若者の車離れは起きているのか?なぜ若い人の話題の主役に車が入れなくなったのか考える
若者の車離れが起きていると言われていますが、本当にそうなのでしょうか?「都会に住んでいる若者」と「地方に住んでいる若者」とでは車の保有率は違いますし、都会の若者だけに絞れば確かに車離れは起きているのかもしれません。
ですが、公共交通機関が夜10時に終電・最終バスを迎える地方では、どこへ行くにも車が必要ですし、雪の降る地域でも格差はあると考えます。そこで、なぜ都会や地方の若者に車離れが起きていると言われているのかを考えていきたいと思います。
公共交通機関が充実している都会に若者の人口が集まり車を必要としない人が増えたため
若者の車離れにつながる要因の1つとして「お金の若者離れ」があると考えます。地元よりも都会で就職するほうが給料も高いパターンが多く、若い人の人口はおのずと都会へ集まる傾向があります。北海道なら札幌へ、東北なら仙台へなど、それぞれの地方都市に人口が集中し交通機関が発達しているため車を必要としない人が増加しています。
2005年 | 2018年 | |
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札幌市 | 1,880,863人 | 1,955,115人 |
仙台市 | 1,025,098人 | 1,088,669人 |
東京23区 | 8,489,653人 | 9,555,919人 |
名古屋市 | 2,215,062人 | 2,320,361人 |
大阪市 | 2,628,811人 | 2,725,006人 |
広島市 | 1,154,391人 | 1,199,252人 |
福岡市 | 1,401,279人 | 1,579,450人 |
日本の7大都市と言われている札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡では、各地方の地方都市以外の地元から仕事を求め人が集まっているためか、2005年を基準に13年後の2018年の人口は横ばいの都市もあるものの、人口は増えている一方で減っている都市は1つもありません。
ですが、地方都市は人も多いため車に乗っても渋滞でなかなか進まないなどのトラブル、物価や地価が高いため月極駐車場は高いなど、車を持っても不便さ・維持費の高さがつきまといます。そのため、年間何十万円もかかる維持費を捨てて、便利な公共交通機関を使うのは当然の結果と言えます。
10年前・20年前と比べて新車価格が上がって中古車も簡単に手が出せなくなったため
2018年に発売されている車は、自動ブレーキなどの安全装備が標準装備されていて、10年前・20年前の新車よりも値上がりしている傾向にあります。
ワゴンR | ベースグレード | 最上級グレード |
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初代(1993) | 86.2万円 | 147万円 |
2代目(1998) | 75.4万円 | 159万円 |
3代目(2003) | 83.2万円 | 160万円 |
4代目(2008) | 93.4万円 | 156万円 |
5代目(2012) | 114万円 | 173万円 |
6代目(2017) | 107万円 | 165万円 |
スズキのロングセラー軽自動車であるワゴンRで新車価格推移を見てみると、1993年に発売された初代は86万円から購入できるのに対し最新モデルは107万円と、多少値上がりしています。
ですが、ベースグレードは本当に必要最小限の装備しかないため、オプションの追加やグレードを上げると簡単に120万・130万円…と値上がりしていき、簡単に手が出せない価格帯に跳ね上がります。
また、中古車も同様にベースとなる新車価格が高いため、中古車の価格帯も値上がりし新しい車は高く、手の出せる価格帯になると10年落ちに近いなど、若い人の購買意欲を削ぐ結果になっています。
スマートフォンが普及して手軽に遊べる娯楽が増えたため車を必要としなくなった
1980年代頃から次第に普及してきた携帯電話やスマートフォンですが、ショルダーフォンの時代はまだまだ若者が持っているものではありませんでしたが、フィーチャーフォンやスマートフォンの時代になってくると家族1人1人が持つものとなり、爆発的に普及しました。
スマートフォンが若者層に普及しきった現在では、無料で遊べるゲームや見ているだけでも面白い動画など、スマートフォンだけで手軽に楽しめる娯楽が登場したため、わざわざ車を使って出かけて遊ぶ機会が少なくなっていると考えます。
また、携帯電話の通信費も課金やデータ容量の追加などをしていると簡単に1万円を超えていき、家計の負担にもなります。すると車の維持費も負担になってくるため、車を持つ優先度も下がり手放す、というケースもあるでしょう。
ドラマなどの影響を受けることが少なくなり若い人が車に憧れを抱かなくなったため
映画007のアストンマーチンやバックトゥザフューチャーのデロリアン、スーパーナチュラルのインパラなどは、車両自体が高額で手の届かないモデルばかりです。
一方、西部警察のフェアレディZやスカイライン、ガゼールなど、ちょっと頑張れば手が届く車種を扱ったドラマなどが現代では少なく、若い人が車への憧れを抱かなくなり欲しいと思う優先順位が低いのではないかと考えます。
最近では、頭文字Dや湾岸ミッドナイトなどの漫画の影響で、S30フェアレディZやスプリンタートレノ(AE86)のパンダカラーの中古車価格が高騰するなど一部の若者に人気の車種はありますが、一般層にまで車ブームが来ているかというと、そんなことはないと感じます。
若い人の間で「車を持っている」ことがステータスではなくなったため
かつての若者の間では「車を持っている」ことが男性としてのステータスであり、デートカーともてはやされたのがホンダのプレリュード、日産のシルビア、トヨタのソアラで、ハイソカーやナンパ車とも呼ばれていました。
軽自動車は女性の乗り物というイメージが強くカローラではなく、プレリュードやソアラ、シルビアを買うことを目標に頑張っていた男性も多かったと考えます。
車を持っていなければデートもままならなかったバブル時代を経て、老若男女だれでも車に乗っているのが現代です。「デートといえば、ドライブ」の時代とは違って、インターネットが出てきてスマートフォンやガラケーを持っている人なら誰でも使える娯楽になった今は、車を持っていることよりも楽しいことがたくさんあります。
そのため、エンジンをかけずに駐車場へ置いておくだけでもお金のかかる自家用車を持たない選択をする人も増えていると考えます。
エコ意識の向上やライフスタイルの流行による一時的な車離れが起きているため
若者の車離れが叫ばれてからも販売台数を伸ばしている車種がハイブリッドカーで、特にトヨタのプリウスとアクアが通年販売台数1・2フィニッシュを決めるなど、消費者に選ばれている車種です。燃費がいい車を多くのユーザーが選んでいるということは、エコ意識も高まっていると考えることができます。
ちょっとした距離なら車よりバイク、バイクより自転車を選ぶ若い人も増え、大量所有から厳選した逸品を持つ時代へと変わった現代は、ミニマル・シンプルな生活を望む男女も多くマキシマムになりがちな自動車は持たない主義の人も、今後さらに増加するでしょう。
車は個人で所有するものではなくて必要な時にだけシェアして利用するものであると考える若者が増えてきたから
都市部に暮らす20代~30代の若い世代を中心として、駐車場代やメンテナンス費用などの維持費がかる車は個人で所有するものではなくて、必要な時にサービス料を支払ってシェアするものであるという意識が芽生えています。
あるカーシェアリングサービスを運営する会社のデータによると、2010年には1万人台であったカーシェアサービスの利用登録者は、2017年には100倍を超える約109万に達し、その内訳の多くは20代~30代の若い世代によって構成されているようです。
フリマアプリなど近年は他分野においても存在感を増しつつあるシェアリングビジネスに、メリットを感じているトレンドの変化に敏感な若者達が、維持費のかかる車は個人で所有するものではなくて、必要な時にサービス料を払って乗るものであると考えるようになってきているのも、若者に車離れが起きている要因の一つです。
東京や地方都市以外の地域では車はまだまだ必需品!車がなければ生活もままならない場所では車離れは起きていないと感じる
東京やほかの6大都市以外の地域では、若者の車離れは起きているのでしょうか?地方では、月極駐車場代も高くて1万円という場所も多く、自宅に駐車スペースがあるという人もたくさんいます。そのため都会に比べて車の維持費は安く済みますし、そもそも車が無ければデートはおろか買い物もしにくいというのが地方に住んでいる若者の現状でしょう。
「男が乗る車はせめて普通車」「大衆車より高級車・国産より外車のほうが偉い」などの昭和的価値観は薄れ、軽自動車は爆発的に浸透していますし、「軽自動車のほうが経済的」「乗っている車で人の価値や偉さは変わらない」などの考えも増えてきています。
デートといえば車でドライブの昭和の時代とは違い、インターネットが登場し娯楽も増えた平成以降では、都会の若者は車がなくともデートを楽しんでおり、地方の若者は車が生活必需品と趣味を兼ねた実用的な持ち物になっています。
若者に車離れが起きている原因とは
- そもそも車に興味がない
- 車の必要性が薄い都会に若者が集中しているため
- エコ意識が高まり車よりも自転車に人気が集まっているため
都会ならば渋滞にはまって動けない車デートよりも電車デートのほうが便利でしょうし、地方では車が日常の足でありDIYでいじる趣味を楽しんでいる人もいます。
したがって、若者の車離れは若い人が東京などの都市部に多く流入していることが1つの要因であり、クルマを所有する必要性を感じないため購入しない人が増えたことが結果としてあらわれたと考えます。
ということは、都市圏以外の場所に若い人が戻ってきたり、子供が増えることによってクルマに若者が帰ってくる機会が増えるのではないでしょうか。