使い方によりトラブルに?本当のパッシングの使い方・意味
一瞬ハイビームになってすぐにロービームか消灯する「パッシング」は、様々な意味や使われ方があります。人により使い方や受け取り方が違うためパッシングの行為を行うことでトラブルになる可能性もあります。
正しいパッシングのやり方や、関連する法律、パッシングの意味や同様の意味を持つライトカットなど、安全にパッシングを使いこなすための方法などをまとめました。
トラブルにならないための正しいパッシングの方法
パッシングのやり方は、国産車ですとライトやウィンカーを出す右側のターンシグナルスイッチを内側(運転手側)に倒すとハイビームになり、離すと消灯(ヘッドライトをつけている時はロービーム)になります。輸入車の場合は、逆の左側の配置が多いので車両の説明書で確認してください。
倒している間はハイビームが点灯している状態なので、一瞬だけつけたい時は倒してすぐに離すことで、パッシングとなります。
バルブ類は、消灯状態から点灯状態になる時が1番電気を消耗するので、パッシングを多用しているとバルブの寿命が通常よりも早く来る可能性もあるので注意が必要です。
パッシングに関する法律・違反を確認
パッシングに関する違反は、以下の道路交通法にて処分される可能性があります。
道路交通法 第4章 第1節 第70条(安全運転の義務)(注1)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。 (罰則 第百十九条第一項第九号、同条第二項)
例えば、パッシングを連続しながら前方の車との車間距離を無暗に詰めて煽り運転をしている時などに、安全運転義務違反として処分される可能性があります。違反点数は2点、罰金は普通車・軽自動車の場合9,000円です。
対向車や後続車からのパッシングの意味
あまり使う場面のないパッシングですが、対向車や後続車からパッシングを受ける場合があります。それぞれどのような意味なのか、確認しておいてください。
対向車からのパッシングは「道を譲っている」意味がある
交差点などで、対向車または交差する車線の車両からパッシングを受けた時は、ほとんどが「お先にどうぞ」という意味になりますが、「自分が先に行くから動かないでくれ」という使い方をする人もいるので急いで行こうとせず、周りの状況をよく確認しながら進行してください。
また、交差点で譲られた時に起こりやすいのが「右直事故(サンキュー事故)」です。交差点で譲った車の背後からすり抜けて直進してくるバイクと、道を譲られた右折車が衝突する事故が発生することが多いので、道を譲られた交差点を右折する際は十分に気をつけてください。
対向車からのパッシングはこの先に「危険がある」ことを知らせてくれている
信号が無くスピードを出しやすい峠や郊外で、対向車からパッシングを受けた時は「この先で事故が起きていたから気をつけて」など、自分が向かう先に危険や異常があることを教えてくれている場合があります。また大半の場合は「この先でスピード違反の取り締まりを行っています。」であることが多いです。
スピードが出ている時に対向車からパッシングを受けた時は、この先に何かがあると思って少しスピードを緩めながら走行すると、事故現場へ追突するなどの二次災害を防ぐことが出来ます。
後続車や対向車からのパッシングは自車が「無灯火運転をしている」ことを知らせている
夜間走行中や、暗いトンネル内を走行中に後続車や対向車からパッシングを受けた時は「ライトが点いていないよ」と、教えてくれている場合があります。
夜間やトンネル内にて無灯火で走っていると、自分からは周りが見えにくいですし、他の車からも発見されにくいので事故を誘発する可能性が高いです。また、夜間に無灯火で走行していると違反になりますので、注意が必要です。
道路交通法第52条(車両等の灯火)(注2)
車両等は、夜間(日没時から日出時までの時間をいう。以下この条及び第六十三条の九第二項において同じ。)、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。政令で定める場合においては、夜間以外の時間にあつても、同様とする。
前照灯(ロービーム)、車幅灯(ポジションランプ)、尾灯(テールランプ)を点灯しなければならないと決められているので、ヘッドライトを消してフォグランプだけで走行するのも違反です。反則金は普通車・軽自動車で6,000円、点数は1点引かれます。
特に自発光式メーター(オプティトロンメーターなど)を装備している車は、夜間にライトをつけていなくてもメーターは光っているので、点灯していると勘違いしやすい傾向があるため注意が必要です。
対向車からのパッシングは「ハイビームが眩しい」という知らせ
車両は本来ハイビームにして走行することになっていますが、対向車や歩行者がいる時はロービーム(すれ違い用前照灯)に切り替えることになっています。ハイビームは100m先まで見渡せるようライトが上向きになっているので、対向車にとっては眩しくて前が見えなくなり大変危険な状態です。
対向車へハイビームになっていて眩しいことを知らせるためにパッシングをして教える場合がありますので、夜間走行時に、対向車からパッシングを受けることが多い時は、ハイビームに切り替わっていないか確認するようにしてください。
後続車からのパッシングは「道を譲って欲しい」意思表示
高速道路では、最低速度50km/h以上を出さなければ違反となり、道路交通法第75条の4により定められています。最低速度違反の反則金は普通車・軽自動車で6,000円、点数は1点です。
道路交通法第75条の4(最低速度)(注3)
自動車は、法令の規定によりその速度を減ずる場合及び危険を防止するためやむを得ない場合を除き、高速自動車国道の本線車道(政令で定めるものを除く。)においては、道路標識等により自動車の最低速度が指定されている区間にあつてはその最低速度に、その他の区間にあつては政令で定める最低速度に達しない速度で進行してはならない。
また、最低速度をあらわす標識は、数字の下にアンダーバーが引いてある標識で、制限速度標識と見間違えやすいので気をつけてください。
高速道路では、80km/h付近で走行している車が多く、時速50km出していれば違反にはなりませんが、後続車から「周りの速度に合わせてくれ」という気持ちを込めてパッシングを受ける可能性があります。
また、一般道でも同じく極端に遅いと同様に後続車から距離を詰められてパッシングを受ける時があり、お互いにとっても良くない状況ですので、道を譲れるタイミングが来たら追い越させてあげると余計なトラブルを招かずに済みます。
交差点でのパッシングは歩行者の存在を対向車に気づかせるために行われている
横断歩道に歩行者がいるのに、対向車からは見えにくい状況下である、又は不注意によって歩行者の存在に気付かずに交差点に進入しようとしているクルマを見つけた場合には、事故を回避させるという意味においてのパッシングが行われています。
交差点に進入するタイミングで対向車からパッシングを行われた際には、そのメッセージを受け取って、横断歩道にいる歩行者の存在をきちんと確認しましょう。
パッシングの「お先にどうぞ」をライトカットで意思表示する場合もある
信号のない4方向とも一時停止の交差点などで、他の車と停止タイミングが重なって双方動きにくい時に、パッシングではなくヘッドライトを消して「お先にどうぞ」の合図をする人もいます。特に夜間はライトカットする方が多いので覚えておきましょう。
また相手は道を譲っているのですが「譲られているから早く行かなきゃ!」と焦らず、周りの状況をよく見てゆっくりと交差点などに進入するようにしてください。
パッシングされたら落ち着いて対処
ヘッドライトが一瞬ハイビームになってすぐにロービームや消灯するパッシングは「相手が道を譲っている」「無灯火だと教えている」「この先に事故があったから気をつけて欲しい」「ハイビームになっていて眩しい」などの意味を持つことがあります。
対向車や後続車からパッシングを受けたら、落ち着いてライトがついているか確認し、周りの状況を良く見て交差点を進入するようにしてください。