車の板金とホワイトパールクリスタルシャインの塗装に素人が挑戦
初めて自動車の板金と塗装に挑戦します。対象の車はトヨタの大型SUV「ランドクルーザープラド」で、ボディカラーはプロでも難しいとされる3コートカラーのホワイトパールクリスタルシャインです。
YouTubeの動画やインターネットで調べながら、素人でもどこまでプロに近い施工ができるかを試してみました。
これから車の板金や塗装に挑戦したい方の参考になるかもしれない、素人による板金塗装挑戦記です。
愛車に傷が!初めての自動車板金・塗装DIYにチャレンジ
通常は車の板金や塗装はプロに依頼するものですが、「素人でも施工方法を調べながら行えるかもしれない」と考え、挑戦してみました。初めての作業なので不安はありましたが、できる範囲で施工を進めました。
結果は成功か、それとも失敗か。車のカラーコードの調べ方や、実際に使用した板金・塗装に必要な道具も紹介します。
いつもの道を走行中に鉄の棒を踏んでしまった!
いつもの道を車で走っていると、前方から来た対向車が中央線をはみ出してきました。
それで路肩に避けたところ、「ドスンッ」と鈍い音がしました。
バックミラーを見ると、何かが飛び跳ねています。
「ああ、やってしまった」と思いながら戻り、落下物を確認しました。
「鉄の棒だ…」
「シャーシのどこかに傷がついたかもしれない」と考えながら、鉄の棒をトランクに入れてその場を離れました。
帰宅して車の下を確認しましたが、傷は見当たりませんでした。
車の傷を確認:鉄の棒がフェンダーアーチに「ドスン」
どこが傷ついているのか分からないまま翌日洗車していると、
「え?」と思いました。
鉄の棒がフェンダーアーチの下部にぶつかっていたようで、その衝撃で塗装が剥げてしまったようです。
最初は近所の板金塗装店に修理をお願いしようと思いましたが、「ピンチはチャンス!」と考え、タッチペンで補修しても良い程度の傷ではありましたが、せっかくなのでDIYの記事ネタにしようと、自分で板金塗装に挑戦することにしました。
失敗した場合は、そのときに修理工場に依頼すれば良いと考え、板金塗装の方法をいろいろ調べ始めました。
コーションプレートの位置を確認し車のボディ色のカラーコード(色番号)を調べる
車のボディ色のカラーコード(色番号)が記載されているコーションプレートの位置は、運転席・助手席のセンターピラーやエンジンルーム内、カーペットの下など、車種によって異なります。ホワイトパールだけでも複数の種類があるため、正確な色を確認するにはコーションプレートを見てカラーコードを調べることが重要です。
現行車両では、メーカー公式サイトでもボディカラーの隣に番号があり、そちらでも確認可能です。
トヨタ・ホワイトパールクリスタルシャイン<070>の塗料
ネットの口コミを参考に、TOYOTAのカラーコード070の塗料を探してみましたが、安価なタッチペンでは色の再現性があまり良くないようでした。
そこで、少し高めですがホルツのMINIMIX 3コートカラーの070を使用することにしました。
トヨタのカラーコード070にはホワイトパールマイカもあり、色番号が分かりにくいケースもありますが、今回はMINIMIX(特注色)のスプレーを購入しました。
その他に用意した塗料関連のスプレーは、シリコンリムーバー、プラサフスプレー、ぼかし剤、クリアスプレーです。写真には写っていませんが、飛散した塗料を拭き取るためにラッカーうすめ液も用意しています。
Youtubeの動画を参考にして行う、はじめての板金
傷がついていたのはフェンダーアーチの爪の部分です。この小さな傷を板金する方法を調べると、「アングルプライヤー」というフェンダーアーチ用の専用プライヤーがあることがわかりました。
しかし、アングルプライヤーは1本で約6000円。小さな傷のために出費するには少し高く、ほかの方法を探すことにしました。
凹みが軽度だったので、単純にパテで埋めることも考えたのですが、初めての板金ということもあり、まずはハンマリングで挑戦してみたくなりました。「なんとしても叩きたい!」という気持ちです。
フェンダーアーチの下にはシーリングのような軟質素材のモールがついており、微妙に破断しているためハンマーで叩きにくい状況です。
インターネットで調べると、フェンダーアーチの爪に合いそうな形のドリー(当盤)とハンマーのセットを見つけ、こちらを購入しました。
100均のゴムハンマーとドリーを使い、形を合わせながらハンマーで叩いていきます。
叩きすぎないようにハンマーを短めに持ち、感覚を掴みながら少しずつ叩いていきます。
このくらいの小さな補修であれば、Youtubeの動画を参考に見よう見まねで行っても、初心者でも十分対応できると思います。
フェンダーアーチ下のシーリング素材の破断補修
フェンダーアーチの下には軟質素材のシーリング(コーキング)のようなものがついています。
素材ははっきりとはわかりませんでしたが、変性シリコンシールで破断部分を補修することにしました。
軽微な補修なので放置しても問題はありませんが、せっかくなのでしっかり直してみます。
周辺を薄めた中性洗剤と歯ブラシでほこりや汚れをきれいに洗浄します。
シーリングを行う箇所をシリコンリムーバーで洗浄し、油分を取り除きます。
100均のボンドで、裏側の部分的にはがれた箇所を貼り付けます。
接着後、10分ほど待ってからサンドペーパー320番で破断部分のシーリング上や周辺の塗料を研磨し、滑らかにします。
余計な箇所にコーキングがつかないよう、マスキングテープで保護します。
つまようじで破断部分に変性シリコンコーキングを塗ります。
滑らかに仕上げるのが難しく、見た目は少し粗くなってしまいました。
もう少し丁寧に盛ればよかったのですが、山型を滑らかに作ることはできませんでした。
マスキングテープを剥がしたら、1日程度置いてコーキングの表面が乾くのを待ちます。コーキングは乾くと少し縮むため、多めに盛った方が仕上がりがきれいになります。
小さな傷や凹みへのパテ塗りと整形作業
シリコンリムーバーで脱脂した後、キッチンペーパーで拭き取ります。
ホルツのパテは、パテ2cmに対して硬化剤1cmの割合で混ぜ合わせます。
説明書には「1分間混ぜた後すぐ塗る」と書かれていますが、気温が高いと3分ほどで乾燥してしまうことがあるため、素早く塗布する必要があります。
パテを小さな凹みや傷に盛り付け、ヘラで平らにして整形します。あとでサンドペーパーで削るので、凹みが残らないよう均一に塗っていきます。
作業中に気づいたのですが、日なたで作業していたため、手元のパテが早く乾燥してしまいました。
日陰になるようにシートをかぶせ、乾燥を抑えながら作業を続けます。
パテは約30分ほどで硬化します。
サンドペーパーで滑らかになるまで研磨
30分ほどでほぼ乾燥するので、800番のサンドペーパーで形を整えていきます。
100円ショップで購入したサンドペーパーセットをサンドペーパーホルダーにセットし、丁寧に研磨を行います。この作業は慎重に行うことが重要です。
細心の注意を払って研磨した結果、思った通りに滑らかに仕上がりました。比較的簡単にできる作業です。
プラサフを行うための狭い範囲のマスキング
プラサフスプレーは飛び散るため、必要最低限の範囲を残してほぼ全体をマスキングします。
プラサフの塗装:15分間隔で5回+乾燥1時間
下地が隠れるまで、プラサフスプレーを薄く重ね塗りで、10分程度間隔で何度もスプレーします。プラサフは後で研磨するため、多少の失敗は気にせず進めます。
4回ほど重ね塗りしたら、30分ほど放置して乾燥を待ちます。
サンドペーパー1200番でプラサフ研磨
マスキングテープを外し、1200番のサンドペーパーでプラサフを研磨して段差を整えます。
プラサフの外周から境目を丁寧に研磨し、滑らかに整えます。
コンパウンド細目でプラサフと周辺を研磨
コンパウンド細目を使って、プラサフ部分と周辺を全体的にきれいに研磨します。
ここまでの作業は初めての板金塗装にしては順調に仕上がっています。
初めての塗装での失敗
最初に結論を言うと、塗装作業は少し失敗してしまいました。
経験の少ない人がネットのマニュアル通りに作業すると、ほぼ失敗すると感じました。模型塗装などの経験があると多少違うかもしれません。
以下に塗装手順を解説します。
シリコンリムーバーで脱脂
塗装前には洗浄が欠かせませんので、シリコンリムーバーで油分を取り除き脱脂します。
ぼかし剤を塗装箇所に薄くスプレー
塗装する箇所に全体が湿るようにぼかし剤を薄く散布します。
カラー塗装下塗り+1分以内にぼかし剤
ぼかし剤を散布してから1分以内にホワイトパール<070>の下塗り塗料をスプレーします。その後すぐに再度ぼかし剤を散布します。
(塗装ミス1:マニュアルを見ながら作業していたため、グラデーションを考慮していませんでした。)
カラー塗装上塗り+1分以内にぼかし剤
下塗り後にホワイトパールの上塗り塗料をスプレーし、光沢とキラキラ感を出します。
(塗装ミス2:マニュアル通りに作業し、日も暮れてきていたため色味をじっくり確認できませんでした。)
クリア塗装+1分以内にぼかし剤
マニュアル通りにクリアスプレーを数回塗布します。液だれを恐れて慎重に作業しました。
(塗装ミス3:周囲が暗く色合いを確認できませんでした。またクリア塗装は液だれを恐れすぎず、適量を塗布するのが望ましいです。塗装は時間に余裕があるときに行いましょう。)
クリア乾燥後にマスキングを剥がす
予定ではきれいに仕上がるはずでしたが、塗装は「大失敗」の状態でした。
- 塗装の色が明らかに違う
- 部分的に色ムラがある
- クリアがほとんど出ていない
初めての塗装は失敗に終わり、板金塗装屋さんにお願いしたほうが良かったかもしれません(笑)。
塗装失敗をリベンジするため再調査
調べ直すと、塗装は思った以上に難しいことがわかりました。特に難しかったのは塗装の境目です。またクリアスプレーにはコツがあり、私は遠目からスプレーしたためうまく塗布できませんでした。ぼかし剤の使い方も甘かったと感じます。
そこで、サンドペーパーとコンパウンドで塗装の大半を落とし、再チャレンジすることにしました。
色ムラ対策とクリアの改善
色ムラの原因は塗装スプレーのグラデーションが甘かったことです。塗装の色が違って見える問題は、色味ではなくクリアの塗布方法が不十分だったことが原因でした。そのため、給油口部分もマスキングを外して一緒にクリアを吹き付けることにしました。
全くクリアが出ない問題も、塗装手法が甘かったことに起因します。クリア塗装は難易度が高く、じっくり調べ直して自己流の改善案を考えます。
<再考したクリア塗装の手順>
練習用の樹脂ボックスで試した結果、クリア以降は以下の手順で施工すると比較的きれいに仕上がりました。
- クリア塗装:10~20分間隔で軽くぼかし剤を混ぜながら何度も塗布。
- クリアは半乾きの状態で何度も厚塗りし、後半は徐々に塗布範囲を広げる。
- 後半は液だれしない程度に厚塗り。もし液だれしても後で研磨・コンパウンドで修正可能。
- 5回ほど繰り返したら半乾きまで乾燥し、クリアより広い範囲に全体を平面的に濡らすようにぼかし剤を散布。
- 3日以上乾燥後、コンパウンドで鏡面仕上げ。
前回よりもぼかし剤を多めに使用することで、ツルツル感が8割程度復活しました。ただし「ゆず肌」は残るため、コンパウンドでできる限り鏡面に近づけて誤魔化します。
液だれした部分はサンドペーパーで角に注意しながら平らに研磨。軽微な液だれならサンドペーパーで十分リカバリー可能です。
コンパウンドで鏡面仕上げ
数日乾燥後に磨き作業を開始。まず洗車と鉄粉落としでボディをきれいにします。
ゴミが残っていると研磨中に傷がつくため、丁寧に洗車します。
1200番サンドペーパーでブツ取りと液だれ緩和
初めての塗装では削りすぎ防止のため1200番から開始。ブツ取りと液だれ部分は、部分的に丁寧に研磨します。
1200番でも十分にブツ取りと液だれ緩和が可能です。表面の頭部分だけを削るイメージで慎重に作業します。
サンドペーパー2000番で水研ぎし、ゆず肌を緩和・1200番傷消し
ゆず肌がひどい場合はもっと荒い番手から始めても良いですが、初めての塗装なので2000番で挑戦します。
サンドペーパーを平面で軽く充てて水研ぎ。プレスライン(角)は研ぎすぎに注意し、優しく研磨します。
コンパウンド細目で2000番の傷を消す
サンドペーパー2000番でできた傷は、コンパウンド細目→極細目→鏡面と順に研磨するとツルツルのクリア面になります。
スポンジで手磨きする際は、縦方向と横方向に何度も研磨します。
コンパウンド極細目で細かい傷を消す
スポンジをコンパウンドごとに分け、粒子が混ざらないように注意するとより効果的です。
最後は0.2ミクロンのコンパウンドで鏡面仕上げ
粒子が細かくなるほど研ぎすぎの心配が少なくなるため、じっくり磨きます。
サンドペーパーとコンパウンドで鏡面を出した仕上がり
手磨きのため部分的に研磨が不十分な箇所や、まだやや「ゆず肌」が残る箇所がありますが、何度か研磨を繰り返すとさらに改善できます。
コンパウンド後はガラス系コーティングで仕上げ
ネットで人気のバリアスコートを使ったガラス系コーティング。スプレーしてタオルで拭くだけで簡単に施工でき、繰り返すほど輝きが増すことから人気があります。
塗装を見てもらったところ、普通の人には塗り直したことがわからないレベルでした。
じっくり見ると「ゆず肌」は残っているものの、全体的にはかなり改善されました。
板金塗装のDIYは難易度が高いが何度か経験するとコツがつかめる
塗装はコツを掴むまで難しい作業です。手磨き研磨でサンドペーパーも荒い番手(800番以下)を避けながら慎重に作業したため、やや「ゆず肌」が残りました。
一度で完璧な肌や鏡面を目指す必要はなく、クリアを研ぎすぎない範囲で何度もコンパウンドを繰り返すことで感覚を掴むのがポイントです。
ポリッシャーを使うとさらに美しい仕上がりが期待できるため、次回はポリッシャーも取り入れて鏡面を目指す予定ですが、DIY板金塗装としては今回の作業で一旦完了としました。