RX-9は登場するのか?ロータリーは2023年に復活済み、スポーツ版RX-8後継の可能性を考察
マツダの新たなロータリーエンジン搭載スポーツカー「RX-9」は、はたして登場するのでしょうか。
2012年に最後のロータリースポーツ「RX-8」の生産が終了したものの、2015年の東京モーターショーでコンセプトカー「RX-VISION」を発表。次世代ロータリー「SKYACTIV-R」の開発を明言し、復活への意欲を示していました。
ロータリー市販化から50周年にあたる2017年には、東京モーターショーでコンセプトカー「VISION COUPE」を発表。本格的なロータリー復活が期待されましたが、マツダ自身は「VISION COUPEはRX-VISIONの進化系ではなく、ロータリー搭載の予定はない」と説明していました。
そして現在、状況は当時から大きく動いています。ロータリーエンジンは2023年に発電用として実際に復活を果たし、スポーツカーとしての復活構想も新たなコンセプトカーで再び熱を帯びています。ここでは、ロータリーの現在地とRX-9登場の可能性を整理します。
| 西暦(年) | ロータリーエンジンに関する動き |
|---|---|
| 2002 | RX-7(3代目FD)生産終了 |
| 2003 | RX-8発売 |
| 2012 | RX-8生産終了。ロータリーの量産が一旦途絶える |
| 2015 | 東京モーターショー2015でコンセプト「RX-VISION」発表 次世代ロータリー「SKYACTIV-R」の開発を明言 |
| 2017 | ロータリー市販化50周年 東京モーターショー2017でコンセプト「VISION COUPE」発表(ロータリー搭載は否定) |
| 2020 | マツダ創業100周年(RX-9の発表はなし) |
| 2023 | 「MX-30 ロータリーEV」発売。発電用として約11年ぶりにロータリーが復活 ジャパンモビリティショーで2ローター搭載スポーツ「ICONIC SP」を世界初公開 |
| 2024 | 2月に「ロータリーエンジン開発グループ」を再結成。ICONIC SPの市販化を目指す |
| 2025 | ジャパンモビリティショーで2ローター・ロータリーターボPHEV「VISION X-COUPE」(510PS)を世界初公開 |
| 2026 | ロータリースポーツ(RX-9等)の市販化は依然として未発表 |
マツダはロータリー関連の特許出願を継続 スポーツカーを見据えた内容も
マツダは「車両の衝撃吸収構造」など、ロータリースポーツを想起させる特許を過去に公開してきました。そこでは、他車種と共有しない独立したプラットフォームや、アルミ・CFRPを用いたレーシーで軽量なフレーム構造が示され、当時は400ps級ともささやかれた新開発ロータリーとの組み合わせが取り沙汰されていました。
その後もマツダはロータリー関連の特許出願を続けており、なかにはロータリーで後輪を駆動する構成に関するものも確認されています。どのモデルに使われるかは明言されていませんが、コンパクトなエンジン搭載スペースを前提とした設計は、いまも語られるロータリースポーツの構想と重なる部分が多いといえます。
ロータリーは「発電用」として2023年に復活~MX-30 ロータリーEVが登場
もともとファンの多くが望んでいたのは「RX-7やRX-8のようなスポーツカー」としての復活でした。しかし、時代の要請にもっとも早く応えたのは、スポーツカーではなく電動車用の発電エンジンとしてのロータリーでした。
マツダは2018年に、ロータリーをEVの発電機として使う「レンジエクステンダー」的な活用構想を公表していましたが、これが実際の市販車として結実したのが「MX-30 ロータリーEV」です。欧州仕様「e-SKYACTIV R-EV」として2023年1月のブリュッセルショーで初公開され、同年6月には広島で量産を開始。日本では2023年9月に予約を受け付け、11月に発売されました。価格は423万5000円からで、ロータリー復活を象徴する特別仕様車「エディションR」も設定されています。ロータリー搭載の量産車は、2012年6月にRX-8が生産を終えて以来、約11年ぶりの復活となりました。
新開発の発電用ロータリー「8C型」は、排気量830ccのシングルローターで、RX-8の2ローター(654cc×2)とは異なり1ローター化することで大幅に小型化。最高出力53kW(72PS)を発揮し、モーターやジェネレーターと同軸上に配置されています。駆動そのものは125kW(170PS)のモーターが担い、17.8kWhのバッテリーと50Lの燃料タンクを組み合わせた「シリーズ式プラグインハイブリッド」として、WLTCモードで107kmのEV走行を可能にしました。ロータリーはあくまで発電に徹する“わき役”ですが、小型・軽量・低振動というロータリーの美点が発電機として理想的に働いています。なお同車は2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、ロータリー復活の意義が高く評価されました。
ロータリーは、ガソリンに限らず水素やカーボンニュートラル燃料との相性がよく、静粛性にも優れます。環境性能が厳しく問われる現代において、この「発電用ロータリー」は、もっとも現実的なロータリー活用のかたちとして先に実を結んだといえるでしょう。
諦められない「ロータリースポーツ」~ICONIC SPとVISION X-COUPEで再燃
発電用として復活したのはうれしい一方で、やはりRX-7やRX-8の血を引く「ロータリースポーツ」としてのRX-9を望む声は根強く残ります。そして近年、その夢は再び現実味を帯びてきました。
マツダが2015年に発表したロータリースポーツの理想像が「RX-VISION」でした。ボディサイズは全長4,389mm、全幅1,925mm、全高1,160mmで、今見てもまったく古さを感じさせない低く伸びやかなFRクーペです。マツダが「最高に美しいFRスポーツ」と自負したこのデザインは、その後のロータリースポーツ構想の原点となっています。
大きな転機となったのが、2023年10月のジャパンモビリティショー2023で世界初公開されたコンパクトスポーツ「MAZDA ICONIC SP」です。2ローターのロータリーを用いた「Rotary-EVシステム」を搭載し、システム総出力は370PS、前後重量配分50:50、低重心プロポーションを備え、毛籠社長は「ポルシェ911に相当する性能」と表現しました。当初は発電用(シリーズ式)と説明されましたが、その後の技術発表では後輪を駆動する構成も視野に入れられており、まさにロータリースポーツの現代版といえる内容です。
この大きな反響を受け、マツダは2018年に解散していた「ロータリーエンジン開発グループ」を2024年2月1日に再結成しました。ICONIC SPの市販化という夢に近づくべく、約30名規模でロータリー本体の開発をあらためてスタートさせたのです。2024年5月には、スバル・トヨタとの合同ワークショップで、電動化時代に適合する1ローター/2ローターのRotary-EVシステムも公開しました。
さらに2025年10月のジャパンモビリティショー2025では、コンセプト「MAZDA VISION X-COUPE」を世界初公開。こちらは2ローターの“ロータリーターボ”エンジンにモーターとバッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッドで、システム総出力はなんと510PS、EVのみで160km、エンジン併用で800kmの航続を掲げます。微細藻類由来のカーボンニュートラル燃料と、マツダ独自のCO2回収技術「モバイル・カーボン・キャプチャー」を組み合わせ、走るほど大気中のCO2を減らす“カーボンネガティブ”まで視野に入れた意欲作です。全長5,050mmと大柄なクロスオーバークーペで市販前提ではないものの、「パッケージングは市販に移せる」とされ、ロータリーがついに“駆動用”としても現実味を帯びてきたことを印象づけました。
「RX-9」はすでに使われていた?次世代ロータリー車が別の車名になる可能性
マツダ車で「RX」が付くのはすべてロータリー搭載車で、歴史的にはいずれもFR(後輪駆動)でした。
日本で人気を博したRX-7、RX-8のほか、カペラ、サバンナ、ルーチェ(第2世代)、コスモのロータリー搭載車には、海外でそれぞれRX-2、RX-3、RX-4、RX-5の車名が与えられています。ここで少し厄介なのが、過去に3代目ルーチェ系のロータリー搭載車に対して「RX-9」の車名が用いられたことがある、という指摘がある点です。
次世代ロータリー搭載スポーツを日本で出すなら、順番的には「RX-9」としたいところですが、まったくの新規名称ではないため、別の車名が与えられる可能性もあります。世界的にも人気の高い「RX-7」の名を復活させる、という戦略も十分に考えられるでしょう。
いずれにせよ、正式な車名が発表されるまでは、「RX-8に続く次世代ロータリースポーツ」の総称として、メディアなどで便宜的に「RX-9」の呼び名が使われ続けそうです。
【考察】ロータリースポーツ「RX-9」は登場するのか
ここからは、これまでの動きを踏まえた筆者なりの見立てを述べます。結論から言えば、「ロータリーの復活」はもはや“するか否か”ではなく“すでにした”話であり、残る焦点は“ロータリースポーツ(RX-9)が出るか”に移っている、というのが現在地だと考えます。
登場に前向きな材料はそろってきました。第一に、発電用の8C型ロータリーがMX-30で量産化され、ロータリーを現代の環境基準で成立させる技術的な足場ができたこと。第二に、2024年にロータリー開発グループが再結成され、開発体制が“点”から“線”になったこと。第三に、ICONIC SPとVISION X-COUPEという2台のスポーツ系コンセプトが立て続けに登場し、社内外の熱量を高めていること。経営陣も「技術的にはほぼ準備が整っており、あとはビジネスとして成立するか」という趣旨の発言を重ねており、開発そのものは着実に進んでいる印象です。
一方で、ハードルも明確です。最大の関門は、マツダ自身が繰り返し口にする「採算性」です。2ローター+電動化のスポーツカーは高価格帯にならざるを得ず、販売台数が限られるニッチな商品でどう投資を回収するかが問われます。加えて、Euro7や米国の排出規制への最終的な適合、そして限られた開発リソースをどこへ振り向けるかという経営判断も残ります。参考までに、限定販売された「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R」に9,500件を超える申し込みが集まった事実は、高価格でも一定の需要が見込めることを示しており、マツダが市場性を測る材料にしている可能性は高いと見ています。
これらを総合すると、筆者は「純ガソリンのロータリーだけで走る往年型RX-9が、そのままの姿で復活する可能性は低い」と考えます。もし市販化されるとすれば、その中身はVISION X-COUPEが示したような、カーボンニュートラル燃料に対応する2ローター+電動化(シリーズ、あるいはより走りを重視するならパラレル式)のプラグインハイブリッドとなるのが自然でしょう。車名も、前述の事情から「RX-9」ではなく「RX-7」の復活、あるいはまったく新しい名前になる余地が十分にあります。時期を断定できる段階ではありませんが、ロータリースポーツの復活は、RX-8以降のどの時点よりも現実に近づいている――これが筆者の率直な見立てです。
新型RX-9誕生は「不可能を可能にした」マツダなら十分あり得る
マツダはロータリースポーツの復活を「社員全員の悲願」と位置づけてきました。ロータリーへの注目度は海外でも非常に高く、RX-7やRX-8の復活を望む声は途切れることがありません。
発電用ロータリーの市販化、開発グループの再結成、そしてICONIC SPからVISION X-COUPEへと続くスポーツ系コンセプトの連投は、その悲願が着実に前へ進んでいることを物語っています。ブランド力を高め続けるマツダが、もし本格的なロータリースポーツを世に送り出せば、世界に大きな衝撃が走るのは間違いないでしょう。
なにより、マツダは「量産化は不可能」と言われたロータリーエンジンを、世界で唯一実用化してみせた企業です。“不可能を可能にした”その歴史を思えば、RX-9――あるいはその名を継ぐ次世代ロータリースポーツの登場を、期待して待ちたいところです。