ループコイル式オービスの仕組みとは?固定式・移動式のタイプ別特徴を解説
オービスの正式名称は「自動速度違反取締装置」です。パトカーや白バイによる人海戦術では検挙しきれない、法定速度を大幅に上回るスピードで走行する車両のナンバープレートとドライバーを自動撮影して特定するために設置されています。
固定式オービスは「ループコイル式」と「レーダー式」に大別されますが、2016年以降はレーザー方式を採用する機種が増え、現在は移動式オービスの47都道府県への配備も完了しており、固定式オービスの場所だけを覚えていれば安全という時代ではなくなっています。
本記事では、ループコイル式・レーダー式・レーザー式それぞれの速度計測の仕組み、固定式・移動式オービスのタイプ別特徴、撮影される速度の目安と処罰の内容をわかりやすく解説します。
オービスの速度計測方式は3種類:ループコイル・レーダー・レーザー
固定式オービスが速度を計測する方式は大きく3種類あります。それぞれの仕組みを理解しておくと、各タイプの特性も把握しやすくなります。
| 方式 | 計測の原理 | レーダー探知機での検知 |
|---|---|---|
| ループコイル式 | 路面に埋設したコイルのインダクタンス変化 | × 検知不可 |
| レーダー式 | ドップラー効果(反射電波の波長変化) | ○ 検知可能 |
| レーザー式(LiDAR) | レーザー光の反射による移動量計測 | × 検知不可 |
ループコイル方式:路面内のコイルで通過時間を計測
ループコイル方式は、アスファルト路面の内部に長方形の溝を掘り、そこに特殊コイル(A=スタートループ、B=コントロールループ、C=ストップループ)を埋設して計測します。高周波電流を流しているコイルの上を車が通過するとインダクタンスが変化し、車の通過を検知します。
A〜B間・B〜C間(計測エリアは一般的に約6.9m)を通過するのにかかった時間から速度を算出する仕組みです。複数車両が連なっていても比較的正確に違反車両を特定できますが、降雪で路面が変化しやすい北海道などの雪国では定着率が低い傾向があります。
なお、ループコイル方式はオービスだけでなく、駐車場の発券機・カーゲートの開閉・料金精算など幅広い分野でも活用されています。
レーダー方式:ドップラー効果で速度を割り出す
レーダー方式では、走行車両にレーダーを照射し、跳ね返ってきた反射波の波長変化(ドップラー効果)から速度を算出します。救急車がすれ違うときにサイレン音の高さが変わる現象と同じ原理です。レーダーを照射するため、市販のレーダー探知機で検知が可能です。
レーザー方式(LiDAR):精度の高い光学計測
LiDAR(ライダー:Light Detection and Ranging)技術を用いたレーザー方式は、レーザー光で走行車両をスキャンし、接近画像を連続描写してその移動量から速度を導き出します。電波を使わないため、レーダー探知機では検知できません。精度が高く、複数車線・複数車両の同時計測も可能です。現在は固定式・移動式を問わず、このレーザー方式に切り替わる機種が増えています。
オービス手前1〜3kmに速度警告板が設置されている理由
オービスはドライバーや同乗者を無断で撮影するため、プライバシー権・肖像権との関係が問題となります。最高裁の見解では、オービス撮影に違法性はないものの、撮影した写真を速度超過の証拠として採用するには「撮影の事前告知」と「犯罪行為時の撮影」という2条件を満たす必要があるとされています。
このため、管轄する公安委員会・道路管理者はオービス設置場所の1〜3km手前数箇所に速度警告板を取り付けています。この警告板の有無がオービスとNシステム(後述)を見分ける際の重要な判断基準にもなります。
オービスには「固定式」と「移動式」がある
オービスは設置方法によって、高速道路や幹線道路に常設する「固定式タイプ」と、パトカーやワゴン車に積んで移動しながら取り締まる「移動式タイプ」に分かれます。
固定式オービスの種類 ※[]:通称
- レーダー式オービス[R]
- ループコイル式オービス[L]
- Hシステム式[H]
- LHシステム式[LH]
- センシスSSS[SS]
- レーザー式L型[Li]
- レーザー式Hシステム[LiH]
移動式オービスの種類 ※[]:通称
- 移動式車両オービス[iC]
- 移動式中型オービス(半可搬式)[iM]
- 移動式小型オービス(可搬式)[iS]
固定式オービスのタイプ別特徴
全国の高速道路・幹線道路・生活道路の一部に設置されている固定式オービスを、タイプ別に解説します。
| タイプ | レーダー探知機 | 通知書の速度 | 測定法 |
|---|---|---|---|
| レーダー式 | 〇 | 遅い | レーダー |
| ループコイル式 | × | 遅い | ループコイル |
| Hシステム | 〇 | 早い | レーダー |
| LHシステム | × | 早い | ループコイル |
| センシスSSS | 〇 | 早い | レーダー |
| レーザー式L型 | × | 早い | レーザー |
| レーザー式Hシステム | × | 早い | レーザー |
レーダー式オービス:最も古いタイプ、視覚的に見分けやすい
レーダーを手前に設置してカメラを奥に配置する「レーダー式オービス」は、最も古いタイプです。アーチ状の構造が視覚的にわかりやすい一方、照射する電波がレーダー探知機に検知されやすく、フィルム切れで撮影データが残らないという欠点もありました。雨天時・先行車との車間距離が不十分な場合に計測できないこと、1機で1車線しか計測できないことも弱点です。現在、実際に稼働しているレーダー式オービスは少なく、ダミーのまま残されているものもあります。
ループコイル式オービス:路面に埋めた測定器で正確に計測
高速道路・幹線道路を中心に設置されているループコイル式オービスは、路面に埋設した測定器で速度を2回計測し、2回とも法定速度を大幅に上回る数値が出た場合に、路肩や中央分離帯に目立たないよう設置されたカメラで撮影します。
路面に測定器が埋まっていてカメラも目立たない設計のため、目視での発見が難しく、レーダー探知機でも検知できません。初期モデルは赤外線カメラやフィルム式でしたが、更新・新設されたモデルはデジタルカメラ+通信機能を備えています。複数台連なっての走行でも比較的正確に違反車両を特定できる点が強みです。
Hシステム:白い正方形状のアンテナが目印
かつて日本に設置されるオービスの半数以上を占めていたとも言われるHシステムは、アーチに取り付けた白い正方形のレーダーアンテナで速度を計測し、赤外線ストロボとデジタルカメラで違反車両を撮影します。レーダー探知機に探知されにくいよう照射パターンを変化させる仕組みを持ちます。積雪の影響を受けやすいループコイル式が普及しにくい寒冷地にも導入されています。
現在は、大阪府豊中市をはじめ各地のHシステム設置場所に、LiDARユニットを組み込んでレーザー計測に切り替えた事例が見られます。耐用年数を迎えたH型はレーザー式Hシステム(LiH)へ代替されるケースが増えています。
LHシステム:ループコイルとHシステムを融合した高速対応モデル
1994年に運用を開始したLHシステムは首都高などの交通量の多い幹線道路を中心に配備されています。ループコイル式で速度を計測し、デジタルカメラ・赤外線ストロボで違反車両を撮影。画像データは専用回線で即座に管轄警察署へ転送されます。
アーチをまたぐ構造ではなく目立ちにくい外観のため、類似した外観のNシステムと混同されることがあります。見分けるポイントは「数km手前に速度警告板があるか」と「撮影時に強くフラッシュが光るか」の2点です。オービスは違反行為を意識させるためにフラッシュを強く発光させます。
センシスSSS:ゾーン30などの生活道路に配備
スウェーデンのSensys Gatso Group社が開発したSENSYS SSSは、従来の固定型と比べてコンパクトで設置・撤去がしやすい新型オービスです。レーダー方式で速度を計測し、1機で複数車線・複数車両を同時に取り締まれます。生活道路を抜け道として高速走行する悪質なドライバーを取り締まることを目的に、埼玉県・岐阜県などゾーン30(最高速度30km/h以下に設定された生活道路エリア)を中心に導入が進んでいます。
レーザー式L型(Li):旧型ループコイル式の後継モデル
大阪府の第2阪和国道で初めて導入されたレーザー式L型(Li)は、従来のL型オービスにレーザー式計測ユニットを内蔵した固定式オービスです。ループコイル方式に代わりレーザーで速度を計測し、撮影画像は磁気ディスクに保存されるほか無線で中央装置へ即時転送されます。旧型のループコイル式が耐用年数を迎えるにつれ、Li型への更新が進んでいます。なお、L型で設けられていた撮影ポイントを示す白線は、Li型では設けられていません。
レーザー式Hシステム(LiH):H型の後継モデル
大阪府国道423号線に設置されたレーザー式H型(LiH)システムは、アーチ部にLH型のデジタル撮影機器と通信機器を取り付け、路肩に設置したレーザースキャンセンサーで速度を計測します。路面へのループコイル埋設が不要なためコストを抑えられる点が特徴で、耐用年数を迎えたH型システムの代替として更新が進んでいます。
移動式オービスは47都道府県すべてに配備済み 神出鬼没で要注意
固定式オービスは設置場所が固定されているため、設置エリアだけ速度を落とすという対応が可能でした。これに対応するため警察は、設置場所を変えながら取り締まりを行う移動式オービスの運用を進めています。
移動式オービスは2016年に埼玉県・岐阜県で試験導入が始まり、現在はすべての都道府県警察で運用されています。従来は幹線道路が中心でしたが、現在は生活道路・通学路・高速道路など場所を選ばず設置されています。
注意すべき重要なポイントとして、移動式オービスは固定式の「一般道+30km/h・高速道路+40km/h」という基準が適用されない場合があり、超過速度15km/h未満の違反で検挙された事例も報告されています。どんな道路でも法定速度を守ることが最大の対策です。
移動式車両オービス(iC):パトカー・ハイエースなどの車両に搭載
パトカーやハイエース・キャラバンなどのワンボックス車に計測器を積んで、取り締まりポイントまで移動して運用します。固定式オービスを通過した直後の再加速ポイントを狙うケースも多いため注意が必要です。レーダー式・レーザー式の両方が存在しますが、現在はレーザー式が主流です。
移動式中型オービス(iM):半可搬式で設置場所を頻繁に変える
重量約50kgの台座に計測器を載せて運用します。SENSYS SSSにバッテリーやタイヤを付けて自走できるようにしたタイプや、トラック荷台で運ぶ「LSM‐300‐HK」などが含まれます。設置場所を頻繁に変えることがあり、レーザー方式のためレーダー探知機では検知できないタイプが多くなっています。
移動式小型オービス(iS):三脚に設置できる軽量25kgの可搬式
約25kgと軽量で三脚に設置できる可搬式オービスです。東京航空計器が開発した「LSM‐300」などが含まれます。狭い路肩や通学路など省スペースの場所にも設置でき、電柱と並べて立てられているケースもあるため目視では気づきにくいのが特徴です。全国の警察署への導入が広がっており、レーザー式のためレーダー探知機では検知できないタイプが多くなっています。
Nシステムとオービスの違い:速度警告板とフラッシュで判断
固定式オービスのLHシステムと外観が似ているNシステム(自動車ナンバー自動読取装置)は混同されがちです。2つの違いと見分け方を整理します。
Nシステムとは:盗難車・犯罪車両を追跡するナンバー読取装置
Nシステムは、走行車両のナンバープレートを解析し、盗難車や犯罪に使用された車両の登録番号と照合・追跡する装置です。全国約2,000か所に設置されていると推定されていますが、速度超過の取り締まりは行っていません。高速道路・幹線道路以外の一般道にも多く設置されているため、LHシステムより見かける機会が多い装置です。
見分けるポイント:速度警告板とフラッシュの有無
LHシステムなどの固定式オービスは法律上、数km手前に速度警告板を設置する必要があります。Nシステムには速度警告板がありません。また、オービスは違反行為を撮影したことを意識させるためにフラッシュを強く発光させますが、Nシステムは強く発光しません。この2点が見分けの主なポイントです。
オービスが光る速度の目安と撮影後の罰則
オービスが撮影を行う超過速度は機密事項のため正確な数値は公表されていませんが、固定式では一般道で法定速度+30km/h以上・高速道路で+40km/h以上のスピードを出している車両が撮影対象となる目安とされています。ただし前述のとおり、移動式オービスはより低い超過速度でも取り締まりが行われており、固定式の基準は移動式には適用されません。
| 超過速度 | 点数 | 罰金 | 免停期間 |
|---|---|---|---|
| 30km〜50km/h未満 | 6点 | 6〜10万円 | 30日 |
| 50km/h以上 | 12点 | 6〜10万円 | 90日 |
| 超過速度 | 点数 | 罰金 | 免停期間 |
|---|---|---|---|
| 40km〜50km/h未満 | 6点 | 10万円以下 | 30日 |
| 50km/h以上 | 12点 | 10万円以下 | 90日 |
一般道で30km/h以上・高速道路で40km/h以上の超過で赤切符が切られると、6点以上の減点で一発免停となり、6か月以下の懲役刑または3か月以下の罰金刑の対象になります。青切符(反則金)と違い、赤切符は簡易裁判を受ける必要があり前科が付きます。免停期間は特別講習で短縮可能ですが、処罰が重大なことに変わりはありません。
オービスを光らせてしまったときは通知書が届く
オービスを光らせてしまった場合、速度違反の日時・場所・出頭先などを記した通知書が自宅に郵送されます。届くまでの日数の目安は以下のとおりです。
| オービスのタイプ | 通知書の到着目安 |
|---|---|
| デジタル式(通信機能あり) | 2〜3日 |
| 旧式フィルム式 | 1〜2か月 |
| レンタカー・社用車(所有者特定が必要) | 最大2か月程度 |
なお、撮影されてもドライバーの顔・ナンバープレートが不鮮明な場合や複数車両が映り込んで違反車を特定できない場合は通知書が届かないケースもあります。ただし、ナンバープレートを意図的に隠したり顔を覆ったりすることは悪質な違反行為とみなされ、速度超過とは別に法的な問題が生じます。
オービスは固定式も移動式も進化が続いている 法定速度の遵守が最大の対策
ループコイル式・レーザー式を含む固定式オービスのデジタル化が進む一方、移動式オービスは現在47都道府県すべてで運用されており、生活道路・通学路・高速道路など場所を選ばず設置されています。新型の移動式オービスはほぼレーザー式のためレーダー探知機では検知できず、警告看板なしで設置されているケースもあります。
オービスの設置場所の確認には、GPSオービスマップを内蔵したレーダー探知機やオービス対応アプリが活用できます。ただし移動式は場所が常に変わるため、過信は禁物です。オービスを光らせずに安全なドライブを続けるための最も確実な方法は、どんな道路でも法定速度を守ることです。