トヨタのキーンルック

キーンルックとは?フロントグリルに込めたトヨタの世界戦略

トヨタが採用するグローバルデザインのキーンルックとはどのようなデザイン?オーリスを始めプリウスやアクアや86、注目のSUVであるC-HRにも採用されているキーンルックの意味や成り立ちなどを紹介。世界のトヨタが再び販売台数を取り戻すにはキーンルックがカギ。

トヨタ車が採用するフロントグリル「キーンルック」とは?

自動車メーカー各社の特色が現れるフロントグリル。有名なものでは日産のVモーションやマツダの魂動デザイン、スバルのヘキサゴングリルやトヨタの高級ブランドであるレクサスが採用するスピンドルグリルなど、自動車メーカーの特色が感じられるデザインとなっています。

トヨタが採用するキーンルックとはどのようなデザインなのか、デザインに込められた意味なども併せて紹介します。

鋭利なルックスのフロントマスクが「キーンルック」

トヨタのグローバル車を中心に取り入れられているのが「キーンルック」です。
中央のエンブレムを中心として、V字に大きく広がる立体的なデザインに、精悍なヘッドライトを組み合わせたスタイリッシュなデザインとなっています。

キーン(鋭利な)ルック(スタイル)を採用したフロントグリルは登場以来、これまで大衆的なデザインのトヨタ車を挑戦的で知的な印象に変貌させました。

キーンルック導入の意図は世界戦略

近年日本の自動車メーカーに見られるのはフロントデザインの統一化です。例えばドイツのBMWは全車種にキドニーグリルという独特のフロントマスクを採用しています。このキドニーグリルは1930年代から採用されている長い歴史がありBMWの歴史を象徴していると言っても過言ではありません。

対して日本の自動車メーカーには自社を象徴するフロントグリルがありませんでした。世界戦略を視野に入れ始めた日本の自動車メーカーが取り入れたのは自社をブランド化するためのフロントグリルの統一化です。そこでトヨタが新デザインとして採用したのがキーンルックとなります。

キーンルックの始まりはハッチバックのオーリスから

キーンルックは2012年8月20日にフルモデルチェンジを果たしたハッチバックタイプのオーリスから始まります。トヨタが目指す「世界中どこでもトヨタ車と分かるデザインとして、導入していく」の通りにトヨタの名前を掲げ、欧州を中心に爆発的なヒットを記録しました。

オーリスの発売以降、日本でも大ヒットしているハイブリッド車のプリウスやアクア、7人・8人乗りミニバンのエスティマ、2004年から販売されている伝統的なセダンのマークX、世界的流行となっているコンパクトSUVのC-HRなど様々な車にキーンルックが採用されています。

キーンルックを採用している代表車種

キーンルックを採用している代表車種を紹介します。モデルチェンジや新型車投入のタイミングでキーンルックを採用されることが多いのですが、セダンやSUVやミニバンなどの車種によりデザインに変化が見られます。統一されたデザインでも見せ方工夫をしているのが、トヨタのデザイン力の高さを証明しています。

キーンルックの元祖は欧州市場で人気のオーリス

2012年のフルモデルチェンジの際、初めてキーンルックが採用された車がオーリスです。コンパクトハッチバックで燃費性能もハイブリッド車で30.4km/Lと優秀な数字となっています。
日本ではプリウスやアクアがあるのであまり聞きなれない車種かもしれませんが、欧州ではとても人気の高い車となっています。

キーンルックの元祖というだけあって立体的な造形のフロントマスクに、キレのあるヘッドランプは「美しい」の一言に尽きます。コンパクトなボディサイズからは想像できないほど広い車内も特徴です。

世界初のハイブリッドシステムを搭載したプリウス

プリウスは世界で初めて市販化されたハイブリッド車です。電気とガソリンを使って走るハイブリッドシステムは革新的な新技術で、日本のみならず世界中の自動車業界を賑わせました。

ガソリン仕様車と比較し低燃費を実現するハイブリッドシステムを持つプリウスは、世界中で人気となり日本の新車販売台数でも毎月上位にランクインしています。

1997年に初代プリウスが誕生してから18年後の2015年にフルモデルチェンジされた4代目新型プリウスからキーンルックが採用されました。

プリウスのキーンルックは今までのものよりもさらに切れ長となり、車高の低さもありスポーティーな雰囲気が感じられます。今までのプリウスにあった丸いイメージから、全体的にシャープなイメージに進化しました。

多人数乗車でファミリー世代に人気のエスティマ

ファミリー世代に人気なのがエスティマです。2016年のビックマイナーチェンジによりキーンルックが採用されています。

今回のビックマイナーチェンジでエスティマに採用されたキーンルックは今までのデザインより大胆に表現されていて、トヨタデザインの大幅な進化を感じさせられます。

エスティマの特徴は多人数を乗車できる室内の広さです。7人乗り・8人乗りのミニバンと言えばエスティマと言うほど人気の車種はキーンルックでさらに洗練されたエクステリアを手に入れました

スバルと共同開発して究極の走りを追求した86

トヨタの新デザインであるキーンルックはスポーツタイプの2ドアクーペにも採用されています。それがトヨタ86です。コンパクトクーペの86は、徹底的に鍛え上げられた走りとドライバーに上質な空間を提供するコクピットが魅力です。

大きく張り出したフロントデザインにはやはり、トヨタの新デザインであるキーンルックが採用されています。本格的な走りを追求した86にもキーンルックがベストマッチしています。

革新的なデザインでNo1コンパクトSUVを獲得したC-HR

コンパクトSUVのC-HRは2017年4月の新車販売台数で、SUV車種として史上初の1位を記録しました。個性的なデザインと、プリウスから受け継いだ高い耐久性と30.2km/L低燃費性能を実現するハイブリッド仕様が自慢の車です。

ダイヤモンドをイメージした車体に、中央エンブレムから切れ上がったヘッドライトは、フロントタイヤの上まで大きくデザインされています。

これまでのキーンルックをさらにワイルドに表現している、大胆なエクステリアをもっています。世界戦略SUVの名のものに販売されたC-HRはトヨタの新時代を切り開く車となるでしょう。

トヨタの「顔」になっているキーンルックの採用当初は不評が多かった

2012年キーンルックの採用が発表された当初は「嫌い」「かっこ悪い」「ださい」など批判の声があったのも事実です。しかし時代が進むにつれキーンルックも熟成し、今では鋭く統一されたフロントマスクの「キーンルックがトヨタの顔」と認識している方も増えています。

今までのデザインを一新するというのは誰でも勇気がいる決断ですが、トヨタはそれを実施して、成功している企業となっています。世界から注目されるトヨタブランドの新しい象徴としてキーンルックはこれからも進化を続けます

キーンルックはトヨタの新しい武器

トヨタは2015年に世界シェア、新車販売数ともに世界一となりましたが、2016年にはその座から転落しています。

トヨタが巻きかえしを図るためのカギがグローバルデザインのキーンルックです。堅牢な作りや安全性はもちろん、トヨタの新しい武器となるフロントデザインが世界一のトヨタ自動車を復活させる日も近いでしょう。