Fペイスはジャガーが初めて手がけた高級SUV
2013年に「Fペイス」の原型となるコンセプトカーが公開されてからおよそ2年半、待望の市販モデルが2016年に登場しました。高級セダン「XJ」やピュアスポーツ「F-TYPE」を手がけてきたジャガーが、初めて世に問うたSUVがF-PACEです。
本記事では、ジャガーF-PACEのエクステリアやインテリア、搭載エンジンや装備、価格やライバルを紹介するとともに、その後の改良や特別仕様車、そしてジャガーのEVブランド化にともなうF-PACEの結末までを、現在の視点で整理します。
ジャガーがEVブランドへ F-PACEは90周年記念の最終モデルで新車販売を終了
大きな前提から先にお伝えします。ジャガーはブランドを刷新し、内燃機関車から純電気自動車(EV)専業の高級ブランドへと生まれ変わる道を選びました。この方針にともない、XE・XF・F-TYPE・E-PACE・I-PACEといった従来モデルは相次いで生産を終え、最後まで残っていたF-PACEも役目を終えています。
F-PACEはジャガー史上もっとも成功したモデルのひとつで、英ソリハル工場で累計およそ32万8000台が生産されました。その締めくくりとして、ジャガーの内燃機関生産90年(1935〜2025年)を記念する特別モデル「90周年記念エディション(日本では『R-ダイナミックSE 90TH アニバーサリー・エディション』)」が設定され、これがF-PACE最後のモデルとなりました。ジャガー日本サイトでもF-PACEは新車販売の受付を終了しており、以後は認定中古車とアフターサービスでの対応となっています。
次の主役となるのが、2024年末に公開されたコンセプト「Type 00」に連なる新型EVです。ジャガー独自のEV基盤「JEA」を用いた4ドアGTで、1,000馬力級・航続最大770km程度、価格は約2,000万円からとされる超高級路線。もっとも、JLRを襲ったサイバー攻撃の影響などもあり、市販版の正式発表は2026年、納車は2027年ごろへとずれ込む見込みで、しばらくは新車の“空白期”が続くという厳しい見方も出ています。名門の大転換が吉と出るか、注視したいところです。
F-PACEに特別仕様車「SENSORY PERFORMANCE EDITION」が設定されました
F-PACE SENSORY PERFORMANCE EDITIONのエクステリア
ジャガーはF-PACEの特別仕様車「SENSORY PERFORMANCE EDITION(センサリー・パフォーマンス・エディション)」を発表し、2019年11月14日から予約を開始しました。車両価格は7,350,000円からで、限定50台。ベースはPRESTIGEのディーゼル180PSで、ロングドライブに向くINGENIUMディーゼルを搭載します。
フジ・ホワイト
フィレンツェレッド
サントリーニブラック
F-PACE SENSORY PERFORMANCE EDITIONはグロスブラックのアルミホイール(19インチ)を装備する
ボディカラーは「フジ・ホワイト」「フィレンツェレッド」「サントリーニブラック」の3種類で、フジ・ホワイトは20台、フィレンツェレッドは5台、サントリーニブラックは25台の限定でした。黒塗装のエクステリアパーツがシックな雰囲気を添えます。
フジ・ホワイトとサントリーニブラックにはエボニー、フィレンツェレッドにはラテのインテリアカラーを標準装備。グレインレザーシートによる上質な仕立てで、運転支援をまとめたドライブパックや、ワンタッチ開閉のパワーテールゲートも備えていました。
| ボディカラー | フジ・ホワイト (ソリッドカラー) |
フィレンツェレッド (ソリッドカラー) |
サントリーニブラック (メタリックカラー) |
|---|---|---|---|
| インテリアカラー | エボニー | ラテ | エボニー |
| 販売台数 | 20台 | 5台 | 25台 |
| 価格 | 7,350,000円 | 7,457,000円 | 7,457,000円 |
ジャガーF-PACEのエクステリアはフロントグリルが特徴的でメッキパーツがラグジュアリー感を演出
フロントビュー
サイドビュー
リヤビュー
F-PACEのエクステリアは、エンブレム周りに大きく開いたグリルが特徴で、細長いヘッドライトや開口部のメッキ加飾が高級感を添えています(以下はおもに前期型の意匠です)。

ヘッドライトのポジションランプは面発光のホワイトLEDで、下方向へ流れるようにデザインされています。存在感のあるポジションランプは、昼間はデイライトとしても機能します。

テールライトもLEDで、後続車から視認しやすく、ヘッドライトと同様に下弦部が面発光する意匠です。
フロントフォグランプ
オプションで、フロントフォグや電動テールゲート、ハンズフリー電動テールゲートなどを追加でき、使い勝手を高められました。
| 全長 | 4,740mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,935mm |
| 全高 | 1,665mm |
| ホイールベース | 2,875mm |
| 最低地上高 | 215mm |
| 車両重量 | 1,920kg |
| 最小回転半径 | 5.6m |
| トランク容量 | 650L |
ジャガーF-PACEのインテリアは重厚な雰囲気とブラウンレザーに格式を感じる

F-PACEのインテリアは、重厚で落ち着いた雰囲気が魅力です。茶色のレザーシートは大人びた佇まいですが、時期やグレードによっては日本仕様で選べない場合があった点に注意が必要です。

後部座席もゆったりとした造りで、足元空間945mm、膝周りの空間は65mmを確保しており、大人が座っても余裕があります。電動リクライニングを備え、長距離でも窮屈になりにくいのが美点です。
また、チャイルドシートやジュニアシートを固定するISOFIXも備わり、2脚を固定できます。

天井にはパノラミックルーフがオプション設定され、固定式とスライド式の2種類が用意されました。直射日光による室温上昇を抑える電動サンシェードが標準装備される点も嬉しいところです。

ラゲッジスペースは最大650リットルの容量があり、多くの荷物を積み込めます。4:2:4分割のリヤシートを採用しているため、中央だけを倒してスキーやスノーボードなどの長尺物を積みつつ、4人乗車することも可能です。
ジャガーF-PACEのエンジンはディーゼルターボとスーパーチャージャーの2つを採用

ジャガーF-PACEに搭載されるエンジンは、発売当初は「2Lのディーゼルターボ」と「3LのV型6気筒スーパーチャージャー」の2本立てでした(以下は前期型の代表的な諸元です)。
| 排気量 | 1,999cc |
|---|---|
| 最高出力 | 180PS/4,000rpm |
| 最大トルク | 430Nm/1,750-2,500rpm |
| 最高速度 | 205km/h |
| 0-100km加速 | 8.7秒 |
| 燃費 | 15.8km/L |
| 排気量 | 2,994cc |
|---|---|
| 最高出力 | 340PS/6,500rpm |
| 最大トルク | 450Nm/3,500rpm |
| 最高速度 | 250km/h |
| 0-100km加速 | 5.8秒 |
| 燃費 | 10.1km/L |
ディーゼルを積むのは「PURE(ピュア)」「PRESTIGE(プレステージ)」「R-SPORT(Rスポーツ)」の3モデル、V型6気筒を積むのは「R-SPORT」「S」の2モデルという構成でした。
なお2020〜2021年の大幅改良後は、2.0L直4ディーゼル/ガソリンに加え、3.0L直列6気筒+48Vマイルドハイブリッドやプラグインハイブリッド(P400e)、そしてハイパフォーマンスの「SVR」(5.0L V8スーパーチャージド)へと、パワートレインと呼称(R-DYNAMICなど)が刷新されています。
前期型で最上級だった「S」は、F-PACEの中でも高価かつ高性能なモデルで、「R-SPORT」よりも強力なユニットを積んでいました。
| 種類 | V型6気筒 |
|---|---|
| 過給機 | スーパーチャージャー |
| 排気量 | 2,994cc |
| 最高出力 | 380PS/6,500rpm |
| 最大トルク | 450Nm/3,500rpm |
| 最高速度 | 250km/h |
| 0-100km加速 | 5.5秒 |
| 燃費 | 10.1km/L |
ジャガーF-PACEには世界最高水準の予防安全装備を採用

ジャガーF-PACEには、最新のAWDシステムに加え、多彩な安全・運転支援装備が搭載されていました。

「LDW(レーンデパーチャーウォーニング)」は、ふらつきなどで車線をはみ出しそうになると警告し、ステアリングを振動させて注意を促します。

「レーンキープアシスト・ドライバーコンディションモニター」は、意図しない車線逸脱時にステアリングを制御して車線内へ戻すとともに、連続運転時間などからドライバーの疲労を検知し、休憩を促します。

「ブラインドスポットモニター・リバーストラフィックディテクション」は、リヤセンサーで死角の車両を検知しドアミラー内に表示します。後者は、駐車場からバックで出る際に接近する車両を検知して警告します。

「アダプティブクルーズコントロール」は、レーダーで先行車を捉え、設定速度内で適切な車間を保ちながら追従。先行車がいなくなると設定速度まで加速し巡行します。
前方車が停止した場合は自車も停止し、アクセルを軽く踏むだけで再び追従を再開する機能も備えます。

「オートノマスエマージェンシーブレーキ」は、警告音・モニター警告・自動ブレーキの3段階でアシストする緊急ブレーキで、車両だけでなく歩行者にも対応します。

「ダイナミックスタビリティコントロール」は、車両挙動を検知して安定性を高めるシステムで、エンジントルクの調整や適切な車輪へのブレーキ制御により、アンダーステア・オーバーステアを抑え、走行ラインの乱れを抑制します。
ジャガーF-PACEの販売価格はベースグレードのピュアが640万円から 各グレードの特徴

発売当初のF-PACEは、ベースの「PURE」からハイパフォーマンスの「S」まで4グレード展開でした(以下の価格・装備は前期型の目安で、改良後はグレード構成・呼称・価格が変わっています)。
ベースグレードのPURE(ピュア)はブラックで統一された内装が特徴

ベースの「PURE」は、クリーンディーゼル+8速AT+AWDを組み合わせ、価格は640万円からでした。

インテリアは黒で統一したシックな雰囲気で、10ウェイパワーシートを標準装備。18インチアロイホイール、LEDシグネチャー付きHIDヘッドライト、ヘッドライトウォッシャーを備えます。
上級グレードのPRESTIGE(プレステージ)はレザーシートやイルミネーションが標準装備

上級の「PRESTIGE」は、PUREの装備に加えレザーシートを備え、より高級感が増すモデルで、価格は664万円からでした。

ソフトグレインレザーを用いたシートは上質で、インテリアカラーは3種類から選べました。

鮮やかなブルーのイルミネーションが、センターコンソール、ドアシグネチャーライン、ドアリリース、ドアポケットを彩ります。

ヘッドライトはPUREと同じHIDで、「Jブレード」と呼ばれるLEDシグネチャーを備えます。
運動性能の高いFペイスのグレードがR-SPORT(Rスポーツ)

19インチアロイホイールを標準装備し、ディーゼルに加えて340PSのV型6気筒ガソリンも選べたのが「R-SPORT」です。フロント/リヤバンパーにブラックのパーツをあしらい、スポーティな見た目に。価格は729万円からでした。

黒と赤を基調にしたインテリアは走りへの気分を高め、オプションのトーラスレザースポーツシートはホールド感に優れます。
スカッフプレート
LEDフロントフォグランプ
R-SPORTのロゴ入りスカッフプレートやステアリングを装備。R-SPORTからはLEDヘッドライトとフロントフォグランプが標準となり、夜間視界も向上します。
Fペイスの中で最も高いパフォーマンスを持つグレードがS

前期型で最もハイパフォーマンスな「S」は、20インチアロイホイールと380PSのV型6気筒を積み、0-100km/h加速は5.5秒。フロント・サイド・リアのシルバーパーツが高級感と存在感を演出します。価格は982万円からでした。

インテリアは性能とは対照的に、上品なブラウンの落ち着いた雰囲気。ヘッドレストにはハイパフォーマンスの証「S」のロゴが刻まれます。

英オーディオブランド「MERIDIAN」のサウンドシステムを標準装備し、11スピーカー・380Wのシステムが組まれます。
高級クロスオーバーSUV ジャガー・Fペイスのモデルチェンジ遍歴
ジャガー・Fペイスは、イギリスのジャガーが手がけた高級クロスオーバーSUVで、同社初のSUVです。以下に歩みを整理します。
ジャガー・Fペイス 初代/2016年~
2015年11月、第44回東京モーターショーで公開され、発売に先立ち2,000台の「Fペイス・ファースト・エディション」が生産(日本には50台割り当て)されました。ガソリンと、新型ディーゼル「INGENIUM」を搭載。
2016年1月に予約受注を開始し、ベースの「PURE」、スポーティな「R-SPORT」、上級「PRESTIGE」、ハイパフォーマンスの「S」というラインナップでスタートしました。
ハイパフォーマンス「SVR」を追加/2018年
2018年、ジャガーのSVOが仕立てたハイパフォーマンスグレード「F-PACE SVR」が加わりました。搭載されたのは、一部で噂された「BMW製V8」ではなく、ジャガー自製の5.0リッターV型8気筒スーパーチャージドで、当初550PS・680Nm、0-100km/h加速4.3秒・最高283km/hを発揮。のちの改良で最大トルク700Nm、0-100km/h加速4.0秒・最高286km/hへと引き上げられました。
大幅改良(フェイスリフト)/2020年発表・2021年日本導入
2020年9月にフェイスリフトを発表し、日本では2021年2月に導入。ヘッドライトやテールランプの意匠変更に加え、「Pivi Pro」インフォテインメントや刷新されたインテリアを採用しました。パワートレインも電動化が進み、2.0L直4に加えて3.0L直列6気筒+48Vマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド(P400e)などが設定されています。
90周年記念エディションで有終/2025年
ジャガーのEVブランド化にともない、内燃機関生産90年(1935〜2025年)を記念する特別モデル「90周年記念エディション(日本では『R-ダイナミックSE 90TH アニバーサリー・エディション』)」を最後に、F-PACEは新車販売を終了しました。
| ジャガー・Fペイスのモデル | 販売年表 |
|---|---|
| 初代(前期型) | 2016年~2020年 |
| 初代(改良後) | 2021年~2025年 |
ジャガーF-PACE(Fペイス)は高級車でありスポーツカーでもあった

ジャガーF-PACEは、2016年の発売以降に販売を伸ばし、ジャガーにSUVという新たな柱をもたらしました。ベースの「PURE」でも640万円からという価格帯ながら、ラグジュアリーな佇まいと所有満足を刺激する一台で、累計およそ32万8000台を数えるブランド屈指のヒット作となりました。
自動緊急ブレーキや車線逸脱警報など安全性も高め、ドライバーと同乗者が安心して目的地へ向かえるSUVでした。そのF-PACEも、ジャガーがEV専業の高級ブランドへ生まれ変わる大転換のなかで、90周年記念モデルをもって内燃機関の歴史に幕を下ろしました。名門が次に放つ新型EVがどんな姿を見せるのか、ジャガーの新章に注目が集まります。



















