マッドマックスに登場した車

『マッドマックス』シリーズに登場した車!インターセプターのベース車とは?

マッドマックスの劇中車はなぜあれほど異形なのか。インターセプターのベース車から怒りのデス・ロードの改造車まで、元になった市販車をたどりながら、荒野の質感を生むラットロッドという手法と実車主義の撮影について解説します。

『マッドマックス』シリーズに登場した車!インターセプターのベース車とは?

『マッドマックス』1から怒りのデスロードまでに登場した車一覧

『マッドマックス(MAD MAX)』は、荒廃した近未来のオーストラリアを舞台に、特殊警察M.F.Pの隊員マックス(メル・ギブソン)が暴走族との闘いを繰り広げるアクション映画です。

制作当時は予算が少なく、その多くは劇中車の改造に費やされていましたが、1979年に公開されると世界各国でヒットを記録。1981年に続編『マッドマックス2』も制作され、より掘り下げられた世界観や斬新なアクション手法は、映画や漫画など多彩なジャンルに強い影響を与えました。

1985年『マッドマックス/サンダードーム』で1度完結を迎えましたが、2015年に主演をメル・ギブソンからトム・ハーディに変更した30年ぶりの新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が公開。2024年5月には、フュリオサの若き日を描いた前日譚『マッドマックス:フュリオサ』が公開され、シリーズは全5作となりました。
派手なアクションシーンが満載の『マッドマックス』シリーズに登場した車やバイクを紹介します。

マッドマックスの象徴「インターセプター」のベースはフォード・ファルコンXB!

『マッドマックス』シリーズの車といえば、主人公マックスの相棒インターセプターV8がもっとも有名です。
『マッドマックス2』で大破したため、3にあたる『マッドマックス/サンダードーム』では登場しないのですが、30年ぶりの新作『マッドマックス/怒りのデス・ロード』ではインターセプターも復活を果たしています。

ブラック・インターセプター(パーシュート・スペシャル)

インターセプターのエクステリアマッドマックス劇中車インターセプター

インターセプターのマフラーインターセプター サイドから見ると片側4本(計8本)のマフラーが目立つ

「(ブラック)パーシュート・スペシャル」とも呼ばれる。5.8LのV8エンジンによって600馬力を発生する設定。インターセプターといえばこの車で、世界中のファンがレプリカを製作。劇中車のベースはフォード・ファルコンXB GT。ボンネットを突き破るスーパーチャージャーは劇中でスイッチひとつで作動する演出になっているが、撮影車のものは駆動しないダミーで、回転しているように見せる工夫が凝らされていた。フロントの巨大なノーズコーンと片側4本出しのマフラーは、間近で見ると市販車の面影がほとんど残っていないほどの改造量。

フォード・ファルコンXB GTのエクステリアフォード・ファルコンXB GT(1973年モデル)

フォード・ファルコンXB GT ハードトップのエクステリアフォード・ファルコンXB GT(ハードトップ)

フォード・ファルコンXBのエクステリアフォード・ファルコンXB(1976年モデル)のインテリア

インターセプターのベースは、フォード・オーストラリアが生産した3代目ファルコン(1972~1979年)の中期型XB。北米フォードとは別に、オーストラリア専用設計のモデルのため、もともと豪州では高い人気を誇る。搭載された351キュービックインチ(5.8L)のクリーブランドV8は当時の豪州製セダンでは最強クラスで、地元のツーリングカーレースを席巻した血統。劇中車に選ばれたのは、現地で入手しやすく、なおかつ迫力のあるフォルムを持っていたという実務的な理由が大きい。『怒りのデス・ロード』では「レイザー・コーラ」と呼ばれる仕様で再登場した。

イエロー・インターセプター

黄色いインターセプターMFPのパトカーとして活躍したイエローのインターセプター

マッドマックスカラーのインターセプター真似するファンも多い黄色と青のカラーリング

フォード・ファルコンXB GTセダンのエクステリアフォード・ファルコンXB GTセダン

M.F.P(メインフォースパトロール)のパトロールカー。複数台製作されており、それぞれ細部が異なるが、『マッドマックス』マックス搭乗車種は赤と青のパトライトが特徴。ベースはフォード・ファルコンXBセダン。黄色と青のツートーンは実在の豪州パトカーを踏まえた配色で、ブラック・インターセプターより現実味のあるコスチュームがかえって荒廃した世界観の入口として機能している。レプリカ製作ではセダンボディが比較的手に入りやすく、こちらを選ぶファンも少なくない。

『マッドマックス』1~3に登場したインターセプター以外の車種

『マッドマックス』『マッドマックス2』『マッドマックス/サンダードーム』の3作品に登場した車やバイクを紹介します。

カワサキ・Z1000

カワサキ・Z1000のエクステリアカワサキ・Z1000

『マッドマックス』登場M.F.P.隊員「不死身のグース」や暴走族などの搭乗車種として採用。1976年生産開始、空冷4ストローク。グース仕様にカスタムしたがったファン多数。作中のホイールスピンは衝撃のかっこよさだった。当時のオーストラリアでは日本製の大排気量車が現実に浸透しており、警察車両にも採用実績があった。作品の質感を支えているのは、この「実際にその土地にあった乗り物」を使う姿勢。

ホールデン・モナーロ

ホールデン・モナーロのエクステリアホールデン・モナーロ(劇中車と同じ2ドアモデル)

『マッドマックス』でナイトライダーが搭乗(強奪)したパトカー。ベースは1971~1977年生産の2代目モナーロで、3.3Lの直6から5.7LのV8エンジン搭載モデルまで、幅広くラインアップされていた。ホールデンはゼネラルモーターズ傘下の豪州メーカーで、フォード・ファルコンとは国民的なライバル関係。冒頭の追跡劇がフォード対ホールデンの構図になっている点は、現地の観客ほど刺さる仕掛け。

マツダ・ボンゴ

マツダボンゴのエクステリアマツダ・初代ボンゴ(1966~1975年)

『マッドマックス』序盤カーチェイスで大破した青いバンは、マツダ・初代ボンゴ。制作予算が乏しかったため、監督の私物が提供され、そのまま破壊された1台。初代ボンゴはリアエンジン・リアドライブという独特の構成で、当時の日本製小型商用車としては先進的なパッケージだった。

ホンダ・CB750

ドリームCB750FOURのエクステリアホンダ・ドリームCB750FOUR(1969年モデル)

『マッドマックス』で暴走族が乗るバイクの多くはカワサキだが、一部ホンダも採用されていた。CB750は世界初の量産直列4気筒ロードスポーツで、最高速は200km/h近辺。前輪ディスクブレーキの採用など、以後の大型バイクの基本形を決定づけた1台で、海外でも高い人気を誇る。国内では後年、750ccという排気量の上限が定着していく流れを作ったモデルでもある。

マックRシリーズ

マックRシリーズのエクステリアマックRシリーズ

1より制作費が約10倍に増えたため、『マッドマックス2』では物語のキーとして輸送トラックが登場。1966~2005生産、アメリカ製。1978年公開の映画『コンボイ』の劇中車としても採用されている。ボンネット型の長いノーズと突き出た排気管というアメリカンヘビーデューティーの典型で、砂漠を突き進む姿は物語の推進力そのもの。この「大型トラックを守りながら走る」構図は、後の『怒りのデス・ロード』のウォー・リグへ受け継がれている。

カワサキ・Z1

カワサキZ1のエクステリアカワサキZ1(空冷4ストロークDOHC8バルブ直列4気筒)

『マッドマックス2』でモヒカン刈りのウェズと相棒のゴールデンが乗っていた車種。1972~1976年販売、正式名称はカワサキ900Super4。北米市場を意識して開発。狙い通り世界各国で高い人気を誇り、名機として知られている。903ccのDOHC直4は当時としては異例の高性能で、現在は程度の良い個体が数百万円規模で取引される旧車の代表格。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に登場した改造車のベースは?

2015年に公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、本編の多くがカーチェイスに費やされ、斬新なデザインのオリジナルカーが多数登場しました。原型がわかりにくいものもありますが、ベースにされた市販車を紹介します。

ギガホース(キャディラック・ドゥビル)

キャディラック・ドゥビルのエクステリアキャディラック・ドゥビルのセダン(1959年モデル)

キャディラック・ドゥビル クーペのエクステリアキャディラック・ドゥビルのクーペ

イモータン・ジョーの愛車として登場するギガホースはキャデラック初代ドゥビルを2台重ねて製作。車名は「都市」を意味するフランス語で「デビル(悪魔)」ではない。全長5,715mm、車両重量約2.2t、6.4LのV8を搭載。劇中車は過給器付きのV8を2基積むという常軌を逸した構成で、上下に重ねたテールフィンがそのまま権力の象徴として機能している。1950年代のアメリカ車が持つ過剰な装飾を、そのまま独裁者の記号に転用したデザイン。

ウォー・リグ(シボレー・フリートライン)

タトラ815 タトラのエクステリアタトラ815 タトラはチェコの自動車会社

シボレー・フリートラインのエクステリアシボレー・フリートライン(1948年モデル)

モンスタートラック「ウォー・リグ」のベース車はタトラのタンカートレーラーとシボレー・フリートラインを合体させて製作。1941年生産開始だが、第二次世界大戦により生産延期期間あり。当時はシボレーで1番の高級車だった。走行部はチェコ・タトラ815の6輪駆動シャシーで、これに乗用車のキャブを載せた18輪の構成。悪路走破性に定評のあるタトラを土台にしたからこそ、砂漠での長距離撮影に耐えられた。

ドゥーフ・ワゴン(MAN・KAT I A1)

火炎放射器付きギターを掻き鳴らす「コーマ・ドゥーフ・ウォリアー」を乗せた楽器車。ベースはMAN製の8輪駆動軍用トラック「LKW 15t mil gl KAT I A1」で、車重は約15t、スーパーチャージャー付きV8を搭載。車体前面に組んだステージへ奏者を伸縮するゴム紐で吊り下げ、背面には巨大なスピーカーの壁と太鼓部隊を配置。戦闘中に軍を鼓舞するための音響兵器という位置付けで、撮影用車両も実際に音が出る設備を備えていた。

ニュークス・カー(フォード・デュース・クーペ)

フォード・デュース・クーペのエクステリアフォード・デュース・クーペ(1934年モデル)

フォード・5ウィンドウ・クーペのエクステリアフォード・5ウィンドウ・クーペ(1932年モデル)

『怒りのデス・ロード』でマックスが括り付けられたニュークス・カーのベースはフォード・デュース・クーペ。「デュース」は1932年式フォードを指す呼び名で、ホットロッド文化における最も定番の素材。青春映画『アメリカン・グラフィティ』の劇中車としても知られる。同じ素材でありながら、こちらは片側にマックスを縛り付けた「輸血袋つきの戦闘車」として仕上げられており、素材の選び方より使い方で世界観を作る好例。

ビッグフット(ファーゴ・トラック)

ファーゴ・トラックのエクステリアファーゴ・トラック(1939年モデル)

タイヤが大人の背ほどもあったモンスタートラック・ビッグフットは、米国トラックメーカー・ファーゴが1930年代後半~1940年代頃に生産したトラックがベース。ファーゴはクライスラー傘下のブランドで、ダッジ製トラックのバッジ違いとして世界各国へ供給されていた。丸みを帯びた戦前のキャブに巨大なオフロードタイヤという不釣り合いな組み合わせが、荒野の異形感を強めている。

プリマス・ロック(プリマス・セダン)

プリマス・セダンのエクステリアプリマス・セダン(1938年モデル)

ハリネズミを思わせるトゲトゲの車「プリマス・ロック」のベース車は、1930年代頃のプリマス(プリムス)のセダン。プリマスのブランド創業は1928年。世界大恐慌の米国でも堅実な売り上げで、クライスラー社を支えた。車名はベース車名と、米国建国神話に登場する史跡「プリマス・ロック」を掛けたもので、劇中車のネーミングには言葉遊びが多い。

クランキー・フランク(ホールデン50-2106)

クランキー・フランクのエクステリアマッドマックス劇中車として購入される前のクランキー・フランク

ホールデン50-2106クーペのエクステリアベース車ホールデン50-2106クーペユーティリティ

巨大スーパーチャージャーを搭載したクランキー・フランクは、ホールデン50-2106がベース。『マッドマックス』のために製作されたわけではなく、豪州の農場主が趣味でカスタムしていた車両を買い取った異色の劇中車。ベースは豪州で「ユート」と呼ばれる乗用車ベースの荷台付きモデルで、農場での実用と趣味性を兼ねた土着的な存在。作り込まれた個人のカスタムカーがそのまま世界観に馴染んだ点が、この作品の美術方針をよく表している。

『マッドマックス:フュリオサ』に登場した車両とベース車は?

2024年公開の『マッドマックス:フュリオサ』は『怒りのデス・ロード』の前日譚にあたり、全145台もの車両が登場します。美術を担当したコリン・ギブソンは前作から続投し、ジョージ・ミラー監督は「すべての車はそのキャラクターを象徴する」と語っています。物語が進むにつれて登場人物の車両が変化していく点が、この作品の見どころです。

ウォー・タンク(ケンワース900シリーズ)

フュリオサが製造に関わり、警護隊長ジャックが駆る大型トラック。ベースはアメリカ・ケンワースの900シリーズという重量級キャブトラックで、外装は光沢のあるステンレススチールとクローム仕上げ。車体にはイモータン・ジョーの物語が浅浮き彫りで施されている。『怒りのデス・ロード』のウォー・リグと同じ車両でありながら、こちらは製造直後という設定のため、あえて磨き込まれた質感で作られている。同じ乗り物の若い姿を見せることで、時間の経過そのものを演出した1台。

ディメンタスのチャリオット(ロテック製航空エンジン+BMW R18)

ディメンタス将軍が序盤に乗る、3台のバイクに戦車を牽かせる異形のマシン。中央のバイクはロテック製7気筒星型航空エンジン「R2800」を横向きに搭載したもので、その左右をBMW R18が挟む構成。無人の3台を手綱のように操りながら戦車部分を操縦するという設計は、1920年代にオーストラリアやヨーロッパで行われていたモーターサイクル・チャリオットレースから着想を得ている。後部には演説用のマイクとスピーカーまで備わり、支配者としての演出装置が組み込まれている。

シックス・フット(シボレー454ビッグブロック搭載の6輪トラック)

より多くの燃料と兵力を手にしたディメンタスが乗り換える、牽引トラックと合体した6輪のモンスタートラック。シボレーの454ビッグブロックV8を搭載し、レイジーアクスル方式によって積載状態でも悪路を走破できる構成。チャリオットからこの巨体への乗り換えが、そのまま権力の肥大を示す仕掛けになっている。バイク3台の危うい機動力から、力任せの物量へ。乗り物の変化だけで人物の変質が伝わる作りは、シリーズ全体を通じた手法。

マッドマックスの車は「ラットロッド」と呼ばれるカスタムが施されている

ラットロッドとは、サビ加工などを施して、車両を古く使い込んだように見せるカスタム手法の1つです。発祥はアメリカで、基本は戦前のクラシックカーなど古い車をベースにしますが、新車にあえて錆びたような塗装を施して楽しむケースもあります。

『怒りのデス・ロード』には一般人がカスタムしたラットロッド車両も登場

ラットロッドの車両ラットロッドされた車両

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に登場したホールデン50-2106ベースのクランキー・フランクは、劇中車として製作されたものではなく、ラットロッドを趣味にしていた一般人のクルマを買い取ったものです。

『マッドマックス』シリーズに登場する劇中車の多くは、ラットロッドすることで荒廃した世界のクルマとして違和感なく映像に溶け込んでいます。マッドマックスには奇抜なデザインの車両が多く登場しますが、劇中車としての存在感をより増すためにも、ラットロッドは効果的な方法です。

「ホットロッド」と呼ばれるクラシックカーのカスタムとも親和性がある

アメリカには、ラットロッドの他に、「ホットロッド」と呼ばれるカスタム手法もあります。ホットロッドは、主に戦前のクラシックカーに、現代車の強力なエンジンを乗せ換えたり、車高を上げたり、屋根をとったりなど外見を大きく変更するカスタムカーのジャンルです。

ラットロッドもホットロッドも、ともに戦前クラシックカーをベースにすることが多く、ラットロッドはホットロッドの一種とみなされるケースもあります。
しかし、ホットロッド車がピカピカに磨きあげられることが多いのに対し、ラットロッドはあえてボロ車を作る、オンボロっぽさを演出する点が大きな違いといえるでしょう。

錆を「作る」ための手法と、劇中車が実車である意味

ラットロッドの錆は放置して自然にできたものばかりではなく、酸性の溶液や塩水を使って短期間で腐食を進める手法が用いられます。上からクリア塗装を施して進行を止めるのが一般的で、見た目はボロボロでも構造は健全という車両が多いのが実際のところです。

マッドマックスの劇中車がCGではなく実車で作られているのは、この質感が理由のひとつです。砂と光を浴びた錆や砂埃の付き方、走行中の車体のたわみといった情報量は、実物を走らせなければ画面に出てきません。撮影終了後、『怒りのデス・ロード』で使われた車両の一部は2021年にオークションへ出品され、ウォー・リグやドゥーフ・ワゴンを含む13台がコレクターの手に渡っています。

『マッドマックス』は終わらない!ジョージ・ミラーが描く続編の行方

マッドマックスの車

2015年に30年ぶりの続編として制作された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。第88回アカデミー賞ではアクション映画としては異例の作品賞候補となり、最多10部門ノミネートのうち6部門を受賞。興行的にも大成功という素晴らしいカムバックを果たしました。

2024年5月には前日譚『マッドマックス:フュリオサ』が公開され、シリーズは第5作を数えます。批評面での評価は高かった一方で興行成績は伸び悩み、以降の企画は足踏みが続いてきました。

マックス本人を主役に据えた『Mad Max: The Wasteland』は、『怒りのデス・ロード』の直前1年間を描く物語として長く構想されてきた作品です。2026年時点では、ジョージ・ミラー監督がワーナー・ブラザースを離れて新たな出資先を探しており、最後の1作とテレビシリーズを手掛けたうえで権利を手放す構想を持っていると報じられています。荒野の物語がどのような形で続くのか、そして次はどんな改造車が走るのか、続報を待ちたいところです。