007に登場した車

007に登場した車まとめ!歴代映画に使われたボンドカー・名車

潜水艇に変形し、透明になり、真っ二つにされる。60年を超える007シリーズで、ボンドカーはどんな役割を担ってきたのか。DB5からDB10、ヴァルハラまでの劇中車をスペックとともに整理し、第26作を取り巻く現在の状況も解説します。

ボンドカー特集!007シリーズで活躍したアストンマーティンなどの名車一覧

ボンドカーとは、映画『007』シリーズに登場し、イギリス秘密情報部(MI6)に所属する主人公ジェームズ・ボンドが運転する車のことです。

第3作『007ゴールドフィンガー』で人気の火付け役となったアストンマーティン・DB5がもっとも有名ですが、ロータス・カーズやBMWの車に乗ってカーチェイスを繰り広げたこともあります。

また、ボンドカーといえばMI6の研究機関Q課が開発した秘密兵器も見どころの1つ。潜水艦に変形したり、透明になったりと、SFチックな特殊装備もあり、『007シリーズ』を盛り上げてきました。

歴代ボンドカーを解説!アストンマーティンやBMWなどの高級車が勢ぞろい

歴代ボンドカーを映画の公開順に紹介します。
MI6のQ課によって開発された特殊装備がなく、一般人から拝借、敵役から強奪した車でも、ジェームズ・ボンド自身がハンドルを握った車をボンドカーとして含めています。

サンビーム・アルパイン <007 ドクター・ノオ>

初代ボンドカー サンビーム・アルパイン

1962年公開(日本公開は1963年)、007第1作『ドクター・ノオ』劇中車だが、当時は特殊装備が存在しない。サンビームはイギリスに存在した自動車メーカーで、レースでも数々の記録を樹立したが、1976年にブランドが廃止されている。

劇中車はライトブルーのオープン2シーターで、ジャマイカの山道を走る場面に登場。派手なガジェットのない素の車で追跡をかわすという、後のシリーズとはまったく違う手触りの導入になっている。

ベントレー・マークIV <007 ロシアより愛をこめて>

ベントレー・マークIV 劇中車はコンバーチブル

2作目『ロシアより愛をこめて』登場(劇中車はコンバーチブル)。実は原作小説では「ボンドはベントレー好き」設定があり、プライベートカーとして所有。特殊装備は存在しないが、自動車電話つき。

フレミングの原作でボンドが乗るのは戦前のベントレーで、映画版のこの一台はその設定を汲んだもの。ここからアストンマーティンへ乗り換わる前の、いわば助走にあたる存在といえる。

アストンマーティン・DB5 <007 ゴールドフィンガー ほか>

アストンマーティンのスポーツカーDB5

人気NO.1ボンドカーであるアストンマーティンDB5

1963~65年製造。歴代ボンドカー最多登場車種。第3作ゴールドフィンガーに秘密兵器を搭載して初登場し人気を博す。17作目『ゴールデンアイ』以降は、MI6から払い下げられたボンドのプライベートカーとなった。生産台数1023台。

4.0リッター直列6気筒に3連ウェバーキャブレターを組み合わせ、当時としては珍しい4輪ディスクブレーキを標準装備。間近で見ると、ボディはスーパーレッジェーラ構法によるアルミパネルで、手叩きの跡が残る面のつながりに時代を感じさせる。

ちなみに『ゴールドフィンガー』の撮影時には、車両の手配が間に合わず先代にあたるDB4のシリーズ5ヴァンテージが代役を務めた場面もある。また2020年には、劇中の秘密兵器まで再現した「DB5ゴールドフィンガー・コンティニュエーション」が25台限定で製作された。1台あたり4,500時間をかけて組み上げるという内容で、公道走行は前提とされていない。

アストンマーティン・DBS <女王陛下の007>

アストンマーティンDBS 『女王陛下の007』レプリカ車

アストンマーティンDBS リアビュー

DBSスーパーレッジェーラをベースにした『女王陛下の007』公開50周年記念車

1967~1972年製造。女王陛下の007劇中車。V8エンジン搭載のはずが、開発が間に合わず直6で発売。後にV8を追加するも顧客の不興を買った。同作のボンド像も賛否両論で、アストンマーティン経営危機の救世主とはならず。

劇中ではダッシュボードに救命キットやスナイパーライフルを収める程度で、ガジェットの派手さは控えめ。ボンド役がジョージ・レーゼンビー1作限りだったこともあり、DBSは歴代の中でも露出の少ないボンドカーになっている。

フォード・マスタング・マッハ1 <007 ダイヤモンドは永遠に>

マスタング・マッハ1 英語では「Mach 1」と表記

7作目ダイヤモンドは永遠に劇中車。ボンドガールの愛車をボンドが運転したため特殊装備はなし。1969~73年製造のマスタングのハイパワーモデルで、ボディも初代より大型化。栃木県警に高速取締車両として寄贈されたことも。昔はマスタングのカタカナ名称が定まっておらずムスタングと表記されていた。

ラスベガスの路地で片輪走行のまま通り抜ける場面は、入る前と出た後で接地している側の車輪が入れ替わっているという有名な編集ミスつき。カーアクションの語り草として今も引き合いに出される。

アメリカン・モーターズ ホーネット <007 黄金銃を持つ男>

劇中車AMCホーネット

1973年式 ホーネット・ハッチバック

劇中車と同じ赤のホーネット・ハッチバック

第9作黄金銃を持つ男劇中車。1970~77年製造の小型車。MI6支給品でないため、特殊装備はない。CGなしで川の対岸に360度回転して着地したが、これはホーネットの重量バランスが良いからできたアクション。

このスタントは事前にコンピューターで軌道を計算したうえで実行されたもので、成功したのは一発勝負の1テイクのみ。CGのない時代に、車体の重量配分と助走速度だけで成立させた記録として残っている。

ロータス・エスプリ <007 私を愛したスパイ>

イギリスの名門ブランドロータスが発売したスポーツカー・エスプリ

劇中車として使われた潜水艇に変形するロータス・エスプリ

第10作私を愛したスパイ劇中車。日本のスーパーカーブームでも大人気。特殊装備てんこ盛りで潜水艇にも変形するTHEボンドカー。後に撮影車両がオークションに出品され、テスラのCEOイーロン・マスク氏が落札した。

ジョルジェット・ジウジアーロによる「フォールデッドペーパー」と呼ばれる直線基調のボディは、間近で見ると驚くほど低く、全高は1.1m台。潜水モードの撮影には、実際に水中を走行できる専用車両が別に製作されている。

ロータス・エスプリターボ <007 ユア・アイズ・オンリー>

1980年発売ロータス・エスプリターボ

ロータス・エスプリターボ 白の車両は序盤で自爆

第12作ユア・アイズ・オンリーに2台登場。1台目の白い車両は盗難防止装置により自爆し、ボンドはやむを得ず2CVでカーチェイスすることに。当時のエスプリターボの最高出力は210HP、2CVは29HPなので落差がすごかった。

シトロエン 2CV <007 ユア・アイズ・オンリー>

007仕様の限定車シトロエン2CV

第12作ユア・アイズ・オンリーのボンドガール・メリナの愛車。ロータス・エスプリターボの自爆により、やむなく2CVでカーチェイス。ボンドが運転した車でもっとも非力な29HPの水平2気筒エンジン。撮影は4気筒に変更して実施。

公開に合わせて「2CV 007」という限定モデルも発売された。弾痕を模したステッカーが付属するという遊び心のある内容で、市販車が映画の宣伝を兼ねた初期の例にあたる。

メルセデス・ベンツ250SE <007 オクトパシー>

メルセデス・ベンツ250SE 劇中車は黒の車両

第13作オクトパシー劇中車。Q開発ではない敵役オルロフ将軍の車だが、ホイールのみになった後、線路を走ったので実質ボンドカーと言っていい無茶っぷり。現Sクラスに相当するベンツの高級車。

アルファロメオ・GTV6 <007 オクトパシー>

アルファロメオ・アルフェッタGTV6

アルフェッタGTV6 リアビュー

アルフェッタGTV6ラリー仕様車

第13作007 オクトパシーでボンドが電話中の女性から拝借した小型車。2.5LのV6エンジンを搭載し、シャープなハンドリングが魅力。ボンドは華麗なドリフトを見せつけた。80年代のヨーロッパのツーリングカーレースでも活躍。

トランスミッションをリアに置くトランスアクスル方式で前後重量配分に優れ、劇中の身のこなしの良さは実車の素性そのまま。V6の官能的な音も含めて、当時のアルファロメオを代表する一台だった。

ルノー・11 <007 美しき獲物たち>

『007美しき獲物たち』劇中車ルノー11 この後さらに縦にも真っ二つに。

本来のルノー11

第14作美しき獲物劇中車。一般人に車を(無断で)借りることが珍しくないボンドだが、今作ではタクシーを拝借。最終的に真っ二つになるまで走行を続けて大破させる。1.7L水冷4気筒エンジン搭載、車両重量は約900kg。

屋根を失い、続いて後半分を失い、それでもパリの街を走り続けるという展開で、被害の段階を追って笑わせる構成になっている。ボンドカーとして最も痛めつけられた一台といっていい。

ロールス・ロイス・シルバークラウドⅡ <007 美しき獲物たち>

60年代の名車シルヴァークラウドII

14作目007美しき獲物たち劇中車。プロデューサーのプライベートカー。1959年に6気筒エンジンの先代クラウドIからアルミニウム製V8エンジンに変更。推定200馬力前後。光岡のガリューやリューギはこの車がモチーフ。

アストンマーティン・V8 <007 リビング・デイライツ>

アストンマーティン・V8 ヴァンテージ

V8 ヴァンテージ (1982年式)

V8ヴァンテージ ヴォランテ(1986年式)

1972~89年製造。第15作リビング・デイライツ劇中車。5,340cc水冷90度V8エンジンが特徴。高性能モデル「ヴァンテージ」は最高出力430hp。久々のアストンマーティン・ボンドカーのため、ミサイルや自爆装置などの機能を張り切って搭載。

雪上を走るためのスキー式アウトリガー、タイヤから飛び出すスパイク、そしてロケット噴射。氷結した湖をチェロケースでそりのように滑り降りる場面と並んで、シリーズでも屈指のガジェット満載回になった。このV8は後年、第25作にも再登場することになる。

アウディ・200 <007 リビング・デイライツ>

初代アウディ200 C2系

2代目アウディ200 C3系

第15作リビング・デイライツ劇中車だが、本作は久々のアストンマーティン復活のため目立った出番なし。1979~1991年まで生産されたアッパーミドルセダン。1989年には2.2Lの直5エンジン、220馬力の「200クワトロ20V」も登場。

BMW・Z3 <007 ゴールデンアイ>

BMW前期型Z3ロードスター

BMW Z3 1996~1998年前期型

1996~2002年生産。当初はロードスターのみだが、98年にクーペを追加。第17作ゴールデンアイのボンドカーだが、劇中で活躍する場面は少なく、発売前のディザーキャンペーンのような扱いだった。搭載エンジンは4気筒から直6まで幅広い。

映画公開に合わせて予約が殺到し、車を出さずに宣伝効果だけを得たという意味では、プロダクトプレイスメントの成功例として語られることが多い。同作の冒頭では、DB5がフェラーリF355と峠を駆け抜ける場面もあり、こちらのほうが記憶に残っているという声も少なくない。

BMW 750iL <007 トゥモロー・ネバー・ダイ>

1995~2001年発売BMW7シリーズの750iL

撮影に使用されたBMW750iL 後部にハンドル付き

第3世代E38が第18作トゥモロー・ネバー・ダイに登場。ボンドカーとしては珍しいセダン。ボンドが後部座席の窓から飛び乗るシーンは見どころの1つ。携帯電話によるリモコン操作が主な特殊装備。V12エンジン・最高326馬力。

後席から携帯電話で運転するという設定のため、撮影用車両には後部にもステアリングが仕込まれていた。立体駐車場を無人走行で駆け抜ける場面は、現在の遠隔操作や自動駐車の発想を20年以上先取りしている。

BMW・Z8 <007 ワールド・イズ・ノット・イナフ>

BMW Z8 2000~2003年製造

BMW Z8リアビュー

第19作ワールド・イズ・ノット・イナフ劇中車。最後は真っ二つに切断という歴代ボンドカーの中でも不運な車(撮影車はシボレー・コルベット)。BMW・M5と同じ4.9LのV8エンジンを搭載。400PS。ボディとシャシはオールアルミニウム製。

アストンマーティン・V12ヴァンキッシュ <007 ダイ・アナザー・デイ>

『007ダイ・アナザー・デイ』劇中車V12ヴァンキッシュ

V12ヴァンキッシュ 2001~2007年製造

第20作ダイ・アナザー・デイ劇中車。2001~2007年まで生産された初代モデル。6L/V12エンジン搭載で、後の「S」では520PSを超える。ジャガーXKRとのカーチェイス、透明になる光学迷彩装置など見せ場の多かったボンドカー。

氷上でのバトルに使われた撮影車両は4WD化されており、見た目こそノーマルだが中身は別物。透明になる装置は当時から賛否が分かれ、次作『カジノ・ロワイヤル』でシリーズが現実路線に舵を切る一因になったともいわれる。

フォード・フェアレーン <007 ダイ・アナザー・デイ>

フォード・フェアレーンタウンセダン

フォード・フェアレーン Sunliner

第20作ダイ・アナザー・デイでボンドが葉巻工場で借りてキューバで運転した車。本作は当時アストンマーティンを傘下に収めていたフォードが全面協力しており、実際キューバでは50年代のアメ車が多数走っていた。

アストンマーティン・DBS V12 <007 カジノ・ロワイヤル>

『007カジノ・ロワイヤル』のボンドカーDBS V12

2007~2012年発売アストンマーティンDBS V12

アストンマーティンDBS V12

21作カジノ・ロワイヤル、22作慰めの報酬に登場した2代目DBS。ボンドがヒロインを避けるための横転シーンはギネス記録に認定。実際は車両安定性が半端なく、横転させるためには車体底にピストン装置をつけるしかなかった。

もともと映画のために用意された車だったが、人気を受けて公開翌年から市販化されたという経緯を持つ。『慰めの報酬』ではドアが取れるほどボロボロになりながら走り続け、2作にわたって酷使された。

フォード・モンデオ <007 カジノ・ロワイヤル>

フォード・モンデオ・セダン

第21作『カジノ・ロワイヤル』のバハマのシーンに登場。発売前の新型Mk4モンデオのお披露目をかねた出演。2007~12年生産の3代目。ボルボ製のEUCDプラットフォーム。フォード・キネティックデザインを初採用。

ジャガー・XJ <007 スカイフォール>

ジャガー・4代目XJ X351型

第23作スカイフォールでMI6の公用車として登場。Fセグメントの高級セダン。2010年登場の4代目だが、丸型4灯ランプなどエクステリアの伝統を一切踏襲しなかった大刷新モデル。先代より10%の軽量化に成功。

アストンマーティン・DB10 <007 スペクター>

アストンマーティン・DB10『007スペクター』劇中車

アストンマーティン・DB10のサイド

DB10のインテリア

第24作スペクター劇中車。歴代ボンドカーで唯一市販化されていない。映画のために10台のみ限定生産した。V8ヴァンテージをベースに、0-100km/h加速3.2秒。後にオークション出品され4億近い値が付いた。

10台のうち撮影に耐えられる状態で残った個体はごくわずかで、市場に出たのは1台のみ。実際に目の前にすると、後のDB11につながるプロポーションが先取りされているのが分かり、映画用の使い捨てではなく次世代デザインの実験台でもあったことがうかがえる。

ボンドカー以外も魅力的!ボンドガールや敵役の印象的な007劇中車

ボンドガールの愛車やジェームズ・ボンドと激しいカーチェイスを繰り広げた敵役の搭乗車を紹介。中にはボンドカーを超えるインパクトを残した007劇中車も存在します!

トヨタ・2000GT <007は二度死ぬ>

トヨタ2000GTオープンボディ

第5作007は二度死ぬ劇中車。身長188センチのショーン・コネリーが乗れなかったため、市販化されていないオープンカー仕様に急遽改造。ボンドは運転していないが、6代目ボンド役のダニエル・クレイグが「1番好きな歴代ボンドカー」と公言。

撮影用に2台が製作され、屋根を落とすだけでなく無線機やモニターを備えた特別仕様。この登場以降、日本車がボンドの運転する車として選ばれるまでには半世紀以上を要することになる。

フォード マーキュリー・クーガー・コンバーチブル <女王陛下の007>

『女王陛下の007』劇中車

フォード マーキュリー・クーガーXR-7 1969年製

第6作女王陛下の007劇中車。ボンドと唯一結婚したボンドガール・テレサの愛車。劇中車は1969年製、赤のコンバーチブル。フォード・マスタングをベースにした上級姉妹車で、ポニーカーの代表車種。

AMC マタドール <007 黄金銃を持つ男>

AMCマタドール 1974年式

AMCマタドール 1976年式

第9作黄金銃を持つ男で敵役の殺し屋の愛車として登場。ボンドのAMCホーネットが1回転して向こう岸に着地したのに対し、この車は翼とジェットエンジンによって飛行しており、ボンドカーを超すインパクト。

フォード・サンダーバード <007 ダイ・アナザー・デイ>

フォード・11代目サンダーバード

ノスタルジックスタイルの最終型サンダーバード

第20作ダイ・アナザー・デイでボンドガールのジンクス(ハル・ベリー)が搭乗。「レトロ・バーズ」の愛称を持つ11代目最終型サンダーバード。生産は2002~2005年。ハードトップとコンバーチブルが存在。

ジャガーXKR <007 ダイ・アナザー・デイ>

劇中車ジャガーXKR

第20作ダイ・アナザー・デイの敵役ザオ搭乗車。1996~2006年生産。ボンドのアストンマーティンV12ヴァンキッシュとカーチェイスを繰り広げた。ボディカラーは当時のジャガーF1参戦マシンと同色。

ジャガー C-X75 <007 スペクター>

『007スペクター』劇中車ジャガー C-X75

第24作スペクター劇中車。2010年にコンセプトモデルが登場したハイブリッドスーパーカー。市販化決定、撤回と紆余曲折を経て、最終的に007劇中車として陽の目を見た幻の名車。0-100km/h加速約3秒、最高速度354km/h。

ローマの夜を舞台にDB10と繰り広げた追跡劇は、英国製スーパーカー同士という珍しい組み合わせ。撮影車両はコンセプトのハイブリッドではなく、V8を積んだ専用のスタント仕様が用意された。

ランドローバー・レンジローバースポーツSVR <007 スペクター>

007イベントで展示されたレンジローバースポーツSVR

第24作スペクターに登場。通称「史上最速のランドローバー」。同社のスペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)が開発。5.0LのV8エンジンを搭載し、最高出力は550馬力。オーストリアの雪山を舞台にした追跡シーンで印象を残し、次作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』にも再登場した。SVRの名は現在使われておらず、この系譜は「SV」へと引き継がれている。

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』のボンドカーはアストンマーティン4台体制

シリーズ第25作『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、当初2020年公開を予定していたものの延期が重なり、日本では2021年10月1日に公開されました。ダニエル・クレイグにとって最後のボンド作品となった本作には、アストンマーティンから4台の車が投入されています。

DB5がふたたび主役に、撮影用スタントカーは10台を新造

冒頭のイタリア・マテーラでの追跡劇で、ヘッドライト裏から回転式機関銃を繰り出したのがDB5です。1963年式のオリジナルは現存台数が限られ、1台あたり100万ドルを超える価値を持つため、撮影には外観をそっくり再現したスタントカーが10台新造されました。

スタントカーは外観こそDB5そのものですが、中身はロールケージとスタント用シートを備えた別物で、公道走行はできません。撮影終了後、このうち1台がチャリティオークションに出品され、劇中で受けた傷やこすれをそのまま残した状態で高額落札されています。

V8ヴァンテージとDBSスーパーレッジェーラも登場

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の劇中車アストンマーティンDBSスーパーレッジェーラ

ボンドが00部門に復帰するためロンドンのガレージからカバーを外すのが、第15作『リビング・デイライツ』で活躍したV8サルーン。34年越しの再登場で、ボンドがこの一台を手放さずに持ち続けていたという設定になっています。

一方、ボンドの不在中に「007」のコードネームを与えられたノーミが駆るのがDBSスーパーレッジェーラです。5.2リッターV型12気筒ツインターボは最高出力725ps、最大トルク91.8kgm、最高速度340km/h。DB11を土台にしながら、ボディパネルの大部分を空力優先で専用設計した内容で、DB5と並べると同じブランドの車とは思えないほど動力性能に差があります。

公開に合わせて、V8をモチーフにした「ヴァンテージ007エディション」が100台、劇中車と同一仕様の「DBSスーパーレッジェーラ007エディション」が25台という限定モデルも用意されました。後者はセラミック・グレーの塗装やフェンダーの007エンブレムまで劇中車を踏襲しています。

ミッドシップハイパーカーのヴァルハラも姿を見せた

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』にも登場したアストンマーティン・ヴァルハラ

4台目が、開発中だったミッドシップハイパーカーのヴァルハラです。アストンマーティン究極のモデル「ヴァルキリー」と同様に北欧神話から車名をとっており、劇中ではQの研究室に置かれた次世代マシンとして姿を見せます。

発表当初はV型6気筒ターボにモーターを組み合わせる構想でしたが、市販型では4.0リッターV8ツインターボと複数のモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドへと変更され、システム最高出力は1,000馬力を超えました。生産は999台の限定で、2025年から順次オーナーの手に渡っています。カーボンボディとエアロダイナミクスの考え方はヴァルキリーと共有しており、間近で見ると乗用車というより地上を走る航空機に近い印象を受けます。

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』ではランドローバーとトヨタも活躍した

本作にはランドローバーからも複数の車両が投入されました。イギリスを代表する四輪駆動車メーカーとして、アストンマーティンとともに第25作を支えています。

新型ディフェンダーは道なき道を駆け抜けるカーチェイスシーンに登場

撮影に臨む新型ディフェンダーの様子 かなり激しいカーチェイスシーン

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』には、2019年11月に日本発売も果たしたランドローバー・新型ディフェンダーが登場しました。ショートホイールベースの「90」とロングホイールベースの「110」が存在しますが、007劇中車となったのはロングホイールベースで5ドアモデルの「110」です。

新型ディフェンダーは最大水深900mmの渡河性能も特徴

登場するのはスコットランドでロケが行われた森林地帯の追跡シーンで、急斜面を駆け上がり、ジャンプして着地しながら追走するという内容。最大渡河水深900mmという公称値を持つ悪路性能が、そのまま画面に出ています。撮影では10台が用意され、ボディカラーはサントリーニブラックが使われました。

レンジローバースポーツSVRとトヨタ・ランドクルーザープラドの対決も

ランドローバーからは新型ディフェンダー以外にも、第24作『007スペクター』にも採用されたレンジローバースポーツSVRが登場。ランドローバー・シリーズ3やレンジローバー・クラシックといった絶版名車もスクリーンデビューを飾りました。

そしてもう一台注目したいのが、トヨタ・ランドクルーザープラド(J95W型)です。ボンドが同乗者を乗せてレンジローバースポーツSVRやオートバイの追跡を振り切るという場面で使われており、『007は二度死ぬ』の2000GT以来54年ぶりの日本車登場、そしてボンド自身がハンドルを握る日本車としては初という記録になりました。派手なガジェットは一切なく、ノーマルの四駆で悪路を走り抜けるという見せ方も含めて、シリーズの中では異色の一台です。

シリーズ第26作のボンドカーはどうなるのか

ダニエル・クレイグが第25作をもってボンド役を退いた後、シリーズは大きな転機を迎えました。長年シリーズを統括してきたバーバラ・ブロッコリとマイケル・G・ウィルソンに代わり、Amazon MGMスタジオがクリエイティブコントロールを持つ体制へ移行。プロデューサーはエイミー・パスカルとデヴィッド・ヘイマン、監督は『DUNE/デューン 砂の惑星』のドゥニ・ヴィルヌーヴ、脚本は「ピーキー・ブラインダーズ」のスティーヴン・ナイトという布陣が固まっています。

7代目ジェームズ・ボンドを誰が演じるかは、本記事の執筆時点ではまだ発表されていません。したがって、第26作にどの車が起用されるかも明らかにされていない状況です。

ただ、車の側の事情から予想できることはあります。アストンマーティンは近年、ヴァルハラのようなプラグインハイブリッドを軸に据えており、電動化と大排気量エンジンの両立をどう見せるかが課題になっています。歴代でDB5やV8サルーンが「過去の一台」として登場してきたことを踏まえると、次作でも旧車と最新モデルを組み合わせる構成は取りやすいはずです。ランドローバーやジャガーといった英国勢が引き続き敵役や公用車に回る流れも、ここ数作で定着しています。

ボンドカーは007シリーズの見どころの1つ!

60年以上にわたって、ボンドカーはその時々の最新モデルと、時代を越えて愛される旧車の両方を映してきました。潜水艇に変形するロータス・エスプリ、真っ二つにされるBMW Z8、映画のためだけに10台作られたDB10。実車の性能を超えた演出も、逆に実車の素性そのままの走りも、どちらもこのシリーズの魅力になっています。

作品を見返すとき、ストーリーではなく車だけを追いかけてみるという楽しみ方もあります。同じDB5でも作品ごとに装備や状態が違い、スタントカーとオリジナルの見分けを探すといった見方まで含めれば、007シリーズは1本の長大なカーカタログでもあります。

シリーズ第26作の詳細が明かされるのはこれからですが、新しいボンドがどんな一台を相棒に選ぶのか、そこも含めて次作の楽しみになりそうです。