モデルYは量産から6年 世界一売れたクルマになりガソリン車のシェアを奪った
高級車メーカーと言えば「ベンツ」「レクサス」「フェラーリ」などいくつかの名前が浮かぶはずです。高級電気自動車メーカーと言えば、アメリカの「テスラ」が真っ先に挙がります。
テスラはかつて高価格帯の高性能EVを中心に販売していました。2016年4月には比較的手が届く価格のモデル3を投入。その流れを受けて、クロスオーバーSUVの「モデルY」が2019年3月に公式発表され、2020年から量産が始まりました。
結果は、テスラ自身の想定すら超えるものでした。モデルYは2023年に約120万台を納車し、20年にわたり首位だったトヨタ カローラを抜いて「地球上で最も売れているクルマ」になります。ガソリン車のシェアがEVに奪われる、という当時の予測は、少なくともこの一台に関しては現実になりました。
ここでは、モデルYの現在のグレード構成や航続距離、価格の推移を、公開当時の予想がどう決着したかも交えて紹介します。
3列6人乗りの「モデルY L」が2026年4月3日に日本発売 価格は749万円で航続788km
モデルYの最新トピックは、上級グレードの追加です。テスラジャパンは2026年4月3日、3列シート6人乗りのラージサイズSUV「モデルY L Premium」を日本で発売しました。価格は749万円(税込)。同日からTeslaアプリとウェブサイトで注文を受け付け、納車は4月末から始まっています。
標準のモデルYからボディを全長で約180mm、ホイールベースで150mm延長し、室内空間と積載性を高めたのが特徴です。デュアルモーターの四輪駆動で、WLTCモード航続距離は788km、0-100km/h加速は5.0秒。外部給電が可能なV2Lにも対応します。
テスラが競合として名指ししたのは、意外にもトヨタ アルファードでした。6人以上乗れる市販EVはフォルクスワーゲン ID.Buzzのロングホイールベース版くらいしかなく、しかも1,000万円級。約750万円という価格は、2026年度も継続するCEV補助金の127万円を考えれば、むしろ値ごろ感すらあります。
これで日本のラインナップは「Premium RWD」「Premium ロングレンジ AWD」「モデルY L Premium」の3本立てとなりました。価格は約550万円からで、航続距離は547kmから788kmまでをカバーします。従来のシフトレバーを廃し、車両が自動で前進・後退を判断するスマートシフトも採用されました。
2025年10月に米国で廉価版「モデルYスタンダード」を追加 装備を絞って約610万円
販売のテコ入れも進んでいます。テスラは2025年10月8日(日本時間)、米国でモデルYとモデル3に廉価グレード「スタンダード」を設定しました。
米国価格はモデルYスタンダードが39,990ドル(約610万円)、モデル3スタンダードが36,990ドル(約560万円)。従来の最廉価だったプレミアム系よりそれぞれ5,000ドル、5,500ドル安い設定です。
中身は割り切りの塊です。69kWhバッテリーでEPA航続距離は最大516km(約321マイル)、0-60mph加速はモデルYスタンダードで6.8秒。合成皮革の一部をテキスタイルに置き換え、センターコンソールはほぼ半分の長さに短縮、リアの後席用ディスプレイは非搭載、スピーカーは7個(プレミアムは15個)。ベーシックオートパイロットも標準では付かず、FSDは8,000ドルの別売りとなります。
一方で外装は専用デザインとなり、ヘッドライトやバンパー、リアライトを変更して空力を改善。装備を削りながら航続距離は伸びるという、テスラらしい合理性が貫かれています。米国では2025年9月末に7,500ドルの税額控除が廃止されたため、その逆風を相殺する狙いがあると見られます。日本への導入は、2026年7月時点でアナウンスされていません。
モデルYの大幅改良「ジュニパー」は2025年1月10日に発表 日本は同年4月納車開始
長らくコードネーム「Juniper(ジュニパー)」として噂されてきたモデルYの大幅改良は、2025年1月10日に発表され、同日から日本でも予約受付が始まりました。納車開始は2025年4月です。
エクステリアはフロントバンパーからテールライトまで一新。スプリットヘッドライトとフルワイドのLEDライトバーを備え、サイバートラックやサイバーキャブと通じる意匠へ変わりました。ダイキャスト製リアボディパネルの採用により部品点数を70点から1点へ削減し、静粛性と一体感を高めています。
性能も明確に伸びました。ロングレンジAWDは航続距離635km、0-100km/h加速4.3秒で、従来の605km・5.0秒から大幅な向上。RWDは航続547km、0-100km/h加速5.9秒です。最高速度はいずれも201km/h。ボディサイズは全長4,800mm×全幅1,920mm(ミラー含み2,130mm)×全高1,625mmで、収納容量は2,138Lを確保します。
初回限定版「ローンチシリーズ」の価格はRWDが595万円、ロングレンジAWDが683万9000円(いずれも税込)でした。内装ではベンチレーション機能付きフロントシート、HW4搭載の15.4インチセンターディスプレイを装備し、ボタン式だったウインカーが従来のレバー式へ戻された点も、実用面では評価すべき変更でしょう。
モデルYは2022年6月10日に日本で注文開始 その後の価格改定は頻繁
日本市場でモデルYの注文が始まったのは2022年6月10日で、納車は同年秋から始まりました。当初はロングレンジとパフォーマンスの2グレード構成で、パフォーマンスの当初価格は8,090,000円。RWDは後から追加され、2023年から選べるようになっています。
当時のボディサイズは全長4,751mm、全幅1,921mm、全高1,624mm。日本のミドルサイズSUVに近い数字です。
ラージSUVのモデルXは全幅2,070mmもあり取り回しに気を使いますが、モデルYであれば運転するうちに慣れる大きさでしょう。
注意したいのはテスラ特有の価格変動です。パフォーマンスは2022年6月17日に8,333,000円へ値上げされたあと、2023年1月6日に7,509,000円へ大幅値下げ、同年7月1日に7,279,000円、2024年4月23日には6,979,000円と、2年足らずで100万円以上動いています。予告なく上下するのがテスラの流儀で、購入時期によって支払額がまったく変わる点は、いまも変わりません。
モデルYの注文はインターネットで24時間365日受け付けており、全国のテスラストアでも実車の展示と試乗ができます。
テスラ「モデルY」は2020年にカリフォルニアで生産を開始
テスラ「モデルY」は2020年3月に本国で発売された
テスラはモデルYの生産を米国カリフォルニア州のフリーモント工場で2020年初頭に開始し、同年3月に本国で発売しました。当初の計画では2020年秋までの生産開始とされていましたが、実際にはこれを前倒しする形で立ち上がっています。
発売時のスペックは、スタンダードレンジで航続507km、ロングレンジで605km。ファルコンウィングドアではなく一般的なヒンジドアを採用し、後席を倒せばラゲッジ容量は2,100L以上まで拡大しました。この実用性がファミリー層に刺さり、世界的な大ヒットへつながります。
米国仕様には3列シートのオプションが設定された
米国では基本5名乗りで、オプションの3列シートを選べば7名まで乗車できました。ただし日本仕様に3列シートは設定されず、5人乗りのみ。多人数乗車の需要は、2026年のモデルY Lまで待つことになります。
そのほか、ホイールサイズは18インチから19インチ、パフォーマンスのみ20インチ。プレミアムオーディオを標準装備し、積載性にも配慮されていました。
テスラ新型モデルYが2019年3月に予約開始 モデル3ベースで販売価格は約440万円から
テスラ新型SUVのモデルYはEVシフトの普及モデルを目指した
モデルYは2019年3月にアメリカで初公開され、同時に予約受付が始まりました。テスラのコンパクトセダン「モデル3」をベースに開発したSUVで、当時発表された米国での開始価格は約440万円(39,000ドル)です。
航続距離はモデル3よりわずかに短いものの、グレードにより約370kmから約483kmとされました。高級SUVのモデルXよりも購入しやすい価格帯にモデルYを投入し、本格的なEVシフトに備える構えです。
| スタンダード | ロング | デュアルモーターAWD | パフォーマンス | |
|---|---|---|---|---|
| 航続距離 | 約370km | 約483km | 約451km | 約451km |
| 最高時速 | 193km/h | 209km/h | 217km/h | 241km/h |
| 0-100km/h加速 | 5.9秒 | 5.5秒 | 4.8秒 | 3.5秒 |
| 販売価格 | 約4,400,000円~ | 約5,310,000円~ | 約5,760,000円~ | 約6,780,000円~ |
市販時期はグレードにより異なり、「スタンダード」が2020年春、「ロング」「デュアルモーターAWD」「パフォーマンス」が2020年秋の予定とされていました。実際には最初の納車が2020年3月に始まり、その後グレード構成は市場ごとに何度も組み替えられています。
モデルYのティーザー画像からエクステリアの特徴を把握
テスラのモデルY ティザー画像
2017年6月6日にカリフォルニアで行われたテスラの株主総会で、それまでベールに包まれていたモデルYのティーザー画像が公開されました。
この画像からは全体像こそつかみにくいものの、シルエットから判断すると「モデルX」や「モデル3」のような、テスラ車の特徴であるシンプルかつシャープなボディラインを受け継ぐことがうかがえました。
もう一つ読み取れたのが、モデル3にはないフロントグリルらしき形状の存在です。ただし、実際に登場した市販車にグリルはなく、モデル3と同様にフロントは塞がれたデザインとなりました。ティーザー画像の陰影が生んだ、いわば見間違いだったわけです。
モデルYの航続距離は600kmを超えると予想され その通りになった

2017年7月にフランス政府が2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する方針を打ち出してから、他の欧州各国も同様の政策を相次いで発表しました。
これからの車は環境に十分配慮しなければなりません。近未来を見据えて、EVは熾烈な開発競争の時代を迎えています。
当時、モデルYの航続距離はベース車のモデル3を上回り、ライバルを意識して600kmを超えてくると予想されていました。
この予想は、時間はかかったものの的中しています。2023年5月には航続距離605kmのロングレンジが追加され、2025年のジュニパーではロングレンジAWDが635kmに到達。さらに2026年のモデルY Lは788km(いずれもWLTCモード)です。発表時の483kmから、6年で1.6倍に伸びた計算になります。
モデルYのベースとなったモデル3は低価格で高性能
モデルYのベースとなったモデル3
モデルYのベースとなったモデル3は2016年4月に受注が始まりました。従来は1,000万円台クラスのEVのみを販売していたテスラにとって、モデル3の400万円台という価格設定はセンセーショナルで魅力的でした。
最大航続距離は500kmほど、0-100km/h加速は5秒弱という性能。当時は需要に生産が追いつかず、日本で申し込むと納車は数年先という状況でした。現在では供給体制が整い、モデル3もモデルYと同様、注文からそう待たずに手元へ届きます。
モデルYではファルコンウィングの導入が見送られると予想され その通りになった
テスラ モデルXのファルコンウイング
モデルXに採用されているファルコンウィングには圧倒的な存在感があります。モデルXの登場によって、テスラのSUVといえばファルコンウィング、というイメージも定着しつつありました。
しかし、モデルYはモデルXよりリーズナブルな価格帯を狙うため、コスト面でファルコンウィングの導入は難しいと見られていました。モデルXとの差別化という意味でも、採用はないだろうという読みです。
結果として、この予想は完全に的中しました。市販されたモデルYは一般的なヒンジドアを採用しています。複雑な機構を捨てて量産性と信頼性を取った判断は、その後の販売台数を見れば正解だったと言えるでしょう。
モデルYの日本価格は450万円前後と予想されたが 実際は550万円台からとなった

公開当初、モデルYの日本での購入価格は450万円前後になると予想されていました。「モデルYはモーターの大量生産が望めるため、大幅なコストダウンが見込める」というマスク氏のコメントが、その根拠です。
しかし現実は違いました。日本での価格は2022年の導入時で700万円台から800万円台、値下げを重ねた2026年現在でも約550万円からという水準です。円安と補助金制度の変遷、そして装備の充実が、当初の目算を上回りました。
もっとも、2026年度のCEV補助金は127万円。これを差し引けば実質400万円台に収まり、当時の予想へ近づきます。加えて2026年4月1日から6月30日までの注文・納車分には、スーパーチャージャー3年間無料キャンペーンも適用されました。表示価格だけを見て高い安いを語れないのが、EVの難しいところです。
電気自動車のSUV テスラ・モデルYのモデルチェンジ遍歴
モデルYはアメリカのテスラが販売しているクロスオーバーSUVタイプのBEVです。テスラの電気自動車としては、ロードスター、モデルS、モデルX、モデル3に続く5車種目にあたります。
テスラ・モデルY 初代/2019年~
2019年3月、モデルYを初公開し予約受付を開始。
2020年1月、米国カリフォルニア州フリーモント工場で生産を開始。同年3月に本国で納車がスタートしました。
2022年6月10日、日本で注文受付を開始。納車は同年秋から。
2023年5月、航続距離605kmのロングレンジを追加。同年、グローバル累計約120万台を納車し、トヨタ カローラを抜いて世界販売台数首位に立ちました。
2025年1月10日、コードネーム「ジュニパー」による大幅改良を発表。日本では4月に納車を開始し、ロングレンジAWDは航続635kmへ向上しました。
2025年10月、米国で廉価版「モデルYスタンダード」を追加(39,990ドル)。
2026年4月3日、3列6人乗りの「モデルY L Premium」を日本発売(749万円、航続788km)。
| テスラ・モデルYのモデル | 販売年表 |
|---|---|
| 初代(2025年に大幅改良「ジュニパー」) | 2019年~ |
モデルYが切り開いたEV競争は激化の局面へ

モデルYはテスラにとって「ロードスター」「モデルS」「モデルX」「モデル3」に続く第5のモデルとして登場しました。テスラはモデルYの需要がモデル3を上回ると想定していましたが、その読みは的中します。SUV人気の高い本国アメリカでも、コンパクトなSUVが道路事情に合う日本でも、モデルYは受け入れられました。
2023年には年間約120万台を売り、20年間トップだったカローラを退けて世界一のクルマになります。ガソリン車のシェアがEVに奪われる、という予測を最も鮮明に体現した一台でした。
一方で、追い風ばかりではありません。中国メーカーの台頭とモデルの経年化により、2024年、テスラは十数年ぶりに販売が前年割れを記録しました。2025年のジュニパー改良と廉価版スタンダードの投入、2026年のモデルY Lによる多人数乗車への展開は、いずれもこの停滞に対する打ち手です。
かつてライバルと目されたメルセデスのEQCはすでに姿を消し、代わりにBYDやヒョンデ、そして刷新されたトヨタ bZ4Xツーリング、スバル トレイルシーカーといった顔ぶれが並びます。EV競争は「テスラが独走する時代」から「テスラが守る時代」へ移りました。モデルYが今後もその中心にいられるかどうか、注目していきたいところです。





















