ザ・ビートル ファイナルエディションのその後~2019年7月10日に生産終了 最後の1台はプエブラの博物館へ
フォルクスワーゲンは2018年11月の「ロサンゼルスモーターショー2018」で、ザ・ビートルの最終限定車となる特別仕様車「ファイナルエディション」を世界初公開しました。ビートルの愛称で世界中の車好きから親しまれ、フォルクスワーゲンのアイコン的な存在でもあった「タイプ1」をルーツとする同車の生産終了発表は、衝撃をもって受け止められました。
結論から書くと、ザ・ビートルは予告どおり2019年7月10日にメキシコ・プエブラ工場で生産を終了し、ファイナルエディションがビートルの名を持つ最後の量産車となりました。ラインを離れた最後の1台は非売品としてプエブラのフォルクスワーゲン博物館に収められています。日本市場ではファイナルエディションの導入は行われず、後継モデルも設定されていません。2026年7月時点で「ビートル」を名乗る新型車の発売計画は公表されていません。
ここではまず生産終了の顛末を整理したうえで、ファイナルエディションが採用するボディカラーやインテリア、グレード構成についての情報をお届けしていきます。
2019年7月10日にプエブラ工場で生産終了 ラインを離れた最後の1台はデニムブルーのファイナルエディション
ザ・ビートルの生産は2019年7月10日、メキシコ中部プエブラのフォルクスワーゲン工場で終了しました。マリアッチの生演奏を伴う式典が開かれ、拍手のなかを最後の1台がラインから送り出されています。
その最後の1台は、デニムブルーに塗られたファイナルエディションのクーペでした。この色は、2003年に空冷ビートルの生産を締めくくったメキシコ向け最終モデル「Última Edición」のブルーへのオマージュにあたります。同車は販売されず、プエブラのフォルクスワーゲン博物館で永久保存されることになりました。
フォルクスワーゲンの発表によれば、3代目にあたるザ・ビートルの生産台数は2012年以降で約50万台。2代目のニュービートルと合わせると、いずれもプエブラ工場だけで生産され、91の国と地域で販売されました。この2世代で用意された外装色は23色、内装トリムは32種、エンジン構成は13種類、そしてDune、Denim、Coast、#PinkBeetleといった特別仕様は19種類に及びます。ファイナルエディションはその締めくくりに置かれた1台でした。
プエブラ工場はビートルの生産終了後、北米市場向けの小型SUVの生産へと転換し、2020年から新たなラインが動き始めています。
メキシコでは65台限定のファイナルエディションをオンライン販売 米国向け最後の2台はキングスレッドで保存
ファイナルエディションは当初、アメリカ市場向けの設定として発表されました。しかし生産終了に合わせて、メキシコでも65台限定の「Beetle Final Edition」がオンライン経由で販売されています。ベース価格は1台21,000ドルで、1,000ドルの支払いで予約する仕組み。各車の左サイドには1から65までの通し番号が入った記念プレートが取り付けられました。
一方、米国向けに最後に作られた2台はキングスレッドで仕上げられ、専用のダッシュボードとキー、キルティング加工のシートを備えます。この2台は販売されず、フォルクスワーゲン・オブ・アメリカのヘリテージコレクションに加えられました。
当時のフォルクスワーゲン・オブ・アメリカ社長兼CEOであるスコット・キーオ氏は、ビートルなくしてフォルクスワーゲンの現在はあり得ないとしたうえで、その役割は今後も大切にされていくと述べています。
最終限定車「ザ・ビートル ファイナルエディション」はクーペとカブリオレに設定された!特別限定色は2色が追加設定
フォルクスワーゲンは、ビートルシリーズを支えてきた方達への感謝を込めて、日本で実施された「See You The Beetle」のようなキャンペーンを各国で展開しました。ロサンゼルスモーターショー2018で初公開された特別仕様車「ファイナルエディション」は、その米国版にあたる企画です。
「ザ・ビートル ファイナルエディション」はクーペとカブリオレに設定されてグレードはSEとSELの2タイプ展開
フォルクスワーゲンの主力車種であったニュービートルの後継モデルとして開発され、2011年に中国で開催された上海モーターショーで発表された「ザ・ビートル」は、約8年のモデルライフで生産終了となりました。
同車はビートルシリーズのルーツである「タイプ1」を意識して、フロントからリアへと続く特徴的なボディラインを採用して、レトロとモダンさ、そしてスポーツテイストを融合させた独自のエクステリアを完成させます。
ザ・ビートルの最終限定車となる「ファイナルエディション」は、クーペとカブリオレに設定されて、グレードはSEとSELの2タイプを展開します。
ファイナルエディションは、テールゲートに取り付けられるTurboと記載されているバッジの印字を「Beetle」へと変えて、特別感をさらに高めます。
パワートレインは全車共通で、2.0L直列4気筒TSIターボエンジンと6速オートマチックの組み合わせ。最高出力174hp、最大トルク184lb-ftを発生し、EPA燃費は市街地26mpg、高速33mpg、複合29mpgとされています。
| グレード | ボディ | 車両本体価格(MSRP) | 輸送費895ドル込み |
|---|---|---|---|
| SE クーペ | クーペ | 23,045ドル | 23,940ドル |
| SEL クーペ | クーペ | 25,995ドル | 26,890ドル |
| SE カブリオレ | オープン | 27,295ドル | 28,190ドル |
| SEL カブリオレ | オープン | 29,995ドル | 30,890ドル |
いずれも米国での発売当時の価格です。日本では正規販売されていないため、円換算は掲載していません。
ザ・ビートル ファイナルエディションは「サファリ・ユニ」と「ストーンウォッシュド・ブルー」の2色の塗装色を追加設定
ザ・ビートル ファイナルエディションは、2003年にメキシコで販売されていた空冷ビートルの最終特別仕様車「Última Edición」をインスパイアして、サファリ・ユニ(Safari Uni)、ストーンウォッシュド・ブルー(Stonewashed Blue)の2色を塗装色として追加設定します。
特別塗装色以外のボディカラーでは、ピュアホワイトとディープブラックパールエフェクトとプラチナグレーの3色がラインアップします。
また、同車のグレードSELのカブリオレでは、サファリ・ユニ以外の塗装色を選択する場合には、特別カラーのブラウンをソフトトップに組み合わせる事が出来ます。
なお、プエブラ工場で最後にラインを離れた1台がまとっていたデニムブルーも、この最終期のブルー系にあたる色でした。青い車体で締めくくるという演出は、2003年の空冷ビートルから受け継がれた作法だったわけです。
ザ・ビートル最後の特別仕様車「ファイナルエディション」はお得感満載な車 中古市場では価格差が定着
ファイナルエディションのインテリアは、ブラックとベージュを基調として、センターコンソールには加飾を施して上質感を加えます。同車の上級グレードであるSELは、本革素材のシート表皮にダイヤモンドステッチ加飾を施し、メッキ加工が施されたホイールキャップを取り付けて更なる特別感を演出します。
価格面でも巧妙でした。ファイナルエディションSEは、装備を上乗せしながら通常のSEより安い価格に設定されており、最終年のビートルのなかでは実質的な買い得グレードとして位置づけられていました。「タイプ1」の誕生から数えると80年近い長い歴史を誇るビートルシリーズにとっての最終モデルとなったこの一台が、将来的にプレミア価格を帯びるのではないかという見方が当時から出ていたのも自然な流れでした。
では、その見立ては当たったのでしょうか。2026年時点の米国中古市場を見ると、2019年式ビートルの相場は標準的な2.0T Sが15,900ドル前後であるのに対し、ファイナルエディションSELカブリオレは24,100ドル前後と、明確な価格差が定着しています。走行距離の少ない認定中古車では3万ドルを超える出品も見られ、クーペのSEL(新車時25,995ドル)を上回る水準です。
もっとも、これは希少性による高騰というより、装備差と最終モデルという物語性が残価をしっかり支えている状態と見るのが妥当でしょう。生産台数がまとまっていることもあり、投機的に跳ね上がる段階には至っていません。当時の「プレミア価格が付く」という予想は、劇的な形ではないにせよ、他グレードとの価格差というかたちで現れていると評価できます。
ビートルのEV復活はどうなったのか 2026年時点でも新型車の計画は未発表
フォルクスワーゲンは2017年11月に、2018年から2022年までの5年間で、電動化を中心とする次世代技術に340億ユーロの投資を行うことを発表しました。この規模の投資は、フォルクスワーゲンがEV化へと本格的にシフトチェンジを行った意思の表れでもあります。
ザ・ビートルの生産台数は約50万台であるのに対して、前モデルのニュービートルは約120万台に達していました。ザ・ビートルは知名度の割に台数が伸びず、ライバルにあたるBMWミニと比較しても勢いを欠いていたのが実情です。ディーゼル車の排ガス不正問題でフォルクスワーゲンに多額の賠償金が課せられたことも、生産終了の判断に影を落としました。
当時、VWの米国法人「フォルクスワーゲン・オブ・アメリカ」のCEOであったハインリッヒ・J・ウェブケン氏は、「タイプ2」を電気自動車として復活させたように、ビートルの復活は絶対にないとは決して言えない、という趣旨の発言を残しています。ただし同氏は2018年11月にスコット・キーオ氏へ職を譲っており、この発言は前任者時代のものです。
その後の展開を追うと、ヘリテージEVの旗手になったのはビートルではなくマイクロバスでした。「タイプ2」の系譜を継ぐID.Buzzが2022年に欧州、2024年に北米で発売され、ウェブケン氏が引き合いに出した路線はそのまま現実になっています。
一方でビートルについては、2023年6月、フォルクスワーゲン乗用車部門CEOのトーマス・シェーファー氏が復活を明確に否定しました。開発リソースや資金の問題ではなく、マーケティング上の意味が薄いという理由で、役目を終えたモデルを戻す必然性はないという趣旨の見解です。過去に「e-Beetle」の商標が押さえられていたこともあり期待は残りましたが、公式な企画には至っていません。
フォルクスワーゲンは2025年以降、EVの車名戦略そのものは大きく転換しました。数字だけのID.シリーズから、よく知られたモデル名をEVへ引き継ぐ方向へ舵を切り、ID.2allのコンセプトを市販化した小型EVは「ID.Polo」として2026年に投入されます。GTIのバッジも電動モデルで復活します。ただしこの名前の復権リストにビートルは含まれていません。
MEBプラットフォームを使った電動ビートルを想定したレンダリングや提案は今も途切れなく登場していますが、いずれも公式の企画ではありません。2026年7月時点では、ビートルの新型車に関する具体的な計画は発表されていないというのが現状です。復活があるとしても、量販EVの体制が固まった後の話になるとみられます。
オリジナルビートルの系譜を継いできたモデル ザ・ビートルのモデルチェンジ遍歴
ザ・ビートルはニュービートルの後継として登場した、フォルクスワーゲンが販売する3ドアのファストバッククーペ型のコンパクトカーです。全体的にオリジナルのビートル、タイプ1の形状を受け継いでいます。
ザ・ビートル #BA16型/2011年~2019年
2011年、ザ・ビートルが2012年モデルとして発表されました。日本での販売は2012年4月に受注が開始されました。
2013年3月、日本仕様にフルオート電動ソフトトップのカブリオレを追加設定。5月にはVWの日本国内正規輸入60周年記念として米国のギターメーカー、フェンダー・ミュージカル・インストゥルメンツ社とのコラボの特別仕様車「Fender Edition」を限定600台で発売。10月、スポーツモデルの「ザ・ビートル ターボ」を追加。11月、全世界で3,500台、日本への割り当ては100台限定の「ザ・ビートル・レーサー」を発売。同年12月、150台限定の「ザ・ビートル・カブリオレ」の特別限定車「50’s」「60’s」「70’s」を発売。
2014年1月、バレンタイン時期に向けた特別限定車「Choco」300台、「Milk」250台、「Bitter」250台で発売。同年4月、ザ・ビートルとカブリオレユーザーに向けたオーダーメイドの期間限定特別受注生産車「Create Your Own "The Beetle"」を発表。5月には人気の装備を特別装備した300台限定の限定車「ザ・ビートル・ジャーニー」を発表。9月、復刻限定モデル「ザ・ビートル・スペシャル・バグ」を限定800台で販売。11月、フラッグシップグレードとしてドイツで展開している「Exclusive」を冠した限定車「Turbo Exclusive」「Cabriolet Exclusive」を発表。各50台の限定販売となります。
2015年1月、利便性のある装備を充実させた450台限定の特別限定車「Blossom」を発売。6月に一部改良を実施し、内外装の変更と車体価格の値下げを行いました。10月、クーペ500台、カブリオレ50台の特別限定車「Club」「Cabriolet Club」を発売。
2016年5月、伝統的なラフロードカー「Dune Buggy」「Baja Bug」を現代的に再現した特別限定車「Dune」を500台限定で発売。6月には特別限定車「ALLSTAR」を発売。同年9月、マイナーチェンジを実施し「Base」「Design」「2.0 R-Line」の3グレードに。ボディカラーの追加や外観のデザインを変更。11月、新グレードの「R-Line」の追加と共に300台限定の特別仕様車「#PinkBeetle」を発売。
2017年6月、新仕様で前年の限定車「Dune」を限定300台で再販。7月、一部改良。11月、限定300台で限定車「Black Style」を発売。
2018年1月、限定300台の限定車「SOUND」を発売。5月、500台限定の限定車「Exclusive」を発売。10月、特別仕様車「Design Meister」「R-Line Meister」「2.0 R-Line Meister」を発売。11月、ロサンゼルスモーターショー2018で米国向けの最終限定車「ファイナルエディション」を世界初公開。
2019年7月10日、メキシコ・プエブラ工場で生産終了。ラインを離れた最後の1台はデニムブルーのファイナルエディション クーペで、非売品としてプエブラのフォルクスワーゲン博物館に展示されています。米国向けに最後に作られた2台はキングスレッドで仕上げられ、フォルクスワーゲン・オブ・アメリカのヘリテージコレクションへ。メキシコでは65台限定のファイナルエディションがオンラインで販売されました。日本市場での販売も2019年に終了し、後継モデルは設定されていません。
| ザ・ビートルのモデル | 販売遍歴 |
|---|---|
| #BA16型 | 2011年~2019年 |
ザ・ビートル ファイナルエディションは日本には導入されなかった特別な車
フォルクスワーゲンが2018年9月13日に、ザ・ビートルの生産を2019年7月いっぱいで終了すると発表したのは衝撃的でした。ザ・ビートルの生産終了は、ルーツ車とも言える「タイプ1」が誕生してから80年近く続くビートルシリーズの終わりも意味しました。
ビートルシリーズは、VWを代表するアイコン的な役割を果たす時代もありました。「タイプ1」の誕生以来、世界中の愛好家から親しまれてきたビートルシリーズは、間違いなく今後も語り継がれていく車です。
ザ・ビートルの最終限定車となった「ファイナルエディション」は、米国とメキシコで販売され、日本市場へは仕様や名称を変えた形でも導入されませんでした。日本ではSee You The Beetleキャンペーンの第4弾として2018年10月23日に発売された特別仕様車「Meister(マイスター)」シリーズが、ザ・ビートル最後の企画となっています。
日本で新車として手に入れる機会は失われましたが、ファイナルエディションは米国の中古市場で他グレードより高い水準を保ち続けており、最終モデルという肩書きは確かに価値として残りました。ビートルの名がいつか戻ってくるのかどうか、2026年時点ではまだ答えは出ていません。