今やアジアンタイヤは世界的なメーカーへと成長
アジアンタイヤとは、主に韓国、中国、インドネシアなどのメーカーが製造するタイヤ。ブリヂストン・ミシュラン・グッドイヤーのBIG3の世界販売シェアが低下する一方で、アジアンタイヤメーカーの売上高が年々上昇。
米専門誌「TIRE BUSINESS」がまとめた2018年のタイヤの売り上げでは、上位12社のうち4社のアジアンタイヤメーカーがランクイン。
2018年タイヤ売上高 メーカー別ランキング
1位 ブリヂストン(日本)
2位 ミシュラン(フランス)
3位 グッドイヤー(アメリカ)
4位 コンチネンタル(ドイツ)
5位 住友ゴム(日本)
6位 ピレリ(イタリア)
7位 ハンコック(韓国)
8位 ヨコハマ(日本)
9位 ZC Rubber(中国)
10位 マキシス(台湾)
11位 トーヨータイヤ(日本)
12位 Gitiタイヤ(シンガポール)
※TIRE BUSINESS社調べ
ここでは、ランクインしたアジアンタイヤメーカーのハンコック、中策ゴム、MAXXISに加えて、ナンカンやクムホ、ケンダなどの、日本で人気の12のアジアンタイヤメーカーについて解説。
<アジアンタイヤ>HANKOOK(ハンコック)は世界的な知名度を誇るグローバルメーカー
ハンコック(HANKOOK)は、韓国最初のタイヤメーカーとして1941年に創業。ソウルを拠点として、韓国・日本・米国・ドイツ・中国に技術センターを置くほか、180以上の国に輸出を行う世界的なタイヤメーカーとなっています。
フォルクスワーゲンやフォード、ポルシェ、BMWなど、多くの海外自動車メーカーや、トヨタ、日産、ホンダなどの国内メーカーの新車装着タイヤに採用。
主な国内向けブランドとして、乗用車用タイヤのVentus(ベンタス)に加えて、SUN/バン用タイヤのDynapro(ダイナプロ)、バン/軽トラック用タイヤのVantra(バントラ)、低燃費タイヤのKinergy(キナジー)があります。
また、モータースポーツシーンでは、SUPER GTやル・マン24時間レース、ドイツツーリングカー選手権、F3アメリカ選手権などにタイヤを供給。レーシングタイヤでは、「Ventus」ブランドのスリックタイヤやセミスリックタイヤ、ラリー用タイヤなどをラインナップします。
ハンコックのおすすめは超高性能のSタイヤ「ベンタス RS4」
ハンコックのベンタスRS4(Z232)は、マシンコントロール性能に優れたセミスリックタイヤ。センターリブが路面への追従性を高めるとともに、両サイドに伸びるV字グルーブが排水性を確保。高いグリップステアリング性能によって、優れたラップタイムを実現します。
<アジアンタイヤ>NANKANG(ナンカン)は優れたコスパフォーマンスにより高いユーザー評価を獲得
ナンカン(NANKANG)は、1959年に南港輪胎股份有限公司の社名で台湾の台北に設立。2010年から国際市場への展開を視野に入れて、企業イメージを一新。台湾国内でのシェアNo.1だけでなく、海外の180カ国以上にタイヤを提供しています。
取り扱うタイヤブランドは幅広く、乗用車タイヤやSUV/4×4タイヤをはじめ、オールシーズンタイヤ、バン/軽トラック用タイヤ、バス/トレーラー用タイヤなどを日本国内で展開。
その中でも、スタッドレスタイヤ「ESSN-1」の知名度が高いほか、ホワイトレーターの設定があるオールテレーンタイヤ「AT-5」やマッドテレーンタイヤ「FT-5」はドレスアップ用タイヤとして人気。軽自動車からバンまで幅広い車種に適合するオフロード系ブランド「MUDSTAR」も扱っています。
また、ナンカンはスポーツタイヤメーカーとしての評価も高く、スポーツブランドSportnexではプレミアムタイヤ「AS-2+」がドイツTÜV SÜDを取得。そのほかに、レーシングタイヤでは、セミスリックタイヤの「AR-1」と「NS-2R」の2ブランドをラインナップしています。
ナンカンのおすすめは数々のレースで高評価を獲得する「NS-2R」
ナンカンのNS-2Rは、レース仕様(ソフト)と公道仕様(ミディアム)という2つのコンパウンドをラインナップするスポーツタイヤ。複数の性能を備えることによって、さまざまな天候条件で安定した走りを発揮。タイヤを交換することなく、自宅とサーキットの往復を可能にします。
ナンカンのNS-2Rは、イギリスで人気のBRSCCのBMWコンパクトカップ、Tegiwaシビックカップ、MaX5レーシングチャンピオンシップなどにも採用されています。
<アジアンタイヤ>NEXEN(ネクセン)は世界の自動車メーカーに認められた高い品質が魅力
ネクセン(NEXEN)は、韓国東部の梁山(ヤンサン)市に拠点を置く1942年創業のタイヤメーカーで、韓国ではハンコックタイヤとクムホタイヤに次ぐ販売シェア3位を獲得。NEXENブランドのほか、欧米向けブランドの「ROADSTONE」ブランドを展開しています。
国内向け夏タイヤは、スタンダード/プレミアム/SUV/スポーツ/ビジネス/オールシーズの6つのカテゴリに、フラッグシップブランド「NFERA(エヌフィラ」、低燃費性能に優れた「Nblue (エヌブルー)」、軽・バン用の「NPriz(エヌプライズ)」などのブランドをラインナップ。
さらに、2019年1月には、ドライグリップ優先の設計のハイグリップスポーツタイヤ「NFERA Sport R」が新たに追加。新開発の非対称パターンの採用により、コーナリング時のバランスを高めています。
ネクセンのおすすめはスノー性能が魅力のオールシーズンタイヤ「N blue 4Season」
ネクセンのエヌブルー 4シーズンは、さまざまな路面で快適な走りを実現するヨーロピアンオールシーズンタイヤ。13~18インチの幅広いサイズ展開により、軽自動車から、セダン/クーペ、コンパクトカー、ミニバンのほか、ハイブリッド車やEV車にも対応します。
なお、N blue 4Seasonは、冬期間のスノー路面やシャーベット路面に対応しますが、過酷な積雪や凍結路面を走行する場合は、スタッドレスタイヤの装着が推奨されています。
<アジアンタイヤ>MAXXIS(マキシス)は台湾でナンバー1のシェアを誇るタイヤメーカー
マキシス(MAXXIS)は、1967年に台湾で創業した正新(チェンシン)ゴム工業のグローバルブランド。現在は台湾をはじめ、日本、米国、ドイツ、イギリス、中国などの9つの海外法人が設立され、世界160カ国以上に広がる自動車・二輪車のタイヤメーカーへと成長しています。
国内向けには、乗用車用タイヤや4×4用タイヤ、ATV(All Terrain Vehicle)用タイヤ、トラックバス用タイヤなどの四輪用タイヤほか、二輪用タイヤのカテゴリを展開。
過酷なオフロードでの走破性の高いマッドテレーンタイヤ「ビッグホーン」シリーズや、オールテレーンタイヤ「ブラボー」シリーズなどの人気が高く、中でもホワイトレタータイヤはドレスアップユーザーの注目を集めています。
マキシスのおすすめは道なき道を行くマッドテレーンタイヤ「MT-754 Buckshot Mudder」
マキシスのMT/754は、アメリカで「Buckshot Mudder(泥を後ろに撃つ)」の異名をとるマッドテレーンタイヤで、14~18インチのラインナップのうち、1サイズを除きアウトラインホワイトレター(OWL)を設定。ジムニーやランクル、ハイラックスなどにおすすめです。
<アジアンタイヤ>KUMHO(クムホ)は世界の名立たる自動車メーカーに幅広く認められるタイヤメーカー
クムホ(KUMHO)は、1946年にタクシー事業を開始。その後光州旅客(クムホ高速)としてバス事業に進出した際、バス用タイヤの確保が困難となったことから、1960年にタイヤ事業に参入したという異色の経歴を持つタイヤメーカーです。
厳しい品質基準を満たし、車の最適なパフォーマンスを引き出すタイヤとして認められることによって、クムホのタイヤは世界中の自動車メーカーの新車装着タイヤ(OEM)に採用。
国内向けのブランドには、スポーツタイヤの「ECSTA(エクスタ)」、コンフォートタイヤの「SOLUS(ソルウス)」、エコ/スタンダードタイヤの「ecowing(エコウイング)」「SENSE(センス)」、SUV/RVタイヤの「CRUGEN(クルーゼン)」などがあります。
また、韓国を代表するカーレース「スーパーレース・チャンピオンシップ」や、オランダで毎年開催される「マスターズF3」などのモータースポーツでも活躍しています。
クムホのおすすめは快適性にも配慮したスポーツタイヤ「ECSEA PS71」
クムホのエクスタPS71は、先端のコンパウンド技術によってウェット性能を強化したヨーロピアンスポーツタイヤ。快適な乗心地と高い静粛性、優れた高速走行安定性により洗練された走りを実現。レクサスのGS/ISをはじめ、メルセデス・ベンツのE/Cクラス、BMWの5/3シリーズなどに推奨されています。
<アジアンタイヤ>KENDA(ケンダ)は高品質なタイヤの供給によって台湾のトップメーカーへと成長
ケンダ(KENDA)は、建大工業股份有限公司として1962年に創業。台湾の本社を中心に、アジア、北アメリカ、ヨーロッパの150か国以上の国々にタイヤ事業を展開し、総合タイヤメーカーとして、リーズナブルな価格で高品質のタイヤを供給しています。
日本国内では、スポーツタイヤ「KAISER(カイザー)」シリーズや乗用車用タイヤ「MOMET(コメット)」シリーズ、SUV/4×4タイヤの「KLEVER(クレバー)」シリーズのほか、ミニバン/バン/ライトトラック用タイヤなどのブランドを展開。
KENDA KR20 KAISERシリーズは、世界のレーシングシーンで多くのプロモーターに採用され、フォーミュラDriftやD1グランプリで高い成績を収めています。
ケンダのおすすめはハイグリップなリアルスポーツタイヤ「KR20A KAISER」
ケンダのKR20Aカイザーは、思い通りのライン取りを実現するKR20のアドバンスモデル。優れた高速直進安定性に加えて、横方向へのグリップの確保により安定したコーナリング性能を実現。さらに、左右に広がるV溝設計によって排水性を高めることで、濡れた路面でグリップ力を確保します。
<アジアンタイヤ>ZC Rubberは中国本土で最大のタイヤメーカーへと発展
ZC Rubberは、1958年に前身の杭州海川ゴム工場を設立した後、会社の発展とともにHangzhou Zhongce Rubber(杭州中策ゴム)へと社名を変更。今や、世界の売上高ランキングで10本の指に入るタイヤメーカーへと成長を遂げました。
展開するタイヤブランドは、「WEST LAKE」「CHAO YANG」「ARISUN」「GOODRIDE」「TRAZANO」の5つで、日本国内ではグッドライドジャパンによって、GOODRIDEブランドの乗用車用タイヤやSUV/LTタイヤなどが販売されています。
グッドライドのおすすめはモータースポーツシーンで活躍する「スポーツRS」
グッドライドのスポーツアールエスは、グリップ力と操作性に優れたハイパフォーマンススポーツタイヤ。あらゆる速度域で安定したグリップ力を発揮するほか、非対称パターンが排水性を高めるとともに、優れた操縦安定性を実現します。
<アジアンタイヤ>FEDERAL(フェデラル)は高品質なタイヤを開発・改良し続けることで技術的に成長
FEDERAL(フェデラル)は、1954年に設立された台湾のタイヤメーカー。1960~1979年にブリヂストンと、1981~2000年にはダンロップとそれぞれ技術提携を行ったほか、1987年には日本のJIS認証を取得するなど、日本とのゆかりの深い会社でもあります。
現在では70か国以上の100を超える地域に代理店を構える強力なグローバル企業へと成長。厳格な品質管理と高い安全基準への配慮により、顧客満足度の向上を図っています。
国内ではモータースポーツ用のスリックシリーズやセミスリックシリーズをはじめ、UHPタイヤ「595」シリーズやHPタイヤ「FORMOZA」シリーズ、乗用車向けのPCRタイヤ、SUVタイヤ、商用車向けのCOMタイヤなどを展開しています。
フェデラルのおすすめは「595RS-RR」
フェデラルの595RS-RRは、伝説のタイヤ「595RS-R」の後継モデルとなるUHP(ウルトラハイパフォーマンス)タイヤ。炎をイメージしたトレッドパターンが、上質のハンドリングと優れたコーナリング性能を発揮。静粛性やロングライフにも配慮しています。
<アジアンタイヤ>GT RADIAL(ジーティーラジアル)は品質第一主義により信頼される高品質タイヤを製造
GTラジアルは、インドネシアの総合タイヤメーカー「ガジャ・タンガル(PT Gajah Tunggal Tbk)」が手掛けるタイヤブランド。厳格な品質管理のもと高品質なタイヤを製造するほか、さらに、品質や安全性を証明する世界の主要な国際認定を取得しています。
日本国内では、乗用車用タイヤの「CHAMPIRO」シリーズのほか、ハイウェイやオフロードに対応するSUVタイヤ、軽トラ/バン用タイヤなどのブランドを展開。
GTラジアルのおすすめは安全かつダイナミックな走りのスポーツタイヤ「CHAMPIRO HPY」
GTラジアルのCHAMPIRO HPYは、さまざまな路面状況で理想的なグリップを実現するUHP(ウルトラパフォーマンスタイヤ)。濡れた路面でも高い安全性を確保するほか、高速走行時でもノイズが気にならない優れた静粛性を発揮して、快適な走り実現します。
<アジアンタイヤ>TRIANGLE(トライアングル)は世界基準の規格をクリアする中国最大手のタイヤメーカー
トライアングル(TRAIANGLE)は、1976年に創業された中国でもっとも知名度の高いタイヤメーカー。世界の160か国以上で販売を行うほか、2017年には米国のテネシー州に初の国際タイヤ製造工場を建設。
乗用車用タイヤやSUVタイヤのほか、ライトトラック用タイヤ、バス/トラック用タイヤ、OTRタイヤ(産業用、建設用および鉱山機械用)などの、幅広い車種向けのタイヤを生産しています。
トライアングルタイヤのおすすめはコンフォートタイヤ「TR978」
トライアングルのTR978は、快適性能に優れたプレミアムタイヤ。センターリブと細かなサイプが路面からの衝撃を和らげるとともに、静粛性や快適な乗り心地を実現します。さらに、転がり抵抗を低減することで、燃費向上に貢献します。
<アジアンタイヤ>MAXTREK(マックストレック)は研究開発に力を入れる新興タイヤメーカー
マックストレック(MAXTREK)は、2006年に中国で設立された広東肇慶駿鴻実業有限公司のグローバルブランド。研究開発を企業戦略の一つとしてめきめきと頭角を現し、今後その投資額は総売上高の3%を超える見込みとなっています。
ほかのアジアンタイヤメーカーと比較して歴史が浅いメーカーではありますが、現在は90カ国以上で販売。FOTONやDFSK、Lifanなどの中国自動車メーカーの新車装着タイヤに採用されるなど、顧客からも高い評価を得ています。
乗用車用タイヤのほか、マッドテレーンタイヤやオールテレーンタイヤなどのSUVタイヤ、商用タイヤ、ランフラットタイヤ、セミスリックタイヤなども扱っています。
マックストレックのおすすめはグリップ力に優れたHPタイヤ「MAXIMUS M1」
MAXIMUS M1は、ウェット路面でもドライ路面でも強力なグリップ力を発揮する乗用車向けのHP(ハイパフォーマンス)タイヤ。正確なステアリング性能とともに、高速性や排水性、ハンドリング性能を確保することで、スポーティな走りを可能にします。
<アジアンタイヤ>ATR RADIAL(エーティーアール ラジアル)は世界のレースシーンで活躍
ATRradial(エーティーアールラジアル)は、インドネシアのタイヤメーカーMASAが2012年に立ち上げたタイヤブランド。MASAは自国の良質な天然ゴムと、ピレリやコンチネンタルなどの欧州メーカーとの技術提携により、コストパフォーマンスの高いタイヤを製造。
ATRradialは日本向けのタイヤブランドで、本国のインドネシアでは「Achilles RADIAL(アキレスラジアル)」がメインブランドとなっています。
ATRラジアルのおすすめは快適性を備えるスポーツタイヤ「ATR SPORT2」
ATRラジアルのATRスポーツ2は、ドライグリップとウェットグリップを両立するスポーツタイヤ。4本のストレートグルーブが排水性を高めることで、ウェット路面での安全性を確保。さらに、センターリブが直進安定性を高める一方、両サイドのセカンドリブが優れたコーナリングパフォーマンスを発揮します。
アジアンタイヤはタイヤの買い替え時の選択肢の一つに
タイヤは消耗品のためいずれは交換が必要になりますが、これまで価格の安いアジアンタイヤを選ぶユーザーのほとんどは、ドリフターと呼ばれるドリフト愛好者のようなタイヤ交換を頻繁に行う人たちでした。
これまでの「安かろう悪かろう」というイメージが強かったアジアンタイヤですが、近年はハンコックやネクセンなどの、海外での評価が高くコストパフォーマンスの優れたアジアンタイヤメーカーの製品に注目が集まるようになり、日本市場でのシェアを徐々に拡大しています。
日本国内ではまだまだ、ブリヂストンやダンロップなどの国内メーカーや、ミシュランやグッドイヤーなどの知名度の高い欧米のタイヤメーカーが優勢とはいえ、従来ブランドのネームバリューにとらわれないユーザーには、アジアンタイヤは魅力的な商品と映っているようです。