テスラ モデルXはファルコンウィングを備えたSUV型EV 2026年に生産終了へ
アメリカの自動車メーカー「テスラ」は電気自動車を専門に手掛けるメーカーで、さまざまなタイプのEVを送り出してきました。なかでも「モデルX」はSUVタイプの電気自動車で、リアドアに上へ跳ね上がる「ファルコンウィング」を採用したことで知られます。
驚くのは外見だけではありません。加速性能もモーター駆動らしく、初期のP100Dで0-100km/h加速3.1秒、2021年の改良で登場したPlaidに至っては2.6秒という数字を叩き出しました。
そのモデルXも、2026年3月末をもって通常の受注を終了し、最終限定モデルの生産をもって約14年の歴史に幕を下ろします。日本ではすでに2025年3月31日に新車販売が終わりました。ここでは、モデルXのエクステリアやインテリア、搭載装備やスペック、価格帯を、終わりが見えた今の視点で振り返ります。
2026年に生産終了 最終限定モデル「シグネチャーエディション」を350台のみ販売
テスラは2026年3月末にモデルSとモデルXの通常受注を終了しました。そして同年4月、両モデルの生産終了を記念する限定モデル「シグネチャーエディション」を北米で発表しています。
生産台数はモデルS Plaidが250台、モデルX Plaidが100台の合計350台。テスラから招待メールを受け取った顧客だけが購入できる招待制で、デリバリーは2026年5月に予定されました。価格は両モデルとも159,420ドル(約2,548万円)で、デスティネーションフィーを加えると約2,570万円。在庫車のモデルX Plaid(129,990ドル)と比べて約29,000ドル高い設定です。
モデルSにはカーボンセラミックブレーキとゴールドキャリパーが与えられ、モデルXは従来どおり赤のPlaidキャリパーを踏襲。両モデルにシグネチャーエディション専用のキーフォブが付属します。
象徴的なのは、この後です。モデルS/Xを生産してきたフリーモント工場のラインは、人型ロボット「オプティマス」の量産へ転用される予定とされています。両モデルは約14年間で世界累計およそ75万台が出荷されました。テスラというブランドを築いた立役者が、ロボットに場所を譲るという構図には、この会社の現在地がよく表れています。
日本向けは2025年3月31日に生産終了 高価格帯EVから事実上の撤退
日本市場からの退場は、一年早く訪れました。テスラジャパンは2025年3月6日、モデルSとモデルXの日本向け生産を3月31日で終了すると発表。4月1日以降は新車のカスタムオーダーを受け付けず、在庫車と認定中古車のみの販売となりました。
モデルXの日本発売は2016年。以来、テスラのフラッグシップSUVとして君臨してきましたが、1,000万円を超える価格帯であることに加え、2023年5月に右ハンドル仕様の生産が終了し左ハンドルのみになっていたことが響いたと見られます。関係者によれば、当時の日本の新車販売の約9割はモデル3とモデルY(いずれも右ハンドル)が占めていました。
この決定により、テスラの国内ラインナップはモデル3とモデルYの2車種へ絞られ、日本の高価格帯EV市場からは事実上の撤退となります。日本自動車輸入組合の統計から推計したテスラの2024年の国内販売は約5,700台で、EVブランドとしては最多。その主力を守るための取捨選択だった、と読むのが妥当でしょう。
なお、EVピックアップトラック「サイバートラック」の紹介ページは残されており、テスラジャパンが高価格帯を完全に諦めたかどうかは、現時点では判断できません。
テスラ・モデルXのエクステリアの特徴は上に開くファルコンウィングや格納式ドアハンドル

モデルXのエクステリアは、都会的なデザインのクロスオーバーSUVです。5ドアハッチバックで、フロントドアは横開きのヒンジドア、リアドアは上に開くファルコンウィング、バックドアはダンパー付きのハッチタイプ。
ドアハンドルは普段ボディに格納されており、オーナーが近づくと迫り出す仕組みでした。

ヘッドライトはもちろんLED。その下弦には導光タイプのポジションランプが光り、同じ位置にオレンジ色のウインカーが備わります。

ホイールは2種類。20インチ サイバーストリーム ホイールが標準装備で、22インチ タービン ホイールがオプションでした。
| 20インチ サイバーストリーム ホイール | 標準装備 |
|---|---|
| 22インチ タービン ホイール | 810,000円 |
ボディサイズは全長5,037mm、全幅2,070mm、全高1,684mmの3ナンバーサイズです。トヨタの大型SUVであるランドクルーザーより全長・全幅ともに上回りますが、全高は都市型クロスオーバーらしく1.68mと控えめで、ランドクルーザーよりおよそ20cm低く設計されています。日本の機械式駐車場を諦めさせるのは、全高ではなく全幅のほうでした。
| 全長 | 5,037mm |
|---|---|
| 全幅 | 2,070mm |
| 全高 | 1,684mm |
| ホイールベース | 2,965mm |
| 最低地上高 | 171mm~223mm |
| 車両重量 | 2,389kg |
モデルXの内装は5人乗り・6人乗り・7人乗りを購入時に自由に選べた

モデルXのインテリアは、セカンドシートがベンチシートの「5人乗り仕様」、セカンドシートがキャプテンシートでサードシートが2人掛けの「6人乗り仕様」、セカンドシートがベンチシートでサードシートが2人掛けの「7人乗り仕様」の3種類から、新車購入時に選ぶことができました。多人数乗車が選べるBEVは今も希少で、この点はモデルXの大きな武器でした。
5人乗り仕様
6人乗り仕様
7人乗り仕様
インテリアカラーは、シートカラー・インテリアパネル・ルーフカラーをすべてブラックで統一したデザインが標準。オプションでシートのホワイトやクリーム、木目のインテリアパネル、クリームのルーフなど、4種類のパターンが選べました。
ボディカラーは全5色。パールホワイト マルチコートが標準で、219,000円のオプションカラーが3色、438,000円の上級オプションカラーが1色という構成です。
テスラ モデルXのボディカラー
- パールホワイトマルチコート
- ソリッドブラック(219,000円高)
- ミッドナイトシルバーメタリック(219,000円高)
- ディープブルーメタリック(219,000円高)
- ウルトラレッド(438,000円高)

センタークラスターには大型ディスプレイが据えられ、車両情報の確認やナビ操作を行えます。搭載機能はワイヤレス通信で更新されるため、買い替えずとも中身が新しくなっていく。この考え方こそ、テスラが自動車業界に持ち込んだ最大の発明かもしれません。
テスラ・モデルXの搭載装備はエアサスペンションやパノラミックウインドシールドで安全装備も充実

モデルXの装備は多岐にわたりました。運転支援機能や自動緊急ブレーキ、SUVらしい電子制御AWDはもちろん、スマートエアサスペンション、視界の広いパノラミックウインドシールド、キーを持った運転者が近づくとフロントドアが自動で開くギミックまで。安全装備から快適装備まで、当時としては突出した充実ぶりでした。
フラッグシップSUVのモデルXは最大航続距離565kmで大容量バッテリーを搭載していた

モデルXはエンジンを持たない完全な電気自動車で、初期に搭載されたバッテリーは「75kWh」と「100kWh」の2種類でした。当時の日産リーフが40kWhでしたから、1.5倍以上の容量ということになります。
| グレード | 航続可能距離 |
|---|---|
| 75D | 最大約417km |
| 100D | 最大約565km |
| P100D | 最大約542km |
75Dの航続距離は約417km、最高速度210km/h、0-100km/h加速5.2秒。100Dは航続約565kmとシリーズ最長で、最高速度250km/h、0-100km/h加速4.9秒。ハイパフォーマンスのP100Dは航続が約542kmへ落ちるものの、0-100km/h加速は3.1秒と100Dより1秒以上速いという構成でした。
その後、2021年の大幅改良でグレードは「ロングレンジ」と3モーターの「Plaid」の2本立てへ再編されます。Plaidは0-100km/h加速2.6秒に到達し、操舵にはヨーク型ステアリングが採用されました。SUVでありながらスーパーカーを置き去りにする、というモデルXの本質は最後まで変わりませんでした。
テスラ モデルXは2015年に発売 日本での販売価格はエントリーモデルが14,469,000円だった

モデルXは2015年9月に本国で納車が始まり、日本には2016年に導入されました。日本での価格は、末期でエントリーのModel Xが14,469,000円、上級のModel X Plaidが16,669,900円です。
| Model X | 14,469,000円 |
|---|---|
| Model X Plaid | 16,669,900円 |
すでに述べたとおり、日本での新車販売は2025年3月31日で終了しました。現在購入できるのは中古車のみです。

かつてのハイパフォーマンスモデルP100Dには、ウイルスやバクテリアの車内侵入を防ぐエアフィルトレーション、排気ガスなどによる車内空気の汚染を防ぐ活性炭フィルター、ドライバーが近づくと開きブレーキを踏むと閉じる自動フロントドア、プレミアムオーディオ、全席シートヒーター、ヒーター付きステアリング、ワイパーブレードデフロスター、ウォッシャーノズルヒーターといった寒冷地仕様がすべて標準装備されていました。
ファルコンウィングドアを装備するSUV テスラ・モデルXのモデルチェンジ遍歴
モデルXはアメリカのテスラが販売していたクロスオーバータイプのBEVです。モデルSのEVパワートレインをベースに開発されました。
テスラ・モデルX 初代/2015年~2026年
2015年9月、モデルXの納車が開始されました。「ファルコンウィングドア」と名付けられたガルウィング式のリアドアが最大の特徴です。
2016年、日本での販売を開始。
2021年、大幅改良を実施。グレードをロングレンジとPlaidの2本立てに整理し、Plaidは3モーターで0-100km/h加速2.6秒を実現しました。
2023年5月、右ハンドル仕様の生産を終了。日本を含む左側通行の国では左ハンドルのみの販売となります。
2025年3月31日、日本向けの生産と新車販売を終了。
2026年3月末、通常受注を終了。同年4月に最終限定モデル「シグネチャーエディション」(モデルX Plaidは100台)を発表し、約14年の歴史に幕を下ろしました。
| テスラ・モデルXのモデル | 販売年表 |
|---|---|
| 初代(2021年に大幅改良) | 2015年~2026年 |
テスラ モデルXが遺したもの ブランドを築いた翼は畳まれた

モデルXは安全評価で5つ星を獲得し、各種センサーによる車両周囲のモニタリングによって、負傷を伴う事故の発生確率が最も低いと評価されたモデルでした。
センタークラスターのディスプレイはナビを表示するだけでなく、無線通信で最新情報を取得し、運転支援ソフトウェアも更新していく。買った時点が完成形ではない、という車の在り方を広く知らしめた一台です。
そのモデルXも、モデルSとともに役目を終えます。日本では2025年3月に、世界では2026年に。テスラの販売を支えるのは、いまやモデル3とモデルYであり、工場のラインはロボットへ譲られようとしています。合計約75万台という数字は、モデルY一車種の一年分にも届きません。
それでも、ファルコンウィングを掲げたSUVがなければ、EVが「我慢して乗るもの」から「欲しいから乗るもの」へ変わるのは、もっと遅れていたはずです。派手で、無駄が多く、そして忘れられない。モデルXはそういうクルマでした。中古車で狙うなら、まだ間に合います。





















