パワステオイルの交換

パワステオイルの役割・適切な交換時期と費用の目安

パワステオイルは油圧を発生させてステアリングのサポートを行う上で必要な液体。運転中の異音などで確認するチェック法や適切な交換時期、自分でもできるオイルの継ぎ足し法や業者に依頼した際にかかる費用の目安。

パワーステアリングフルード(パワステオイル)の交換時期の目安や交換方法、費用

油圧方式を採用するパワーステアリング(パワステ)にとって必要不可欠な作動油が、パワーステアリングフルード(パワステフルード)です。現在では電動式パワーステアリング(EPS)が主流となったため、フルードのニーズは減少しています。

しかし、油圧式パワステによるダイレクトで爽快なハンドル操作感を支持するドライバーも多くいます。こうしたニーズに応えるため、電動の制御を取り入れた「電動油圧パワーステアリングシステム(EHPS)」も開発されました。
この電動油圧パワステにも用いられるパワステフルードの交換時期の目安や、交換を専門業者に依頼した際の費用などをご紹介します。

パワステフルードの役割は油圧の素となりハンドル操作のサポートを行うこと

パワステフルードの状態が良好であれば、油圧によってハンドル操作はサポートされます

パワステフルードを圧力の素として利用する油圧式パワーステアリングは、エンジンの動力を利用してポンプを作動させ、フルードに油圧を作り出します。この油圧がハンドル操作をアシストするエネルギーとして活用されます。

パワステフルードは、単なる作動油としてだけでなく、内部のギヤや軸受けなどの潤滑油としての役割も担っています。そのため、耐摩耗性、耐熱性、酸化安定性などの高い性能が求められます。

フルードの状態が良く十分な量が確保されることで、運転中のハンドル操作が軽くスムーズになります。フルードは使用期間が長引けば劣化し、潤滑性や耐熱性が低下します。劣化状態を放置し続けると、異音の発生やオイル漏れなどのトラブルに発展し、パワステ機構全体の故障につながるリスクが高まります。
このような事態を避けるためには、パワステフルードの適切な交換時期を知ることが大切です。

交換時期の目安は走行距離2万kmまたは2年毎

油圧式パワステは、フルードの圧力でハンドリングのサポートを行います。この圧力は、パワステを構成する内部パーツにも常に加わるため、長期間の使用によりその負担は蓄積します。

油圧の影響を強く受けることで、フルードの通り道であるホースが損傷したり、つなぎ目にダメージを受けたりすることで、パワステフルードが外部に漏れ出してしまうこともあります。フルードが漏れ出していれば、油圧によるサポート力が弱まり、ハンドルが重く感じる原因となります。

ホースなどの各パーツに損傷が起きていても、フルードを継ぎ足すだけで一時的に回復する場合もあれば、パーツそのものを交換しなければならないケースもあります。

パワステフルードの交換を考えるべき一般的な時期は、走行距離2万kmごと、または2年に1回のタイミングとされています。ただし、車種や使用状況によっては、3万~5万km、3~5年が目安とされることもあります。定期的にフルードの交換を行うことで、パワステを構成する内部パーツの寿命を延ばし、故障を防ぐことにつながります

パワステフルードのメンテナンスチェック法

パワステフルードの交換時期は、一般的な目安がありますが、街中での走行が多く頻繁にハンドリングを行うなどの条件が重なれば、そのタイミングは早くなります。
フルードの劣化や不足は、車の安全性や操作性の低下に直結します。そのため、もし異常が起きていれば早い段階で気づくことが重要です。

ここでは、パワステフルードやパワステ機構の異常を発見するためのメンテナンスチェック法をご紹介します。

     
  • ハンドル操作時などに「ウィーン」「キュー」などの異音がする(主にポンプの不調やエア混入)
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  • 運転中に油分が焼けたような焦げ臭い匂いがしている(フルード漏れや過熱の可能性)
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  • ハンドル操作を行った際に重い、または引っかかりなどの違和感がある
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  • リザーバータンク内のフルードに黒味が増している
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  • リザーバータンク内のフルードの残量が最低ライン(COLD MIN)以下となっている

これらの項目に該当する場合、パワステフルードの状態やパワステ機構そのものに異常が起きている可能性が高いです。特に異音や焦げ臭い匂いは、早期の点検を強くお勧めします。

パワステフルードの交換手順と注意点

パワステフルードの交換方法には、古いフルードを完全に抜き取る「全量交換」と、タンク内のフルードを少しずつ入れ替える「希釈交換」があります。全量交換は、配管内のエア抜き作業が難しく、専門的な知識と工具が必要となるため、カー用品店や整備工場などの専門業者に依頼することをお勧めします。

ここでは、参考情報として古いフルードを少しずつ抜いて新しいフルードを注入していく希釈交換の方法をご紹介します。ご自身での作業に不安を感じる場合は、無理せずプロにお任せください。

1.交換に必要な道具を揃える

パワステフルードを交換する時に必要となるアイテムは以下の通りです。

     
  • 新しいパワステフルード(車種指定の規格に合ったもの)
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  • オイルサクションガン(古いフルードの吸入・新しいフルードの注入に用いる)
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  • 軽量カップやオイルジョウゴ
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  • 廃油を入れるための容器や処理パック
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  • ジャッキ(可能であれば)

2.タンクから古いフルードを抜く

エンジンを切った状態で、パワステフルードが入っているリザーバータンクのキャップを外し、オイルサクションガンを用いて古いフルードを吸入します。吸入したフルードは、廃油を入れるために用意した容器へ移します。

抜き取る際の注意点は、タンク側面に記されている最低ライン(COLD MIN)以下とならないようにすることです。フルードを抜きすぎて最低ラインを下回ると、配管内に空気が混入するなどの問題が生じやすくなります。

3.新しいパワステフルードを注入

パワステオイルの注入はオイルジョウゴでも行えます

古いフルードを抜いた量と同量を新しいフルードで補充します。新しいパワステフルードを注入するときの注意点は、タンク側面に記載されている最大ライン(COLD MAX)を超えないようにすることです。

4.ハンドルを左右に数回まわす

パワステオイルを注入したらハンドルを左右に数回まわして機構内を循環させます

新しいフルードを補充できたらタンクのキャップを閉めて、エンジンをかけてから、フルードを機構内のパーツに循環させるためにハンドルを左右に数回まわします。これを数回繰り返し、古いフルードの色が薄くなるまで「抜き取り→注入→循環」の作業を繰り返します。前輪を浮かした状態で行うか、周辺をドライブすることでよりスムーズに循環が行われます。

5.抜き取ったフルードを処理

吸入した古いパワステフルード(廃油)は、廃油処理パックに吸収させるなどし、お住まいの自治体のルールに従って適切に処理してください。オイルやフルードは、そのまま下水などに流してはいけません。

パワステフルードの交換費用は3,000円前後が目安です

パワステフルードの交換をカー用品店に依頼した時の交換費用の相場は3,000円前後が目安です(フルード代、工賃込み)。ただし、価格は店舗や使用するフルードの種類によって異なります。

カー用品店 交換費用(目安) 作業目安時間
オートバックス 軽自動車:3,780円~(税込)
RV・ワンボックス:4,860円~(税込)
20分~
イエローハット 1,620円~(税込) 15分~
ジェームス 3,140円~(税込) 15分~

パワステフルードの交換をしても、異音が続いたりハンドルが重いという状態が続いたりする場合は、パワステを構成するパーツの故障が考えられます。複数のパーツに故障が起こっているケースも想定され、そのときは修理費用がかさむため、車の買い替えを考える人も少なくありません。

パワステパーツの不具合 目安となる価格
ホース交換(1本あたり) 10,000円~
パワステギアボックス(ラック&ピニオン) 70,000円~
パワステポンプ交換費用 30,000円~
パワステコントローラ交換 70,000円~

パワステフルードのニーズは今後も一定数維持されます

車を運転するときに、走行シーンに合わせて方向を決めるハンドリング。そのサポートを担うパワステにとって大切な液体のフルードに不具合が起きていれば、車の安全性は低下します。

現在、販売されている車の多くは、フルードが不要な電動式パワステ(EPS)が主流となっているため、以前と比べればフルードのニーズは減少しています。

フルードの力でハンドルのサポートを行う油圧式パワステの魅力は、ダイレクトなフィーリングでより気持ちよくハンドリングを行えるということです

最近では、そのメリットを活かそうと電動式と油圧式を組み合わせた「電動油圧パワーステアリングシステム(EHPS)」が誕生し、支持を集め始めています。
今後も一定数の油圧式パワステ搭載車、およびEHPS搭載車が存在し続けることで、パワステフルードのニーズは維持されると考えられます。