レクサスのデザインアイコン「スピンドルグリル」
トヨタが世界展開している高級車ブランドがレクサスです。レクサスの車は、高い品質と走行性能が特徴です。
レクサスと言えば、強いインパクトと圧倒的な存在感を感じるフロントフェイス「スピンドルグリル」が最大の特徴です。台形を上下に配置したデザインは、一目でレクサスと分かる個性的なデザインアイコンとなっています。本記事では、レクサスのスピンドルグリルとは何か、採用した意味、評判、そして廃止の噂などについて徹底解説します。
スピンドルグリルはレクサスを象徴するフロントフェイスの共通デザインアイコン
80年以上の歴史を持つBMWのキドニーグリルや、上部の左右に切れ込みがあるアウディのシングルフレームグリルなど、各自動車メーカーにはブランドを象徴するフロントデザインが採用されています。これらのグリルデザインは、遠くからでもそのブランドの車であることを認識させる重要な役割を果たします。
海外の自動車メーカーに多い統一したフロントグリルは、自社のブランド化に役立ち、市場における価値を高めてくれます。レクサスも、この統一デザインによってブランドの個性を確立する必要がありました。
先鋭や巧みの技を意味する「L-finesse」をデザインコンセプトに掲げ、1989年に北米から展開されたレクサスですが、スピンドルグリル採用前のレクサスは、高級ブランドとしては押し出しの弱いグリルデザインでした。エンブレムを外すとどこの自動車メーカーかわからないほど、個性が薄いという課題を抱えていたのです。
2012年のレクサスGSから本格的に始まった「スピンドルグリル」の採用は、海外の自動車メーカーに負けないブランド力を持たせるために導入されました。その後はラインナップされる全車種にスピンドルグリルを統一し、レクサスの特徴となりました。
一目でレクサスと分かるこのスタイリングは、印象に残る反面、クセが強いという評判もあり、賛否両論ある中でも確実にレクサスブランドを象徴するデザインアイコンとして世界中に浸透しています。このデザインは、レクサスの認知度と存在感を高める上で大きな貢献をしました。
レクサスのスピンドルグリルは糸を巻き取る紡錘(ぼうすい)をイメージ
スピンドルグリルの「スピンドル(spindle)」は、紡績機の糸を巻き取る「紡錘(ぼうすい)」を指します。スピンドルグリルは、紡錘と同様に横から見ると中央がくびれ、台形を上下にくっつけたデザインとなっていることが、その名前の意味の由来です。
噂ではトヨタグループの本家にあたる豊田自動織機との関連性が取り沙汰されていましたが、レクサスは公式に否定しました。開発者からは、「グリルが大きい=高級車のイメージをやめたい」「多くの空気をロワーグリルから取り込むための下側の台形型を発展させた結果」という回答が示されています。つまり、スピンドルグリルのデザインは、豊田自動織機との直接的な関連性を否定しつつ、機能と個性を追求した結果と言えるでしょう。
このデザインは、空気を効率的に取り込むという機能的な意味も持っています。空力性能や冷却性能を確保しながら、圧倒的な個性をフロントフェイスに持たせることが、スピンドルグリルの最大の特徴です。
スピンドルグリルのデザインはFスポーツなどのグレードや車種により違う
レクサスのスピンドルグリルには様々なデザインがあり、車種やグレードによって異なる意匠を採用しています。レクサスのフルサイズSUVであるLXなどに採用されているのは、力強さを感じさせる横長の格子を強調したスピンドルグリルです。車種の特性に合わせてデザインを変えるのがレクサスの特徴です。
レクサスのスポーツグレード「F SPORT」は、よりアグレッシブな印象を与える網目状のメッシュデザインを特徴とするスピンドルグリルを採用しています。このデザインは、高性能な走りを視覚的に表現する意味があります。
レクサスで人気の高いSUVの新型NXには、横長のラインに縦のラインが入ったスピンドルグリルが採用されています。これにより、フロントフェイスに立体感と先進性を持たせています。車種の個性をデザインで際立たせることが、スピンドルグリルの進化の方向性です。
レクサス最小サイズのCTもオリジナルのスピンドルグリルを採用しています。スピンドルグリルを採用することで、コンパクトボディながら遠目でも「レクサス」とわかるほどの迫力をエクステリアに持たせました。グレードや車種によってデザインが違うため、見比べるのも楽しいでしょう。
スピンドルグリルは廃止されずにレクサスの象徴として「進化」
2013年頃に騒がれた「スピンドルグリル廃止」の噂は、「スピンドルグリルには捕らわれないようにする」というレクサスの公式発表が発端となり、その後自動車メディアが一斉に報じたため、廃止論が広がりました。しかし、これはスピンドルグリルのデザインに対する誤解から生まれたものです。
これはスピンドルグリルを進化させるため、「現在採用されているスピンドルグリルのデザインにはこだわらない」という意味でした。レクサスは、より存在感があり先進性を感じられるデザインに昇華させるための発言であり、廃止するというようなネガティブな意図は一切ありません。
インターネット上では否定的な言葉が目立つこともありましたが、スピンドルグリルを採用した2012年以降、レクサスは販売台数を順調に伸ばしています。特にクロスオーバーSUVのNXやRXが販売を牽引し、ブランドの成長に大きく貢献しました。
販売台数の実績を見る限り、レクサスのデザインアイコンであるスピンドルグリルは、日本のみならず世界的にも評価されていると判断できます。スピンドルグリルはレクサスブランドを象徴する重要なデザインなので、廃止されることはなく、今後も時代に合わせて進化していく特徴があります。
スピンドルグリルの問題点は「完成されたデザイン」だからこそ変化が難しいこと
日本車の平均的なモデルチェンジサイクルは、2年に1度のマイナーチェンジ、4年に1度のフルモデルチェンジです。特にフルモデルチェンジのエクステリアの変更は大きな話題となるため、なんらかの変化を加えるのが一般的です。
しかし、フロント中央に位置する大きなスピンドルグリルは、完成されたデザインのため、マイナーチェンジやフルモデルチェンジの際に変化を与えにくいのが難点となっています。デザインを小さくするとスピンドルグリルの持つ迫力が失われ、大きくすると主張し過ぎるデザインとなってしまいます。
2012年から採用が始まり、電動化が進む中で、次世代のスピンドルグリルがどのような進化を辿るのか注目が集まっています。レクサスは、EV(電気自動車)の車種において、グリルの役割が変化したことに伴い、スピンドルの形状をボディと一体化させた「スピンドルボディ」という新しいデザインを提案しています。これがスピンドルグリルの進化した姿です。
販売台数も絶好調!成長を続けるトヨタの高級ブランド「レクサス」の今後に注目
日本車は海外の自動車メーカーと比較するとデザイン力が弱いと言われていましたが、近年はトヨタのキーンルック、日産のVモーションなど、統一デザインを採用しブランド化に力を入れています。レクサスも例外ではなく、一目でレクサス車とわかる「スピンドルグリル」を導入し、ブランドの確立に成功しました。
レクサスは販売台数も好調で、高級自動車市場における存在感を高めています。特にスピンドルグリルを武器に、海外市場でも確固たる地位を築きました。電動化という大きな変化を迎える中で、レクサスがスピンドルデザインをどのように進化させ、成長を続けるのか、その今後の動向に注目しましょう。