
日産 ブルーバードU ハードトップ 2000GT-X(1973年)
ブルーバードU 2000GT-X 。610型ブルーバードには「U」のサブネームが付く。
4代目610型ブルーバードに追加された2000GTシリーズ。コロナ2000GTと同じ1973年8月販売、トヨタがマーク2やセリカに積んだ18R-G型DOHCを搭載すれば、日産はスカイラインに積んだL20型直6気筒SOHCエンジンで対抗とBC戦争を継続中。愛称はサメブル。
三菱 ランサー1600 GSR(1973年)
ランサー2ドア 1600GSR(中期型)
ランサー4ドア 1600GSRラリーカー
ファミリーユースを意識していた初代ランサーだが、7か月後に発売されたホットモデルの1600GSRはまったくの別物で、ランエボのご先祖様として有名。サザンクロスラリーで初優勝、翌年のアフリカ・サファリラリーで総合優勝など国際ラリーの舞台で大活躍。
トヨタ スプリンタークーペ1600トレノGT TE47型(1974年~1975年)
トヨタ スプリンタークーペ1600トレノGT
トヨタ スプリンタークーペ1600トレノGTリア
クーペスタイルの47トレノ。カローラベースの37レビンはハードトップを追加してクーペは廃止。トレノのみGTグレードが存在した。TE27型と同じ2T-G型エンジンを搭載。昭和50年排出ガス規制に対応できず生産中止。旧車の数が極端に少ないレア車。
ホンダ シビック1200RS(1974~1975年)
ホンダ シビック1200RS(SB1型)
初代シビックに追加した初のスポーツモデル。後に全車低公害エンジンCVCCに変更したため、販売期間は1年ほど。排ガス規制などスポーツモデルへの風当たりが厳しい時代に、RSは「Road Sailing(航海)」の意味とし、CMでは「長距離ドライブ向きで経済的」とPR。
三菱 ランサー・セレステ(1975~1982年)
ランサー・セレステ後期型
ギャランクーペFTOの後継、ランサーのクーペモデルとして登場。セレステは「青い空」という意味で、第一次オイルショックで車への風当たりが強くなる中、低公害をアピールするためにつけた名前と言われる。青や黄色などカラバリも豊富!
マツダ コスモAP(1975~1981年)
コスモAP
APは「anti pollution(反・公害)」、つまり低公害車の意味で命名。最上級グレードのリミテッドに搭載された13B型ロータリーエンジンは昭和51年排ガス規制法をクリアしながら135馬力とパワフル。環境に配慮しながらもスポーツカーは作れると示し大ヒット。
トヨタ セリカ A40型/50型(1977~1981年)
セリカ クーペ(後期型)
セリカ リフトバック(前期型)
2代目セリカ。クーペとリフトバックが設定され、最上級グレード2000GTには2.0L直4DOHCエンジンを搭載。内装はパワーウインドウや最先端のAM・FMラジオを完備。ハイスペックかつラグジュアリー、そして誰でも扱いやすい車として人気を決定づける。
三菱・ギャランΛ A120A型/A130A型(1976~1980年)
ギャランΛ 2000GSR
海外では「ミツビシ・サッポロ」の名前で販売。
Λは「ラムダ」と読む。リアのガラスデザインが特徴的な2ドアハードトップ。日本車初の角形四灯ヘッドライトを採用して、米国ではプリムス系列で販売。1972年札幌五輪にちなみ「Sapporo」と命名。排ガス規制により型式が複数存在する。
トヨタ スターレット KP61型(1978~1984年)
1300スターレット5ドアS
1300スターレット1982年改良型 3ドア DX
「1300スターレット」と呼ばれた2代目。当時は居住空間を広くとれるFFに切り替える小型大衆車が多いなか、FR式を維持。特にスポーティーグレード「S」は軽量かつクセのはないハンドリングで好評を得た。80年代~90年代はレースやラリーで活躍!
マツダ サバンナRX-7 SA22C型(1978~1985)
サバンナRX-7 リトラクタブルヘッドライ稼働時の様子
海外での人気も高いサバンナRX-7
130馬力と国内トップクラスのパワーを持ったロータリーエンジン搭載車。リトラクタブルヘッドライトによりフロントノーズを低くとったデザインで空気抵抗係数も最高水準をマーク。世界に誇る日本の名スポーツカーとなる。83年のマイナーチェンジではターボ仕様も追加。
トヨタ セリカXX A40/A50型(1978~1981年)
セリカXX 2000G
セリカXX 2000Gリア
セリカA40型から派生した上級車種。北米市場の要望で、直6エンジン搭載。背景にはフェアレディZの大ヒットがあったが、セリカXXの位置づけはスポーツカーではなく、スペシャリティカーであり、内装もラグジュアリー志向。北米では「スープラ」と名付けられ販売。
ホンダ プレリュード SN型(1978~1982年)
初代ホンダ プレリュード SN型 欧州仕様車
初代ホンダ プレリュード SN型 欧州仕様車リア
2代目以降デートカーとして大ヒット車となるプレリュード。初代は日本よりも海外で話題に。発売当時の最高出力は90psだが、後に97psまで拡大。FF車でありながら、FRと遜色ないコーナリング性能は当時としては珍しく、足回りも高く評価された。
日産 フェアレディ HGS130型(1978~1983年)
2代目フェアレディZ 200Z-T Tバールーフ仕様
2代目フェアレディZ。Zになって初めてオープンモデルも製造。米国の厳しい保安基準をクリアするため、屋根の中央部分を残してオープンにする「Tバールーフ」を国産車で初採用。『西部警察』ではガルウイングに改造し、「スーパーZ」の名を持つ存在感ある劇中車に!
日産 シルビア 2000ZSE-X S110型(1979年)
3代目シルビア2000ZSE-X
シルビア2000ZSE-Xリア
3代目シルビアに追加されたモデル。サスペンション等を一新、ホイールも1インチアップして14インチにしたところ、高い走行性能を発揮できるように。ピラーレスのボディも美しく、若者を中心に人気を集めた。姉妹車ガゼールは『西部警察』にも出演。
トヨタ カローラレビン TE71型(1979~1983年)
カローラレビンTE71型のレースカー仕様
カローラレビンTE71型
レビン/トレノの名前を冠したのは3ドアハッチバッククーペのみ。当時としても斬新な傾斜の強いエクステリアを採用、シャープさを強調した1588cc直4DOHCの2T-GEU型を搭載、5速MTのみをラインアップ。スポーツ路線を貫きつつ、価格134万円で人気を博す。
三菱 ミラージュ 1600GT(1979)
ミラージュ5ドアハッチバック 1600GT(前期型)
ミラージュ 1600GTリア
初代ミラージュに追加された上級モデル。エンジンは直4気筒SOHCとギャランΛなどと共通だが、三菱独自の副変速機スーパーシフトにより、「4速×2」で8速まで使用可能なのが最大の特徴。コンパクトでありながら、スタイリッシュなエクステリアで人気。
いすゞ ジェミニZZ PF60型(1979年)
1981年に限定発売された最上級スポーツモデル「ジェミニZZ/R」。
業務提携を結んでいたGMがグローバルカーと位置付けた初代ジェミニ。「ZZ(ダブルジー)」は79年に1.8LのディーゼルとDOHCガソリンエンジンがラインナップしたスポーツグレードで、ラリーでも活躍。スポーツ走行向け装備のRの他、豪華装備のTやLも存在。
日産 セドリック 430型(1979~1983年)
セドリック 430型
5代目セドリックは国産車ではじめてターボモデルを販売した車種。排ガス規制のなか「ターボは排気するエネルギーを再利用する省エネの手段」と運輸省を説得、許可をもぎ取ることに成功。一定の回転数を超えると一気に15馬力もアップするため「ドッカンターボ」と呼ばれた。