OEM車の違いと車種一覧

「OEM車」とは?車種一覧と見分け方!メーカー間の違いやメリットを徹底解説

OEM車は、自動車メーカー同士が提携して販売している車。供給された車種によって「顔つきが違う」「加速フィーリングが違う」など味付けが変わり、同じ車種でも試乗して比べると面白い。各社のOEM車一覧と違いを紹介。

「OEM車」とは?車種一覧と見分け方!メーカー間の違いやメリットを徹底解説

日本の自動車メーカーにおけるOEM車とは?現行車種一覧と仕組みを解説

街中を走っている車の中には、「メーカーのエンブレム(マーク)や車名は違うのに、形がそっくりな車」を見かけることがあります。これらは、単に似ているのではなく、自動車メーカー同士が協力して販売している「OEM車(オーイーエム車)」と呼ばれる車です。

OEM供給は、メーカーそれぞれの技術や販売ネットワークを最大限に活用し、消費者にとっても選択肢が増えるメリットがあります。この記事では、OEMの定義やメーカー間の関係性、そして現在日本国内で販売されている、または過去に販売されていた代表的なOEM車の一覧をご紹介します。

OEM車とは:Original Equipment Manufacturerの仕組みと定義

OEMとは「Original Equipment Manufacturer(オリジナル・イクイップメント・マニュファクチャラー)」の略称です。直訳すると「自社ブランドの製品を製造するメーカー」となりますが、自動車業界における「OEM車」は、「他社が製造した車両を自社のブランド(エンブレムや車名)で販売する車種」を指します。

OEM供給は、供給側と被供給側(OEMを受ける側)の双方に大きなメリットをもたらします。

OEM供給側のメリット

車両を提供するメーカー側は、自社工場で生産した車を他社の強力な販売ネットワークを通じて販売できるため、生産台数を増やし、一台あたりの製造コスト(開発費や設備投資など)を抑えることができます。これにより、車両開発への投資効率を高めることができます。

OEM被供給側のメリット

OEMを受けるメーカー側は、莫大な費用と時間をかけて自社で新型車を開発することなく、手軽に車種ラインナップを拡充できます。特に、自社にないカテゴリーの車種(例:軽自動車、商用車、特定のタイプのミニバンなど)を補完する際に有効です。

OEM車一覧:車種名は違っても基本性能は同じ

互いのメーカーにメリットをもたらすOEM車は、軽自動車からミニバン、コンパクトカー、セダンに至るまで多種多様に存在します。ここでは、各メーカーが販売している代表的なOEM車と、その供給元をご紹介します。

ライズ(トヨタ)のOEM供給元はダイハツのロッキー

ダイハツから提供されたトヨタ新型ライズのエクステリアOEM車のトヨタ・ライズ

ミニRAV4のような可愛いエクステリアのロッキーOEM供給元のダイハツ・ロッキー

2019年11月に登場したコンパクトSUVのトヨタ・ライズは、ダイハツ・ロッキーのOEM供給を受けているモデルです。両車はダイハツの新世代プラットフォーム「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」を採用し、基本性能は共通しています。

パワートレインやボディサイズといった基本スペックは同じですが、エクステリアデザイン(特にフロントグリルやバンパー)やグレード構成、用意される純正アクセサリーが異なります。また、近年ではハイブリッドモデルが追加されるなど、時代に合わせた改良が加えられています。

ライズ ロッキー
WLTCモード燃費(km/L) 18.6km/L(ガソリン車) 18.6km/L(ガソリン車)

ピクシスエポック(トヨタ)とプレオプラス(スバル)のOEM供給元はダイハツのミライース

OEM車のトヨタピクシスOEM車のピクシスエポック(トヨタ)

ハッチバックドアのプレオOEM車のプレオプラス(スバル)

トヨタが販売する「ピクシスエポック」と、スバルが販売する「プレオプラス」は、ダイハツの「ミライース」からOEM供給を受けています。これらは、高い燃費性能と手頃な価格帯が魅力のエントリーモデルの軽乗用車です。

低燃費のダイハツの軽自動車OEM供給元のダイハツ「ミライース」

3車種とも、エンブレムや一部の加飾を除き、エクステリア・インテリアの意匠や基本性能は共通しています。優れた燃費性能で知られるミライースの技術が、2社のブランドで展開されています。

ミライース ピクシスエポック プレオプラス
JC08モード燃費(km/L) 35.2 35.2 35.2

ピクシスメガ(トヨタ)のOEM供給元はダイハツのウェイク

トヨタが販売するピクシスメガOEM車のピクシスメガ(トヨタ)

トヨタが販売していた軽乗用車「ピクシスメガ」(現在は販売終了)は、ダイハツの「ウェイク」(現在は販売終了)からOEM供給を受けていました。全高が1.8メートルを超えるスーパーハイトワゴンで、軽自動車でありながら高い室内高と広い空間が特徴でした。

OEM車のウェイクOEM供給元のダイハツ「ウェイク」

この2車種は、レジャー用途を強く意識した設計が特徴で、荷室の使い勝手や視界の良さなどが重視されていました。

ウェイク(販売終了時点) ピクシスメガ(販売終了時点)
JC08モード燃費(km/L) 25.4 25.4

ピクシスジョイ(トヨタ)のOEM供給元はダイハツのキャスト

様々なグレード展開のピクシスOEM車のピクシスジョイ(トヨタ)

トヨタが販売していた「ピクシスジョイ」(現在は販売終了)は、ダイハツの「キャスト」(現在は販売終了)が供給元でした。キャストは、「アクティバ(クロスオーバースタイル)」「スタイル(ベーシックな都会派スタイル)」「スポーツ(スポーティスタイル)」の3つのデザインバリエーションを展開していました。

OEM供給元のダイハツキャストOEM供給元のダイハツ「キャスト」

ピクシスジョイも同様に、「ジョイC(クロスオーバースタイル)」「ジョイF(都会派スタイル)」「ジョイS(スポーティスタイル)」として、それぞれキャストのモデルに対応していました。

ジョイC/F アクティバ/スタイル ジョイS スポーツ
JC08モード燃費(km/L) 30.0 24.8

シフォン(スバル)のOEM供給元はダイハツのタント

高い天井で人気のスバルシフォンOEM車のシフォン(スバル)

スバルが販売するスーパーハイトワゴン「シフォン」は、ダイハツの「タント」からOEM供給を受けています。タントの最大の特徴である、助手席側のセンターピラー(柱)をドアに内蔵した「ミラクルオープンドア」をシフォンも採用しており、乗り降りや荷物の積み下ろしに大変優れています。

OEM供給元のダイハツタントOEM供給元のダイハツ「タント」

カスタムグレードも同様に、「シフォンカスタム」が「タントカスタム」に対応しています。両車とも、子育て中のファミリー層を中心に人気の高いモデルです。

タント(非ターボ) シフォン(非ターボ)
WLTCモード燃費(km/L) 22.7 22.7
タントカスタム(非ターボ) シフォンカスタム(非ターボ)
WLTCモード燃費(km/L) 22.7 22.7

ステラ(スバル)のOEM供給元はダイハツのムーヴ

広い室内のスバルステラOEM車のステラ(スバル)

スバルが販売している軽乗用車「ステラ」は、ダイハツの「ムーヴ」からOEM供給を受けています。ムーヴはダイハツを代表するハイトワゴンで、広さと使いやすさ、優れた走行性能のバランスが取れたモデルです。

OEM供給元のダイハツ ムーヴOEM供給元のダイハツ「ムーヴ」

エクステリアでは、主にフロントグリルやバンパーのデザインに違いが見られます。「ステラカスタム」は「ムーヴカスタム」が供給元となっており、精悍なデザインが特徴です。

ムーヴ(非ターボ) ステラ(非ターボ)
JC08モード燃費(km/L) 31.0 31.0
ムーヴカスタム(非ターボ) ステラカスタム(非ターボ)
JC08モード燃費(km/L) 31.0 31.0

フレア(マツダ)のOEM供給元はスズキのワゴンR

マツダが販売する軽ワゴンフレアOEM車のフレア(マツダ)

マツダが販売する軽乗用車「フレア」は、軽ワゴンの代名詞とも言えるスズキの「ワゴンR」からOEM供給を受けています。両車とも、マイルドハイブリッドシステムを搭載したグレードが設定されており、優れた燃費性能を実現しています。

OEM供給元のスズキワゴンROEM供給元のスズキ「ワゴンR」

2017年に行われたフルモデルチェンジ以降、マイルドハイブリッドの搭載や安全装備の充実など、最新の技術が導入されています。見た目の違いはエンブレムと一部デザインに留まります。

ワゴンR(ハイブリッドFX) フレア(ハイブリッドXG)
WLTCモード燃費(km/L) 25.2 25.2

フレアワゴン(マツダ)のOEM供給元はスズキのスペーシア

後席スライドドア採用のフレアワゴンOEM車のフレアワゴン(マツダ)

マツダが販売するスーパーハイトワゴン「フレアワゴン」は、スズキの「スペーシア」からOEM供給を受けているモデルです。両側スライドドアを採用し、広々とした室内空間と豊富な収納スペースがファミリー層に支持されています。

OEM供給元のスズキスペーシアOEM供給元のスズキ「スペーシア」

「フレアワゴンカスタムスタイル」は「スペーシアカスタム」に対応し、より押し出しの強いフロントデザインが特徴です。

スペーシア(ハイブリッドX) フレアワゴン(ハイブリッドXG)
WLTCモード燃費(km/L) 23.9 23.9

フレアクロスオーバー(マツダ)のOEM供給元はスズキのハスラー

コンパクトSUVのフレアクロスオーバーOEM車のフレアクロスオーバー(マツダ)

マツダが販売する軽クロスオーバーSUV「フレアクロスオーバー」は、スズキの「ハスラー」からOEM供給を受けている車種です。車高が高く、視界が良いため運転しやすく、レジャーやアウトドアにも適したデザインが魅力です。

OEM供給元のスズキハスラーOEM供給元のスズキ「ハスラー」

ハスラーは、その独特なデザインと機能性で人気を博しており、フレアクロスオーバーもほぼ同様の見た目と基本性能を持っています。

ハスラー(ハイブリッドX) フレアクロスオーバー(ハイブリッドXT)
WLTCモード燃費(km/L) 25.0 25.0

キャロル(マツダ)のOEM供給元はスズキのアルト

ベーシックな軽自動車のキャロルOEM車のキャロル(マツダ)

マツダが販売する軽乗用車「キャロル」は、スズキの「アルト」からOEM供給を受けています。アルトは、軽自動車の中でも特にベーシックで経済性に優れたモデルとして長年の歴史があります。

OEM供給元のスズキアルトOEM供給元のスズキ「アルト」

キャロルも同様に、レーダーブレーキサポートなどの安全装備を充実させつつ、実用性を重視した作りとなっています。

アルト(L) キャロル(GL)
WLTCモード燃費(km/L) 25.2 25.2

デリカD:2(三菱)のOEM供給元はスズキのソリオ

コンパクトサイズでスライドドアを採用するデリカD:2OEM車のデリカD:2(三菱)

三菱が販売するコンパクトハイトワゴン「デリカD:2」は、スズキの「ソリオ」からOEM供給を受けています。ソリオは、5ナンバーサイズのコンパクトカーでありながら、軽自動車のような両側スライドドアを採用し、広い室内空間を実現しています。

OEM供給元のスズキソリオOEM供給元のスズキ「ソリオ」

デリカD:2もソリオと同様に、ハイブリッドモデルもラインナップされており、燃費性能にも優れています。「デリカD:2カスタム」は「ソリオバンディット」に対応しています。

ソリオ(ハイブリッドSZ) デリカD:2(ハイブリッドMZ)
WLTCモード燃費(km/L) 19.6 19.6

その他の過去のOEM供給事例

ここでは、既に販売を終了している、または供給元が変わった過去の代表的なOEM車をご紹介します。

パッソ(トヨタ)のOEM供給元はダイハツのブーン

コンパクトな普通自動車パッソOEM車のパッソ(トヨタ)

トヨタ自動車が販売していたコンパクトカー「パッソ」(現在は販売終了)は、ダイハツの「ブーン」(現在は販売終了)がOEM供給元でした。この2車種は共同開発されたモデルであり、トヨタのラインナップで最もコンパクトな普通自動車として親しまれていました。

OEM供給元のダイハツブーンOEM供給元のダイハツ「ブーン」

ブーン(販売終了時点) パッソ(販売終了時点)
JC08モード燃費(km/L) 28.0 28.0

ランディ(スズキ)のOEM供給元は日産のセレナ

ファミリーカーに人気のスズキランディOEM車のランディ(スズキ)

スズキが販売していたミニバン「ランディ」(現在は販売終了)は、日産の「セレナ」からOEM供給を受けていました。セレナは、子育て世代に人気の高いボックス型ミニバンであり、ランディもその広い室内空間や使い勝手の良さが特徴でした。

OEM供給元の日産セレナOEM供給元の日産「セレナ」

セレナは、日産独自のハイブリッドシステム「e-POWER」や運転支援技術「プロパイロット」など、先進技術を搭載しています。ランディも世代によってはこれらの技術を取り入れていました。

セレナ(ガソリン車・販売終了時期) ランディ(販売終了時期)
JC08モード燃費(km/L) 17.2 16.6

タンク・ルーミー(トヨタ)とジャスティ(スバル)のOEM供給元はダイハツのトール

トヨタが販売していたコンパクトカー「タンク」「ルーミー」(タンクは販売終了、ルーミーは継続販売)と、スバルが販売していた「ジャスティ」(販売終了)は、ダイハツの「トール」がOEM供給元でした。

トヨタが販売するタンクOEM車のタンク・ルーミー(トヨタ)

これらの車種は、コンパクトなボディサイズながらスライドドアを採用し、広い室内と取り回しの良さから人気を集めました。現在は、トヨタはルーミーに集約し、ダイハツがトールを継続販売しています。

OEM提供されダイハツが販売するトールOEM供給元のダイハツ「トール」

トール(販売終了時期) タンク(販売終了時期) ジャスティ(販売終了時期)
JC08モード燃費(km/L) 24.6 24.6 24.6

OEM車のおかげで車の選択肢がグンと増える

OEM車

OEM車は、単なる「コピー」ではなく、各メーカーが協力して共同開発や車種の供給を行うことで成立しています。OEM供給により、供給を受ける側のメーカーは開発リソースを削減しつつ、自社の販売ネットワークで新しいカテゴリーの車を扱うことができます。

消費者側から見ると、OEM車は「同じ基本性能を持つ車を、より自宅に近いディーラーや、日頃から付き合いのあるメーカーから選べる」という大きなメリットがあります。例えば、ダイハツの車をトヨタの販売店で購入できるのは、OEMの仕組みがあるからこそ実現しているのです。これにより、ユーザーの選択肢が大幅に増え、より最適な一台を選べるようになっています。