パイクカーとは

パイクカーの意味や語源のほか代表的な車種一覧とレトロ調の先鋭モデル紹介

パイクカーとは先鋭的を指すパイクと、車を指すカーを合わせた用語で、スタイルが特徴的で先鋭的な車に使わる言葉。近年注目を浴びるカテゴリーで、丸目や四角いボディなどレトロ調のクラシックカーなどもパイクカーにカテゴライズされることもあります。パイクカーとは何か、語源や意味などと注目のパイクカーも紹介します。

パイクカーの意味や語源のほか代表的な車種一覧とレトロ調の先鋭モデル紹介

パイクカーとは?パイクカーの意味や語源・デザインの特徴など

パイクカーとは、パイクカーの語源にあたるPike(パイク)=長い槍 / 先鋭的という意味を含んだ単語が付けられている、既成のデザインとはかけ離れたデザインに特徴がある車で、大量生産化は行わずに、自由な発想と遊び心を大切にして、各時代に流行っていた大衆向けの車とは大きく異なる内外装のデザインを採用するなどの特徴を備えています。パイクカーは1/64サイズのカプセルトイが発売されるなど、再注目されています。

近年再注目のパイクカーは丸目や四角いボディなどレトロ調デザインの特徴を持つ車が人気

パイクカーは先鋭的なスタイルが特徴ですが、レトロで懐古的なデザインもパイクカーの特徴。
丸目で四角いボディ、ベージュやブルーなどの淡いボディカラーはパイクカーをイメージする大切な要素です。

2018年にモデルチェンジしたスズキが販売する4代目ジムニー・ジムニーシエラは、使いやすいボディサイズや走行性能も人気の理由ですが、丸目と四角いボディがパイクカーのようなレトロ調の要素に合致して、長納期が発生するほどの人気に。

2023年には再再販のランドクルーザー70、2024年はランドクルーザー250をトヨタが発売、どちらのモデルも「丸目」「四角い車」というパイクカーの特徴の1つに挙げられるレトロ調(懐古的なデザイン)が取り入れられています。
レトロ調を含むパイクカーの要素は、新型モデルにも取り入れられるほど近年注目されています。

パイクカー10選 ~ 自由な発想で先鋭的なデザインの車

パイクカーは、ハイテク装備を搭載する高級車、ワイルドで迫力ある外観を魅力とする大型車、走行性能を追い求めていたスポーツカーが流行っていた、1980年~1990年代のバブルの時期のアンチテーゼとして、少量生産を前提とし、レトロでノスタルジックなデザイン性を追求して誕生した日産「Be-1」が、そのルーツ車と言われています。

ここでは、日産のパイクカーシリーズだけではなくて、異業種合同プロジェクトがきっかけとなり誕生したトヨタWiLLシリーズの車や、他社が製造した車を改造して、内外装に突出した個性を与えている光岡ブランドでリリースされているパイクカーも含めて、各車の特徴を紹介していきます。

「Be-1」はノスタルジックモダンをテーマに掲げ開発された個性が当時としては先鋭的であった日産のパイクカーシリーズのきっかけを作った名車

Be-1のエクステリアニッサンBe-1は丸型ボディを完成させる為に当時の先端樹脂素材技術が用いられた

「Be-1」は、ノスタルジックモダンをテーマとして掲げ、1985年に開催された東京モーターショーに出展して話題を集めた展示モデルを、可能な限り再現して市販化したことで注目を浴び、限定生産1万台に対して注文が殺到したので、異例の抽選方式を採用した、日産のパイクカーシリーズが誕生するきっかけを作ったクルマ。

「Be-1」は、ボディカラーや室内空間のデザインでは、大量生産されるクルマとの差別化を図り、フェンダー部に耐久性を備えながらも、変形加工しやすい樹脂素材を用いる事で丸型ボディを完成させて、先鋭的な個性を与えた。

中古車市場でも根強い人気を保ち続ける「Be-1」は、ノーマルタイプであれば、走行距離が比較的に少なく状態が良ければ100万円以上、希少性がより高い電動キャンパストップモデルであれば、走行距離が多少はあって150万円以上の値段がつけられているケースもある。

Be1(BK10 型)1987年モデルのスペック
全長 3,635mm
全幅 1,580mm
全高 1,395mm
エンジン MA10S型
総排気量 0.987L
最高出力 38kW/6,000rpm
最大トルク 74Nm/3,600rpm

「PAO(パオ)」はルーフレールなどを設置してアクティブなイメージも付け加えた日産のパイクカーシリーズの中で最も売れたクルマ

PAO(パオ)のエクステリア「PAO(パオ)」はルーフレールを設置してレトロな雰囲気にアクティブなイメージも付け加えている

日産のパイクカーシリーズ第2弾として、1989年にリリースされた「PAO(パオ)」は、Be-1と同じく、初代マーチをベース車として、小さくて丸いヘッドランプ / 上下2分割リアクオーターウインドウ / 開閉式タイプの三角窓 / 外ヒンジ型ドア等のパーツを採用して、独自の個性を発揮した。

「パオ」は3ドアハッチバックと、実用的ではないものの、ルーフレールを取り付け、ボディサイドにリブ装飾を行うなどして、アクティブな感じも付け加えた。

同車の室内空間では、ダッシュボード等の各パーツの配色はボディカラーと揃え、シフトノブやステアリングホイール、各種メーター類はレトロに仕上げている。

「パオ」は、注文の受注期間を3ヶ月に設定するなどの販売戦略が功を奏して、5万台以上もセールスを記録した、日産のパイクカーシリーズの中では最も売れたクルマでもあります。

パオ(PK10型)1989年モデルのスペック
全長 3,740mm
全幅 1,570mm
全高 1475mm/1480mm(キャンパストップ)
エンジン 1.0L直列4気OHC
トランスミッション 3速AT/5速MT
最高出力 38kW/6,000rpm
最大トルク 74Nm/3,600rpm
駆動方式 2WD(FF)

「フィガロ」はノスタルジックで上品な独自の個性を発揮しているパイクカーで日本だけではなくてイギリスでも根強い人気を保ち続けている

フィガロのエクステリアフィガロの中古車は日本のみならずイギリスを中心とした諸外国でも人気を集めている

1991年に誕生した2ドアコンバーチブル「フィガロ」は、往年の名車ダットサンロードスターをインスパイアしたクラシカルで上品な雰囲気に、ノスタルジックで親しみやすいイメージも見事に融合させたエクステリアを特徴とする日産のパイクカー。

ルーフの中央部は、手動で格納させられるキャンバスとなっていて、オープンカー走行も可能とする「フィガロ」の室内空間は、白を基調とした配色を行い、本革素材を随所に用いて特別感を演出させて、メーター類は専用デザインを設置して、独自の個性を追求している。

同車をモチーフにした短編映画を公開させるなどの積極的なプロモーション活動も影響を与えた「フィガロ」の購入希望は、日産が当初予定した人数よりも大幅に多かった為に、増産が実施された。

フィガロは、日本のみならずイギリスを中心とした海外でも人気を保ち続けるクルマで、中古車やオークション市場では、テレビドラマ「相棒」の主人公である杉下右京が劇中で乗っていたモデルが一部ユーザー達から、注目浴びて高値で取引されている。

フィガロ(FK10型)1991年式のスペック
全長 3,740mm
全幅 1,630mm
全高 1,365mm
エンジン MA10ET型1.0L直列4気筒・OHC・ターボ
総排気量 0.987L
最高出力 55.9kw / 6,000 rpm
最大トルク 105.9Nm/ 4,400rpm

「S-Cargo(エスカルゴ)」はカタツムリのようなフォルムが特徴的な日産のパイクカーシリーズから唯一展開されていた商用車

S-Cargo(エスカルゴ)のエクステリアカタツムリのような個性的なフォルムをしている日産「エスカルゴ」は野球場でも使用されていた

車名どおりにカタツムリのような超個性的なボディフォルムとしている「S-Cargo(エスカルゴ)」は、レトロでかわいい商用車をテーマに掲げて造られたクルマで、商用車としてのポテンシャルを引き上げようと、低床フロア設計を実現させる為に、フルトレーリングアーム式独立懸架方式を採用するパルサーバンをベース車とした。

高く設定したルーフ部に特徴的な丸みを持たせている「エスカルゴ」は、スタンダードルーフの他に、開放感のある走りを楽しめるキャンパストップタイプも展開していた。

エスカルゴは受注生産方式を採用し、1989年1月から1990年12月にかけての車歴の中で、1万台を超える販売実績を誇っていた。同車は平面上のインパネ中央部に大型タイプのスピードメーターやATのセレクトレバーを配置させて、内装面においても個性を発揮させている日産のパイクカーです。

エスカルゴ(G20型)1989年式のスペック
全長 3,480mm
全幅 1,595mm
全高 1,860mm
エンジン E15S型
総排気量 1.487L
最高出力 54kW/5,600rpm
最大トルク 116Nm/3,200rpm

「ラシーン」はSUVブームの影響を受けてレトロで親しみやすいエクステリアや街中で扱いやすいサイズ感などが再評価されている日産のパイクカー

ラシーンのエクステリア羅針盤をモチーフにして車名が付けられた日産「ラシーン」はSUVブームの影響を受けて中古車市場では価格が高騰している

1994年12月にリースされた日産のクロスオーバーSUV「ラシーン」は、発売された当時では、車高が低いセダン、車体がとにかく大きな本格的なクロカンが流行っていた中では、車高が少し高く・タイヤのサイズも少し大きく、見た目がレトロなことから個性が光る車ではあったかが、売れ行きは決して好調ではなかった日産のパイクカー。

「ラシーン」は、四輪独立懸架方式のサスペンション構造を採用する、4WD専用車種で、街乗りをメインでする際には、雪道にも強く1年中安定感のある走りを可能とする走行性能を備えているクルマであった。

2000年に生産終了となったラシーンは、SUVブームの影響を受けて中古車市場で、価格が高騰していて、特にキャンプをテーマとしたアニメに登場する劇中車と同一のボディカラーを採用しているモデルは人気が高い。

ラシーン(RFNB14型) 1995年式のスペック
全長 4,115mm
全幅 1,695mm
全高 1,515mm
エンジン GA15DE型
総排気量 1.497L
最高出力 77kW/6,000rpm
最大トルク 135Nm/4,000rpm

「WiLL Vi」はシンデレラのかぼちゃの馬車をイメージしてデザインした外観がとにかく個性的で一度は乗ってみたいと思えるトヨタのパイクカー

WiLL ViのエクステリアWiLL Viは1960年代に欧米の車で流行ったリヤウィンドウを崖のような形状とするクリフカットを採用してボディ構造をかぼちゃの馬車に近づけた

2000年にリリースされた「WiLL Vi」は、異業種が交流して自由な発想の基で、新たな市場を開拓しようと立ち上げられたWiLL プロジェクト第1弾としてラインナップされた車で、シンデレラに登場するかぼちゃの馬車をモチーフにした、女性ならば思わず乗ってみたくなるメルヘンチックで斬新なエクステリアは当時話題を集めた。

「WiLL Vi」は、シートの形状をフラット化させて、柔らかみのあるインテリアカラーを採用して、リビングにいるように落ち着ける車内環境を整え、季節の変化に合わせて限定のボディカラーを展開させる販売戦略を実施していたが、ベース車である初代ヴィッツと比較すれば、約1.6倍もの値段に設定されている車両価格の割高感などが影響を与えて、2001年12月に新車販売を終了した。

WiLL Vi 2001年10月モデルのスペック
全長 3,760mm
全幅 1,660mm
全高 1,575mm
エンジン 1.3L直4DOHC
駆動方式 2WD(FF)

「WiLL サイファ」は2000年代前半にクルマにネットの利便性を融合させて新たな情報サービスを展開していたトヨタのパイクカー

WiLL サイファのエクステリア「WiLLサイファ」は車内でダウウンロードされた音楽やゲームを楽しませてくれるサービスを早い時期に展開していたコンパクカー

2002年にトヨタがリリースした「WiLL CYPHA (ウイル・サイファ)」は、異業種合同WiLLプロジェクト第3のラインナップとして誕生し、トヨタの車載情報通信サービスG-BOOKを標準装備させて、携帯電話を利用しなくともネットワークへの接続を可能とする、当時としては画期的なサービスを提供していたパイクカー。

縦1列の4連ヘッドランプをエクステリアの最大の特徴とする同車は、トヨタビスタ店が統合された / プラットフォームを共有していたヴィッツがフルモデルチェンジを実施した / WiLLプロジェクトが終了したなどの影響を受けて、2005年8月に新車販売を終了した。

WiLLサイファ 2004年 4月発売モデルのスペック
全長 3,695mm
全幅 1,675mm
全高 1,535mm
総排気量 1.298L ~ 1.496L
駆動方式 (FF)/フルタイム4WD

「セラ」はグラストップ構造にガルウイングドアを組み合わせるトヨタのスポーティなパイクカー

セラのエクステリア全面ガラスルーフを採用する「セラ」では解放感に包まれるドライブを多くのドライバー達が楽しんだ

1990年に誕生した「セラ」は、NP70型スターレットをベース車として、全面ルーフガラス構造を採用するボディに、ガルウイングドアを大胆に組み合わせる3ドアクーペタイプのトヨタブランドのパイクカー。

車体が低く設定されているために、外からは見えやすくなっている「セラ」のインテリア空間では、ダッシュボードの立体造形やメーター類にはスタイリッシュなデザインを採用し、フロントシートはセミバケット形状を、リヤシートはセパレートタイプを選択してスポーティに仕上げている。

1996年に生産終了となってしまった「セラ」は、当時としては最高峰の音響解析技術を導入した、スーパーライブサウンドシステムを追加設定可能とする、開放感に包まれる刺激的な走りに加え、ドライブ中に臨場感のあるサウンドを楽しめる車でもあった。

セラ(E-EXY10) 1993年12月発売モデルのスペック
全長 3,860mm
全幅 1,650mm
全高 1,265mm
エンジン 1.5L直列4気筒
シフト 5MT/4AT
駆動方式 FF

「ビュートストーリー」はヤリスをベース車として内外装を大胆にアレンジしているのでナビ機能やエアコン機器を利用して車内で快適に過ごすことが出来る光岡のパイクカー

ビュートストーリーのエクステリア「ビュートストーリー」はドレッシーホワイトパールやベリーパープルなど、全12色を展開している

光岡(ミツオカ)は、他社が製造した新車や認定中古車をベースとして、内外装を中心に大胆な改造を施してクラッシックカー風にカスタマイズしているメーカー。

同社の人気車であるビュートは、従来ベース車としてきたマーチが生産終了となった影響を受けて、トヨタのヤリスをベース車へと繰り替えて、内外装の改造を行った4代目モデルを2023年秋に発売させた。

4代目モデルとなる「ビュートストーリー」は、初代モデルから伝統的に受け継がれるハート型グリルや、丸型ヘッドランプ等のパーツの外縁や、パンパー下部領域を重点的にシルバー調のフレームで装飾して、気品溢れる存在感を醸しだす。

ビュートストーリーのインテリア「ビュートストーリー」の車内環境はトヨタのコンパクトカーであるヤリスをベース車両としているので機能的でもある

「ビュートストーリー」はヤリスをベース車としているので、ナビ機能が充実したインフォメーションディスプレイや、車内環境を過ごしやすいように整えてくれるエアコン機能も搭載されているので、1980年代~1990年代に製造されたパイクカーと比較すれば、室内で快適に過ごすことが出来ます。

2024年2月1日にはビュートストーリーの一部改良を発表。
ボディカラーの変更やマルチインフォメーションディスプレイの大型化、安全装備の拡充を実施。スマートエントリーとスタートシステムも全グレードで標準化されています。

ビュートストーリー 15LXのスペック
全長 4,090mm
全幅 1,695mm
全高 1,500mm/1515mm(4WD)
エンジン 1.5L直列3気筒
駆動方式 2WD(FF)

カローラアクシオなどをベース車としてロールスロイスのような外観に仕上げている「リューギ」はToyota Safety Sense Cを搭載しているので安全性も高い光岡ブランドのパイクカー

リューギのエクステリア「リューギ」はブラックマイカやシルバーメタリックなど、全4色のボディカラーを展開している

2014年に発売を開始した「Ryugi(リューギ)」は、カローラアクシオ、カローラフィールダーをベース車両として、光沢感が抜群に映える大型フロントグリルなどを配置して、外観をロールロイスのような威厳と貫禄のある雰囲気に仕上げている、光岡ブランドのパイクカー。

リューギのインテリア「リューギ」はToyota Safety Sense Cが標準装備されているので安全性が高い

新車でも購入できる「リューギ」では、ユーザーのニーズに合わせてマニュアル車 / 4WD車 / ハイブリッド車も展開していて、クルーズコントロール等の運転支援システムがパッケージングされるToyota Safety Sense Cが搭載されているので、安全性の高さも魅力的。

HYBRID EXのスペック
全長 4,510mm
全幅 1,695mm
全高 1,460mm
エンジン 1.5L直列3気筒
トランスミッション 電気式無段変速機

Be-1やパオの流れをくむ都市型EVのコンセプトカーを発表するなどパイクカーの今後の展開も注目される

2023年9月に数多くのパイクカーを展開してきた日産は、Be-1やパオなどの流れを受け継ぐ都市型EVのコンセプトカー「Nissan Concept 20-23」を発表しました。

誕生から数十年経過しても、中古車市場で根強い人気を保ち続けるなど、乗ってみたいと思わせてくれる普遍的な個性を備えているクルマや、新車市場でも購入できる光岡ブランドの改造車も含めて、パイクカーの今後の展開にも注目していきましょう。