自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の義務化はいつから?スケジュールと対象車を解説
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ・AEBS)は、日本を含む多くの国で新車への搭載が義務化されており、その対象範囲は段階的に拡大されています。高齢ドライバーのアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故防止や、追突事故の被害軽減を目的としたこの制度は、今後すべての新車に適用される予定です。
この記事では、自動ブレーキ義務化の背景・スケジュール・性能基準を整理したうえで、既存車への後付けの可否、各自動車メーカーの自動ブレーキシステムの特徴と名称まで詳しく解説します。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)義務化の経緯と背景
自動ブレーキの義務化は、高齢ドライバーの操作ミスによる交通事故が社会問題化したことを背景に進められました。日本とEUが主導し、2019年6月に国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で新型乗用車・軽商用車への衝突被害軽減ブレーキ「AEBS」搭載を義務づける国際基準が採択されました。この国際基準採択を受け、日本は世界に先駆けて義務化を進めています。
日本国内での普及は急速に進んでおり、2020年の衝突被害軽減ブレーキ装着率は、同年の総生産台数の約91.5%に達しています。 義務化はこの流れをすべての新車に広げ、搭載率100%へ道筋をつけるものです。
自動ブレーキ義務化のスケジュール:段階的に全新車へ拡大
日本では2021年11月以降にフルモデルチェンジした国産新型車から義務化がスタートし、2024年7月からは輸入車の新型車にも適用が始まっています。今後のスケジュールは以下のとおりです。
自動ブレーキ義務化スケジュール
- 2021年11月〜:国産新型車(フルモデルチェンジ車)
- 2024年7月〜:輸入車の新型車
- 2025年9月〜:新型の大型トラック・バス(総重量3.5トン超のトラック、定員10人以上のバス)
- 2025年12月〜:国産継続生産車(既存車種)
- 2026年7月〜:輸入継続生産車
- 2027年9月〜:軽トラック
- 2028年まで:すべての新型車・継続生産車に義務化が適用される見通し
なお、現時点では二輪自動車・側車付二輪自動車・三輪自動車などは義務化の対象外です。すでに販売・登録されている既存車(中古車含む)への義務化は適用されないため、現在の愛車をそのまま運転し続けることに問題はなく、慌てて買い替える必要もありません。
義務化された自動ブレーキの性能基準(AEBS認定要件)
国土交通省が定める自動ブレーキの保安基準(AEBS認定要件)は以下の3点です。
自動ブレーキ(AEBS)の認定基準
- 静止している前方車両に50km/hで接近した際、衝突しないまたは衝突時の速度が20km/h以下であること
- 20km/h以下で走行する前方車両に50km/hで接近した際、衝突しないこと
- 自動ブレーキが作動する少なくとも0.8秒前に、ドライバーへの警報が鳴ること
さらに、2024年7月からは自動ブレーキの対象物に「自転車」が追加されており、時速15km/hで横断する自転車に対して時速38km/hで衝突しないよう自動制御することが国産新型車に求められています。継続生産車への適用は2026年7月からです。
自動ブレーキの誤作動リスクと限界を正しく理解する
自動ブレーキはカメラやレーダーで前方の車両・歩行者・障害物を検知し、衝突の危険を察知した際に警告音を発し、ドライバーが反応しない場合は自動でブレーキをかけるシステムです。
ただし、自動ブレーキは衝突を100%防ぐものではなく、あくまで衝突被害を軽減するシステムです。高速走行時に作動しても完全停止できない場合があります。また、センサーの種類によっては、以下のような状況で誤作動や検知漏れが起こる可能性があります。
自動ブレーキが正常に作動しにくい主なシチュエーション
- 濃霧・大雨・吹雪など視界が悪い天候
- 夜間(カメラ式システムで歩行者等の検知精度が下がる場合がある)
- 急カーブや急勾配のある道路
- センサーやカメラが汚れている状態
- 飛び出しなど、急な横断が発生する場面
自動ブレーキはあくまでも「最終手段」の安全装備です。システムに頼りすぎず、常に安全運転を心がけることが重要です。
自動ブレーキは既存の車に後付けできるか?
自動ブレーキはカメラ・センサー・ブレーキ制御システムを車両全体と連携させる必要があるため、既存の車へのシステム後付けは現実的にはほぼ不可能です。すでに販売されている既存車や中古車が義務化の対象になるわけでもないため、慌てて対応する必要はありません。
ただし、踏み間違いによる急発進を抑制する「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」は後付けが可能です。国土交通省が認定した製品がカー用品店・ディーラー・整備工場などで販売されており、価格の目安は4〜6万円程度です。自動ブレーキのない車に乗っている高齢ドライバーのいる家庭で特に検討する価値があります。また、前方の車両や歩行者に接近した際に警報を鳴らす後付けドライブレコーダー型の警報システムも市販されています(ブレーキは自動作動しません)。
各自動車メーカーの自動ブレーキシステムの名称と特徴
自動ブレーキは各メーカーが独自の名称でシステムを展開しています。車選びの際に「標準搭載されているかどうか」を確認するうえで、各メーカーの呼び名を把握しておくと便利です。
TOYOTA(トヨタ):トヨタ・セーフティ・センス
トヨタの予防安全パッケージ「トヨタ・セーフティ・センス(TSS)」は、現在多くのトヨタ車に標準装備されています。第1世代(2015年登場)には車種によって「C」と「P」の2タイプがありましたが、2018年の第2世代導入で統合されています。
現行のトヨタ・セーフティ・センスは、単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせて車両・歩行者・自転車・自動二輪車を昼夜問わず検知します。交差点での右折時の対向車両検知、出会い頭の衝突回避など、検知シーンも年々拡充されています。レクサスでは「Lexus Safety System+」という名称の予防安全パッケージが採用されています。
MAZDA(マツダ):i-ACTIVSENSE(アイアクティブセンス)
マツダの先進安全技術は「i-ACTIVSENSE(アイアクティブセンス)」という名称で、前方は単眼カメラとレーダー、後方はセンサーで構成されています。マツダの特徴は、全車種に対してほぼ同等の安全装備が用意されている点で、グレードによって装備の差が少ないのが強みです。
衝突被害軽減ブレーキ(スマート・ブレーキ・サポート)に加え、後退時検知、車線逸脱警報などの機能も搭載されています。開発理念として「危険な状況になってから対処するのではなく、なる前に回避する」という考え方が根底にあり、積極的な介入より運転を支援する設計が特徴です。
日産:エマージェンシーブレーキ/360°セーフティアシスト
日産の先進安全システムは「360°セーフティアシスト」という名称のもとで展開されており、前方の単眼カメラ・レーダー・センサーに加え、後方・側方センサーも組み合わせた全方位対応の構成が特徴です。自動運転に近い「プロパイロット」機能との連携により、高速道路でのハンズフリー走行や車外からのリモートパーキング機能を搭載するグレードもあります。
エマージェンシーブレーキはフロントカメラが前方の車・歩行者・障害物との距離と速度から衝突可能性を判断し、警告後もドライバーが反応しない場合に自動ブレーキを作動させます。搭載機能は車種・グレードによって異なります。
HONDA(ホンダ):Honda SENSING(ホンダセンシング)
ホンダの予防安全システムは現在「Honda SENSING(ホンダセンシング)」という名称が主流です。単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせ、車両・歩行者の検知と自動ブレーキ(衝突軽減ブレーキ・CMBS)に対応しています。衝突予測時は警告音に加えて対向車接近時にはハンドルを振動させてドライバーに警告する機能も備えています。
スズキ:SUZUKI Safety Support(スズキ セーフティサポート)
スズキの先進安全システムは「SUZUKI Safety Support(スズキ セーフティサポート)」という名称です。以前は「レーダーブレーキサポート」という呼称でしたが、機能拡充とともに現在の名称に変更されています。前方は単眼カメラとレーダー(またはステレオカメラ)、後方はセンサーという構成で、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱防止支援などが搭載されています。多くの機能が特定グレードやオプション扱いとなっており、価格帯に応じて選択できる柔軟性があります。アクセル・ブレーキの踏み間違いによる急発進抑制機能も搭載されています。
SUBARU(スバル):アイサイト(EyeSight)
スバルの運転支援システム「アイサイト」は2008年の初搭載以来、継続的に進化を続けています。人間の両目のように2つのカメラで前方を立体的に把握するステレオカメラを基本とし、最新バージョンでは広角単眼カメラが加わり3眼構成に進化しています。
最上位モデルの「アイサイトX」はステレオカメラに加えてミリ波レーダーも搭載し、準天頂衛星「みちびき」とGPSを活用して高精度な位置情報にもとづく運転支援が可能です。 衝突回避の最大対応速度は50km/hで、超低速域でも機能します。NASVAの自動車アセスメントで最高評価ファイブスターを獲得するなど、高い安全性能が評価されています。
DAIHATSU(ダイハツ):スマートアシスト(スマアシ)
ダイハツの先進安全システム「スマートアシスト(スマアシ)」は、フロントガラス上部に設置されたステレオカメラと後方ソナーで構成されています。低速域(4km/h程度)から50km/h程度まで自動ブレーキが作動する設定です。衝突回避支援ブレーキ・前後方誤発進抑制・車線逸脱抑制など幅広い機能を備えていますが、車種・グレードによって搭載機能が異なるため、購入前に確認することをおすすめします。