AUDI A1シティカーバー

アウディA1シティカーバーはなぜ消えたか 2022年オールストリートへ改名し2026年生産終了

A1シティカーバーの日本発売はあったのか、後継はあるのかを整理。最低地上高144mmの成り立ち、1.0L直3と1.5L直4の設定、edition oneやダイナミックパッケージまで、生産終了までの全経緯と国内限定車2台の中身を解説します。

アウディA1シティカーバーは2026年4月に生産終了 後継は設定されず

アウディA1シティカーバー(Audi A1 citycarver)は、2022年5月にA1オールストリート(A1 allstreet)へ車名を変更したのち、A1シリーズごと2026年4月に生産を終了しました。直接の後継モデルは設定されていません。日本市場へはカタログモデルとしての正規導入がなく、2020年と2022年の限定車、合わせて375台のみが導入されて役目を終えています。中古車として探す以外に入手手段はありません。

以下では、生産終了に至るまでの動きを新しい順にたどりながら、A1スポーツバックをベースにした都市型クロスオーバーがどのようなクルマだったのかを整理していきます。

A1は2026年4月に生産終了 累計1,389,658台でシティカーバー系も幕を閉じる

アウディは2026年4月、スペイン・マルトレル工場でのA1の生産を終了しました。2010年のデビューから2世代にわたり、累計生産台数は1,389,658台に達しています。初代はベルギーのブリュッセル工場で約91万台が生産され、2代目からはフォルクスワーゲングループ内の分業を進めるかたちで、セアトのマルトレル工場へ生産が移されていました。同じ月には小型SUVのQ2も生産を終え、こちらは2016年からの累計が887,231台でした。

A1オールストリートは、シティカーバー時代から数えて約6年半でその歴史を終えたことになります。直接の後継車は用意されず、アウディは手頃な価格帯の小型ガソリン車から実質的に撤退しました。間接的な後継となるのが、フォルクスワーゲンID.3をベースとするEV「A2 e-tron」で、2026年秋のデビューが予定されています。生産はQ2の跡を受けてインゴルシュタットで行われる見通しです。マルトレル工場の空いたラインには、フォルクスワーゲンID.ポロ、ID.クロス、クプラ・ラバル、シュコダ・エピックといったグループの小型EV群が入ります。

この結果、アウディのガソリンエンジン搭載モデルで最も小さい存在は、ハッチバックのA3とSUVのQ3となりました。全長4m級のプレミアムコンパクトという枠組みそのものが、内燃機関の世界からは姿を消したかたちです。

2025年にアウディCEOが「A1の後継車は設定しない」と明言

2025年3月、アウディのCEOであるゲルノート・デルナー氏は、2026年にA1とQ2の生産を終える従来計画に変更はないと述べたうえで、A1の後継車を設定する考えはないと明言しました。同氏はあわせて、インゴルシュタットで生産を開始するAセグメントのエントリーEVについて触れ、フォルクスワーゲングループの次世代SSPプラットフォームの市販投入が2028年であることから、Q4 e-tronと同じMEBプラットフォームを用いる可能性が高いとしています。

製品面では、2025年4月にA1スポーツバックとA1オールストリートを対象とした2026年モデルイヤーの価格表が発行され、最終期のラインナップが確定しました。エンジンはいずれも1.0L直列3気筒と1.5L直列4気筒のガソリンのみで、ディーゼルもハイブリッドもEVも設定されないまま最後まで押し通したことになります。日本では2025年9月にメーカー希望小売価格の見直しが行われ、A1スポーツバックにも新価格が適用されました。

2024年5月 日本ではA1スポーツバックの限定車「urban chic edition」を150台販売

日本市場でシティカーバー系の限定車が途絶えたあと、その役割を引き継いだのが2024年5月9日に発表された「Audi A1 Sportback urban chic edition(アーバンシックエディション)」です。オンラインセールス限定の先着販売という異例の売り方で、受付期間は5月9日から5月22日まで、限定150台・399万円という設定でした。

ベースはA1スポーツバック 25 TFSI S lineで、1.0L直列3気筒ガソリンターボは最高出力95PS、最大トルク175Nmを発生します。専用装備として5アームポリゴンデザインのブラック17インチアルミホイールと215/45R17タイヤ、ミトスブラックメタリックのコントラストルーフ、ブラックAudi rings&ブラックスタイリングパッケージを標準化。インテリアはモノトーンを基調に、ミントサテンペイントトリムをアクセントとして配しています。ボディカラーは限定車専用色の3色で、デューシルバーメタリック70台、アローグレーパールエフェクト70台、ディストリクトグリーンメタリック10台という内訳でした。

この年、欧州のA1オールストリートについては、フルモデルチェンジやパワートレインの刷新といった大きな動きはなく、モデルイヤーの更新にとどまっています。

2023年 日本のA1は価格改定のみ 欧州のオールストリートは仕様据え置き

2023年は、A1にとって目立った製品ニュースのない年でした。日本ではアウディ ジャパンが2023年2月8日にA1スポーツバックの価格改定を発表し、同年4月1日から新価格を適用しています。原材料費や物流コストの上昇を背景としたもので、装備そのものを大きく変える内容ではありませんでした。

欧州のA1オールストリートも、エンジン、トランスミッション、グレード体系、カスタマイズオプションのいずれも前年からのキャリーオーバーです。この時点ですでにA1の世代交代がないことは公表されており、大がかりな改良に投資しない方針が製品にもそのまま表れていた格好です。

2022年5月 A1シティカーバーはA1オールストリートへ車名変更

2022年5月12日、アウディは欧州で2023年モデルを発表し、それに合わせて車名をA1 citycarver から A1 allstreet(A1オールストリート)へ変更しました。アウディが「allstreet」の名を使ったのはこれが初めてです。舗装路も未舗装路もこなすA4/A6のオールロードとは異なり、あくまで街乗り主体という位置づけを、より広い守備範囲を想起させる名前へ改めた格好といえます。

変更されたのは名前だけで、中身はそのまま引き継がれました。装備もカスタマイズオプションも、エンジンとトランスミッションの組み合わせも従来どおりで、ドイツ本国のベース価格も2万3,200ユーロに据え置かれています。エンジンは25 TFSI(1.0L直3・95PS/175Nm)、30 TFSI(1.0L直3・110PS/200Nm)、35 TFSI(1.5L直4・150PS/250Nm)の3本立てで、駆動方式は最後まで前輪駆動のみでした。

なお英国では、これに先立つ2021年に販売の伸び悩みからシティカーバーがラインナップから外れています。派生モデルとしての存在感は市場ごとに差があり、名称変更はその立て直しを図る意味合いもあったとみられます。

アウディA1シティカーバーが2022年に日本で限定販売 価格は4,640,000円

シティカーバーはA1スポーツバックをベースに最低地上高を40mm引き上げたモデルで、欧州で話題となったこの派生クロスオーバーが、日本では2022年4月26日に2度目の限定販売を迎えました。日本での限定販売は2020年に続く2回目で、正規のカタログモデルとして導入されることは最後までなかったため、国内では希少なコンパクトクロスオーバーとなっています。

アウディA1シティカーバー ブラックスタイルプラスの装備

  • コントラストルーフ
  • プライバシーガラス
  • 専用17インチアルミホイール
  • インテリアライティングパッケージ
  • スマートフォンインターフェイス
  • アドバンスキー
  • パーキングシステム
  • コンビニエンス&アシスタンスパッケージ

限定モデルの名称はブラックスタイルプラス(Audi A1 citycarver Black Style PLUS)で、限定台数は125台。ボディカラーはアローグレーパールエフェクトとクロノスグレーメタリックの2色のみで、2色合計での限定販売でした。パワートレインは最高出力116PS、最大トルク200Nmを発生する1.0L直列3気筒直噴ターボに、乾式デュアルクラッチを備える7速Sトロニック(DCT)を組み合わせています。内装はadvancedグレードと共通のデビュークロス/ブラックとスチールグレーの組み合わせで、外装のブラック基調と統一感を持たせました。販売価格は4,640,000円です。

アウディA1シティカーバーがフランクフルトモーターショー2019に出展

アウディA1シティカーバーのエクステリア

クロスオーバーとして登場したA1シティカーバーは、2019年9月のフランクフルトモーターショーで発売記念モデルの「edition one」を含めて出展されました。全長は4,040mmで、ベースとなるA1スポーツバックよりわずかに長い設計です。

大型化された八角形シングルフレームグリルにマットブラック仕上げのグリル内部、黒塗装のホイールアーチなど、精悍なエクステリアデザインに仕上げられたA1シティカーバー。足元には最大18インチのアルミホイールを装着できます。

アウディA1シティカーバーのボディカラーは全部で9色をラインナップ。ルーフカラーはグレーとブラックの2タイプからセレクト可能で、ブラックのスタイリングパッケージも用意されました。

アウディA1シティカーバーのインテリア

スポーティーで都会的なデザインのインテリアも、アウディA1シティカーバーの大きな魅力です。トリムパーツなどには各ボディカラーに合ったアクセントカラーが設定されます。なお、荷室スペースは335Lの容量を確保しており、実用性にも優れています。

先進運転支援システム(ADAS)は上級車種と同レベルの技術を搭載。車線逸脱警報や、歩行者・自転車を検知する「Audi pre sense front(アウディプレセンスフロント)」などが標準装備されます。

アウディA1シティカーバーは最低地上高をかさ上げして・専用装備を充実させて独自のスタイリングを追求

アウディが明確なコンセプトを掲げて命名した「A1シティカーバー」のエクステリアの魅力を紹介します。

A1シティカーバーのグレードは「ベーシック」「アドバンスト」「デザインセレクション」「S line」の4本立てで展開され、エンブレムを含む各部にピアノブラック加飾を施す「ブラックスタイリングパッケージ」も用意されました。

A1シティカーバーは専用サスペンションなどを装備し、ベース車であるA1スポーツバックよりも最低地上高を40mmかさ上げして、悪路走破性を引き上げています。アウディの公表値では、車軸間の最低地上高は144mmで、A1スポーツバックに対して41mmの上乗せです。かさ上げ分のうち約35mmはストローク量を増やしたサスペンションによるもので、残りは標準で16インチ以上となる大径ホイールが稼いでいます。

その他には、前後バンパーにアルミ調加飾などを施し、サイドステップ等のパーツを追加設定してオフロード色を強めています。

アウディA1シティカーバーのフロントグリルは、ベース車とするスポーツバックと同一の六角形ではなく、Qモデルと同様の八角形の造形を採用。グリルのメッシュ構造をより立体的な形状とし、ツヤ消しブラック仕上げを施すなどの効果によって、フロントマスク全体の魅力を高めています。

同車はワイド設定のシングルフレームグリルとエンジンフードとの間に、印象的な2つのスロットを設けて、ベース車とのさらなる差別化を図りました。

A1シティカーバーの全長は4,040mmで、ベース車であるA1スポーツバックよりもわずかに延長されています。リアバンパーは専用デザインに変更され、アウディのクロスオーバーであるQ2やQ3をイメージさせるシルエットとなっています。

A1シティカーバーが採用するボディカラーはパルスオレンジなど全9色

A1シティカーバーが採用するボディカラー「パルスオレンジ」は色鮮やかで印象的

アウディA1シティカーバーは、塗装色として色鮮やかなパルスオレンジなど全9色をラインナップしました。ルーフ色には「ミトスブラックメタリック」と「マンハッタングレーメタリック」の2種類を用意し、色の組み合わせパターンを楽しめる仕立てです。発売記念の限定モデル「edition one」では、このパルスオレンジとアローグレーが専用色として設定されました。

A1シティカーバーは「フルデジタル・インストルメントクラスター」や「MMIナビゲーションプラス」を装備

A1シティカーバーは、解像度の高い10.25インチディスプレイや、操作性に優れたマルチファンクションステアリングホイールを備えたフルデジタル・インストルメントクラスターを装備します。インフォテインメント系は8.8インチのMMIタッチディスプレイが担い、上級モデルに近い操作感をコンパクトなボディに落とし込みました。

同車はその他に、スマートフォン感覚で扱える「MMIナビゲーションプラス」を採用。アウディコネクトと連携可能なMMIナビゲーションプラスでは、クラウド上で最適なルート計算を行うハイブリッドルートガイダンス機能や、Google Earthによるナビゲーション機能、ハイブリッドラジオ等のサービスを利用できます。

インテリアの装飾パーツも基本的にはA1スポーツバックと同一タイプのものを採用していますが、ベース車には装備されていないLEDアンビエントランプをメーターフード脇やセンターコンソールなどに組み込み、ラグジュアリー感を高めています。

ドアトリムやセンターコンソールなどの各部位にはボディカラーに合わせて、オレンジ・シルバーグレー・ミントなどのアクセントカラーを配し、室内空間をスタイリッシュに洗練させています。

A1シティカーバーは上級クラスと同様の運転支援システムを標準装備させて安全性を向上

都市型クロスオーバーであるA1シティカーバーは、車の加減速をシステム側が代行するアダプティブクルーズコントロールや、歩行者や自転車を検知して衝突を回避させるAudi pre sense city(アウディプレセンスシティ)など、上級クラスが搭載する先進の運転支援システムを標準装備しました。ボディサイズを理由に安全装備で妥協しない姿勢は、A1シリーズが最後まで維持した強みでもあります。

スポーツ仕様の「ダイナミックパッケージ」と初回限定モデル「edition one」

A1シティカーバーには、調整式ダンパー・サウンドアクチュエーター・レッドブレーキキャリパー・Audi drive select・18インチアルミホイール等を装備するスポーツ仕様の「ダイナミックパッケージ」が設定されました。適用できるのは30 TFSIと35 TFSIで、最廉価の25 TFSIには組み合わせられません。

また、発売を記念した限定モデル「A1シティカーバー edition one」もラインナップされました。パルスオレンジまたはアローグレーのボディに18インチホイール、フロントサイドエアインレットのフレームやシングルフレーム内のAudiリングスをブラック化し、ヘッドライトとテールライトはスモーク仕上げ。サイドにはマットシルバーの「edition one」ロゴデカールが貼られる専用仕立てで、フランクフルトモーターショー2019の目玉として展示されたのもこの仕様です。

アウディA1シティカーバーは欧州市場では2019年に発売 日本市場では限定車のみの導入に終わる

アウディのクロスオーバー「A1シティカーバー」は、2019年7月29日に発表され、同年8月から受注を開始、秋には欧州市場で納車が始まりました。搭載エンジンはベース車であるA1スポーツバックと共通で、1.0L直列3気筒ターボ(25/30 TFSI)と1.5L直列4気筒ターボ(35 TFSI)を用意。トランスミッションは5速/6速マニュアルと7速Sトロニックが組み合わされ、四輪駆動は最後まで設定されませんでした。

アウディが従来展開していた派生車であるオールロード(Allroad)とは趣の異なる魅力を備えたA1シティカーバーですが、日本では通常のカタログモデルとして導入されることはなく、2度の限定販売のみで終わりました。

日本で販売されたAudi A1 citycarverの限定車

  • A1 citycarver limited edition:2020年11月24日発売/250台/483万円/1.0L直3ターボ 116PS・200Nm+7速Sトロニック/ミサノレッドパールエフェクト・アローグレーパールエフェクト・パイソンイエローメタリックの3色
  • A1 citycarver Black Style PLUS:2022年4月26日発売/125台/464万円/同じく1.0L直3ターボ 116PS・200Nm+7速Sトロニック/クロノスグレーメタリック・アローグレーパールエフェクトの2色合計

2台を合わせても375台という規模で、日本におけるA1シティカーバーはきわめて母数の小さい存在です。中古車市場でも玉数は限られ、2020年式のリミテッドエディションが総額200万円台半ばあたりで見つかる程度と考えておくのが現実的でしょう。八角形グリルとホイールアーチの造形は現物のほうが印象的で、A1スポーツバックとの見分けもつきやすいため、素性のよい個体を根気強く探す価値はあります。

日本のアウディ ラインナップに残るA1はスポーツバックのみで、生産そのものは2026年4月に終わりました。全長4m級のプレミアムコンパクトという選択肢は、これでアウディから姿を消したことになります。