自動運転レベル別特徴や定義と技術の進歩で変わっていく未来社会
車を自分で運転する事を楽しんでいる方にとっては、複雑な心境を抱いてしまう自動運転化時代は将来確実にやってきます。
「トヨタとホンダは2020年をめどに自動運転レベル3の実用化を目指す!」と言われても、さっぱりわからない方も多いのではないでしょうか。そんな方々に向けて自動運転のレベル別、特徴や定義を紹介します。
人に変わってAI(人工知能)が車を運転する時代が到来した時に、変化していく未来社会の姿も取り上げます。自動運転化時代では、人が車を運転するのではなく、システムがきちんと作動しているのかをチェックする役目を人が担います。
非営利団体のSAEが定めた自動運転レベルの定義
航空機や自動車などの乗り物に携わる技術者や研究者が10万人以上も参加している非営利団体であるSAEが決めた自動運転のレベルに関する定義を紹介します。
自動運転の技術が進化していくと、これからの時代の車選びでは自動運転のレベル1や2の車がどのように定義されている車なのか、確認するのが大切です。
レベル | 概要 | 安全運転に係る 監視、対応主体 |
---|---|---|
運転者が全てあるいは一部の運転タスクを実施 | ||
SAE レベル0 運転自動化なし |
・運転車が全ての運転タスクを実施 | 運転者 |
SAE レベル1 運転支援 |
・システムが前後・左右のいずれかの 車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施 |
運転者 |
SAE レベル2 部分運転自動化 |
・システムが前後・左右の両方の 車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施 |
運転者 |
自動運転システムが全ての運転タスクを実施 | ||
SAE レベル3 条件付運転自動化 |
・システムが全ての運転タスクを実施 (限定領域内) ・作動継続が困難な場合の運転者は、 システムの介入要求等に対して、 適切に応答することが期待される |
システム (作動継続が困難 な場合は運転者) |
SAE レベル4 高度運転自動化 |
・システムが全ての運転タスクを実施 (限定領域内) ・作動継続が困難な場合、 利用者が応答することは期待されない |
システム |
SAE レベル5 完全運転自動化 |
・システムが全ての運転タスクを実施 (限定領域内) ・作動継続が困難な場合、 利用者が応答することは期待されない |
システム |
自動運転レベル0~5の車はどのような特徴を持っているのかレベル毎に紹介
自動運転レベルの定義は、抽象的な表現で簡潔にまとめられていますが、そういった文言には慣れていない方にとっては把握し難いので、レベル0~5はどんな特徴を持つ車なのかについてわかりやすく紹介していきます。
レベル0 全ての運転操作をドライバーが行う
ステアリング操作や、状況に応じたアクセルペダルとブレーキペダルを踏みこんでの加減速、シフトレバーといった運転に関わる全ての操作はドライバーが行います。
ドライバーの視野をサポートする後方死角検知機能やアンチロック・ブレーキシステムなど、警戒音を発生させるモニターに表示させてドライバーに注意喚起を与える装備はレベル0に分類されます。レベル0の自動運転の技術は注意喚起を行いますが、運転サポートは行いません。
レベル1 運転の動作を単独サポート
自動運転レベル1は、ハンドル操作や加減速などのいずれかを運転の動作をサポートするシステムを備えた車が分類されます。
走行中に危険を判断すると自動でブレーキを発動、走行中の車線からはみ出してしまった際のステアリング操作などを単独で行う事が可能です。現在販売されている車のほとんどは、自動運転レベル1の基準をクリアしています。
レベル2 複数の安全技術が連携して運転をサポート
一定の車間距離を維持しながら車線からはみ出さないように車を運転する、渋滞時に走行車線を維持しながら先行車の後を追随するなど、ハンドル操作・加減速などの複数の運転動作が必要となるシーンにおいて、複数の安全技術が連携して運転をサポートできる技術力が搭載されている車が自動運転レベル2に該当します。自動運転レベル2をクリアしている車は、すでに各自動車メーカーから販売されています。
レベル3 特定の場所では全ての運転動作が自動化
高速道路など特定の走行場所では、車に搭載されているAIが各センターから送られる情報から判断して、自動で車を運転することで可能であれば車はレベル3に分類されます。
自動運転が可能であるといってもレベル3の車には、悪天候ではない・見通しがよい道路状況であるといった条件。緊急時や自動運転システムがうまく発動しない時には、ドライバーがAIに変わって運転する必要があります。
自動運転技術に力を入れるフォルクスワーゲングループに属するアウディは、2018年以降にA8で自動運転レベル3を達成した車をラインナップさせる事を発表しています。自動運転先進国であるドイツは、行政も積極的で自動運転化時代に対応できる法律へと改正しました。
レベル4 緊急時も含めて特定の場所では全ての運転動作が自動化
自動運転レベル4では、特定の場所であれば緊急時であっても気象条件等が整っていれば、運転に関わる全ての動作を車側が行う事が可能です。
アウディはフランクフルトモーターショー2017で、クラウドサービスによるビッグデータの活用、AIの機械学習などの技術力を駆使して実現されるレベル4のコンセプトカーを出展した事で話題を集めました。
レベル5 完全自動化
レベル5の車ではほとんど全ての運転シーンにおいて、自動運転が可能となる高度な技術力を誇ります。
レベル5に達し完全自動化される車では、あらゆる条件下でAIが自律的に判断し全ての運転動作を行います。ドライバーは運転動作にかかわる事がないため、レベル5の車ではハンドルやアクセルは必要なくなり室内空間のデザインは様変わりします。
各自動車メーカーが実現した自動運転レベル2の特徴
2019年現在、市販車の自動運転は部分運転自動化の「レベル2」が最高です。日産やスバルといった日本の自動車メーカーや、ベンツやアウディといった海外の自動車メーカーでレベル2を達成している車には、どのような先進技術が搭載されているのかを紹介します。
日産 プロパイロットは同一車線で車間距離を保つようにステアリング操作と速度調整を行う
2016年セレナに搭載された同一車線で活用できる「プロパイロット」は自動運転レベル2をクリアしています。ドライバーがセッティングした速度域に応じて先行車との車間距離を保てるようにステアリング操作と速度調整を行います。
スバル アイサイト・ツーリングアシストはアクセルやブレーキを自動制御
新型レヴォーグに搭載されているスバル先進の安全技術の「アイサイト・ツーリングアシスト」では、高速道路を走行中に渋滞が発生・車の速度は120km/hという条件であれば、アクセル・ブレーキ、ステアリングを自動的に制御することが可能です。
アイサイト・ツーリングアシストでは白線を目印としてステアリング操作を行いますが、道路状況において車線が見えにくい場合や消えてしまっているケースも想定されるため、そういったケースであれば先行する車を追従して同一車線の走行の維持をします。
テスラ オートパイロットは先行車や車線に合わせて自動運転
電気自動車専門メーカーのテスラ社は、自動運転の分野でも高い評価を受けています。テスラのモデルSなどの車種に搭載されるオートパイロット技術では、先行する車や車線に合わせて自動運転を行います。また、オートレーンチェンジ機能も設定され車線変更も可能です。
ベンツ インテリジェントドライブは車線変更もサポートする技術
ベンツEクラスやSクラスなどの車種に装備されているインテリジェントドライブ技術では、スピードに応じた車間距離の維持と走行車線のキープを行います。アクティブレーンチェンジアシストにより、車線変更もサポート可能です。
アウディ プレセンスシティは渋滞時に加減速を自動で行う
アウディA4・S5・Q7などの車種に搭載されているプレセンスシティも自動運転レベル2に課されている条件をクリアします。
パッケージングされているトラフィックジャムアシストは、渋滞が発生している状況下・設定速度域内であれば、車の加減速やステアリングを調整して先行車との車間距離の維持をサポートします。
フォルクスワーゲン オールイン・セーフティはステアリング操作も自動化
自動運転技術の世界のトップリーダーとも言えるフォルクスワーゲンは、ゴルフなどの車に高次元の安全性を目指すオールイン・セーフティのコンセプトのもと、先進の安全技術を搭載します。
渋滞時追従支援システムである「トラフィックアシスト(Traffic Assist)」では、あらかじめ設定した速度域ならば渋滞中などの走行シーンで、自動的にアクセルペダルやブレーキペダルが発動しステアリング操作も行われます。
BMW ドライビング・アシスト・プラスは車外からの操作で駐車できるリモートコントロールパーキングを装備
2017年1月発売のBMW5シリーズには車線の中央の走行をサポートする「ステアリング&レーン・コントロール・アシスト」、隣の車線を走行している車が車線変更をおこなって自車と衝突する恐れがある場合に自律的にステアリング操作を行う「アクティブ・サイド・コリジョン・プロテクション」を装備します。オプションで追加設定でき車外から操作可能な「リモート・コントロール・パーキング」も好評です。
事故が起きてしまったら責任の所在はレベル3から変わってくる
自動運転レベル2までの車で事故が起きてしまった際の責任は運転手にあります。自動運転レベル3以上からは、人に変わって車に搭載されるAIが状況に合わせて運転を行います。
一部、例外事項は設けてはいますが、自動運転レベル3以上の車からは事故が起こった際の責任の所在は製造メーカー側に変わってきます。
日本の公道ではレベル3の市販車は走行できない
自動運転レベル3に達している車が日本で発売されても、法律や保険制度等の社会的側面が整備されるまでには、日本の公道を走行する事ができません。高速道路では、信号機がない・歩行者がいないなど、一般道と比べれば自動運転のハードルは低いため高速道路での運転の自動化が先に実現します。
内閣府が公開する「官民ITS構想・ロードマップ2017」では、オリンピックイヤーである2020年に高速道路での自動運転レベル3の車の走行を目指します。一般道の走行では高速道路の自動運転よりもクリアすべき課題が多いため、2020年よりもタイミングが遅れます。
損害保険会社はレベル3以上に対応できる商品を開発していきます
2020年の実用化が期待される自動運転レベル3の車は、保険による補償があれば積極的に利用したいとの回答が8割近くに達しているデータがあります。そういった自動運転化時代のニーズに対応するため、各損害保険会社は自動運転レベル3の車のトラブルに対応できる保険商品を開発していきます。
更なる先の時代を見据えて、損害保険ジャパン日本興和株式会社と東京大学はレベル4以上の自動運転に対応する保険商品の開発を目指して研究チームを発足させました。
2019年以降に日本で実用化される現在開発中の自動運転の未来像・サービス
自動運転技術は世界中で実用化に向けて加速しています。2019年以降には日本でも自動運転実用化に向けた法改正も進み、現実味を帯びてくるでしょう。日本の自動運転技術について解説します。
トヨタ Mobility Teammate Concept
1990年代から自動運転技術の研究に取り組んでいたトヨタは「Mobility Teammate Concept」のテーマを掲げ、自動運転の技術を導入することで「交通事故死者数ゼロ」年齢や身体の不自由な方でも自由に移動できる乗り物の開発を目指します。
トヨタは未来社会で、人とクルマが見守り合い・助け合いパートナーシップを築いて人が車を操る楽しさを体感できる自動運転可能な車の開発を目指します。
DeNA ロボットタクシー
IT企業のDeNAは、バスのように一定のルートを循環させるロボットタクシーの開発を目指します。将来的にはタクシーよりも低料金で、路線バスよりもフレキシブルに運行ルートに対応できる可能性を秘めている、ロボットタクシーは交通問題を抱えている過疎地域において今度の救世主的な乗り物です。ロボットタクシーは2020年に開催される東京オリンピックまでの実用化を目指します。
自動運転レベルが上がっていくにつれて社会はどんどん変化
2017年現在、販売されている車のほとんどは自動運転レベル1の条件をクリアしています。これから時代が進むにつれて販売される車の割合は段階的にレベル2、レベル3、レベル4、レベル5の車がどんどんと増えていきます。
自動運転のレベルが上がっていくにつれ、その流れに合わせて社会はどんどん変化していきます。事故が発生した時の責任の所在がドライバーから製造メーカーに移行するのにつれ、法律の改正や保険商品の組み換えが必要となるでしょう。
確実にやってくるであろう自動運転レベル5の時代には、ドライバーが車を運転する事を前提にして作られている交通ルールは、大幅に変わるでしょう。無事故・無違反が当たり前の社会となっているかもしれません。自動運転の技術の進化は、社会を大きく変えていくだけの力を持っています。