自動運転レベルの違い

自動運転レベル別特徴や定義・技術の進化で変わる車社会の姿

自動運転レベル別、車の特徴や定義を紹介。走行車線の維持をサポートするなどの安全装備を搭載する「レベル1」、あらゆる状況下でAIが人に変わって車を運転する完全自動化である「レベル5」、自動運転が進むのに合わせて変化する未来社会の姿も取り上げ。

自動運転レベル別特徴や定義・技術の進化で変わる車社会の姿

自動運転レベル別特徴や定義と技術の進歩で変わっていく未来社会

車を自分で運転することを楽しんでいる方にとっては、自動運転化時代が将来確実にやってくることに複雑な心境を抱くかもしれません。しかし、自動運転の技術は、安全性の向上や移動の自由度を高める上で非常に重要です。

「トヨタやホンダが自動運転レベル3の実用化を目指す」と言われても、自動運転レベルの定義が曖昧で、その特徴がさっぱりわからない方も多いのではないでしょうか。そんな方々に向けて、自動運転のレベル別、特徴や定義を紹介します。

人に代わってAI(人工知能)が車を運転する時代が到来した時に、変化していく未来社会の姿についても取り上げます。自動運転化時代では、人が車を運転するのではなく、システムがきちんと作動しているのかを監視したり、緊急時に引き継いだりする役目を人が担うことになります。

非営利団体のSAEが定めた自動運転レベルの定義

自動運転で走る男性ドライバー

航空機や自動車などの乗り物に携わる技術者や研究者が10万人以上も参加している非営利団体であるSAEインターナショナル(自動車技術会)が定めた自動運転のレベルに関する定義を紹介します。このSAEが定めた定義(J3016)は、世界共通の自動運転の基準として利用されています。

自動運転の技術が進化していくと、これからの時代の車選びでは、自動運転のレベル1やレベル2の車が、どのような技術を搭載しているのか、そしてどのように定義されている車なのかを確認するのが大切です。特にレベル2の市販車は増加傾向にあります。

自動運転レベルの定義(J3016)の概要
レベル 概要 安全運転に係る
監視、対応主体
運転者が全てあるいは一部の運転タスクを実施
SAE レベル0
運転自動化なし
・運転車が全ての運転タスクを実施 運転者
SAE レベル1
運転支援
・システムが前後・左右のいずれかの
車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施
運転者
SAE レベル2
部分運転自動化
・システムが前後・左右の両方の
車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施
運転者
自動運転システムが全ての運転タスクを実施
SAE レベル3
条件付運転自動化
・システムが全ての運転タスクを実施
(限定領域内)
・作動継続が困難な場合の運転者は、
システムの介入要求等に対して、
適切に応答することが期待される
システム
(作動継続が困難
な場合は運転者)
SAE レベル4
高度運転自動化
・システムが全ての運転タスクを実施
(限定領域内)
・作動継続が困難な場合、
利用者が応答することは期待されない
システム
SAE レベル5
完全運転自動化
・システムが全ての運転タスクを実施
(限定領域内)
・作動継続が困難な場合、
利用者が応答することは期待されない
システム

自動運転レベル0~5の車はどのような特徴を持っているのかレベル毎に紹介

自動運転に感動するドライバー

自動運転レベルの定義は、抽象的な表現で簡潔にまとめられていますが、そういった文言に慣れていない方にとっては特徴を把握し難いものです。そこで、レベル0からレベル5まで、それぞれのレベルがどんな特徴を持つ車なのかについて、わかりやすく紹介していきます。

レベル0 全ての運転操作をドライバーが行う

自動運転レベル0の車では、ステアリング操作や、状況に応じたアクセルペダルとブレーキペダルを踏み込んでの加減速、シフトレバーといった運転に関わる全ての操作をドライバーが行います。これは従来の車と同じ定義です。

ただし、ドライバーの視野をサポートする後方死角検知機能や、アンチロック・ブレーキシステム(ABS)など、警戒音を発生させたりモニターに表示させたりしてドライバーに注意喚起を与える装備はレベル0に分類されます。レベル0の自動運転の技術は注意喚起を行いますが、運転操作のサポートは行いません。あくまで運転主体は人です。

レベル1 運転の動作を単独サポート

自動運転レベル1は、ハンドル操作や加減速などのいずれか一つの運転動作をサポートするシステムを備えた車が分類されます。例えば、先行車との車間距離を一定に保つための「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」や、車線からはみ出しそうになった際に警報や軽い修正操作を行う「レーンキープアシスト」などがこれに該当します。

走行中に危険を判断して自動でブレーキを発動する衝突被害軽減ブレーキなど、単独の運転操作をサポートする技術がレベル1の特徴です。現在販売されている車のほとんどは、この自動運転レベル1の基準をクリアしています。

レベル2 複数の安全技術が連携して運転をサポート

一定の車間距離を維持しながら車線からはみ出さないように車を運転する、渋滞時に走行車線を維持しながら先行車の後を追随するなど、ハンドル操作と加減速などの複数の運転動作が必要となるシーンにおいて、複数の安全技術が連携して運転をサポートできる技術力が搭載されている車が自動運転レベル2に該当します。このレベル2は、部分運転自動化と定義されます。

自動運転レベル2をクリアしている市販車は、すでに各自動車メーカーから多数販売されています。ただし、レベル2では運転操作の主体は依然としてドライバーであり、システムが作動中でも、常に運転状況を監視し、すぐに運転操作を引き継げる状態にあることが必要とされます。レベル2の技術は長距離運転の疲労軽減に大きな効果を発揮します。

レベル3 特定の場所では全ての運転動作が自動化

自動で車線変更をする車

高速道路など特定の走行場所(限定領域)では、車に搭載されているAIが各センサーからの情報から判断して、自動で車を運転することが可能であれば、その車はレベル3に分類されます。レベル3は条件付運転自動化と定義され、自動運転システムが全ての運転タスクを実施します。日本でもレベル3の市販車(ホンダ レジェンドなど)が限定的に販売を開始しました。

自動運転が可能であるといっても、レベル3の車には、悪天候ではない、見通しがよい道路状況であるといったシステム作動の前提条件があります。緊急時や自動運転システムが作動継続を困難と判断した時には、システムからの介入要求に応じてドライバーが速やかに運転を引き継ぐ必要があります。この運転引き継ぎの責任がレベル3の特徴です。

レベル4 緊急時も含めて特定の場所では全ての運転動作が自動化

自動運転レベル4では、特定の場所(限定領域)であれば、システムが全ての運転タスクを実施し、緊急時であっても運転に関わる全ての動作を車側が行うことが可能です。高度運転自動化と定義されるレベル4では、システムが作動できない状況になっても、利用者が運転操作を引き継ぐことは期待されません。

レベル4の技術が実現すれば、限定された地域での無人タクシーやバスなどの自動運転サービスが可能になります。アウディは、フランクフルトモーターショー2017で、クラウドサービスによるビッグデータの活用や、AIの機械学習などの技術力を駆使して実現されるレベル4のコンセプトカーを出展したことで話題を集めました。現在、各国でレベル4の公道実証実験が活発に進められています。

レベル5 完全自動化

自動運転レベル5の車では、限定領域の制約がなく、ほとんど全ての運転シーンにおいて自動運転が可能となる高度な技術力を誇ります。これは完全運転自動化と定義されます。レベル4と異なり、地理的な制約が一切なくなります。

レベル5に達し完全自動化される車では、あらゆる条件下でAIが自律的に判断し全ての運転動作を行います。ドライバーは運転操作にかかわる必要がないため、レベル5の車ではハンドルやアクセルペダルは必要なくなり、車内の室内空間のデザインは様変わりします。これが自動運転技術の最終到達点です。

各自動車メーカーが実現した自動運転レベル2の特徴

2025年現在、多くの市販車の自動運転技術は部分運転自動化の「レベル2」が主流です。日産やスバルといった日本の自動車メーカーや、メルセデス・ベンツやアウディといった海外の自動車メーカーからレベル2を達成している車が多数販売されています。ここでは、レベル2を代表する先進技術の特徴を紹介します。

日産 プロパイロットは同一車線で車間距離を保つようにステアリング操作と速度調整を行う

2016年にセレナに搭載された同一車線内で活用できる「プロパイロット」は自動運転レベル2をクリアしています。ドライバーが設定した速度域に応じて、先行車との車間距離を保てるようにステアリング操作と速度調整をシステムが支援します。現在では、さらに技術を進化させたプロパイロット2.0がレベル2の技術として展開されています。

スバル アイサイト・ツーリングアシストはアクセルやブレーキを自動制御

新型レヴォーグなどに搭載されているスバル先進の安全技術「アイサイト・ツーリングアシスト」は、高速道路を走行中に渋滞が発生している状況や、車の速度が120km/hという条件まで、アクセル・ブレーキ、ステアリングを自動的に制御することが可能です。これはレベル2の技術として高い評価を受けています。

アイサイト・ツーリングアシストは白線を目印としてステアリング操作を行いますが、道路状況において車線が見えにくい場合や消えてしまっているケースも想定されるため、そういったケースであれば先行する車を追従して同一車線の走行維持をサポートします。常にドライバーの監視が必要です。

テスラ オートパイロットは先行車や車線に合わせて自動運転

電気自動車専門メーカーのテスラ社は、自動運転の分野でも高い評価を受けています。テスラのモデルSなどの車種に搭載される「オートパイロット」技術では、先行する車や車線に合わせて自動運転を支援します。また、オートレーンチェンジ機能も設定され、ドライバーの指示のもとで車線変更もサポート可能です。テスラは、将来的なレベル3以上を見据えた技術開発を積極的に行っています。

ベンツ インテリジェントドライブは車線変更もサポートする技術

メルセデス・ベンツEクラスやSクラスなどの車種に装備されている「インテリジェントドライブ」技術では、速度に応じた車間距離の維持と走行車線のキープを行います。また、「アクティブレーンチェンジアシスト」により、ドライバーのウインカー操作に応じて車線変更もサポート可能です。これらの技術もレベル2の定義に該当します。

メルセデス・ベンツは、レベル3の技術についても積極的に開発を進めており、限定的ながらもレベル3システム「ドライブパイロット」を市販車に搭載し始めています。これは自動運転技術の進歩を示すものです。

アウディ プレセンスシティは渋滞時に加減速を自動で行う

アウディA4・S5・Q7などの車種に搭載されている「プレセンスシティ」も自動運転レベル2に課されている条件をクリアする技術です。アウディは自動運転の技術開発に非常に積極的なメーカーの一つです。

パッケージングされている「トラフィックジャムアシスト」は、渋滞が発生している状況下や設定速度域内であれば、車の加減速やステアリングを調整して先行車との車間距離の維持をサポートします。これにより、渋滞時のドライバーの負担を大幅に軽減する効果があります。

フォルクスワーゲン オールイン・セーフティはステアリング操作も自動化

自動運転技術の開発において世界をリードするメーカーの一つであるフォルクスワーゲンは、ゴルフなどの車に、高次元の安全性を目指す「オールイン・セーフティ」のコンセプトのもと、先進の安全技術を搭載します。これらの技術の多くはレベル2に該当します。

渋滞時追従支援システムである「トラフィックアシスト(Traffic Assist)」では、あらかじめ設定した速度域ならば渋滞中などの走行シーンで、自動的にアクセルペダルやブレーキペダルが作動し、ステアリング操作も行われます。レベル2の技術は、長距離ドライブの安全と快適性に大きく貢献します。

BMW ドライビング・アシスト・プラスは車外からの操作で駐車できるリモートコントロールパーキングを装備

BMWは、2017年1月発売の5シリーズ以降、「ドライビング・アシスト・プラス」を拡充しました。このシステムには車線の中央の走行をサポートする「ステアリング&レーン・コントロール・アシスト」や、隣の車線を走行している車が車線変更を行って自車と衝突する恐れがある場合に自律的にステアリング操作を行う「アクティブ・サイド・コリジョン・プロテクション」を装備します。これらもレベル2の技術です。

オプションで追加設定できる、車外から操作可能な「リモート・コントロール・パーキング」も好評です。BMWは、ドライバーが主役であることを重視しつつ、自動運転技術を活用した安全と快適性の向上を目指しています。これらの先進技術はレベル2の特徴をよく表しています。

事故が起きてしまったら責任の所在はレベル3から変わってくる

自動運転レベル2までの車で事故が起きてしまった際の責任は、運転者にあります。なぜなら、レベル2まではシステムの監視や緊急時の運転は、ドライバーが行う定義だからです。この責任の所在は、自動運転のレベルを理解する上で最も重要なポイントの一つです。

自動運転レベル3以上からは、人に代わって車に搭載されるAIが状況に合わせて運転を行います。一部、例外事項は設けていますが、自動運転レベル3以上の車からは事故が起こった際の責任の所在は、システムの作動中であれば、原則として製造メーカー側に移ってきます。日本の法律も、このレベル3の責任の所在に対応するように改正されました。

日本の公道ではレベル3の市販車は走行可能になった

自動運転レベル3に達している車が日本で発売されても、かつては法律や保険制度などの社会的側面が整備されるまで、日本の公道を走行することはできませんでしたが、現在では法律が改正され、レベル3の市販車は限定的ながらも走行可能になりました。高速道路では、信号機がない、歩行者がいないなど、一般道と比べれば自動運転のハードルは低いため、高速道路での運転の自動化が先に実現しています。

内閣府が公開する「官民ITS構想・ロードマップ」では、レベル3の技術は既に実用化され、今後はレベル4の技術とサービスの実現を目指しています。一般道の走行では、高速道路の自動運転よりもクリアすべき課題が多いため、レベル3以上の一般道での実用化は、さらに技術や社会制度の整備を必要とします。

損害保険会社はレベル3以上に対応できる商品を開発していきます

レベル3の自動運転車は既に市販されており、保険による補償があれば積極的に利用したいとの回答がユーザーの間でも多いというデータがあります。そういった自動運転化時代のニーズに対応するため、各損害保険会社は自動運転レベル3の車のトラブルに対応できる保険商品を開発しています。自動運転における責任の主体が変わりつつあるため、保険の仕組みも変わる必要があります。

更なる先の時代を見据えて、損害保険ジャパン日本興和株式会社と東京大学はレベル4以上の自動運転に対応する保険商品の開発を目指して研究チームを発足させました。自動運転の技術の進化に伴い、保険の技術も進化していくことになります。

現在開発中の自動運転の未来像・サービス

自動運転技術は世界中で実用化に向けて加速しています。日本でも自動運転実用化に向けた法改正や技術開発が進み、現実味を帯びてきています。ここでは、日本の自動運転技術が目指す未来像について解説します。

トヨタ Mobility Teammate Concept

1990年代から自動運転技術の研究に取り組んでいたトヨタは「Mobility Teammate Concept」のテーマを掲げています。これは、自動運転の技術を導入することで「交通事故死者数ゼロ」や、年齢や身体の不自由な方でも自由に移動できる乗り物の開発を目指すものです。

トヨタは未来社会で、人とクルマが見守り合い・助け合いのパートナーシップを築き、人が車を操る楽しさを体感できる自動運転可能な車の開発を目指します。このコンセプトは、自動運転と運転の楽しさを両立させようというトヨタの特徴を表しています。

DeNA ロボットタクシー

IT企業のDeNAは、バスのように一定のルートを循環させる「ロボットタクシー」の開発を目指しています。このロボットタクシーは、自動運転レベル4以降の技術を利用するサービスです。

将来的にはタクシーよりも低料金で、路線バスよりもフレキシブルに運行ルートに対応できる可能性を秘めているロボットタクシーは、交通問題を抱えている過疎地域において救世主的な乗り物となるかもしれません。ロボットタクシーの実用化は、すでに限定地域でサービスが開始されています。

自動運転レベルが上がっていくにつれて社会はどんどん変化

自動運転

現在、市販されている車のほとんどは自動運転レベル2の条件をクリアしています。これから時代が進むにつれて販売される車の割合は、段階的にレベル2、レベル3、レベル4、レベル5の車がどんどんと増えていくでしょう。自動運転技術の進歩は、自動車産業だけでなく、社会全体に大きな変化をもたらします。

自動運転のレベルが上がっていくにつれ、その流れに合わせて社会はどんどん変化していきます。事故が発生した時の責任の所在がドライバーから製造メーカーに移行するにつれ、法律の改正や保険商品の組み換えが必要となります。これが自動運転化社会の特徴です。

確実にやってくるであろう自動運転レベル5の時代には、ドライバーが車を運転することを前提にして作られている交通ルールは、大幅に変わるでしょう。無事故・無違反が当たり前の社会となっているかもしれません。自動運転の技術の進化は、社会を大きく変えていくだけの力を持っています。