映画『キャノンボール』1~3に登場した車20選
『キャノンボール』は、アメリカ大陸を市販車で横断する公道レースを舞台に、豪華キャストがハチャメチャなやり取りを繰り広げるカーアクション映画です。
1981年に公開されると日本でもヒットを記録し、1984年には続編『キャノンボール2』、1989年には『キャノンボール3 新しき挑戦者たち』が公開されました。
『キャノンボール』シリーズ1~3に登場した、印象的な劇中車を画像つきで解説します。
映画は笑えて楽しいコメディですが、豪華スターたちが搭乗した車はどれも名車揃いです。
映画の元になった実在の公道レース「キャノンボール」とは
この映画がただのコメディで終わらないのは、下敷きに実在のレースがあるからです。1970年代のアメリカで5回開催された「キャノンボール・ベイカー・シー・トゥ・シャイニング・シー・メモリアル・トロフィー・ダッシュ」がそれにあたります。
発案したのは自動車雑誌『カー・アンド・ドライバー』の編集者ブロック・イェーツと同僚のスティーブ・スミス。全米で導入されつつあった速度制限への抗議という意味合いを持ち、ニューヨークからカリフォルニア州レドンドビーチのポルトフィーノ・インまで約2,900マイル(約4,600km)を走り切るタイムを競いました。当然ながら非公認かつ違法な催しで、1979年を最後に開催されていません。
最初の走行は1971年5月、イェーツらがダッジのバン「ムーン・トラッシュII」で行ったものでした。作中で救急車が走り回るのも偶然ではなく、1979年の開催でイェーツは映画の監督を務めることになるハル・ニーダムと組み、ダッジのバンを救急車に仕立てて出走しています。患者役を乗せて検問を切り抜けるという発想が、そのまま脚本になったわけです。脚本もイェーツ本人が手がけました。
そしてこのレースの最速記録は、1979年にジャガーXJ-Sが記録した32時間51分。『キャノンボール3』でカウンタックと張り合うXJ-Sは、実際の記録車と同じ車種ということになります。劇中車の顔ぶれを知ったうえで見返すと、ネタの拾い方が細かいことに気づかされます。
『キャノンボール』に登場した車~オープニングのカウンタックがかっこよすぎ!
1981年公開『キャノンボール(英題:The Cannonball Run)』には、アクション俳優ジャッキー・チェン、ボンド俳優ロジャー・ムーア、名優バート・レイノルズなどの豪華スターが出演しています。
オープニングはカウンタックとパトカーのカーチェイスシーンからはじまりますが、これ以降カウンタックの冒頭カーチェイスは、シリーズ全体のお約束となりました。
ランボルギーニ・カウンタック LP400S
『キャノンボール』に登場した漆黒のカウンタックLP400S
美女コンビの愛車。1の劇中車は総生産台数237台のLP400S(1979年モデル)。カナダの実業家でF1チームのオーナーでもあったウォルター・ウルフが特注した「ウォルター・ウルフ・カウンタック」から大きなヒントを得ており、幅広のピレリP7を履くためのオーバーフェンダーと、大型リアウイングがその名残だ。オリジナルのLP400と並べると、目の前にしたときの迫力がまったく違う。空気抵抗はむしろ増えているが、この映画が世界に焼き付けたカウンタック像はこの形である。
ダッジ・トレーズマン(ラムバン)救急車仕様
ダッジ・トレーズマン1972年モデル
バート・レイノルズとドム・デルイーズが演じた「救急車コンビ」搭乗車種。トレーズマンはフルサイズバンの貨物モデルを指し、1970年代に米国で大ヒットした。カスタムを楽しむ「ストリート・バン」のベース車としても人気を集めている。ラダーフレームではなくユニボディに近い構造ながら、V8とトルクフローATを積める余裕があり、改造の自由度が高かった。実際のレースでイェーツらが使ったのも同じダッジのバンで、この一台はシリーズの出発点そのものだ。
フェラーリ・308GTS
フェラーリ・308GTS(1975~1985年)
1979年モデル308GTSのリヤ
ニセ神父コンビの愛車。3.0LのV8をミッドシップに積み、ルーフパネルを外して後方に収納できるタルガトップを持つ。フルオープンではなくBピラーが残る構造のため、クーペに近い剛性を保てるのが利点だ。「ミスター・フェラーリ」レオナルド・フィオラヴァンティによる美しいデザインとハイトーンなエキゾーストノートが魅力で、同時期に放送された『私立探偵マグナム』の影響もあり、1980年代のアメリカでもっとも知られたフェラーリになった。
アストンマーティン・DB5
アストンマーティン・DB5 『キャノンボール』劇中車も特殊装備あり
ロジャー・ムーア演じる、ロジャー・ムーアの「そっくりさん」の愛車。1963~1965年に生産されたDB5は4.0L直6を積むグランツーリスモで、ボディはスーパーレッジェーラ工法によるアルミ外板。有名なボンドカーだが、実はロジャー・ムーアは007シリーズ内でDB5はおろか、アストンマーティンにさえ乗ったことがない。乗っていない俳優が本人役でボンドカーに乗るという、この映画らしい楽屋落ちである。
スバル・レオーネ 4WDモデル
レオーネ(1984年モデル)
『キャノンボール』日本人コンビ(ジャッキー・チェンだけど)の搭乗車種。北米向けのレオーネで、劇中車には「4WD」と描かれているのが確認できる。当時の北米では四輪駆動といえばピックアップかジープ型のSUVが常識で、乗用車の四輪駆動は珍しい存在だった。スバルはこの珍しさを武器に降雪地帯で足場を築いており、スーパーカーが並ぶ中に実用ハッチバックが混ざる構図は、実は当時のアメリカ市場を映してもいる。
ロールス・ロイス・シルヴァーシャドウ
ロールス・ロイス初のモノコックボディを採用したシルヴァーシャドウ
切り立ったシルヴァーシャドウのリアウィンドウ
『キャノンボール』1と2に登場するファラフェル王家の車。1965~1980年生産で、ロールス・ロイス初のモノコックボディを採用した。切り立ったリアウィンドウは、後席の頭上空間を確保するための造形である。6,750ccのV型8気筒エンジンを搭載し、車両重量は2tを超える。シトロエンからライセンスを受けたハイドロニューマチック式のブレーキ機構を持ち、この時代のロールス・ロイスとしては技術的な転換点にあたる1台だ。
シボレー・マリブ
シボレー・マリブ(1979年)
プールに飛び込んだ際の劇中車と同じカラーリング
「マリブ」は1964年から販売されているシボレー・シェベルの上級グレードの名前だが、1978年に独立車種となった。アメリカのストックカーレースNASCARでも活躍しており、劇中車もそれを模して日焼け止めローション「HAWAIIAN TROPIC」のロゴをまとう。NASCARの車両は市販車と名前を共有するだけの別物で、鋼管フレームにボディの形を被せた構造だ。派手なスポンサーカラーのまま公道レースへ出るという発想が、この映画のノリをよく表している。
ポンティアック・ファイヤーバード・トランザム
ボディカラーが『キャノンボール』劇中車に近い1981年式トランザム
映画『トランザム7000』の劇中車にもなったファイヤーバード・トランザム(1977年)
オープニングでカウンタックとカーチェイスを繰り広げたのは、ポンティアック・ファイヤーバードの上級グレード「トランザム」。劇中車は第二世代で、1977年に初めて採用したフロント4灯式が個性的で、日本では「イーグルマスク」の愛称も持つ。バート・レイノルズ主演の『トランザム7000』シリーズで一躍アメリカの人気車となった経緯があり、同じレイノルズが出る本作に登場するのは自然な流れだ。ボンネットを覆う巨大な鳥のデカールは、間近で見るとフェンダーまで届く大きさがある。
『キャノンボール2』の車~ジャッキー・チェンは三菱スタリオンに乗って登場!
1984年公開『キャノンボール2(英題:The Cannonball Run II)』は、『キャノンボール』の続編であり、前回レースの翌年という設定になっています。
一部キャストが続投しており、カウンタックやロールス・ロイス・シルヴァーシャドウなどの車もモデルや年式違いで再登場しているのが特徴です。
日本人にとっては、ジャッキー・チェンが乗っていた三菱スタリオンが特に印象深い1台なのではないでしょうか。
ランボルギーニ・カウンタック LP500S
カウンタック LP500S(1982~)
『キャノンボール』に欠かせないスーパーカー。1ではLP400Sに乗っていた美女コンビは、2ではLP500Sに搭乗する。総生産台数323台で、V12エンジンの総排気量は4,754ccまで拡大された。排気量アップの狙いは最高出力より低回転域のトルク確保にあり、LP400よりも扱いやすくなっている。劇中では白から赤へのボディカラーチェンジが見られた。
三菱・スタリオン
スタリオン 三菱では数の少ないリトラクタブル・ヘッドライト搭載車
三菱スタリオンのリヤ
1982~1990年生産のFRスポーツカー。ジャッキー・チェンとリチャード・キールが演じた「三菱チーム」の愛車で、忍者作戦で空へ垂直に上昇し、文字通りの火を噴く加速を見せ、潜水機能まで備えて「さすがハイテクジャパンだな」のセリフをちょうだいする。実車は2Lターボの「シリウスDASH」を積み、北米ではクライスラー系ブランドを通じてコンクエストの名でも売られた。当時の日本車が北米で技術力の象徴として扱われ始めた空気が、この配役に表れている。
メルセデス・ベンツ・300SL
300SL市販型クーペ 車名は「3.0L Sport Leicht」の意味
「世界一過酷」といわれたカレラ・パナメリカーナ・メヒコで優勝した300SL
ランボルギーニの美女コンビが乗り換えた車。1954年にガソリン直噴エンジンとガルウィングドアを市販車として世界で初めて採用した。ガルウィングは奇をてらったものではなく、鋼管スペースフレームがドア開口部の下側を塞いでいたための解決策である。1952年にはプロトタイプがメキシコ縦断公道レース「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」で鳥と衝突し窓ガラスを破損しながらも優勝した。公道長距離レースを題材にした本作に、そのレースを制した車が出てくるという並びになっている。
インペリアル・リムジン
1981~1983年に生産されたインペリアル
「インペリアル」はクライスラーが保有していた高級ブランド。1955年に独立ブランドとなり、1975年にいったん廃止されたのち、1981~1983年に一時復活した。この復活版は2ドアのパーソナルクーペで、フレームレスの造形と電子制御燃料噴射を備えたものの、販売は伸びず3年で姿を消している。『キャノンボール2』では米国陸軍コンビの搭乗車として登場する。
シボレー・コルベット
C4コルベット(1983~1996年)
ニセ警察官コンビは、『キャノンボール2』公開前年の1983年に発売されたC4コルベットに搭乗する。「コーク・ボトル」と呼ばれたC3に対して、ヨーロピアン調のスタイルが特徴だ。ほぼ前後均等の重量配分と、歴代コルベットで当時最良の空力特性を達成している。ドアを開けるとサイドシルまで大きく開く「クラムシェル」構造のフロントフードとともに、設計が根本から作り直された世代だと伝わってくる。
キャデラック・フリートウッド
キャデラック・フリートウッド リムジン1974年モデル
キャデラック・フリートウッド シリーズ75
オラウータンが運転手を務めていたのはGMの高級ブランド・キャデラックのリムジン。撮影用にフロントガラスやフロントルーフが取り外せるよう大幅改造されている。ベースとなったシリーズ75は全長6mを超える正式なリムジンで、後席との間に仕切りガラスを備える。お猿の声を演じたフランク・ウェルカーは「Voice Acting God(声優の神様)」と呼ばれる人物だ。
ポルシェ・928
ポルシェ928の初期モデル
ライトを稼働させたところ ポルシェ928 S4
『キャノンボール2』でスタート時に潰された不憫な車。1977~1995年生産で、水冷V8をフロントに積みトランスミッションを後方へ置くトランスアクスル方式のFRである。大きなハッチゲートを備えた実用性の高さから、スポーツカーとして唯一、欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。ポップアップ式ヘッドランプは格納時にレンズが上を向いたまま収まる独特の構造で、作動させると印象が大きく変わる。
ダッジ・デイトナ
ダッジ・デイトナ ターボZ 1985年モデル
『キャノンボール2』で本人役として登場したフランク・シナトラが乗っていた車。1984~1993年生産で、販売当初のラインアップは2.2L直4と直4ターボのFFレイアウトだった。同時代のアメリカ車が大排気量V8から小排気量ターボへ舵を切っていく流れを象徴する1台で、クライスラーのKプラットフォームを土台としている。ムスタングやカマロと同じ土俵に前輪駆動で挑んだ点が、当時としては挑戦的だった。
ダッジ・セントレジス
1979~1981年販売セントレジス
『キャノンボール2』でカウンタックを追いかけたパトカーの1台。1979~1981年と短命だが、米国ではV8エンジン搭載モデルが実際にポリスカーとして活躍していた。角型2灯を格子で覆った独特の顔つきを持ち、映画やテレビでカースタントに用いられて壊された結果、現存車は多くない。パトカー役として消費された車という意味で、『キャノンボール』の世界観そのものを背負った1台といえる。
『キャノンボール3新しき挑戦者たち』の車~BMWやジャガーの名車が登場!
1989年『キャノンボール3新しき挑戦者たち』は、制作会社やキャストが大幅に異なり、アメリカでは『Speed Zone!』というタイトルで公開されました。
そのため、やや印象は異なりますが、シリーズ1と2の続編には違いなく、舞台は変わらず公道レース「キャノンボール」。はちゃめちゃなコメディ&カーアクションは健在です。
BMW735i
E32型BMW735i(1987~1992年)控えめなキドニーグリル
BMW735iのリヤ
BMW7シリーズの2代目にあたるE32(1986~1994年)。1987年には戦後のドイツ車として初めてV12を積む750iを設定し、メルセデス・ベンツに先んじて12気筒の高級セダンを世に出した。『キャノンボール3』の劇中車は3,430ccの直6モデル735iで、M30型は堅牢さで知られる長寿エンジンだ。V8やV12モデルとはキドニーグリルの大きさが異なり、間近で見ると直6モデルのグリルはかなり控えめに映る。
ジャガーXJ-S
ジャガーXJ-S(1975~1996年)画像は初期の1978年モデル
ジャガーXJ-S(1988年)
『キャノンボール3』でカウンタックと勝負したのはジャガーXJ-S。Eタイプの後継として1975年に登場し、当時は5,343ccのV12を搭載して最高速240km/h以上、最高出力285hp/5,500rpmを発生した。日本仕様は排ガス規制のためスペックが異なる。美しさで勝負したEタイプに対し、XJ-Sは長距離を高速で流すグランツーリスモへ性格を振っており、冒頭で触れた1979年のキャノンボール最速記録車と同じ車種でもある。劇中の起用は、シリーズを知る人ほど納得できる配役だ。
フェラーリ・365GTS/4
マイアミ・バイスで用いられたレプリカ 『キャノンボール3』では外観の完成度が高められた
本物のフェラーリ・デイトナ・スパイダー
フェラーリ・デイトナ・スパイダー。クーペの365GTB/4が1,284台生産されたのに対し、スパイダーの365GTS/4は122台と数が少ない希少車である。4.4LのV12をフロントに積み、0-60mph加速5.4秒という当時世界最速級の動力性能を持つ。『キャノンボール3』で使われたのは本物ではなく、ドラマ『マイアミ・バイス』のレプリカ(コルベットがベース)を流用したもの。本物を潰せない価格帯に達していたことが、レプリカ使用の背景にある。
『キャノンボール』はゆるさが魅力の楽しいカーアクション映画!

『キャノンボール』『キャノンボール2』『キャノンボール3新しき挑戦者たち』は、笑いたいとき、頭をからっぽにして映画を楽しみたいときにもってこいの作品です。
批評家からは酷評されたこともありますが、一方で作品独特の「ゆるさ」を好意的に捉えるファンが多いのも事実。
劇中車を並べ直すと、イタリアのスーパーカー、ドイツの高級セダン、アメリカのフルサイズバン、そして日本のスポーツカーが同じレースに出ています。1980年代前半という、アメリカ市場に世界中の車が流れ込んでいた時期の空気が、そのまま記録されているといえます。
今なら1980年代の雰囲気が感じられて、ノスタルジックな気分にも浸れます。オープニングのカウンタックの疾走シーンは必見です。
























