クリーンディーゼルとは

クリーンディーゼル~メーカー別・排ガス技術と搭載車の特徴

クリーンディーゼルとは何か?PM・NOxを大幅低減する技術の仕組みから、マツダCX-8・トヨタ ランドクルーザープラド・三菱デリカD:5・BMW 320dのスペックまで、各メーカーの特徴を比較解説します。

クリーンディーゼル技術に優れた国内外のメーカーと搭載車種の特徴

ディーゼル車は軽油を燃料とするため経済的で、ガソリン車よりも二酸化炭素の排出量が少ないというメリットがあります。一方で、排気ガス中にPM(粒子状物質)やNOx(窒素酸化物)などの有害物質が含まれるというデメリットも抱えてきました。

そのデメリットをDPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼル排気微粒子除去フィルター)やNOx後処理装置などの技術で克服したのがクリーンディーゼル(CDV:Clean Diesel Vehicle)です。この記事では、マツダ・トヨタ・三菱・BMWのクリーンディーゼルエンジンの特徴と搭載車種のスペックを解説します。

マツダのクリーンディーゼル「SKYACTIV-D」の技術力

マツダは、新世代クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D(スカイアクティブ ディー)」を多くの車種に搭載し、日本のクリーンディーゼル市場をリードしてきました。

スカイアクティブDの最大の特徴は、低圧縮で燃料を燃焼させる点です。一般的なディーゼルエンジンは高圧縮で燃料を燃焼させるためPM等の有害物質が多く発生しますが、マツダは「マルチホールピエゾインジェクター」と「2ステージターボチャージャー(大排気量版)」などの技術を組み合わせ、低圧縮状態での均一な燃焼を実現し、有害物質の生成を大幅に低減しています。

クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」を搭載した車両は数多くラインナップしている

スカイアクティブDでは燃料をきれいに燃焼しつくすことで有害物質が発生しにくく、高価なNOx後処理装置(尿素SCRシステム)を必要とせずに日欧の排出ガス規制をクリアできるため、車両価格の上昇を抑えることができます。低圧縮化によってエンジン自体の軽量化も実現し、従来比約20%の燃費改善を達成しています。

なお、マツダはSKYACTIV-D 1.5の国内生産を2024年9月に終了し、コンパクトカーのMAZDA2のディーゼルモデルは国内では終売となりました。現在は2.2LのSKYACTIV-D 2.2を中心に、CX-5・CX-8・MAZDA6・CX-60(3.3L直列6気筒)などに搭載されています。

CX-8 XDのスペック

SKYACTIV-Dを搭載するCX-8

CX-8に搭載される2.2L 水冷直列4気筒16バルブ直噴ターボは、低圧縮によって燃焼させるためエンジン自体の重量増加を抑えられます。また、低圧縮化による低振動と高い静粛性も大きなメリットです。ディーゼルエンジン本来の低回転域でのパワフルなトルクにより、坂道や高速道路でもアクセルを深く踏み込まずに思い通りの加速が得られます。

CX-8 XDのスペック
全長 4,900mm
全幅 1,840mm
全高 1,730mm
ホイールベース 2,930mm
車両重量 1,860kg
乗車人数 7名
駆動方式 4WD
エンジン SKYACTIV‐D 2.2 水冷直列4気筒16バルブ直噴ターボ
総排気量 2.188L
燃料 軽油
燃料供給装置 コモンレール式燃料噴射システム
最高出力 140kW/4,500rpm
最大トルク 450Nm/2,000rpm
燃費 17.0km/L

トヨタのクリーンディーゼルの技術力

トヨタのクリーンディーゼル・テクノロジーは「1GD‐FTV型ディーゼルエンジン」に集約されます。基本設計の段階から全てを見直して開発されたこのエンジンは、燃焼改善技術「TSWIN」を採用することで世界トップレベルの最大熱効率44%を達成しています。

燃焼時の冷却損失を減らすためにシリカ強化多孔質陽極酸化膜をピストン頂部にコーティングし、新設計の燃焼室形状により燃料をより効果的に噴射させます。排出ガスはエンジン近くに設置したDPR(排出ガス浄化装置)と尿素SCRシステムの2段構えで大幅に低減します。DPRがPMをフィルターで捕集して自動焼却する一方、NOxは尿素SCRにより窒素と水に分解されます。

ランドクルーザー プラド(ディーゼル)のスペック

プラドのような大型モデルは燃費が良くトルクが太いディーゼルエンジンが好まれる

トヨタのクリーンディーゼルモデルはランドクルーザー プラドからラインナップされています。プラドのディーゼル車では小型高効率可変ジオメトリー型ターボを採用し、インペラ・タービンホイールを新開発することで高効率・広い回転域での最大トルク出力を実現しています。同タイプのガソリンモデルと比較すると約3.0km/Lの燃費優位性があります。

ランドクルーザー プラド「TX」スペック
全長 4,825mm
全幅 1,885mm
全高 1,850mm
ホイールベース 2,790mm
最低地上高 220mm
車両重量 2,210kg
乗車人数 7名
駆動方式 4輪駆動(フルタイム4WD)
エンジン 1GD‐FTV直列4気筒
総排気量 2.754L
燃料 軽油
燃料供給装置 コモンレール式燃料噴射システム
最高出力 130kW/3,400rpm
最大トルク 450Nm/1,600-2,400rpm
燃費 11.8km/L

三菱のクリーンディーゼルエンジン技術

三菱のデリカD:5に搭載されるクリーンディーゼルエンジンは、2019年のビッグマイナーチェンジ以降、2.2Lコモンレール式DI-Dクリーンディーゼルターボエンジンへと刷新されました。可変動弁機構・MIVECを採用した低圧縮比化によりPMやNOxの発生を抑制するとともに、尿素SCRシステムを搭載して環境性能をさらに高めています。

コモンレール式の精密な燃料噴射制御と8速スポーツモードATの組み合わせにより、パワフルかつ静粛性の高い走りを実現しています。

デリカD:5のスペック

SUVとミニバンを融合したデリカD:5はクリーンディーゼルとの相性が良い

デリカD:5は2007年の発売以来ロングセラーを続けるオールラウンドミニバンで、2019年のビッグマイナーチェンジで2.2Lクリーンディーゼルターボエンジンと8速ATに刷新されました。低回転から力強いトルクが得られるため、悪路走破性の高い4WDシステムとの組み合わせで山岳路や雪道でも余裕ある走りを発揮します。なお、以下のスペックは現行型の参考値です(詳細は三菱公式サイトでご確認ください)。

デリカD:5(クリーンディーゼル)の主要スペック参考値
全長 4,800mm
全幅 1,795mm
全高 1,870mm
ホイールベース 2,850mm
最低地上高 210mm
駆動方式 4WD
エンジン 2.2L DI-D クリーンディーゼルターボ
燃料 軽油
燃料供給装置 コモンレール式燃料噴射システム

BMWのクリーンディーゼル・テクノロジー

ドイツ御三家のBMWは最先端のクリーンディーゼル技術を持つ

BMWのクリーンディーゼルエンジンは「BMW Efficient Dynamics」思想から生まれた多彩な技術を融合して誕生しました。アルミニウム合金製クランクケースを採用してエンジンの軽量化を達成するとともに、構造をシンプルにした排出ガス処理技術により従来モデルより大幅な軽量化を実現しています。

ディーゼルエンジンはフロント重量が偏りがちですが、BMWはフロント:リヤの重量配分を約50:50に近づけ、FR(後輪駆動)と組み合わせることで俊敏なハンドリングを実現しています。排出ガス中のPMはDPF(粒子状物質除去フィルター)で燃焼・除去し、NOxはNOx吸蔵還元触媒で窒素と水・二酸化炭素に分解して排出します。

320d Gran Turismo M Sportのスペック

日本でも人気の3シリーズへクリーンディーゼルモデルをラインナップ

BMWの3シリーズには「セダン」「ツーリング」「グランツーリスモ」に320dディーゼルモデルがラインナップされています。2.0L直列4気筒BMWツインパワーターボディーゼルエンジンは最高出力140kWを4,000rpmで発揮し、高回転域までトルクを落とさずに出力できるため、ガソリンエンジンと比べて最大38%もの燃費向上を実現します。

BMW3シリーズ「320d Gran Turismo M Sport」のスペック
全長 4,855mm
全幅 1,830mm
全高 1,500mm
ホイールベース 2,920mm
乗車人数 5名
駆動方式 FR(後輪駆動)
エンジン 直列4気筒DOHC BMWツインパワー ターボディーゼル
総排気量 1.995L
燃料 軽油
燃料供給装置 コモンレール式燃料噴射システム
最高出力 140kW/4,000rpm
最大トルク 400Nm/1,750~2,500rpm
燃費 19.4km/L

ボルボのクリーンディーゼル技術(参考情報)

かつてボルボのディーゼルエンジンは有害物質の排出量が世界トップクラスの低さを誇っていた

北欧スウェーデンのボルボは、かつて乗用車世界初となる燃料噴射技術「i-ART」をクリーンディーゼルエンジンに搭載するなど、クリーンディーゼル技術の最先端を走っていました。ボルボが日本のデンソーと共同開発した「i-ART」は1/100,000秒単位での燃料噴射のズレを検知し、各シリンダーに最適なタイミングと量で燃料を噴射できる先進技術で、5%の燃費向上をもたらしました。

ただし、ボルボは電動化戦略の一環として2024年初頭にすべてのディーゼルエンジン搭載モデルの生産を終了しました。現在の日本向けラインナップはマイルドハイブリッドおよびプラグインハイブリッドのみとなっており、XC60を含む全モデルからディーゼルエンジンは廃止されています。ボルボのクリーンディーゼル車は現在は新車では購入できませんが、中古車市場では引き続き流通しています。

XC60 クリーンディーゼル車のスペック(参考・生産終了モデル)

クリーンディーゼル搭載のXC60は中古車市場で人気が高い

かつてのXC60ディーゼルモデルは環境性能と高トルク走行を両立し、日本でも高い人気を誇りました。XC60ディーゼルの国内販売時にはユーザーの約7割がディーゼルを選んでいたとされ、ファンの多いモデルです。以下のスペックは生産終了前の参考情報です。

XC60「D4 AWD R-Design」のスペック(参考・生産終了モデル)
全長 4,690mm
全幅 1,900mm
全高 1,660mm
ホイールベース 2,865mm
最低地上高 215mm
車両重量 1,880kg
乗車人数 5名
駆動方式 電子制御AWDシステム
エンジン D4204 水冷直列4気筒DOHC16バルブ(インタークーラー付ターボチャージャー)
燃料供給装置 電子燃料噴射式
総排気量 1.968L
燃料 軽油
最高出力 140kW/4,250rpm
最大トルク 400Nm/1,750‐2,500rpm
燃費 16.1km/L

クリーンディーゼル技術とポスト新長期規制

日本市場でディーゼル車を販売するには、2009年に制定された「ポスト新長期規制」と呼ばれる世界最高水準の排出ガス規制をクリアする必要があります。日本は高度経済成長期の公害問題を踏まえ、排出ガスに対して厳格な基準を設けてきました。1980年代後半に国立環境研究所がディーゼル車の微小粒子状物質の影響について研究報告を発表して以来、規制は段階的に強化されてきました。

マツダをはじめ各自動車メーカーは、低圧縮化技術・排出ガス浄化装置・精密な燃料噴射制御といった複数のアプローチを組み合わせてクリーンディーゼルエンジンを完成させ、日本のポスト新長期規制と欧州のEuro6の双方をクリアしています。

世界一厳しい日本の排ガス基準をクリアしたクリーンディーゼル車に乗ってみよう

クリーンディーゼルエンジンは、燃料噴射タイミングの精密制御・NOx後処理装置・低圧縮燃焼といった技術の組み合わせによって、従来のディーゼルエンジンが抱えていたPMやNOxの排出問題を大幅に改善しました。

ディーゼルエンジンの強みである「低速域からの高トルク走行」「ガソリン車を上回る低燃費」「CO2排出量の少なさ」に有害物質の大幅カットが加わることで、クリーンディーゼルはロングドライブや重量のあるSUV・ミニバンにとって魅力的な選択肢となっています。

一方、ボルボのようにEV化を推進してディーゼルを廃止するメーカーも登場するなど、クリーンディーゼルを取り巻く状況は大きく変わりつつあります。購入前には各メーカーの現行ラインナップを確認したうえで、自分のカーライフに合ったパワートレインを選ぶことが重要です。