B2Vを利用した運転支援技術

日産B2Vとは何か?脳波で運転をサポートするBrain-to-Vehicle技術の仕組みと将来性

自動運転時代でも「人がクルマをコントロールする」を実現する日産のB2V技術。脳波測定による運転アシスト・快適性向上の2つの機能と、CES 2018以降の技術展示の経緯も詳しく紹介します。

日産B2Vとは何か?脳波で運転をサポートするBrain-to-Vehicle技術の仕組みと将来性

日産B2V(Brain-to-Vehicle)とは?脳波で運転をサポートする仕組みと可能性を徹底解説

日産自動車が2018年1月に発表したB2V(Brain-to-Vehicle)は、ドライバーの脳波をヘッドセットでリアルタイム測定し、得られたデータを運転サポートや車内環境の最適化に活用する先端技術です。

自動運転が普及しても「人が運転に積極的に関与できる仕組み」を実現するという逆転の発想から生まれたB2Vは、日産が掲げる「ニッサン インテリジェントモビリティ」のビジョンの一環として研究が進められています。

この記事では、B2Vの仕組み・運転サポートの具体的な効果・将来の応用可能性について詳しく解説します。

B2Vの基本的な仕組み:脳波データを車の制御システムへリアルタイム送信

脳波を測定するためのヘッドギア

B2Vの基本的な流れは以下の通りです。

  • ドライバーがヘッドセット型のデバイスを装着して乗車する
  • ヘッドセットが脳波をリアルタイムで測定・データ化する
  • 得られた脳波データを車の制御システムに送信する
  • システムがデータを解析し、運転サポートや車内環境の調整に反映する

日産副社長(当時)のダニエレ・スキラッチ氏は「将来の自動運転社会では、人間はクルマをコントロールしないと考える人が多いかもしれません。しかし、この技術はその反対です」とコメントしており、B2Vは自動運転時代においても人とクルマの積極的な関わりを維持することを目指した技術です。

なお、B2Vは日産とスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のBCI(ブレイン・コンピューター・インターフェース)研究チームとの約4年間の共同研究から生まれた技術であり、学術的な裏付けを持っている点も特徴のひとつです。

B2Vが運転サポートで実現する2つの機能

B2Vのヘッドギアを装着してシミュレーションする男性

①反応時間を0.2〜0.5秒短縮する運転アシスト

人がステアリングを切る・ブレーキを踏むといった運転動作を意識した瞬間、脳内では「行動準備電位」と呼ばれる電気信号が発生します。B2Vはこの信号を世界で初めてリアルタイムで検出することに成功しました。

検出した信号を車の制御システムへ即時送信することで、ドライバーが実際に体を動かすよりも0.2〜0.5秒早く運転操作のサポートを開始できます。この数値は一見小さく感じるかもしれませんが、時速60kmで走行中には約3〜9mの制動距離の差に相当し、事故回避への寄与は非常に大きいといえます。またドライバーはシステムのサポートを意識することなく、自然でスムーズな運転感覚を得られます。

②脳内エラーの検知による快適性向上

脳波の測定結果を見る日産の研究員

B2Vはドライバーが「イメージしていた運転状態」と「実際の車の動き」に差異を感じた際に脳内で発生する「エラー関連電位(Error Related Potential)」も測定できます。

例えば、自動運転中のコーナリングや速度変化に違和感を覚えた場合、その脳波データがフィードバックされることでシステムが走行特性を補正します。ドライバーが言葉で指示しなくても、感覚レベルの「気持ちよさ」をシステムに学習させることができる点がB2Vの大きな特徴です。

B2Vが将来もたらすイノベーションの可能性

リアルタイムに脳波の様子を観察する技術者

B2Vの研究をリードする日産のルチアン・ギョルゲ シニア・イノベーション・リサーチャーは「この技術の適用には大きな可能性があります。B2Vの研究が触媒となり、将来、より多くのイノベーションが日産車にもたらされるでしょう」とコメントしています。

B2Vの技術を実験する日産の研究員

運転サポート以外にも、B2Vは車内環境全体のパーソナライズに応用できる可能性があります。具体的に検討されている活用例は以下の通りです。

  • 空調の自動調整:脳波から快適と感じる温度・風量をリアルタイムで判定し、自動で最適な室内環境に設定
  • インフォテインメントシステムの最適化:ドライバーの集中度や疲労度に応じて、音楽・情報表示などを自動で調整
  • シートや照明のカスタマイズ:搭乗者の気分・状態に合わせた車内空間の個人最適化
  • AR(拡張現実)との連携:脳波に基づいてドライバーの視線方向の車内環境を調整し、よりリラックスできる空間を演出

また日産は、脳を電気的に刺激することでドライバーのパフォーマンス向上を図る研究も進めています。初めてのコースを10回走行するテストでは、脳への電気刺激を受けたグループは受けなかったグループと比べて約半分のタイムで走行し、半分の時間でコースを覚えることができたと報告されています。

これらは現時点では研究段階の技術ですが、脳波技術と車載システムの統合という方向性は、将来の車づくりに新たな視点をもたらすものとして業界内外から注目されています。

B2VはCES 2018で初めてデモ展示され、その後も国際イベントで継続的に紹介されている

B2Vと日産の車

B2Vは2018年1月9日〜12日にラスベガスで開催された世界最大級の家電・技術見本市「CES 2018」において、ドライビングシミュレーターを用いたデモ展示として初公開されました。同展示では実際にヘッドセットを装着してシミュレーターを体験する形式が取られ、脳波から運転サポートへとつなぐシステムの動作を来場者が体感できる内容でした。

その後、2018年3月のジュネーブ国際モーターショーではB2Vを搭載したコンセプトカー「ニッサン IMx KURO」が公開され、2019年6月に上海で開催された「CES Asia 2019」でも引き続きデモ展示が行われるなど、継続的に国際的な場で技術が紹介されています。

B2Vは現時点では研究・開発段階の技術ですが、「自動運転が普及しても人とクルマのつながりをより深める」という思想は、今後の自動車開発における重要な視点のひとつとして業界内外から注目を集め続けています。