パイクカーとは何か。意味・語源・デザインの特徴をわかりやすく解説
パイクカーとは、「Pike(パイク)=長い槍・先鋭的」という意味を語源に持ち、既成のデザインとはかけ離れた個性的な内外装を特徴とする車のことです。大量生産を前提とせず、自由な発想と遊び心を大切にした少量生産で作られます。バブル期に流行したハイテク高級車やスポーツカーへのアンチテーゼとして1980〜1990年代に日本で生まれ、現在も中古車市場で根強い人気を誇ります。
パイクカーはレトロ調デザインが特徴。近年の新型車にも影響を与えている
パイクカーの特徴は先鋭的なスタイルだけではありません。丸みのあるヘッドランプ、四角いボディ、ベージュやブルーなどの淡いボディカラーといったレトロで懐古的なデザインも、パイクカーを象徴する重要な要素です。
2018年にモデルチェンジした4代目スズキ・ジムニー/ジムニーシエラは、コンパクトなボディサイズと走行性能だけでなく、丸目と四角いボディというパイクカー的なレトロデザインが支持されて長納期が続くほどの人気車となりました。2023年に再々販されたランドクルーザー70、2024年に発売されたランドクルーザー250も「丸目+四角いボディ」というレトロ調のデザインを採用しており、パイクカーの要素が現代の新型車にも取り入れられていることがわかります。
パイクカー10選 自由な発想と先鋭的なデザインを持つ名車たち
パイクカーのルーツは、1980〜1990年代のバブル期に流行していたハイテク高級車・大型クロカン・スポーツカーへのアンチテーゼとして、少量生産を前提にレトロでノスタルジックなデザインを追求して誕生した日産「Be-1」とされています。
ここでは、日産のパイクカーシリーズに加え、異業種合同プロジェクトから生まれたトヨタWiLLシリーズ、そして他社製の車を大胆にカスタマイズする光岡(ミツオカ)ブランドのパイクカーまで、各車の特徴とスペックを紹介します。
Be-1(日産)ノスタルジックモダンをテーマに誕生した日産パイクカーシリーズの原点
ニッサンBe-1は丸型ボディを完成させる為に当時の先端樹脂素材技術が用いられた
「Be-1」は、ノスタルジックモダンをテーマに掲げ、1985年の東京モーターショーで公開されたコンセプトモデルを限りなく忠実に再現して市販化したパイクカーです。限定生産1万台に対して注文が殺到し、異例の抽選方式が採用されたことでも話題になりました。日産パイクカーシリーズが誕生するきっかけを作った名車です。
フェンダー部に変形加工しやすい樹脂素材を用いることで丸型ボディを実現し、ボディカラーや室内デザインでも大量生産車との明確な差別化を図りました。中古車市場では根強い人気が続いており、状態の良いノーマルタイプは100万円以上、希少な電動キャンバストップモデルは走行距離があっても150万円以上の値がつくケースもあります。
| 全長 | 3,635mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,580mm |
| 全高 | 1,395mm |
| エンジン | MA10S型 |
| 総排気量 | 0.987L |
| 最高出力 | 38kW/6,000rpm |
| 最大トルク | 74Nm/3,600rpm |
PAO・パオ(日産)日産パイクカーシリーズで最も売れた5万台超えのベストセラー
「PAO(パオ)」はルーフレールを設置してレトロな雰囲気にアクティブなイメージも付け加えている
1989年にリリースされた日産パイクカーシリーズ第2弾「PAO(パオ)」は、Be-1と同じく初代マーチをベース車に、小型丸型ヘッドランプ・上下2分割リアクォーターウインドウ・開閉式三角窓・外ヒンジ型ドアなど個性的なパーツを採用し、独自の世界観を確立しました。
ルーフレールの取り付けやボディサイドへのリブ装飾でアクティブな雰囲気も付加。室内はダッシュボードの配色をボディカラーと統一し、シフトノブやステアリング、メーター類をレトロに仕上げています。受注期間を3ヶ月に限定する販売戦略が功を奏し、日産パイクカーシリーズ最多となる5万台以上を販売しました。
| 全長 | 3,740mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,570mm |
| 全高 | 1,475mm/1,480mm(キャンバストップ) |
| エンジン | 1.0L直列4気筒OHC |
| トランスミッション | 3速AT/5速MT |
| 最高出力 | 38kW/6,000rpm |
| 最大トルク | 74Nm/3,600rpm |
| 駆動方式 | 2WD(FF) |
フィガロ(日産)イギリスでも人気のクラシカルなコンバーチブル型パイクカー
フィガロの中古車は日本のみならずイギリスを中心とした諸外国でも人気を集めている
1991年に誕生した2ドアコンバーチブル「フィガロ」は、往年の名車ダットサン・ロードスターにインスパイアされたクラシカルで上品な外観と、ノスタルジックな親しみやすさを見事に融合させた日産のパイクカーです。ルーフ中央部には手動で格納できるキャンバストップを採用し、オープン走行も楽しめます。
室内は白を基調とした配色に本革素材を随所に使用し、メーター類には専用デザインを採用して特別感を演出。短編映画を活用したプロモーションも奏功し、当初の予定台数を大幅に超える需要が発生したため増産が行われました。日本国内だけでなくイギリスを中心とした海外でも根強い人気を誇り、テレビドラマ「相棒」の主人公・杉下右京の劇中車として登場したモデルが国内オークションで高値で取引されるケースもあります。
| 全長 | 3,740mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,630mm |
| 全高 | 1,365mm |
| エンジン | MA10ET型 1.0L直列4気筒OHCターボ |
| 総排気量 | 0.987L |
| 最高出力 | 55.9kW/6,000rpm |
| 最大トルク | 105.9Nm/4,400rpm |
S-Cargo・エスカルゴ(日産)カタツムリのフォルムが個性的な日産唯一の商用パイクカー
カタツムリのような個性的なフォルムをしている日産「エスカルゴ」は野球場でも使用されていた
「S-Cargo(エスカルゴ)」は、その名の通りカタツムリをモチーフとした超個性的なボディフォルムを持つ、日産パイクカーシリーズで唯一の商用車です。「レトロでかわいい商用車」をテーマに、商用車としての積載性を高めるために低床フロア設計を採用。ベースはフルトレーリングアーム式独立懸架方式を持つパルサーバンです。
高く設定したルーフに特徴的な丸みを持たせたボディは、スタンダードルーフとキャンバストップの2タイプを展開。インパネ中央に大型スピードメーターとATセレクトレバーを配置するなど内装面でも個性を発揮しました。1989年1月から1990年12月の受注生産期間中に1万台超を販売しています。
| 全長 | 3,480mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,595mm |
| 全高 | 1,860mm |
| エンジン | E15S型 |
| 総排気量 | 1.487L |
| 最高出力 | 54kW/5,600rpm |
| 最大トルク | 116Nm/3,200rpm |
ラシーン(日産)SUVブームで再評価が続くレトロ顔のクロスオーバーSUV
羅針盤をモチーフにして車名が付けられた日産「ラシーン」はSUVブームの影響を受けて中古車市場では価格が高騰している
1994年12月に発売された日産のクロスオーバーSUV「ラシーン」は、発売当時こそ販売が振るわなかったものの、レトロで個性的な外観と四輪独立懸架・4WDによる走行性能が、後のSUVブームで再評価されました。2000年に生産終了した現在は中古車市場での価格が高騰しており、キャンプをテーマにしたアニメの劇中車と同色のモデルは特に人気が高い状態が続いています。
四輪独立懸架方式の4WD専用車として、雪道でも安定した走行性能を持ち、街乗りからアウトドアまで幅広く使えることも再評価の理由のひとつです。
| 全長 | 4,115mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,695mm |
| 全高 | 1,515mm |
| エンジン | GA15DE型 |
| 総排気量 | 1.497L |
| 最高出力 | 77kW/6,000rpm |
| 最大トルク | 135Nm/4,000rpm |
WiLL Vi(トヨタ)かぼちゃの馬車をモチーフにした異業種コラボのメルヘンパイクカー
WiLL Viは1960年代に欧米の車で流行ったリヤウィンドウを崖のような形状とするクリフカットを採用してボディ構造をかぼちゃの馬車に近づけた
2000年に発売された「WiLL Vi」は、異業種間の交流から新市場を開拓することを目的に立ち上げられたWiLLプロジェクトの第1弾として誕生したトヨタのパイクカーです。シンデレラのかぼちゃの馬車をモチーフにしたメルヘンチックで斬新なエクステリアが話題を集め、1960年代の欧米車で流行したクリフカット(崖状のリアウインドウ形状)を採用してボディラインを特徴的に仕上げました。
室内はシートをフラット化し、柔らかみのあるインテリアカラーでリビングのようなリラックス感を演出。季節限定のボディカラー展開も行いましたが、ベース車の初代ヴィッツと比較して約1.6倍の車両価格が割高感につながり、2001年12月に新車販売を終了しました。
| 全長 | 3,760mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,660mm |
| 全高 | 1,575mm |
| エンジン | 1.3L直4DOHC |
| 駆動方式 | 2WD(FF) |
WiLLサイファ(トヨタ)車内でのネットサービスをいち早く展開したトヨタのパイクカー
「WiLLサイファ」は車内でダウンロードされた音楽やゲームを楽しませてくれるサービスを早い時期に展開していたコンパクトカー
2002年にトヨタがリリースした「WiLL CYPHA(ウイル・サイファ)」は、WiLLプロジェクト第3弾として誕生したパイクカーです。トヨタの車載情報通信サービス「G-BOOK」を標準装備し、携帯電話なしでネットワークに接続できる当時としては画期的なサービスを提供していました。縦1列に並ぶ4連ヘッドランプが最大の外観上の特徴です。
トヨタビスタ店の統合、プラットフォームを共有するヴィッツのフルモデルチェンジ、WiLLプロジェクトの終了などが重なり、2005年8月に新車販売を終了しました。
| 全長 | 3,695mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,675mm |
| 全高 | 1,535mm |
| 総排気量 | 1.298L〜1.496L |
| 駆動方式 | FF/フルタイム4WD |
セラ(トヨタ)全面ガラスルーフ×ガルウイングドアのスポーティなパイクカー
全面ガラスルーフを採用する「セラ」では開放感に包まれるドライブを多くのドライバーが楽しんだ
1990年に誕生した「セラ」は、NP70型スターレットをベースに、全面ガラスルーフとガルウイングドアを大胆に組み合わせた3ドアクーペ型のトヨタ・パイクカーです。車体が低く外からインテリアが見えやすいため、スタイリッシュなダッシュボード造形と専用メーター類、フロントのセミバケットシート、リアのセパレートシートでスポーティな内装に仕上げています。
オプションとして設定できた当時最高峰の音響解析技術を使ったスーパーライブサウンドシステムにより、開放感のある走りとともに臨場感あるサウンドが楽しめる車でもありました。1996年に生産終了となっています。
| 全長 | 3,860mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,650mm |
| 全高 | 1,265mm |
| エンジン | 1.5L直列4気筒 |
| シフト | 5MT/4AT |
| 駆動方式 | FF |
ビュートストーリー(光岡)ヤリスベースで現代の快適装備を搭載した光岡の人気パイクカー
「ビュートストーリー」はドレッシーホワイトパールやベリーパープルなど全12色を展開している
光岡(ミツオカ)は、他社が製造した新車や認定中古車をベースに内外装を大胆に改造してクラシックカー風に仕上げる独自のスタイルを持つ国内メーカーです。同社の人気車「ビュート」は、従来ベース車としてきたマーチの生産終了を受け、トヨタ・ヤリスをベース車に変更した4代目モデル「ビュートストーリー」を2023年秋に発売しました。
初代から受け継ぐハート型グリルや丸型ヘッドランプの外縁とバンパー下部をシルバー調フレームで装飾し、気品ある存在感を演出しています。
「ビュートストーリー」の車内環境はトヨタのコンパクトカーであるヤリスをベース車両としているので機能的でもある
ヤリスをベース車とすることで、充実したインフォメーションディスプレイや最新のエアコン機能も搭載。1980〜1990年代のパイクカーと比較して室内での快適性が大きく向上しています。2024年2月には一部改良が実施され、ボディカラーの変更、マルチインフォメーションディスプレイの大型化、安全装備の拡充、スマートエントリー&スタートシステムの全グレード標準化が行われました。
| 全長 | 4,090mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,695mm |
| 全高 | 1,500mm/1,515mm(4WD) |
| エンジン | 1.5L直列3気筒 |
| 駆動方式 | 2WD(FF) |
リューギ(光岡)ロールスロイス風の威厳ある外観を持つ光岡のパイクカー。新車での販売は終了へ
「リューギ」はブラックマイカやシルバーメタリックなど、全4色のボディカラーを展開していた
2014年に発売を開始した「Ryugi(リューギ)」は、カローラアクシオ・カローラフィールダーをベース車両として、光沢感のある大型フロントグリルなどを配置し、ロールスロイスを彷彿とさせる威厳と貫禄ある外観に仕上げた光岡ブランドのパイクカーです。セダン・ワゴン・ハイブリッド・4WD・マニュアル車など多彩なバリエーションを展開し、Toyota Safety Sense Cが搭載されるなど安全性も備えていました。
「リューギ」はToyota Safety Sense Cが標準装備されているので安全性が高い
なお、ベース車であるカローラアクシオ/カローラフィールダーが2025年10月に生産終了となったことを受け、光岡自動車は2026年2月に新車としての最終生産モデル「Ryugi FINAL EDITION(ファイナルエディション)」を限定20台で発表。これをもってリューギの新車販売は終了となります。ただし、中古車をベースにした「メイクアップ リューギ」の販売は引き続き継続されます。
| 全長 | 4,510mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,695mm |
| 全高 | 1,460mm |
| エンジン | 1.5L直列3気筒 |
| トランスミッション | 電気式無段変速機 |
パイクカーの精神を受け継ぐEVコンセプトカーも登場。パイクカーの今後に注目
2023年9月、欧州日産はロンドンのデザインセンター(NDE)設立20周年を記念して、Be-1・パオ・フィガロ・エスカルゴといった日産パイクカーシリーズのエッセンスを受け継ぎながら現代的なトーンを加えたEVコンセプトカー「Nissan Concept 20-23」を発表しました。オンラインレースや日産フォーミュラE参戦車両のデザインを強く反映した3ドアハッチバックで、パイクカーの「遊び心」を21世紀のEV時代に持ち込もうという姿勢が感じられます。
誕生から数十年が経過しても中古車市場で根強い人気を誇り、現代の新型車デザインにも影響を与え続けるパイクカー。光岡ブランドによる改造車や新たなコンセプトカーなど、パイクカーの精神は形を変えながら現在も引き継がれています。



























