スリックタイヤの特徴

スリックタイヤとは?溝がないのに滑らない理由とレーシングタイヤのおすすめ

「ツルツルしたタイヤ」を意味するスリックタイヤ(Slick Tire)は、F1などのカーレースでよく見かけるタイヤですが、ツルツルしていたら余計に滑りやすいのでは?と疑問に感じる人は多いのではないでしょうか。ここでは、スリックタイヤにスポットを当てて、その特徴や用途について詳しく解説していきます。

スリックタイヤとは?溝がないのに滑らない理由とレーシングタイヤのおすすめ

溝がなくても強力なグリップを発揮するスリックタイヤとは?

それでは、スリックタイヤのグリップ性能や耐久性などの特徴のほか、活躍しているモータースポーツのジャンルなどについて見ていきましょう。また、ヨコハマやダンロップなどの、スリックタイヤのおすすめを紹介します。

スリックタイヤは公道を走ることができないタイヤ

スリックタイヤとは、表面に溝がない競技専用タイヤのことで、サーキットのような舗装路面で優れた性能を発揮します。

道路運送車両の保安基準の中で、タイヤの接地部に深さが1.6mm以上の滑り止めの溝を施すことが規定されているため、スリップサインで溝の深さを確認する一般的なタイヤに対して、溝のないスリックタイヤは一般公道での使用が認められていません。

「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」の原文は以下の通り。

第9条「走行装置等」/第3節/第167条の4

接地部は滑り止めを施したものであり、滑り止めの溝(最高速度 40km/h未満の自動車、最高速度40km/h未満の自動車に牽引される被牽引自動車、大型特殊自動車及び大型特殊自動車に牽引される被牽引自動車に備えるものを除く。)は、タイヤの接地部の全幅(ラグ型タイヤにあっては、タイヤの接地部の中心線にそれぞれ全幅の4分の1)にわたり滑り止めのために施されている凹部(サイピング、プラットフォーム及びウエア・インジケータの部分を除く。)のいずれの部分においても1.6mm(二輪自動車及び側車付二輪自動車に備えるものにあっては、0.8mm)以上の深さを有すること。

引用元:国土交通省「道路運送車両の保安基準」

公道を走行できないことを示すために一般的なタイヤと区別して、スリックタイヤのサイドウォールには「For competition(競技用)」と刻印されます。

また、同じ競技専用タイヤの中には、公道走行が可能なSタイヤがあります。Sタイヤについては、こちらのSタイヤの特徴とおすすめ10選でSタイヤの特徴のほか、ブリヂストンやミシュランなどのおすすめのSタイヤを紹介しています。

雨で濡れた路面でのスリックタイヤの使用は原則NG

スリックタイヤは溝がないため、濡れた路面を高速で走行した場合、路面との間の水膜ができてタイヤが浮かび上がるハイドロプローニング現象によって滑りやすくなります。

そのため、スリックタイヤはドライタイヤとしてのみ使われ、ウェット路面を走る場合はフルウェットタイヤのほか、カットスリックタイヤと呼ばれる小雨や雨上がりに使われるインターミディエイトタイヤのような、排水のための溝が掘られた雨用のレインタイヤを用意する必要があります。

スリックタイヤが強力なグリップ力を発揮する仕組みとは

スリックタイヤは溝がない分、路面に対する接地面積が大きくなるため、溝のあるタイヤに比べるとグリップ力が高くなるほか、普通のタイヤのように、表面に力が加わった時にブロックが倒れ込んだり、ヨレたりすることがないため、高い剛性を発揮します。

熱で溶けたスリックタイヤの表面摩擦熱で溶けたタイヤ表面

さらに、一般的なタイヤがトレッド部と路面をグリップさせているのに対して、スリックタイヤの場合、路面との摩擦熱でタイヤ表面を溶かすことによって、路面にタイヤを粘着させて強力なグリップ力を実現するのです。

そのため、スリックタイヤで超高速走行を行うF1のようなレースでは、適性温度の80~100℃よりもタイヤが冷えるとパフォーマンスが低下してしまうため、スタートに備えて、あらかじめタイヤウォーマーを使って、適正温度になるまでスリックタイヤを暖めておくことも。

タイヤウォーマータイヤウォーマー

また、スリックタイヤは、ハード/ミディアム/ソフトのコンパウンドの硬さによって熱の入り方が異なるほか、グリップ性能やタイヤの耐久性も違ってきます。

スリックタイヤの寿命と交換時期

スリックタイヤは、グリップ力が高い一方で、タイヤの表面を溶かしてグリップ力を得ることから、高いグリップ力を求めれば求めるほど寿命が短くなります。そのため、走行距離にかかわらず、摩耗の具合で交換時期を判断する必要があります。

スリックタイヤ交換の目安は、一般的なタイヤのスリップサインのように、トレッド面に摩耗をチェックするための小さな穴が数カ所あって、その穴の深さで摩耗の状態を判断します。

スリックタイヤが使われる主な四輪モータースポーツ

F1レーサーの俯瞰図

スリックタイヤは、主にモータースポーツの分野でレーシングタイヤとしてお馴染みですが、具体的にどのようなカテゴリーで使われているのか、改めておさらいしておきましょう。

ロードレース

ロードレースとは、サーキットのような舗装コースで一斉にスタートした後、ゴールをめざす競技です。主なロードレースには、フォーミュラーカーによるF1やインディ500、市販車ベースのツーリングカーが参戦するSUPER GTなどの「スプリントレース」のほか、ルマン24時間に代表される「耐久レース」があります。

トライアル

トライアルとは、他の車と速さを競うロードレースとは違い、ゴールまでの走行時間を競う競技で、1台ずつ決められたコースを走るジムカーナや、2台の車が直線コースを並走するドラッグレースなどがあります。

カートレース

カートレースとは、パイプフレームにエンジンやタイヤがむき出しのまま取り付けたレーシングカートによる競技で、スプリントレースや耐久レースがあります。低年齢から始められて、F1などのドライバーも多く輩出しています。

モータースポーツにおすすめのスリックタイヤブランド3選

続いては、ツーリングカーのロードレースや、ジムカーナなどのモータースポーツに欠かせないスリックタイヤブランドを紹介。ヨコハマやダンロップなどのスリックタイヤがおすすめです。

YOKOHAMA|ADVAN A005(アドバン A005)

アドバンA005は勝つために産み出された高いポテンシャルで世界のレースシーンで活躍するレーシングタイヤアドバンA005は勝つために産み出された高いポテンシャルで世界のレースシーンで活躍するレーシングタイヤ

ヨコハマのスポーツタイヤブランドで知られるアドバンの「ADVAN A005」は、フォーミュラーカーやGTから、ツーリングカー、ジムカーナまで、幅広い車種に対応するレーシングタイヤです。ジャンルごとに13~18インチをラインナップしているほか、ウェットタイヤとしてADVAN A006を用意しています。

DUNLOP|SLICK Radial(スリックラジアル)

スリック ラジアルは、競技用タイヤとして高い運動性能を発揮するラジアル・スリックタイヤスリック ラジアルは、競技用タイヤとして高い運動性能を発揮するラジアル・スリックタイヤ

ダンロップの「SLICK Radial」は、最先端のレーシングテクノロジーを採用した競技専用のスリックタイヤです。レーシング用の13~18インチの全16サイズ、ジムカーナ用の15インチの2サイズをラインナップ。また、同シリーズには、競技専用レインタイヤ「R92Radial」も用意されています。

PIRELLI|SLICK(スリック)

接地面積を最大にする外部形状とスムーズなトレードが特徴のドライ&ダンプ路面用の競技専用スリックタイヤ接地面積を最大にする外部形状とスムーズなトレードが特徴のドライ&ダンプ路面用の競技専用スリックタイヤ

ピレリの「SLICK」は、優れた減速とトラクションを発揮するスリックタイヤです。13~19インチの幅広いサイズに対応しているほか、同じ「P ZERO」シリーズに、アクアプレーニング現象のリスクを低減するウェット路面のためのRAIN(レイン)もラインナップされています。

スリックタイヤを購入する際の注意点

スリックタイヤは、競技用タイヤとして高い性能を発揮する一方で、公道での走行に適していないことから、メーカーによっては、スリックタイヤを購入する際、競技内容を記載した誓約書の提出が必要になります。そのため、スケジュールに余裕を持って購入することが大切です。

また、参加予定の競技会の車両規則や技術規則をしっかりと確認の上で、車両に合ったサイズのスリックタイヤを購入する必要があることから、詳しくは、お近くのタイヤ販売店に相談しましょう。