ジャガー I-PACE

ジャガーI-PACEはなぜ販売終了?後継は新生ジャガー1000馬力の4ドアGT~2026年登場か

I-PACEはもう買えない?販売終了の理由と、後継となる新生ジャガーの動きを整理。1000馬力級の4ドアGTやコンセプト「Type 00」、2026年に向けたEV専業ブランドへの転換までわかります。

ジャガーI-PACEはなぜ販売終了?後継は新生ジャガー1000馬力の4ドアGT~2026年登場か

I-PACEはジャガーブランド初の量産EV(電気自動車)

ジャガーが2018年に世に送り出したEV「I-PACE」は、電気自動車ならではの力強いトルクが魅力のSUVでした。搭載する90kWhのリチウムイオン電池は日産リーフ(40kWh)のおよそ2倍にあたり、1回の充電でWLTPモードでおよそ470kmの走行を可能にしていました。

2018年3月に欧州で市販版が発表され、日本では2018年9月26日に販売が始まりました。ここでは、世界を驚かせたジャガー初のフルEV「I-PACE」について、エクステリアやインテリア、装備・パフォーマンス、発売日と価格に加え、その後の販売終了や後継となる新生ジャガーの動きまで、これまでの歩みをまとめてご紹介します。

ジャガーI-PACEは販売を終了、EV専業ブランドへの転換で一区切り

ジャガーの先駆けとなったI-PACEですが、その役目を終えました。グローバルでは2024年に生産を終了し、日本でも2025年(年央)をもって新車の受注を締め切っています。背景にあるのは、ジャガーがラグジュアリーEV専業ブランドへと生まれ変わる「Reimagine(リイマジン)」戦略です。台数を追うビジネスからの脱却をめざす方針転換のなかで、初代のみで一区切りとなりました。

なお、点検・整備・車検などのアフターサービスや認定中古車の取り扱いは、販売終了後も引き続きサポートされます。パイオニアとして一時代を築いたモデルだけに、中古車市場では今後も一定の存在感を保ちそうです。

後継を担うのは”新生ジャガー”、コンセプト「Type 00」と1000馬力級の4ドアGT

I-PACEの先にあるのは、まったく新しいジャガーです。ジャガーは2021年に電動化戦略「Reimagine」を掲げ、2024年11月には新ロゴやマスコットを一新。同年12月には米マイアミで、大胆なフォルムのデザインコンセプト「Type 00(タイプ・ゼロゼロ)」を公開して大きな反響を呼びました。

そして市販第一弾となるのは、専用EVプラットフォーム「JEA(Jaguar Electrified Architecture)」を採用する4ドアGTです。最高出力は1000馬力を超え、航続距離はWLTPモードで最大770km、15分の急速充電でおよそ320km分を回復するといった意欲的な数値がターゲットに掲げられています。価格はおよそ10万ポンド(超高級車の領域)とみられ、2026年に量産型がその姿を現すとの見方が出ています。I-PACEが切り開いた道の続きを、ジャガーはまったく別の次元で描こうとしているといえそうです。

バッテリー火災のおそれで複数回のリコール

I-PACEは、駆動用バッテリーまわりで火災のおそれがあるとして、複数回のリコールが実施されました。原因はバッテリーのエネルギー制御モジュール(BECM)の制御プログラムで、温度異常を正しく監視できず、最悪の場合はリチウムイオン電池から出火するおそれがあるというものです。搭載セルは、かつて他社のEV火災でも話題になったLGエナジーソリューション製でした。

日本では2023年に複数回、国土交通省へリコールが届け出られ、対象車はプログラムの書き換えなどの対策が採られています。米国でも2024年に改めてリコールが行われ、恒久対策が完了するまでの暫定措置として、充電量を80%までに制限したり、建物から離れた屋外に駐車したりするよう案内されました。EV普及の初期を走ったモデルらしい、バッテリー管理の難しさを映す出来事だったといえます。

2024年モデルで初のマイナーチェンジ、オンライン専売に

2018年の導入から数えて初めてとなるマイナーチェンジが、2023年9月に受注を開始した2024年モデルで実施されました。フロントまわりの意匠を刷新し、グラファイト系のマットな加飾を取り入れて、よりEVらしいすっきりとした表情に仕上げています。あわせてグレードごとの装備内容が整理されました。

この2024年モデルからは、販売方法もオンライン限定へと切り替えられ、購入手続きをサポートする専用の相談窓口も新設されました。モデル終盤に向けての、静かながら中身のある更新だったといえます。

2022年モデルで特別感を高める「ブラックエディション」を追加

2021年9月に受注が始まった2022年モデルでは、外装の加飾をブラックでまとめた「ブラックエディション」が新たに設定されました。流麗なボディに引き締まった印象を与える仕立てで、EVらしいスタイリッシュさをより強調するグレードとして用意されました。

ジャガーI-PACEの高性能版「SVR」構想は幻に

かつてI-PACEには、ハイパフォーマンスモデル「SVR」の登場がささやかれた時期がありました。SVRはジャガーの高性能部門が手がける最強モデルにつけられる称号で、EVに設定されればI-PACEが初となるはずでした。最高出力600ps級、0-100km/h加速3.5秒前後といった噂も飛び交い、開発を示唆する動きも一時は伝わってきました。

しかし結果として、I-PACEのSVRが市販化されることはありませんでした。I-PACEは派生の高性能版を持たないまま、初代一代限りで生産を終えています。プラットフォームがI-PACE専用で他モデルと共有されなかったことも、実現が見送られた一因ではないかとみられます。EV版SVRという構想は、幻のまま歴史に残ることになりました。

ジャガーI-PACE がIOTA(アイオタ)財団との共同展示を実施

ジャガーI-PACEのエクステリアジャガーI-PACEのエクステリア

非営利組織IOTA(アイオタ)財団は2019年8月30日、ジャガーと提携し、分散型台帳技術(DLT)を用いて電気自動車のバッテリーや使用量情報を追跡する概念実証デモを行っていることを明らかにしました。

このデモに採用されたのが、ジャガー初のフルEV「I-PACE」でした。車両にはグリーン充電に対応するIOTA対応スマートウォレットが内蔵され、充電サービスや駐車料金、通行料などの決済に利用できる仕組みが試されました。EVと新しい決済技術を掛け合わせる、当時としては先進的な取り組みでした。

2019年に主要アワードを席巻、史上初の”3冠”も達成

I-PACEは登場直後から高い評価を集めました。まず2019年3月に「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー2019」を受賞。ジャガー・ブランドとして初の栄冠でした。続く同年4月には「ワールド・カー・アワード2019」で、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー、ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー、ワールド・グリーン・カーの3部門を同時受賞し、同アワード史上初の3冠を成し遂げています。

これらを含めると世界で60を超える賞に輝いており、ジャガー初のEVがいかに完成度の高いモデルとして迎えられたかがうかがえます。数字だけでは語りきれない、時代を切り開いた1台としての評価だったといえるでしょう。

ジャガーI-PACEのエクステリアはクーペスタイルが美しい流麗なデザイン

荒野を走るジャガーI-PACE

I-PACEはSUVでありながら、後方に向かって下がっていくクーペスタイルを取り入れたボディが特徴です。ホンダのヴェゼルやトヨタのC-HR、ハリアーなどでも見られたSUVクーペの流れをくむ、世界的にも人気のあるボディタイプでした。
乗車定員は5名で、フロント2名、後席3名というオーソドックスな座席配置です。

ジャガーI-PACEのフロントビュージャガーIペイスのフロントビュー

ジャガーI-PACEのサイドビュージャガーIペイスのサイドビュー

ジャガーI-PACEのリアビュージャガーIペイスのリアビュー

フロント・サイド・リアの各ビューを見ていくと、空気が自然に流れていくようなフロントデザインが目を引きます。サイドのドアハンドルはボディに埋め込まれてスムージングされており、こうした造形が優れた空力性能を生み、470km級の航続距離を支えていました

ジャガーI-PACEのインテリアはヘアライン加工とグレーのシートが美しい

ジャガーI-PACEの内装

I-PACEのインテリアは、落ち着いたグレーを基調に、ヘアライン加工が施されたシルバー加飾を組み合わせています。インナードアハンドルには淡い電球色のインテリアライトを配し、パネルの木目調加飾とあわせて高級感を演出していました。

ドライバー正面のフロントガラスにはヘッドアップディスプレイが備わり、車速やナビの案内などを表示します。前方から視線を外さずに情報を確認できるため、安全運転にも寄与する装備です。

ジャガーI-PACEのコクピット

コクピットは、運転に必要なスイッチやパネル類をドライバーの手が届きやすい位置に集約しています。ステアリングにはクルーズコントロールのスイッチに加え、ハンズフリー用のスイッチも備わります。

ドライブレンジの操作は、センターコンソールのD・N・Rスイッチで行う方式です。シルバーリングのダイヤルには左右独立式のエアコン温度が表示され、その横のディスプレイからはシートヒーターとベンチレーションの温度も設定できます。

ジャガーI-PACEの後部座席

後席はゆとりのあるベンチシートで、大柄な方が座っても窮屈さを感じにくい設計です。センターコンソールに備わる2つのダイヤルは、後席用エアコンの温度設定に用います。トランク容量は638〜656Lを確保し、9.5インチのゴルフバッグを4個収納できるスペースがあります。

フロントからリアまで広がるパノラマサンルーフには、シートバックと共通のデザインが施され、ジャガーらしい統一感を生み出しています。直射日光による車内温度の上昇をやわらげる効果も期待できる装備です。

ジャガーI-PACEは0-100km/h加速4.8秒の圧倒的なパフォーマンス

広い道を走るジャガーI-PACE

I-PACEはEVならではの走行性能を備え、0-100km/h加速は4.8秒、最高出力は400PS、最大トルクは696Nmに達します。ガソリン車と違い、モーター駆動なので発進の瞬間から最大トルクを引き出せるのが強みでした。

左側の道を走るジャガーI-PACE

前後2つのモーターによるAWDを採用し、前後重量配分を理想的な50:50に近づけている点も見どころです。雨で濡れた路面はもちろん、雪道や凍結路でも安定した走りを見せてくれます。

I-PACE(Iペイス)のボディサイズ
全長 4,682mm
全幅 2,011mm
全高 1,565mm
ホイールベース 2,990mm
最低地上高 142mm
最小回転半径 5.99m
トランク容量 638L-656L

ボディサイズは全長4,682mm、全幅2,011mm、全高1,565mm。同じくSUVのE-PACEに比べると全高は低めですが、そのほかの寸法はひと回り大きく、堂々とした佇まいでした。

気になる航続距離は、コンセプト段階では500km以上をうたっていましたが、市販モデルではWLTPモードで約470kmとなり、2024年モデルでは計測基準や仕様の見直しにより約438kmと公表されています。急速充電は、100kWのDC(直流)チャージャーで約40分で80%まで、15分の充電でおよそ100km分を回復できました(初期には50kW/90分程度とされていた資料もあります)。給油に比べれば時間はかかるものの、燃料代がかからないのはEVならではの利点です。

ジャガーI-PACEの日本発売日は2018年9月26日・販売価格は9,590,000円から

上空からみたジャガーI-PACE

I-PACEは2016年11月にコンセプトモデルが公開され、2018年3月に欧州で市販版を発表、そして2018年9月26日に日本でも発売されました。日本での価格はF-PACE(当時640万円〜)を上回る9,590,000円からで、ライバルであるテスラ・モデルS(当時9,900,000円)を意識した設定でした。
一方で、当時EV販売台数で世界トップだった日産リーフが3,150,360円からだったことを考えると、この価格帯のEVが一気に普及するには時間がかかると見られていました。実際、I-PACEは高い評価とは裏腹に、価格やニッチな市場性から販売面では苦戦を強いられ、その歩みが一代限りで終わる一因にもなりました。

スポーティでインテリアが上質な ジャガー・I-PACEのモデルチェンジ遍歴

I-PACEは、イギリスの高級車メーカーであるジャガーが手がけたSUVタイプの電気自動車です。スポーティな走りと上質なインテリアを兼ね備えていました。

ジャガー・Iペイス 初代/2018年〜2024年(生産終了)

初代Iペイスは、2016年11月のロサンゼルス・オートショーでコンセプトがワールドプレミアされ、2018年3月に市販版がジュネーブ・モーターショーで発表されました。90kWhのリチウムイオン電池を搭載し、一度の充電でWLTPモードでおよそ470kmの航続距離を実現。100kWのDC急速充電なら約40分で80%まで、15分の充電でおよそ100km分を回復できました。日本では2018年9月に受注が始まっています。

その後、2022年モデルで外装をブラックでまとめた「ブラックエディション」を追加。2023年9月受注開始の2024年モデルでは、フロント意匠を中心とした初のマイナーチェンジを受け、販売はオンライン限定へと移行しました。しかしジャガーがラグジュアリーEV専業ブランドへ転換する方針のなかで、I-PACEはグローバルで2024年に生産を終了し、日本でも2025年に新車販売を終えています。結果として、I-PACEは2世代目に発展することなく、初代のみで役目を終えた1台となりました。

ジャガー・Iペイスのモデルチェンジ遍歴
ジャガー・Iペイスのモデル 販売年表
初代 2018年〜2024年(生産終了/日本は2025年に新車販売終了)

I-PACEが切り開いたジャガーのEV時代と、その先へ

ジャガー I-PACE

ヨーロッパ各国はガソリン車やディーゼル車の新規販売を段階的に制限する方針を打ち出し、世界的にも燃費に優れたハイブリッド車と、排出ガスを出さない電気自動車へのシフトが進んできました。そうした潮流のなかで、ジャガーがいち早く投入したのがI-PACEでした。

数々のアワードを獲得しながらも、I-PACEは初代一代でその歴史に幕を下ろしました。とはいえ、ジャガー初の量産EVとしてブランドの電動化に道を切り開いた功績は色あせません。ジャガーは今後、ラグジュアリーEV専業ブランドとして生まれ変わり、1000馬力級の4ドアGTを皮切りに新たなラインナップを展開していきます。I-PACEが灯した火は、まったく新しい姿のジャガーへと受け継がれていくといえるでしょう。