3Dプリンターで作る電気自動車とは?製造3日のLSEV(YoYo)の仕組みと現在
3Dプリンターを使って製造される電気自動車が、自動車業界に新たな波をもたらしています。イタリアのスタートアップXEVが開発した3Dプリント量産型電気自動車「LSEV(現在はYoYoとして販売)」は、わずか3日で1台を製造できる革新的な車として注目を集めました。この記事では、XEVのYoYoの技術・スペック・現在の販売状況と、3Dプリンター自動車のパイオニアたちの歩みを解説します。
XEV LSEV(YoYo)の誕生と販売の歩み
YoYo(旧LSEV)はアジアとヨーロッパで販売されている
エアコンを完備して機能性も抜群
イタリアにデザインセンターを持ち中国に生産拠点を置くXEV Limitedは、中国の3Dプリント素材メーカー「Polymaker」と共同でLSEV(Low Speed Electric Vehicle)を開発しました。当初2019年の量産開始を目指していましたが、2021年5月に「YoYo」として正式にローンチ。現在はヨーロッパ市場で販売されており、EV補助金を利用した場合の実質価格は約1万ユーロ前後となっています。
量産開始前からすでにイタリア郵便局(Poste Italiane)から5,000台、自動車リース会社ARVALから2,000台の合計7,000台の受注を獲得するなど、法人・フリート需要を中心に高い関心を集めました。2022年にはイタリア最大のエネルギー企業ENIと提携し、ENIのサービスステーションでYoYo向けのバッテリースワッピングサービスを展開しています。
3Dプリント電気自動車LSEVのスペック
スマートカーなので道の狭い日本でも使いやすいサイズ
フル充電で150km走行は日常使いに十分な距離
XEV YoYoは2人乗りの超小型電気自動車で、全長2,500mm、全幅1,500mm、全高1,575mm、車両重量750kg(バッテリー含む)、最高速度70〜90km/h(グレードにより異なる)、フル充電後の航続距離150kmを実現しています。
シャシー・シート・ガラス以外のほぼすべての部品を3Dプリントで製造しており、強化ナイロン・熱可塑性ポリウレタン樹脂などのエンジニアリングプラスチックが採用されています。金属部品であるシャシーやモーターは従来の生産方法で製造されており、3Dプリントと従来製法を組み合わせたハイブリッド製造アプローチが特徴です。ドアのハニカムデザインは3Dプリント製であることを視覚的に表現しており、デザイン上の個性にもなっています。
XEVのおよそ50人のチームが車両設計と専用3Dプリンターをゼロから開発してプロトタイプ第1号をラインオフしました。
LSEVプロジェクトの特徴と革新性
LSEVは僅か3日で完成する
このプロジェクトはEU最大の研究・技術革新プログラム「Horizon 2020」の採択を受け、約170万ポンド(約2億5千万円)の資金を調達して本格化しました。XEVの創設者ルー氏(自動車デザインの修士号保有)とイタリア人共同設立者で3Dプリンターディレクターのロバート・モレッティが立ち上げたこのプロジェクトは、量産型3Dプリンター車という前例のない挑戦でした。
3Dプリンター製造の主な革新ポイントは以下の通りです。
- 部品点数の大幅削減:従来の自動車の約2,000点から57点へ
- 製造コスト削減:研究開発投資コストを従来比で70%以上削減
- 開発期間の短縮:従来の3〜5年から3〜12ヶ月へ短縮
- 生産サイクルの高速化:1台あたりの製造期間はわずか3日
部品により製造時間が異なる
各部品の生産時間はフロントカウルやダッシュボードなど部品の大きさや形状によって3〜10時間程度の差があります。また、3Dプリント部品に構造的な充填物(ハニカム構造)を加えることで、従来の同等サイズのガソリン車と比較してボディ強度は4〜5倍になるとXEVは評価しています。
3Dプリンター製造は販売後のアフターサービス面でも優位性があります。設計の改良や新しいデザインへの対応を金型コストなしに迅速に行えるため、ユーザーの声を反映したアップデートが容易です。
3Dプリンター車のパイオニア:ローカル・モーターズのStrati
LSEVは3Dプリンターで製作する電気自動車で「量産」を実現した初の事例
3Dプリンターを使った自動車製作は、量産前のプロトタイプ段階での活用が最も一般的ですが、先駆的な完成車プロジェクトもいくつか存在します。
2014年、アメリカのローカル・モーターズ社は世界初の走行可能な3Dプリンター車「Strati(ストラティ)」を開発しました。シカゴで開催された国際製造技術展示会(IMTS 2014)の会場でリアルタイムに印刷・組み立てが行われ、印刷時間44時間・ミリング加工1日・組み立て2日の計5日間で完成した同車は、会場内を自走するデモ走行で会場を沸かせました。プロペラシステムはルノー「Twizy」のコンポーネントを流用し、部品数はわずか40〜49点という革新的な構成でした。
3Dプリンターで製作した世界初の運転可能な車Strati
Bladeはアルミニウムジョイントを3Dプリンターで製作した700馬力のスポーツカー
また、カリフォルニアのスタートアップDivergent 3Dは3Dプリントのアルミジョイントを使った700馬力のスポーツカー「Blade」のプロトタイプを発表し、Forbes報道によれば投資家から約6,500万ドル(約69億円)を調達しました。
ローカル・モーターズのCEO(当時)は「このプロトタイプは3Dプリンターが車の生産をスピードアップし、完全に機能する製品を作り出す方法を実証した」と語っています。
今後の3Dプリンターで作る電気自動車の展望

3Dプリンター電気自動車は、部品サプライヤーを大幅に減らし、製造工程を簡素化することで車両価格を抑えられる可能性を持っています。Maker Media設立者のデール・ダハティ氏もその点を評価しており、従来の自動車産業のサプライチェーンを根本から変える技術として期待されています。
実際にXEVのYoYoはイタリア郵便局やENIなど法人向けに普及が進んでおり、都市部での小口配送・カーシェアリング・法人フリートといった用途での活用が現実のものとなっています。LSEV(低速電気自動車)市場全体も拡大傾向にあり、3Dプリンター技術の採用が普及の後押しになると見られています。
「間違いなく難しい」と言われた3Dプリンター量産車の実現は、XEVが証明した通りすでに達成されています。今後は設計の自由度・量産性・コストダウンというアドバンテージをさらに活かした次世代モデルの登場が期待されます。















