FCバスSORAとはどんな車?東京オリンピックで活躍する燃料電池バスの性能
SORAは、第45回東京モーターショー2017で初公開された燃料電池バス(FCバス)です。「Sky(空)」「Ocean(海)」「River(川)」「Air(空気)」の頭文字を取り名付けられたSORAは地球の水の循環を表したネーミングとなっています。
SORAの市販車は2018年3月7日から販売されており、2020年に行われる東京オリンピック・パラリンピックに向け東京を中心に路線バスとして100台以上が導入予定となっています。
二酸化炭素を排出せず環境に優しい新たなバスの可能性を示すFCバス「SORA」を紹介します。
2018年3月に発売されたSORA 2019年8月改良モデルは安全性や定時性が更に向上
2018年3月7日にリース販売が開始されたSORA。2018年中に都営バスに3台導入され、民間バスとしては京浜急行バスが導入を決定しています。
トヨタは2019年8月6日にSORAの改良を発表しました。安全性、輸送力、速達・定時性、バリアフリーなど、路線バスに必要なおおよその機能が更に向上しています。
以下、FCバスSORAの新機能・システムを紹介します。
ドライバーの見落としを防ぎ、ドライバー急病時にはボタンによる緊急停止も可能
改良版SORAに搭載された「ITS Connect 路車間通信システム」は、赤信号や右折時の対抗直進車・歩行者の見落としの可能性がある場合に、ドライバーに注意喚起を促します。
また、前方の信号を予測したうえで停止を推奨したり、赤信号停止時の待ち時間を表示することも可能。他にも「衝突警報」により、危険時にはドライバーに警報ブザーとモニター画面で警告します。
もう1つの安全性への大きな取り組みが「ドライバー異常時対応システム」です。ドライバーに健康上の問題が行ったときなど、運転操作ができない状態に陥ってしまった際には、乗客が非常ブレーキを押すことで、減速して停止。車外にはハザートランプの点滅によって緊急事態を伝えられます。
ITS機能により後続車がスムーズな追従を行え、道路状況に応じて赤信号を短縮
改良されたSORAはITS機能により、輸送力、速達・定時性も向上しています。
「ITS Connect 車群情報提供サービス」では、車間通信とミリ波レーダーにより、車群を構成する車両とその順序、車群長の情報をドライバーに通知。信号やバス停での分断を防ぎます。
また、先行車が「ITS Connect 通信利用型レーダークルーズコントロール」対応車であれば、加速情報が後続車に通知されるので、スムーズな追従をアシストします。
その他、公共交通優先システム「ITS Connect電波型PTPS」は、交通状況に応じてITS専用無線で青信号の延長、赤信号の短縮などを路側装置に要求。路線バスに必要不可欠な定時制に大きく貢献します。
その他、オプションで「自動正着制御」機能を搭載可能。路面の誘導線をカメラが検知し、自動操舵で車椅子やベビーカーが乗り降りしやすいように、乗降場の最適な位置にバスを停止させます。
SORAは従来のバスのイメージを刷新するエクステリア
FCバスのSORAの魅力は近未来を感じさせるエクステリアです。
SORAは従来のバスに見られた箱型のスクエアボディから、立体的な造形を追求したデザインとなっています。乗用車にも見られるLEDライトを前後に採用し視認性を確保、安全運転に寄与しています。
どこから見ても一目でSORAと分かる特徴的なデザインは「受け継がれていく街のアイコン」をコンセプトに開発された通りの個性を持ち合わせています。
車両 | 車名 | SORA コンセプトモデル |
全長 | 10,525mm | |
全幅 | 2,490mm | |
全高 | 3,340mm | |
定員 |
79人 | |
FCスタック | 名称 | トヨタFCスタック |
最高出力 | 114kW×2(155PS×2) | |
モーター | 種類 | 交流同期電動機 |
最高出力 | 113kW×2(154PS×2) | |
最大トルク | 335Nm×2(34.2kgm×2) | |
高圧水素タンク | 本数(公称使用圧力) | 10本(70MPa) |
タンク内容積 | 600L | |
駆動用バッテリー | 種類 | ニッケル水素 |
外部電源供給システム | 最高出力/供給電力量 | 9kW/235kWh |
「利便性」と「安全・安心」にこだわった内装
2020年の東京オリンピックとパラリンピックまでに100台を導入予定とするSORAは、世界に通用するユニバーサルデザインにこだわり内装を作り込んでいます。
世界中から不特定多数の人を乗せるバスならではの想いから「乗ってよかった。また乗りたい」と思われるバスを目指して制作されています。
公共のバスなどに備え付けられているベビーカーや車いすのスペースは横向きの自動格納機構が備わり、使わない場合は乗車スペースにすることができる日本初の技術を採用し利便性を向上させています。
万が一の事故を防ぐ日本初の予防安全技術を採用
FCバスのSORAには日本初の予防安全技術が搭載されています。バス周辺を検知する機能やドライバーの負担を軽減するバス停への自動停車機能など最新技術により万が一の事故を未然に防ぎます。
バス周辺の監視機能を強化し安全性を向上
バスは大きなボディを持つためドライバーの安全確認が重要になります。
この安全確認をボディに配置した8個の高精細カメラが支援してくれます。歩行者や自転車など周囲に危険があれば音と画像を使いドライバーへ知らせてくれます。
自動でバス停へ誘導
ドライバーへの支援として、カメラにより路面誘導線を検知して自動でバス停へ誘導し停車する自動正着制御が搭載されています。
自動操舵と自動減速を行い、バス停との隙間を約3cm~6cm、停車位置から前後約10cmの高精度で停車する自動正着制御はドライバーの負担を軽減し、ベビーカーや車いすで乗車する方の利便性を向上させます。
FCの特性を活かし揺れを抑える
SORAは従来のバスにあった停車・発進の時にガクンとくる変速ショックがありません。それは燃料電池を使用しモーターで走行をするためです。
また、急加速を抑える加速制御機能を搭載しているため滑らかな加速が実現します。東京オリンピックでは乗車率が高くなり立ち乗りの方が増えることが予想されるため、未然に事故を防ぐ重要な機能となっています。
バスを時間通り運航するITS Connectを採用
バスの運行時間を守るのは渋滞や事故を防ぐのに役立ちます。
新たな機能としてITS Connectを搭載したSORAは車車間通信や路車間通信を使用して車の渋滞を予測、時間通りの運航を可能にします。これにより人の輸送能力が向上し混雑する都市部でも快適に移動することができます。
SORAは東京オリンピックに向けた新しい交通インフラ
世界中の自動車がEVへシフトする中、走行距離が長くなる路面バスにとってEVの走行距離の短さ、充電時間の長さはネックとなってしまいます。
トヨタが東京モーターショー2017で新しく提案するFCバスはそんなEVの弱点を補うには十分な魅力があります。
「社会に貢献できるバス」を目指したSORAは、東京オリンピックで世界中のゲストをおもてなしするのに相応しい完成度となっています。