トヨタ・グランビアの現在地 台湾とタイでは販売継続、日本仕様のグランエースは2024年に生産終了
2019年5月21日に台湾で発表され、17年ぶりに車名が復活したトヨタ・グランビア。海外向けハイエース(H300系)をベースにした全長5.3mの高級ミニバンは、その後オーストラリア、タイ、そして日本へと広がりました。2026年時点でも台湾とタイでは現行モデルとして販売が続いています。
一方、日本の読者にとって最も重要な結論はこうです。グランビアは日本へ「グランエース」の名で2019年12月16日に導入されましたが、その日本仕様は2024年4月をもって生産を終了し、現在は新車で購入できません。オーストラリアでも2025年2月に販売を終えており、生き残っているのは台湾(グランビア)とタイ(マジェスティ)です。
ここでは、2019年の登場から今日までに何が起きたのかを新しい順に整理し、そのうえで当時のグランビアがどんなクルマだったのかを振り返ります。なお、正式発表がない事柄については断定を避け、見立てとして記しています。
後継はどうなるのか いなべ工場の商用車専用化が示す次の一手
グランビアそのものの次期型は、2026年時点で正式発表がありません。ただ、後継を占ううえで無視できない確定事実があります。トヨタ車体は2025年6月27日、グランビア/グランエースを生産してきたいなべ工場(三重県いなべ市)を商用車専用工場とすると発表しました。同工場で作ってきたアルファード/ヴェルファイアは2027年末をめどにトヨタ自動車の田原工場へ移管され、いなべ工場はハイエースと、同社が開発を進める「次世代商用バン」に集中します。
この次世代商用バンは、用途に応じて定員・積載量・駆動方式・パワートレインを選べる商用車専用の新プラットフォームを採用する見込みです。現行ハイエース(200系)が2004年8月発売で20年以上を経ていることを踏まえると、次期ハイエースは2027年前後に登場する方向とみられます。TNGA系プラットフォームの採用と、現行のキャブオーバーからセミボンネットへの転換が有力視されており、それが実現すれば、グランビアが先取りしていたセミボンネットのパッケージがハイエース本体へ引き継がれる形になります。
つまりグランビアの役割は、独立した後継車ではなく、次世代ハイエース系のなかの上級ワゴンとして吸収される可能性が高いとみています。日本で「グランエース」の車名が再び使われるかどうかは未知数ですが、フルサイズの送迎需要そのものは消えていません。インバウンドの回復を考えれば、上級ワゴンの空席は埋められる余地があると考えます。
2026年 台湾で新年式へ移行し、6人乗り・9人乗り旗艦が196.9万台湾ドルへ値下げ
台湾のグランビアは2026年に新年式へ切り替わりました。政府の貨物税減免に合わせて総代理店の和泰汽車が価格と装備を見直し、6人座旗艦と9人座旗艦の希望小売価格を従来の207.1万台湾ドルから196.9万台湾ドルへ引き下げています。あわせて8人座旗艦にはToyota Safety Sense(TSS)が無償で追加され、PCS(プリクラッシュセーフティ)、DRCC(レーダークルーズコントロール)、LDA(車線逸脱警報)、AHB(オートハイビーム)が備わりました。
現行ラインナップは6人乗り・8人乗り・9人乗りの3構成で計5型です。エンジンは変わらず1GD-FTV型2.8Lディーゼルターボ、最高出力176.8PS/3,400rpm、最大トルク45.9kgm/1,600〜2,400rpm、アイシン製6速ATとの組み合わせです。
| 8人座豪華 | 175.2万台湾ドル |
|---|---|
| 8人座旗艦 | 189.9万台湾ドル(TSSを無償追加) |
| 6人座旗艦 | 196.9万台湾ドル(値下げ) |
| 9人座旗艦 | 196.9万台湾ドル(値下げ) |
| 9人座頂級 | 199.3万台湾ドル |
台湾では2019年の上市以来、商務送迎や観光の送り迎えを担う定番として支持されてきました。日本仕様が姿を消したあとも、台湾が実質的な主戦場として残っている格好です。
2025年 オーストラリアで販売終了、タイのマジェスティはMY2025へ改良
2025年2月、トヨタ・オーストラリアがグランビアの販売終了を発表しました。理由は2つあります。ひとつは2025年3月1日に施行された新たな豪州設計規則ADR 98/00への対応で、これを満たすための改修を見送ったこと。もうひとつは需要そのものの縮小で、同社によればミニバン(ピープルムーバー)はオーストラリア新車市場の1%にすぎず、購入層はSUVへ流れていました。2024年の販売は117台、2019年後半の導入以来の累計購入者は999人にとどまっています。最終納車は2025年3月で、エスティマの現地名だったタラゴから続いたトヨタのミニバンの系譜は、ここでいったん途切れました。
一方タイでは、2025年10月2日にマジェスティのMY2025が発表されています。全グレードに電動パーキングブレーキとオートブレーキホールドを追加し、上級のGrandeにはデジタルルームミラーを装備。価格はPremiumが1,994,000バーツ、Grandeが2,339,000バーツです。注目すべきは、日本仕様の生産が終わった後もマジェスティが日本からの完成車輸入(CBU)で供給され続けている点で、いなべ工場の生産そのものは輸出向けに続いていることを示しています。
2024年 日本のグランエースが4月に生産終了、タイのマジェスティはEURO5へ
日本市場にとって決定的だったのが2024年です。年初には、1GD型ディーゼルエンジンをめぐる豊田自動織機の認証手続き問題が波及しました。2024年1月29日の国土交通省への報告を受けて対象エンジン搭載車の出荷が止まり、グランエースもその対象に含まれます。その後の検証で基準適合が確認され、2月27日に出荷停止指示が解除、3月4日から生産・出荷が再開されました。
しかし再開は長く続きませんでした。グランエースは2024年4月をもって生産を終了し、トヨタが公式サイトでそれを告知したのは半年後の2024年10月23日のことです。約5年間の累計販売は約3,000台。月販目標600台/年に対して、決して成功と呼べる数字ではありませんでした。2023年にアルファード/ヴェルファイアが40系へ刷新され、レクサスLMが日本導入されたことで、多人数乗車の上級モデルの選択肢が一気に増えたことも逆風になったと考えます。
同じ2024年5月、タイではマジェスティが改良を受けています。2.8LディーゼルをEURO5に適合させたうえで、シートレイアウトを2+3+2+4の11人乗りへ変更(1列目を2名+センターコンソール、2列目を中央席の折りたためる3名に)。8インチタッチスクリーンとワイヤレスApple CarPlayを採用し、Standard ATを廃止して2グレード構成に整理しました。価格は9万〜13万バーツ上昇し、Premium 1,989,000バーツ、Grande 2,329,000バーツとなっています。
2023年 グランエースの一部改良と、台湾のグランビア福祉車
2023年10月、グランエースは一部改良を受けました。標準装備の8インチディスプレイオーディオが「ディスプレイオーディオ(コネクティッドナビ対応)Plus」へ変更され、これに伴いディスプレイ周辺の操作スイッチは電源のオン/オフと音量調整のみに整理されています。この改良後の価格はPremiumが6,721,000円、Gが6,421,000円でした。結果としてこれが日本仕様の最後の商品改良となります。
同年11月2日には、台湾で2024年式グランビア福祉車が発売されました。イタリア製ONDA OW1060の双腕式電動リフトを備え、二段階リフトと重量感知機能で車いす乗降の負担を抑える仕様です。長期介護(長照2.0)政策を背景に台湾の福祉車両市場が拡大していることを受けたもので、和泰汽車はこのとき、2019年の上市以来のグランビア累計販売が2,500台を超えたことも明らかにしています。
2022年 台湾で8人乗りを追加、オーストラリアは改良型へ 中国では同名の別車種が登場
2022年3月15日、台湾で8人乗り「8人座豪華」が追加されました。予約価格は169.9万台湾ドルで、それまでの6人乗り・9人乗りに8人乗りが加わり、荷室を確保しつつ多人数を運べる構成が揃います。空港送迎や貸切観光、三世代同居の家族層が狙いでした。同時にラインナップも再編され、9人座豪華が廃止、6人座豪華は177.9万台湾ドル、9人座頂級は183.9万台湾ドル、6人座旗艦・9人座旗艦は193.9万台湾ドルへと4万台湾ドルずつ引き上げられています。
オーストラリアでは2022年8月16日に改良型が発表・発売され、快適装備を中心に手が入りました。翌2023年にも運転席パワーランバーサポートの標準化などの改良が続いています。
もうひとつ、2022年末には紛らわしい出来事がありました。中国の一汽トヨタが「グランビア(格瑞維亞)」の名を持つMPVを発売したのですが、これは本記事が扱うハイエース派生のグランビアではなく、シエナの姉妹車にあたる別物です。検索で情報が混在しやすいため、注意が必要です。
2021年 グランエースが初の一部改良
2021年6月28日、グランエースは発売後初の一部改良を実施しました。内容は助手席への可倒式ヘッドレストの装備と、運転席側肩口へのパワーシートスイッチの追加です。後席のゲストが前方視界を確保しやすくなる、送迎用途を意識した細やかな変更でした。派手さはありませんが、この車がどんな使われ方を想定していたかがよく分かる改良といえます。
なお同年には、グランエースをベースにした燃料電池(FCV)の実験車両が1台だけ製作されたことも報じられています。市販化には至っていません。
2019年12月 日本導入は「グランエース」として実現 価格は620万円と650万円
本記事がかつて「噂」として扱っていた日本導入は、実現しました。トヨタは2019年10月8日の東京モーターショーでトヨタ車体ブースにプロトタイプを展示し、11月25日に正式発表、12月16日に「グランエース」として発売しています。予想されていた車名候補のうち「グランドハイエース」ではなく「グランエース」が採用された形です。
グレードは3列シート6人乗りの「Premium」と、4列シート8人乗りの「G」の2本立て。台湾やタイのような9人乗り・11人乗りは設定されませんでした。当時の本記事は「日本導入時は普通免許で運転できる10名定員に変更されるだろう」と予想していましたが、実際にはさらに絞り込んだ6人/8人乗りで登場しています。
| Premium(3列6人乗り) | 6,500,000円 |
|---|---|
| G(4列8人乗り) | 6,200,000円 |
| 販売目標 | 600台/年 |
| 生産工場 | トヨタ車体 いなべ工場 |
ボディサイズは全長5,300×全幅1,970×全高1,990mm、ホイールベース3,210mm。それでいて最小回転半径は17インチタイヤ装着時で5.6mに収まっています。パワートレインは1GD-FTV型2.8Lクリーンディーゼルと6速AT(6 Super ECT)で、WLTCモード燃費は10.0km/L。台湾仕様と異なり、日本仕様はDPRに加えて尿素SCRシステムを併用し、ポスト新長期規制に適合していました。全車がトヨタ全店併売で、Toyota Safety Senseやパーキングサポートブレーキ、デジタルインナーミラーを標準装備しています。
ただし販売は伸びませんでした。2019年12月の登録は40台、2020年1月は101台。展示車も試乗車も潤沢とはいえず、受注がまとまった時点で組み立てる方式だったため、2020年3月時点で納期は4か月待ちという状況でした。全長5.3m・全幅1.97mという体格が、日本の道路事情と真正面からぶつかった結果ともいえます。生産終了後も中古車は流通しており、2026年時点の平均本体価格は600万円台前半で推移しています。
2019年に登場した2代目グランビアはどんなクルマだったのか
ここからは、台湾で発表された当時の2代目グランビアの中身を振り返ります。エクステリア、インテリア、パワートレイン、そして各国での展開は、基本的にこの時点から大きく変わっていません。
オーストラリアでのトヨタ・グランビアは2019年10月に発売された
台湾、タイと販売地域を広げたグランビアは、オーストラリアでも2019年10月に発売されました。
投入されたのは6人乗りのエントリーモデルで、パワートレインはハイエースと共通の排気量2.8L直列4気筒ディーゼルターボ。現地表記では最高出力130kW(176.8PS相当)/3,400rpm、最大トルク450Nm/1,600〜2,400rpmです。
価格はおよそ680万円から。トヨタ・タラゴ(日本名:エスティマ)と置き換えられ、タラゴよりも190万円ほどの価格アップとなりました。グレード構成は6人乗りに加えて8人乗りモデル(約720万円)、上位モデルのVX(約811万円)がラインナップしています。前述のとおり、このオーストラリア仕様は2025年2月に販売を終えました。
安全装備としてトヨタセーフティセンス(スイート)が搭載され、アダプティブクルーズコントロールやオートハイビーム、自動緊急ブレーキ、車線逸脱警報など多彩な先進システムが備わっています。
その他オートエアコンやキーレスエントリー、デュアルサイドスライディングドア、スマートフォン対応インフォテインメントシステムなどが標準装備されます。
グランビアはタイで「マジェスティ」の車名で発売された
2019年8月16日、タイのトヨタ自動車は高級ミニバン「マジェスティ(Majesty)」の発売を発表しました。タイでは「マジェスティ」の車名が付きましたが、台湾やオーストラリアで発売されている「グランビア」とほぼ同じ車です。
当時、日本のユーザーにとって朗報だったのが、タイで発売する「マジェスティ」は日本と同じ右ハンドルで、しかも製造も日本だという点でした。この一点が、のちの日本導入を強く示唆していたことになります。実際、マジェスティは2026年時点でも日本からの完成車輸入という形で供給が続いています。
「マジェスティ」は、タイで販売されていたハイエースの高級モデル「ベンチュリー」の後継にあたります。しかし、その品質はベンチュリーを大きく凌駕するもの。発売当初の価格は1,709,000バーツからで、Standard・Premium・Grandeの3グレード構成でした。タイでは、高級ミニバンはビジネスでの需要も多いと言われています。その後2024年5月の改良でStandardが整理されて2グレードとなり、2025年10月のMY2025では1,994,000〜2,339,000バーツまで上昇しています。
マジェスティのホイールベースは3,210mmで、これはグランビアと共通です。
パワーユニットは2.8Lの直列4気筒ディーゼルターボで、グランビアと同じ1GD-FTV型ですが、タイ政府が推奨するバイオディーゼル燃料を約20%混合したB20に対応しており、やや仕様やスペックが異なります。トランスミッションは6速ATです。2024年の改良ではこのエンジンがEURO5に適合させられました。
マジェスティのインテリアは、アルファード/ヴェルファイアにも負けない高級志向。本革シートで、2列目はマッサージ機能付きのキャプテンシートを採用しています。
グランビアは6人乗り・8人乗り・9人乗りが存在しますが、マジェスティは乗車定員11名のみの設定です。発売当初は3-2-2-4のレイアウトでしたが、2024年の改良で1列目を2名、2列目を3名とする2+3+2+4へ変更されました(定員11名は変わらず)。
なお当時、本記事は「日本導入時には普通免許で運転可能な10名定員に変更されるだろう」と予想していましたが、実際の日本仕様グランエースは6人乗りと8人乗りのみで、11人乗りも10人乗りも設定されませんでした。
ミャンマーで目撃されたデモカーは「HIACE SUPER GRANDIA ELITE」を名乗っていた
台湾トヨタとオーストラリアトヨタが発表した「グランビア」について、当時の日本では「グランドハイエース」または「グランエース」の車名で2019年10月頃に発売されるのではないか、という見方が広がっていました。結果としては車名が「グランエース」、発売は同年12月16日となり、車名の予想は当たり、時期は2か月ほど後ろにずれた形です。
東南アジアでは、デモカー(試乗車や展示車両)が時折目撃されていました。ミャンマーで目撃された個体のエクステリアは、フロントバンパーとリアバンパー、そしてサイドスカートにアイボリー系のカラーを採用。ベース車であるハイエース同様の2トーンカラー仕様となっています。
フロントマスクにはメッキを用いていますが、日本のアルファードやヴェルファイアのようなアグレッシブさはなく、比較的落ち着いた印象です。
リアは、大胆なL字型テールランプを採用していますが、すっきりとしていてフロントマスクとの一体感が感じられます。
興味深いのは、リアのロゴが「HIACE SUPER GRANDIA ELITE」だった点です。
市場ごとに車名を変えるこの車の性格がよく表れており、実際にオセアニア・台湾では「グランビア」、タイでは「マジェスティ」、日本では「グランエース」と、同じ車が3つ以上の名前で売られることになりました。知名度・ブランド力のある「ハイエース」の上級グレードとして扱う手法も、地域によっては採られていたわけです。
グランビアのエクステリアは大きなグリルが印象的で高級感のある風格をまとう
台湾トヨタが発表したグランビアは、迫力のあるメッキを用いた大きなグリルを採用していますが、アルファードやヴェルファイアのように押し出し感の強いデザインではなく、シンプルさも感じられます。ヘッドライトにはBi-Beam LEDが、フロント/リアのフォグランプにもLEDが採用されており、ブラックアウトされた造形で静かに高級感を主張しています。足元は17インチのアルミホイールです。
リアビューは視認性のいいLEDテールランプの形に合わせたメッキパーツを装備しており、後ろの見た目も高級感を持たせています。ボディサイズは全長5,300mm・全幅1,970mm・全高1,990mmの大型サイズで、日本のアルファードよりもひと回り大きいサイズ感になっています。ホイールベースは3,210mm、最小回転半径は台湾仕様で5.5mです。
| 全長 | 5,300mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,970mm |
| 全高 | 1,990mm |
| ホイールベース | 3,210mm |
アルファードよりも全高が高いサイズ感になっているため、座っていても開放感のある車内空間が広がっています。
グランビアの内装は6人乗りと9人乗りが基本で、のちに8人乗りも加わった
グランビアの内装はアイボリー調で高級感のあるデザインになっています。台湾仕様の6人乗りは2+2+2の3列、9人乗りは2+2+2+3の4列というレイアウトで、上級グレードには電動オットマンやシートヒーターも備わります。9人乗りの4列目は6:4分割で、倒す・畳む・前後にスライドさせるといった操作ができ、荷物の量に応じて空間を作れる仕様です。2022年3月には、荷室を確保しやすい8人乗りが追加されました。
両側スライドドアを装備していて、上級グレードでは電動スライドドアとなりBluetooth接続に対応した7インチオーディオを備えているため、ハンズフリーで電話することもできます。6人座旗艦と9人座旗艦にはナビゲーションとパイオニア製12スピーカー、DVDが備わり、それ以外のグレードは7インチのDrive+主機と6スピーカーという構成です。後席はキャプテンシートで中央通路が確保されているため、車内の移動も苦になりません。
サスペンションは、前輪がマクファーソンストラット、後輪が4リンク(トレーリングリンク車軸式)。貨物仕様のハイエースが後輪にリーフスプリングを用いるのに対し、グランビアは乗り心地を優先した設定で、最後列でも突き上げを感じにくくなっています。
グランビアのエンジンは2.8Lディーゼルでフル乗車でもパワフルな走行性能を持つ
グランビアに搭載されているエンジンは、1GDと呼ばれる2.8Lのディーゼルターボです。6人乗車+荷物を積載していてもパワー不足を感じることなく走ってくれます。台湾仕様は尿素フリー触媒とDPRの組み合わせにより、アドブルー(尿素水)の補充が不要な点が特徴です。ただし日本仕様のグランエースはDPRに加えて尿素SCRシステムを併用しており、アドブルーが必要でした。市場によって排出ガス処理の構成が違うため、混同しないよう注意が必要です。
グランビア搭載エンジン
- 型式:1GD-FTV
- 種類:ディーゼルターボ
- 排気量:2.8L
- 最大出力:176.8PS/3,400rpm
- 最大トルク:45.9kgm/1,600〜2,400rpm
- 駆動方式:FR
トランスミッションはオートマチックで、ギアにはアイシン製の6速が搭載されています。安全装備にはグレードによってDRCC(レーダークルーズコントロール)やLDA(レーンディパーチャーアラート)などのトヨタセーフティセンスも備わり、ドライバーの負担を軽減してくれます。なお中東仕様には、ディーゼルではなく3.5L V6ガソリンの7GR-FE型が用意されていました。
台湾のグランビアの価格帯は2019年の予約時点で174.9万台湾ドルからだった
2019年5月21日の発表時、台湾では5グレードの予約価格が公表されました。6人座豪華が174.9万台湾ドル、6人座旗艦が186.9万台湾ドル、9人座豪華が179.9万台湾ドル、9人座頂級が180.9万台湾ドル、9人座旗艦が187.9万台湾ドルで、正式発売は同年8月です。本記事は当初「500万円〜700万円後半になるだろう」と見ていましたが、実際にはもう少し狭い価格帯に収まりました。
最上級グレードでは、レザーのアームレスト付きキャプテンシート、後席1列目・2列目の電動オットマンなど、リラックスできる装備が並びます。ほかにはパイオニアのスピーカーを12個使ったサラウンドシステム、純正ナビ、RCTA(後方車両接近警報)やBSM(ブラインドスポットモニター)、PVM(環視モニター)を備え、さらに安心感のある運転ができます。前述のとおり、2026年の新年式では貨物税減免を受けて6人座旗艦・9人座旗艦が196.9万台湾ドルへ引き下げられました。
まとめ グランビアの日本導入は実現したが、グランエースは5年で幕を閉じた
台湾で発表されたグランビアは、6人乗りから9人乗りまでを揃え、送迎のほかに個人のレジャーや旅行にも使いやすいクラスのミニバンでした。2.8Lディーゼルによるパワフルな走りと、アルファードを上回る室内空間は、いまも色あせていません。
本記事はかつて「台湾では左ハンドルのため日本発売の可能性は低い」と見ていましたが、この予想は外れました。日本仕様は右ハンドルでトヨタ車体いなべ工場で生産され、2019年12月16日に「グランエース」として620万円・650万円で発売されています。予想が外れた理由は明快で、そもそもこの車は当初から右ハンドル市場(タイ・オーストラリア)向けに日本で生産されており、台湾仕様の左ハンドルは市場に合わせた派生でしかなかったためです。一方、「ハイエースワゴンやグランドキャビンより上の上級モデルとして登場する」という見立ては当たっていました。
ただし結末は厳しいものでした。全長5.3m・全幅1.97mという体格は日本の道路では持て余しやすく、販売は月販目標に届かないまま推移。2023年にアルファード/ヴェルファイアが刷新され、レクサスLMが加わったことで居場所を失い、グランエースは2024年4月に生産を終え、累計販売は約3,000台にとどまりました。オーストラリア仕様も2025年2月に販売を終了しています。
それでも車そのものが消えたわけではありません。台湾ではグランビアとして5グレードが現役で、2026年の新年式では値下げと安全装備の拡充まで行われました。タイではマジェスティとして、日本から輸出される形で販売が続いています。日本の読者が新車で手に入れる方法は現状ありませんが、中古車市場には平均600万円台前半で流通しています。
次の一手を占うカギは、トヨタ車体が2025年6月に打ち出したいなべ工場の商用車専用化と「次世代商用バン」です。2027年前後とみられる次期ハイエースがセミボンネット化されれば、グランビアが担ってきた役割はそこへ引き継がれる公算が大きいと考えます。フルサイズの送迎需要が消えたわけではない以上、名前を変えて戻ってくる可能性は残されています。