マークX GRスポーツとは 2017年登場のGRブランド版FRスポーツセダン
トヨタのマークXは、国産では希少なFR(後輪駆動)を採用したミドルサイズの高級スポーツセダンでした。2004年にマークIIの後継として送り出され、低く構えたシルエットと3連ヘッドランプという強い個性で、それまでの中年層向けセダンのイメージを塗り替えたモデルです。
そのマークXに2017年9月19日、廃止されたG’sの後継として設定されたスポーツグレードが「GRスポーツ」でした。
ただし現在の状況は当時と大きく異なります。マークXは2019年12月23日に生産を終了し、GRスポーツもこの一代かぎりで役目を終えました。マークXブランドの後継セダンは、2026年現在も登場していません。ここでは生産終了までの動きを新しい順に振り返りながら、GRスポーツというグレードの中身をあらためて整理します。
マークXは2019年12月23日に生産終了 GRスポーツも一代限りで幕
トヨタは2019年4月24日、マークXを同年12月で生産終了すると正式に発表しました。そして予告どおり2019年12月23日、愛知県豊田市の元町工場でマークXの生産が終了。以後は流通在庫での対応となり、2020年1月24日に在庫車の新車登録がすべて完了して、名実ともに販売終了となりました。1968年のコロナマークIIから数えて51年、通算11代に及ぶ系譜がここで途切れています。マークII時代を含めた累計生産台数は約688万台規模とされ、うちマークXは約36万台でした。
この結末により、2017年に追加された「250S GRスポーツ」「350RDS GRスポーツ」も、モデルチェンジを迎えることなく生産終了と同時に消滅しました。GRスポーツはマークXにとって最後のカタロググレードのスポーツ仕様であり、増えることも進化することもないまま幕を閉じた格好です。なお2019年10月の消費税率引き上げ(10%)にともない、GRスポーツを含む全グレードで税込価格の改定が行われています。
マークXの実質的な受け皿とされたのはFFセダンのカムリでしたが、そのカムリも2023年12月下旬をもって国内生産・国内販売を終了しました。入れ替わるように2023年11月にはクラウンセダンが登場し、さらに2025年12月19日、トヨタは米国で生産するカムリ・ハイランダー・タンドラの3車種を2026年から順次日本へ導入する方針を発表しています。セダンの選択肢そのものは戻りつつありますが、マークXのような「手の届く価格帯のV6・FRセダン」という枠は、現在のトヨタのラインナップには存在しません。中古車市場でGRスポーツやGRMNが高値で取引され続けているのは、その空白を裏返した現象と言えそうです。
最後の特別仕様車「250S“Final Edition”」が2019年4月24日に発売
生産終了の発表と同日、マークXの掉尾を飾る特別仕様車が投入されました。「250S“Final Edition”」(FR)と「250S Four“Final Edition”」(4WD)の2タイプで、価格は3,331,800円と3,489,480円。取り扱いは全国のトヨペット店などで、GRスポーツとは異なり2.5L・4GR-FSE搭載の250S系がベースです。
外装はスパッタリング塗装の18インチアルミホイール(2WD)とダークメッキのフロントバンパーモールが専用装備。ボディカラーはホワイトパールクリスタルシャイン、シルバーメタリック、プレシャスブラックパールの3色に絞られました。内装はブラック&レッドのアルカンターラ+合成皮革シートとレッドを配したソフトレザードアトリムを採用し、ステアリングやシフトブーツなどにレッドステッチをあしらっています。クリアランスソナー&バックソナーを標準装備した点も、最終仕様らしい配慮でした。
マークX“GRMN”第2弾が2019年3月11日に発売 513万円・350台限定の6速MT
生産終了の直前、GRシリーズの頂点として投入されたのが2代目のマークX“GRMN”です。2019年1月11日に発表・受注開始、3月11日発売、メーカー希望小売価格は5,130,000円、限定350台。取り扱いは全国のGR Garageで、注文期間は1月11日から9月30日まで(限定台数に達し次第終了)とされました。実際には台数を上回る注文が集まり、抽選となったことでも知られています。
ベースは350RDS。エンジンは3.5L V6の2GR-FSE型で、最高出力234kW(318PS)/6,400rpm、最大トルク380N・m(38.7kgm)/4,800rpm。これに専用の6速MTを組み合わせ、マークX唯一のMT仕様となりました。初代GRMN(2015年・100台限定・540万円)からの主な進化点は、ファイナルギヤ比の変更(4.083→3.615)、スポット溶接252カ所追加によるボディ剛性強化、新開発ショックアブソーバーを用いた専用サスペンション、EPSの専用チューニングなど。19インチBBS製鍛造ホイールと前後異サイズタイヤ、4本出しマフラー、ホワイト塗装のブレーキキャリパーを備え、初代では標準だったカーボンルーフはオプションに変更されています。GRスポーツが「日常で楽しめるスポーツグレード」だとすれば、GRMNはその上に立つ集大成でした。
マークXにスポーツグレード GRスポーツが2017年9月19日登場
ここからは、GRスポーツが登場した当時の内容を振り返ります。
マークXにはトヨタのGAZOO Racingがカスタマイズを手がけたG’sというグレードがありましたが、2016年11月の大幅改良でグレード体系が見直された際にカタログから姿を消しました。
そして2017年9月19日、トヨタがスポーツコンバージョン車のブランドを「GR」シリーズへ一新したのに合わせ、マークXにもG’sの後継として「250S GRスポーツ」「350RDS GRスポーツ」が追加されました。
マークX GRスポーツのエクステリア
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メーカーオプションの19インチアルミホイール
G’sは2012年8月の改良を機に設定されたスポーツコンバージョン車で、専用エアロや19インチアルミホイール、チューニングされた足回りを備えた人気グレードでした。
さらに2015年には、その上に立つ数量限定モデルとしてマークX“GRMN”が全国100台限定(車両価格540万円)で発売されています。国産FRセダンとして希少な6速MTを積み、サーキット走行まで視野に入れた仕立てでした。
G’sでは専用デザインの19インチアルミホイールやマフラーが与えられ、運動性能を意識したエアロパーツと専用チューンのサスペンションが組み合わされていました。
これらはいずれも専用開発された装備で、標準車とは一線を画すプレミアムな内容です。
GRスポーツはそのG’sを引き継ぐ位置づけであり、専用エアロや19インチアルミホイールといった装備を継承しています。
外観だけでなく専用チューニングサスペンションやスポット溶接の打点追加による剛性強化も施され、当時の国内では数少ない「速さを楽しめるFRセダン」の一角を占めました。
ボディカラーはホワイトパールクリスタルシャインとプレシャスブラックパールのオプションカラーを含む全6色展開でした(価格はいずれも2017年当時のもの)。
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ホワイトパールクリスタルシャイン(37,800円高) -
シルバーメタリック -
ブラック -
プレシャスブラックパール(54,000円高) -
ダークレッドマイカメタリック -
トゥルーブルーマイカメタリック
マークX GRスポーツのインテリア
マークX GRスポーツの室内にも、専用装備が数多く用意されていました。
先代にあたるG’sでは、シルバーステッチ入りの本革巻き4本スポークステアリングホイール、ロゴ付きレッドカラーのパワースイッチ、ロゴ入りのスポーティシートなどが与えられていました。
インパネのレジスターやクラスター、ドアトリムにも専用のピアノブラック加飾が施され、ラグジュアリーとスポーティを両立させています。
センターに置かれるタコメーターや、エンジン始動時に現れる初期画面まで専用品に置き換えるという凝りようでした。
GRスポーツもこの流儀を受け継ぎ、GRロゴ入りの専用メーターやスポーティシート、カーボン調加飾、小径ステアリングホイールなどを装備しています。
GRMNのような台数限定車ではなくカタロググレードだったため、当時は「買おうと思えば買える最上級のマークX」という位置づけでした。もっとも生産終了から6年以上が経った現在では、そのGRスポーツ自体が中古車市場の希少タマとなっています。
マークX GRスポーツのパワートレイン
マークX GRスポーツのベースとなったのは、3.5L V型6気筒DOHCを積む350RDSと、2.5L V型6気筒DOHCを積む250Sの2グレードです。
いずれもパワートレインはベース車から変更されておらず、350RDS系は最高出力318PS、最大トルク380N・m(38.7kgm)を発生するハイパワー仕様。250S系は最高出力203PS、最大トルク243N・m(24.8kgm)で、軽快に回るレスポンス重視の仕様でした。組み合わされるミッションはいずれも6速ATで、6速MTはGRMN専用です。
GRスポーツではサスペンションのチューニングとボディ剛性の強化が加えられているため、マークX本来の余裕あるパワーをより素直に引き出せます。
参考として、ベースとなる350RDSのスペックを掲載します(数値・価格は2017年当時、消費税8%込のもの)。
| 全長 | 4,770mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,795mm |
| 全高 | 1,435mm |
| 室内長 | 1,975mm |
| 室内幅 | 1,500mm |
| 室内高 | 1,170mm |
| ホイールベース | 2,850mm |
| 車両重量 | 1,560kg |
| 最低地上高 | 155mm |
| 最小回転半径 | 5.2m |
| 駆動方式 | 2WD(FR) |
| エンジン型式 | 2GR-FSE |
| エンジン種類 | V型6気筒DOHC |
| 総排気量 | 3.456L |
| 使用燃料 | 無鉛プレミアム ガソリン |
| 最高出力 | 234kw(318PS)/6,400rpm |
| 最大トルク | 380Nm(38.7kgm)/4,800rpm |
| 乗車定員 | 5名 |
| JC08モード燃費 | 10.0km/L |
| ボディカラー | 6色 |
| 価格 | 3,850,200円~ |
マークX GRスポーツの発売時の販売価格は3,809,160円から
マークX GRスポーツには2つのグレードが設定されていました。250Sをベースとした2.5Lの「250S GRスポーツ」と、350RDSをベースとした3.5Lの「350RDS GRスポーツ」です。
それぞれのベース車両と、GRスポーツの価格は次のとおりでした(すべて2017年9月の発売当時、消費税8%込)。なお2019年10月の消費税率引き上げに合わせて価格改定が実施されているため、末期の税込価格はこの表よりも上がっています。
| グレード | 価格 |
|---|---|
| 350RDS | 3,850,200円~ |
| 350RDS GRスポーツ | 4,428,000円~ |
| 250S | 3,207,600円~ |
| 250S GRスポーツ | 3,809,160円~ |
ベース車との差額は、250S系で601,560円、350RDS系で577,800円でした。
専用エアロ、専用内装、19インチアルミホイール、チューニングされた足回りといった内容を考えれば、当時としては割安なパッケージだったと言えます。実際、後年の中古車相場ではGRスポーツが標準グレードより大きく高い水準で推移しており、市場の評価は数字にも表れています。
「カムリに統合される」という噂はどうなったのか
GRスポーツの登場当時、マークXはSAIとともにカムリへ統合されて消滅するのではないか、という見方がささやかれていました。ハイブリッド車やSUVが伸びる一方でセダン市場が縮小し、マークXの販売も右肩下がりだったためです。
結論から言えば、統合という形ではなく「生産終了」という形で決着しました。トヨタは2019年4月24日にマークXの生産終了を発表し、同年12月23日に生産を打ち切っています。SAIも2017年に販売を終えており、販売チャネル統合によってトヨペット店専売のマークXを残す理由が薄れたことも、決断を後押ししたと考えられます。実質的な乗り換え先として案内されたのはFFセダンのカムリでしたが、そのカムリ自体も2023年12月下旬に国内生産・販売を終了。2025年12月19日にトヨタが米国生産のカムリを2026年から日本へ導入する方針を示したことで、セダンとしてのカムリは戻る見通しですが、FRのマークXとは性格の異なるモデルです。GRスポーツの販売が伸びれば統合の話も消える、という当時の期待は、結果的に実現しませんでした。
マークX GRスポーツの画像6枚
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マークX GRスポーツ -
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マークX GRスポーツ -
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マークX GRスポーツ
「G’s」に代わって投入されたマークX GRスポーツのモデルチェンジ遍歴
マークX GRスポーツは、スポーツコンバージョン車「G’s」に代わって設定されたグレードです。フルモデルチェンジもマイナーチェンジも経験しないまま、マークX本体の生産終了とともに一代で消滅しました。ここでは登場から終焉までを古い順に整理します。
2017年9月19日/GRスポーツを追加設定
トヨタがスポーツコンバージョン車のブランドを「G Sports(G’s)」から「GR」シリーズへ刷新したのに合わせ、マークXにも「250S “GR SPORT”」「350RDS “GR SPORT”」が追加されました。専用チューニングサスペンション、専用マフラー、GRロゴ付き専用メーター、小径ステアリングホイール、ホワイト塗装+GRロゴ入りブレーキキャリパー、専用エンブレム、GRロゴ入りスポーティシートなどを装備。価格は250S GRスポーツが3,809,160円、350RDS GRスポーツが4,428,000円(いずれも当時の消費税8%込)でした。
2019年1月11日/限定車マークX“GRMN”を発表・受注開始
350RDSをベースに、専用6速MTを組み合わせた第2弾のGRMNを発表。価格5,130,000円、限定350台、発売は同年3月11日、取り扱いは全国のGR Garageです。スポット溶接252カ所追加、新開発ショックアブソーバー、EPS専用チューニング、19インチBBS製鍛造ホイール、4本出しマフラーなどを備え、GRスポーツの上に立つ頂点グレードとして設定されました。カタロググレードではないため、GRスポーツ自体の内容に変更はありません。
2019年4月24日/生産終了を発表、特別仕様車「Final Edition」を発売
マークXを2019年12月で生産終了すると発表。同日、250S/250S Fourをベースとする特別仕様車「Final Edition」(3,331,800円/3,489,480円)を発売しました。GRスポーツはこの時点でもカタログに残されています。
2019年10月/消費税率引き上げに伴う価格改定
消費税率10%への引き上げに合わせ、GRスポーツを含む全グレードの税込価格が改定されました。マークXにとっては最後の価格改定となっています。
2019年12月23日/生産終了。2020年1月24日に販売終了
元町工場でマークXの生産が終了し、公式サイトからも掲載が消えました。以降は流通在庫のみの販売となり、2020年1月24日に在庫車の新車登録が完了して販売も終了。GRスポーツも同時に姿を消し、後継グレード・後継車ともに設定されていません。
| マークX GRスポーツの動き | 時期 |
|---|---|
| GR SPORT(250S/350RDS)を追加設定 | 2017年9月19日 |
| 限定車 GRMN(350台・513万円)を追加 | 2019年1月発表/3月発売 |
| 生産終了を発表、特別仕様車 Final Edition 発売 | 2019年4月24日 |
| 消費税率引き上げに伴う価格改定 | 2019年10月 |
| 生産終了(在庫販売終了は2020年1月24日) | 2019年12月23日 |
マークX GRスポーツが残したもの セダン復権の夢は次の世代へ
かつて日本の新車市場の中心にはセダンがありました。しかし現在、販売台数の上位を占めるのはコンパクトカーやSUV、ミニバンです。この流れの中で、マークXは2019年に51年の歴史を閉じ、GRスポーツもわずか2年余りの設定期間で役目を終えました。
セダン復権の起爆剤という当時の期待に応えることはできませんでしたが、GRスポーツとGRMNが示した「FRセダンを走りで売る」という発想は、その後のGRブランドの拡大に確かにつながっています。マークXの直接の後継は今も現れていない一方、クラウンセダンの登場や米国生産カムリの日本導入計画など、セダンをめぐる状況は再び動き始めました。手頃なV6・FRセダンという席が空いたままである以上、中古車市場でGRスポーツやGRMNが支持され続けるのも当然と言えるでしょう。