テスタロッサが「849テスタロッサ」として復活 V8ハイブリッドで1050PSを発揮
フェラーリは2025年9月9日、イタリア・ミラノで新型フラッグシップ「849テスタロッサ」と、リトラクタブルハードトップを備える「849テスタロッサ スパイダー」を世界初公開しました。1992年に初代テスタロッサが生産を終えてから33年、伝説的なネーミングが車名として正式に戻ってきたことになります。
パワートレインは4.0LのV型8気筒ツインターボに3基の電気モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドで、システム最高出力は1050PS。日本では2025年9月24日にお披露目され、価格は6,465万円からと発表されています。テスタロッサは現在、フェラーリのラインアップ最上位に位置する現行モデルです。ここでは849テスタロッサの中身と、名前が戻るまでの経緯、そして1980年代のオリジナルまでを順に見ていきます。
849テスタロッサはV8ツインターボと3モーターで1050PSを発揮
往年のテスタロッサをモチーフにしたイメージ
849テスタロッサはSF90ストラダーレの後継にあたるミドシップ2シーターで、車名の849は「8気筒・1気筒あたり499cc」を意味します。パワートレインの構成は先代を踏襲しつつ、V8はF154FC型へと進化。大型のIHI製タービンを採用し、ブロックやヘッド、エキゾーストマニホールドの多くを新設計としたことで、エンジン単体の最高出力は830PS/7,500rpm、最大トルクは842N・m/6,500rpmに達しました。
これに合計220PSを発生する3基のモーターが加わり、システム最高出力1050PS、システム最大トルク1250N・mを実現しています。SF90ストラダーレに対して50PS、限定モデルのSF90 XXストラダーレに対しても20PS上回る数値で、フェラーリのシリーズ生産モデルとしては過去最高です。車名のとおりエンジンのヘッドカバーは赤く塗られており、「赤い頭」という名前の由来がそのまま形になっています。
デザインのモチーフはレーシングカーの512Sで、ツインテール形状のリアエンドに可動式スポイラーを組み合わせました。ボディサイドには立体的に構成された大型エアインテークが配され、初代テスタロッサの象徴だったサイドストレーキを現代的に翻訳しています。空力は512SやFXX-Kの知見を取り入れ、250km/h時のダウンフォース総量は415kg。SF90ストラダーレから25kg増え、冷却性能も15%向上したとされます。
シャシー制御にはF80などで採用された統合システム「FIVE(Ferrari Integrated Vehicle Estimator)」を導入。実測値からデジタルツインを生成し、直接は測れない車速やヨー角を高精度で推定することで、トラクションコントロールや電子制御デフ、e4WDの制御精度を高めています。フィオラノでのラップタイムは1分17秒500、0-100km/h加速は2.25秒を記録しました。
より高い性能を求める「アセットフィオラノ」仕様も用意され、フロントフリックの大型化やツインウイング化、マルチマティック製ショックアブソーバーなどが与えられます。今回からフロントリフターの選択も可能になりました。本国価格はクーペが46万ユーロ、スパイダーが50万ユーロで、アセットフィオラノ仕様はそれぞれ5万2,500ユーロ高。イタリア国内のデリバリーはクーペが2026年第2四半期、スパイダーが同年第3四半期からとなっています。
| 全長×全幅×全高 | 4,718×1,999×1,225mm |
|---|---|
| ホイールベース | 2,650mm |
| 乾燥重量 | 1,570kg(オプション選択時) |
| エンジン | 3,990cc V型8気筒DOHCツインターボ(F154FC型) |
| エンジン最高出力 | 830PS/7,500rpm |
| エンジン最大トルク | 842N・m/6,500rpm |
| モーター最高出力 | 220PS(3基合計) |
| システム最高出力 | 1050PS |
| システム最大トルク | 1250N・m |
| トランスミッション | 8速DCT |
| 駆動方式 | 4WD(e4WD) |
| 0-100km/h加速 | 2.3秒以下(実測2.25秒) |
| 0-200km/h加速 | 6.35秒 |
| 最高速度 | 330km/h以上 |
| タイヤサイズ | 前265/35R20・後325/30R20 |
| 日本価格 | 6,465万円から |
「テスタロッサ」の商標をめぐる10年越しの攻防
この車名が戻ってくるまでには、長い法廷闘争がありました。フェラーリは1987年に「Testarossa」を商標登録し、2006年に更新。ただし車名としての使用は1992年で途切れ、グッズや玩具などでの利用が中心となっていました。
ここに目を付けたのがドイツの玩具メーカー関係者で、EU域内で一定期間にわたり「真正な使用」がなされていないとして、商標の取り消しを申し立てます。EU法では5年間連続して真正な使用がない場合、権利を失う可能性があるためです。審議の結果、EUIPO(欧州連合知的財産庁)は主張を部分的に認め、さらに2023年8月29日には第5審判部がフェラーリにとって厳しい判断を下しました。
形勢が変わったのは2025年です。EU一般裁判所は、フェラーリ公認ディーラーや正規代理店による中古車販売がフェラーリの同意のもとで行われていること、そして中古テスタロッサとその部品の真正性を確認する認証サービスにフェラーリ自身が関与していることを認め、EUIPO審判部の決定をすべて破棄。「TESTAROSSA」の商標登録は復活しました。
権利を取り戻した直後の2025年7月21日、フェラーリはアイスランド知的財産庁に「849 Testarossa」の商標を出願しています(出願番号V0139247)。そして同年9月9日、新型フラッグシップの車名として正式に世に出ました。名前が使えなくなっていれば、849テスタロッサは別の車名でデビューしていた可能性があります。
V6ハイブリッドは「296 GTB」として2021年に登場
V型6気筒を積むハイブリッドについては、2021年6月24日に「296 GTB」として姿を現しました。フェラーリのロードカーとして初めてV型(バンク角120度)6気筒2,992ccターボを搭載し、122kWのモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドです。出力はエンジン単体で663CV、モーター単体で167CV、システム合計830CV/740N・mを発生します。
性能は最高速330km/h、0-100km/h加速2.9秒、0-200km/h加速7.3秒。eDriveモードでは最高135km/hで25kmのEV走行が可能です。フィオラノのラップタイムは1分21秒。車名の296は排気量とシリンダー数を示し、GTBはグランツーリスモ・ベルリネッタの略で、1960年代の250LMをオマージュしたデザインが与えられました。
V6という構成からディーノの再来ではないかという見方も出ましたが、フェラーリは「ディーノの後継車ではない」との立場を示しています。ただしディーノ206/246の命名ルールをそのまま引き継いだ車名であることは事実で、系譜を意識した一台といえます。
1000PSのハイブリッド旗艦は2019年のSF90ストラダーレから始まった
849テスタロッサの直接の前身にあたるのが、2019年5月29日に発表された「SF90ストラダーレ」です。SFはスクーデリア・フェラーリ、90はその創設90周年、ストラダーレは公道仕様を意味します。フェラーリ初の量産プラグインハイブリッドであり、限定車のラ・フェラーリに続く2車種目のハイブリッドでありながら、通年生産される点が新しさでした。
3,990ccのV8ツインターボが780ps/800N・mを発生し、リアに1基・フロントに2基の計3モーター(合計220ps)を組み合わせてシステム合計1000psを実現。7.9kWhのリチウムイオンバッテリーと8速DCTを備え、フェラーリ初の4WD(e4WD)でもあります。0-100km/h加速2.5秒、0-200km/h加速6.7秒、最高速340km/h、乾燥重量1,570kg。日本では2019年10月9日に初披露されました。
その後、2020年11月にオープンモデルの「SF90スパイダー」、2023年6月には公道走行が可能なXXシリーズ初のモデル「SF90 XXストラダーレ」(799台限定、システム1030PS)が加わっています。849テスタロッサはこの系譜の集大成として、出力・ダウンフォース・ラップタイムのすべてを引き上げた存在です。
フェラーリの電動化は、2013年に登場したラ・フェラーリのHY-KERSシステムから始まりました。7速DCTに電動機を組み合わせたユニットとエンジンアシスト用のKERSユニットからなる2モーター式で、システム総合963CVを発揮しています。現在の計画では2026年に世界販売の約6割を電動車(ハイブリッドとEV)とし、2030年にはEVが40%、ハイブリッドが40%、内燃機関のみが20%という構成を目指しています。2026年5月25日には初のフル電動モデル「Luce」も世界初公開され、ラインアップの幅はさらに広がりました。
テスタロッサは1984年に発売されたフェラーリのフラッグシップモデルで512TRの前身となった車両である
フェラーリのテスタロッサは1984年~1992年まで販売していたV12エンジンを搭載するフラッグシップモデル
フェラーリのフラッグシップモデルであったテスタロッサは、1984年から1992年まで販売されていたモデルで、バンク角180度V型12気筒エンジンを搭載、2ドアクーペスタイルのカッコいいスーパーカーです。ボディサイズは全長4,510mm・全幅1,980mm・全高1,160mmの超ワイドローなプロポーションでトランスミッションには5速MTが設定されています。
最高出力は390PS、最大トルクは50.0kgm(約490N・m)にもなり、最高速度は時速300kmで0-100km加速は5.8秒です。駆動方式はMRですが、客室の居住性をよくするためにエンジンをより後ろに追いやったため、RRに近い重量配分となっています。8年間の総生産台数は7,177台で、フェラーリのスーパーカーとしては比較的多い部類に入ります。
| 全長 | 4,510mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,980mm |
| 全高 | 1,160mm |
| ホイールベース | 2,550mm |
| エンジン種類 | V型12気筒(バンク角180度) |
| 排気量 | 4,943cc |
| 駆動方式 | MR |
| トランスミッション | 5MT |
| 最高出力 | 390PS/6,300rpm |
| 最大トルク | 50.0kgm/4,500rpm |
| 総生産台数 | 7,177台(1984年~1992年) |
フェラーリ テスタロッサは2回の改良が施されており、1986年に中期型・1989年に後期型へなっています。中期型ではミラー位置の変更や燃料供給システムの変更、後期型ではホイールのロック方式がセンターロックからナットでの固定になる変更が加えられました。初期型のみに与えられた運転席側だけの高い位置のミラー、いわゆるモノスペッキオは、現在の中古市場で特に価値が高い仕様とされています。
1992年には後継モデルである512TR(4,943cc・V12エンジン・428PS)にモデルチェンジとなり、テスタロッサは生産終了となりました。512TRは1994年にF512M(440PS)へと発展し、1996年をもってフェラーリのV12ミドシップ・ベルリネッタの系譜はいったん幕を閉じています。
中古市場での評価は年々高まっており、日本国内の平均本体価格は2026年7月時点で約3,250万円です。かつては1,000万円を下回る個体も見られましたが、状態やオリジナル性による価格差が広がりながら、全体として高値で推移しています。
テスタロッサは2025年に復活し、フェラーリのフラッグシップとして現行ラインアップに並ぶ

フェラーリのフラッグシップであったテスタロッサは、2025年9月9日にプラグインハイブリッドの「849テスタロッサ」として復活しました。SF90ストラダーレの後継として4.0LのV8ツインターボと3基のモーターを組み合わせ、システム最高出力は1050PS、システム最大トルクは1250N・m。日本での価格は6,465万円からで、オープンモデルの849テスタロッサ スパイダーも同時に設定されています。名前が示すとおりエンジンのヘッドカバーは赤く、1955年にマラネッロの整備士が余った赤い塗料で高性能エンジンを塗り分けたという逸話が、70年を経て現行のフラッグシップに受け継がれました。



















