フォルクスワーゲン ビートルEV

VWザ・ビートルの後継はどうなった?2019年に生産終了、EV復活「ID.ビートル」は今も未実現

ビートルはEVで復活するのか。VWは2019年にザ・ビートルの生産を終了し、直系後継は登場していません。現CEOは復活に消極的で、安価EVはID.2all/ID.EVERY1へ。一方でワーゲンバスのID.Buzzは日本発売(888万9000円〜)。日本で買えるEVも含めて解説します。

VWザ・ビートルの後継はどうなった?2019年に生産終了、EV復活「ID.ビートル」は今も未実現

ザ・ビートルは2019年に生産終了、EV後継「ID.ビートル」は実現せず——VWのレトロEV復活はID.Buzzに結実(日本でも2025年発売)

2011年に登場(日本は2012年発売)したフォルクスワーゲンの3代目「ザ・ビートル」は、2019年7月にメキシコ・プエブラ工場で生産を終了し、初代タイプ1から続いた「ビートル」の系譜はいったん途絶えました。本記事の公開当時は「いずれEVとして4ドアで復活するのでは」という観測を紹介していましたが、その後の展開を追うと、ビートル直系のEV(いわゆる「ID.ビートル」)は今も公式プロジェクトとして存在していません

一方で、「往年の名車を電気自動車で蘇らせる」という発想自体は実現しました。ただし選ばれたのはビートル(タイプ1)ではなく、ワーゲンバス(タイプ2)を電動化した「ID.Buzz」です。ID.Buzzは日本でも2025年6月に発売され、新車で購入できます。以下、記事公開後の動きを新しい順に整理します。

噂された「4ドアEVビートル」はどうなったか——公式化されず、現CEOも消極的

Volkswagen E-Bugster2012年公開のコンセプト「Volkswagen E-Bugster」。市販化はされなかった

本記事が取り上げた「タイプ1をインスパイアした4ドアEV」という構想は、当時のヘルベルト・ディースCEOが掲げた“エモーショナルなモデルを増やす”という方針の中でささやかれていたものです。写真のE-Bugsterも、2012年に公開されたビートルベースの2シーターEVコンセプトで、レトロ×電動の方向性を示す一台でした。しかし、これらはいずれも市販に至っていません。ディース氏が2022年にVWのトップを退いたこともあり、ビートルEVの構想は具体的な開発計画として結実しませんでした。

現在のトーマス・シェーファーCEOは、ビートルのような一部の車種について「すでに役目を終えた」との見解を示しており、EVでの直系復活には消極的です。2026年時点でも、VWから「ID.ビートル」を名乗る車の計画は公式には一切発表されていません。もっとも、VWが安価な小型EVに力を入れているのは事実で、2023年に約2万5000ユーロの「ID.2all」、2025年3月には約2万ユーロの「ID.EVERY1」というコンセプトを相次いで公開しています。ただしこれらはいずれも実用的なハッチバックであり、丸みを帯びたビートル顔の後継とは異なります。ビートルの意匠を受け継ぐEVが出るとすれば、それはこうした量産EVの成功を前提とした“その先”の話、というのが現実的な見立てです。

レトロEVの現実解は「ID.Buzz」——タイプ2の電動復活、日本でも2025年6月発売

ID.Buzzのエクステリアワーゲンバス(タイプ2)を電動化したID.Buzz。日本でも2025年に発売された

「ID.Buzzは2022年に発売予定」という記事公開時の情報は、その後現実になりました。ID.Buzzは2022年3月に世界初公開され、欧州では2022年秋に発売。そして日本でも2025年6月20日に発売され、価格は888万9000円〜997万9000円となっています。

パワートレインはリヤに最高出力210kW(286PS)・最大トルク560Nmのモーターを積む後輪駆動で、プラットフォームはフル電動SUV「ID.4」と同じ「MEB」。一充電あたりの航続距離は524〜554km(WLTC)で、CEV補助金の対象にもなります。日本仕様はホイールベースの異なる「Pro」と「Pro Long Wheelbase」の2グレード展開です。VWは「往年の名車を電動で復活させる」というレトロ路線を、ビートルではなくワーゲンバスで具現化した、というわけです。日本の読者にとっては、ビートルの新車は買えなくなった一方で、同じ“レトロ×EV”のID.Buzzは選べる、という状況になっています。

ガソリン車のザ・ビートルは2019年に生産終了——日本では約3.5万台を販売

フォルクスワーゲン ビートルのエクステリア2019年に生産を終えたフォルクスワーゲンの名車ザ・ビートル

ガソリン車のザ・ビートルは、2018年9月13日に生産終了が正式発表され、記念モデルの生産を最後に2019年7月にメキシコ・プエブラ工場での生産を終了しました。ザ・ビートルはフロントエンジン・前輪駆動(FF)で、リヤエンジン・リヤ駆動(RR)だった初代タイプ1とは構造こそ異なりますが、丸みを帯びたシルエットで系譜を受け継いだモデルでした。日本では2012年から約7年、カブリオレを含めておよそ3万5000台が販売されています。

終幕にあたっては「See You The Beetle」キャンペーンが展開され、数々の特別仕様車が投入されました。第1弾はフェンダー社のサウンドシステムを積む「The Beetle SOUND」、第2弾はダイヤモンドステッチのナッパレザーを備える「The Beetle Exclusive」で、その後も完成度を高めた「マイスター」シリーズ(2018年10月)や、シリーズ最後を飾る「ファイナルエディション」まで、コレクション性の高いモデルが続きました。

2018年のザ・ビートル特別仕様車(一例)
The Beetle SOUND 294万円(全国限定300台)
The Beetle Exclusive 333万円(全国限定500台)

残念ながらガソリン・ディーゼルを問わず直接の後継モデルは設定されず、レトロ路線の電動化はワーゲンバス由来のID.Buzzが担う形となりました。新車のザ・ビートルは、日本ではすでに手に入りません。

ビートルEVは今も未実現——復活の可否は小型EVの行方次第

ビートルEV

ザ・ビートルの生産終了から数年が経ちましたが、「ビートルEV」は構想の域を出ないまま、2026年に至っても実現していません。ID.Buzzの成功によって、VWがヘリテージモデルをEVで蘇らせる力を持つことは証明されました。それでもビートルについては、現経営陣が復活に慎重で、公式のロードマップにも載っていないのが現状です。

VWが優先しているのは、まずID.2allやID.EVERY1といった手の届く価格帯のEVを軌道に乗せることです。タイプ1から続いた道が再び走り出すとすれば、その先にビートルの意匠をまとったEVが検討される、という順序になるでしょう。丸いあの姿が電気自動車として帰ってくるのか——期待は残りますが、少なくとも今のところは白紙、というのが正直なところです。