スズキ SX4 S-CROSS/S-CROSS モデルチェンジ遍歴まとめ ── 新しい動きから順にたどる

スズキのSX4は、クロスオーバーSUV「SX4 S-CROSS」を経て、現在は世界市場向けの「S-CROSS」へと進化したモデルです。日本では2020年に販売を終えており、その後継の位置づけも移り変わってきました。ここではモデルチェンジや改良の歩みを、新しい動きから順にたどっていきます。記事の後半では、日本仕様の装備やライバル、そして現在の後継事情をまとめます。
2022年10月:英国でストロングハイブリッドを追加
フルモデルチェンジ時に鈴木俊宏社長が予告していたストロングハイブリッド(フルハイブリッド)は、2022年10月に英国で追加されました。K15C型1.5Lガソリンエンジンに140Vシステムとオートギヤシフト(AGS)を組み合わせるスズキ独自の方式で、同系のハイブリッドは日本のエスクードにも搭載されていました。これにより新型S-CROSSは、48Vマイルドハイブリッドに加えてフルハイブリッドも選べる構成となり、電動化への対応を一段と進めています。
2021年11月25日:フルモデルチェンジで「S-CROSS」へ(海外)
新型S-CROSSは欧州を皮切りに中南米・大洋州・アジアへ輸出
2021年11月25日、世界市場向けのSX4 S-CROSSはフルモデルチェンジを受け、車名から「SX4」が外れて「S-CROSS(エスクロス)」に統一されました。従来よりも力強くアグレッシブな顔つきをまとい、欧州仕様は全車が1.4L直噴ターボ+48Vマイルドハイブリッドを搭載。生産は引き続きハンガリーのマジャールスズキが担当します。ボディサイズは全長4,300mm・全幅1,785mm・全高1,585mm・ホイールベース2,600mmと、日本でも扱いやすい寸法にまとまっています。
2021年末に欧州で発売され、その後は中南米・大洋州・アジアへも輸出されました。ただし発表時に日本導入のアナウンスはなく、その状況は本稿執筆時点(2026年)まで変わっていません。発表から4年以上が経ちますが、新型S-CROSSが日本市場に投入される動きは確認できていません。
2020年:日本国内での販売を終了
安全装備を強化したものの、SX4 S-CROSSは日本ではフルモデルチェンジを迎えることなく、2020年(11〜12月)に国内販売を終了しました。公式サイトからも姿を消しています。目標台数が年1,200台と控えめだったことに加え、海外生産の輸入車ゆえに商品改良が限定的だった点も背景にあると指摘されています。なお同年にはコンパクトハッチバックの「バレーノ」も国内販売を終えており、スズキの登録車ラインナップは一段と絞り込まれました。海外向けの生産・販売はその後も継続されています。
2019年4月10日:安全装備を大きく拡充(一部改良)
2019年4月10日には、安全装備を充実させる一部改良が実施されました。この改良の目玉は、時速約40km/h以上で先行車に追従するアダプティブクルーズコントロール(ACC)の採用です。従来は追従機能のないクルーズコントロールだったため、長距離運転での使い勝手が一気に高まりました。
2019年4月10日の一部改良で追加・強化された主な装備
- ミリ波レーダー式のレーダーブレーキサポートIIを搭載
- フロントシートSRSサイドエアバッグを装備
- SRSカーテンエアバッグを装備
- 追従式アダプティブクルーズコントロール(ACC)を装備
- 助手席シートベルトリマインダーを装備
- エマージェンシーストップシグナルを装備
- フロント2ツイーター&リヤ2スピーカーを装備
価格は従来から77,760円上がり、2,140,560円(2WD)/2,356,560円(4WD)に。従来「安全装備が弱点」と言われていた部分をまとめて底上げした改良で、年間の目標販売台数も600台から倍の1,200台へと引き上げられています。なお、この後の2019年10月には消費税率引き上げ(8%→10%)に合わせた価格改定も行われました。
2017年7月6日:フロントマスクを一新する改良、CVTから6ATへ
改良後(2017年7月〜)
改良前
2017年7月6日、日本仕様のSX4 S-CROSSは外観を大きく刷新する改良を受けました。メディアによってはビッグマイナーチェンジ、あるいは一部仕様変更と呼び方が分かれています。最大の見どころはフロントまわりで、横基調だったグリルが縦基調のデザインへと改められ、ヘッドライト内のLEDデイライトも下側から上側へと移されました。
改良後(2017年7月〜)
改良前
リアもテールランプの意匠が変わり、透明レンズの面積が縮小してコの字形に近づいています。加えて、この改良ではトランスミッションがCVTから6速ATへと変更され、大径タイヤやサテンメッキ・ピアノブラックの内装加飾も採用されました。新色「スフィアブルーパール」「エナジェティックレッドパール」を含むボディカラー構成へと刷新されています。価格は2,062,800円(2WD)/2,278,800円(4WD)で、改良前から数万円のアップ。年間の目標販売台数は600台とされました。なお欧州・英国では2016年秋からこの後期型が先行して販売されており、日本はやや遅れての導入となっています。
2016年2月:ボディカラーを追加し全5色に(一部改良)
日本発売から約1年後の2016年2月には、ボディカラーが追加されて全5色構成となりました。大きな中身の変更を伴わない、ラインナップの充実を狙った一部改良です。
2015年2月19日:2代目SX4 S-CROSSが日本デビュー(フルモデルチェンジ)
2代目は2013年3月のジュネーブモーターショーで発表され、欧州では同年秋から販売が始まりました。日本での発売は少し遅れて2015年2月19日です。生産はハンガリーのマジャールスズキが担い、日本仕様はそこからの輸入車という扱いになりました。
このフルモデルチェンジで車格は欧州のBセグメントからCセグメントへと引き上げられ、全長・全幅・全高とホイールベースが拡大。荷室容量も430Lへと広がりました。先代にあった4ドアセダンは新型「シアズ」に役割を譲るかたちで廃止され、ハッチバック型SUVに一本化されています。四輪駆動には、挙動が乱れる前に予測して対処するフィードフォワード制御を備えた新開発の「ALLGRIP」を採用。搭載エンジンは1.6L(M16A型)で、デビュー当初は副変速機構付きCVTとの組み合わせでした。
2006〜2014年:初代SX4 ── フィアットとの共同開発車として登場
初代SX4は2006年に登場しました。イタリアのフィアットとの共同開発車で、姉妹車として「フィアット・セディチ」が存在します。もっとも設計はスズキが主導し、プラットフォームやエンジンはスイフトと共通というスズキ色の濃い一台でした。デザインはイタルデザイン(ジウジアーロ)が手がけています。
ボディは5ドアハッチバックで登場し、のちに4ドアの「SX4セダン」を追加。エンジンは日本仕様が1.5L(M15A型)と2.0L(J20A型)で、FFとパートタイム4WDを設定していました。特別仕様車「1.5ヘリーハンセンリミテッド」を複数回投入したほか、SX4をベースとした車両でWRC(世界ラリー選手権)にも参戦しましたが、リーマンショックを受けて2008年末に活動を休止し、事実上の撤退となっています。
SX4 S-CROSS(日本仕様)のスペックと装備
ボディサイズ(2代目 日本仕様)
| 全長 | 4,300mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,785mm |
| 全高 | 1,595mm |
| ホイールベース | 2,600mm |
| 最低地上高 | 185mm |
| トランク容量 | 430L |
| タンク容量 | 47L |
2代目SX4 S-CROSSの日本仕様は上表のとおりで、初代よりひと回り拡大し、Cセグメントらしい扱いやすいパッケージにまとまっていました。荷室容量にも余裕があり、日常の買い物からアウトドアまで使い勝手のよい一台です。なお全高は仕様や測定条件によって1,585mm前後と表記される場合もあります。
エクステリア
2017年7月の改良を受けたフロントは、縦基調のグリルと位置を上げたLEDデイライトによって、精悍で存在感のある表情になりました。ヘッドライトはLEDプロジェクタータイプで、LEDポジションランプとハロゲンフォグランプを装備。一方でヘッドライトウォッシャーはこの改良で省かれています。雨を検知して自動でワイパーが動くレインセンサーや、4WD車のドアミラーヒーターも備わっていました。リアは前述のとおりテールランプが新意匠となり、欧州仕様の赤いリアフォグは日本仕様には設定されていません。
インテリア

内装はキーレスエントリー、本革巻きステアリング、クルーズコントロール、左右独立温度調節機能付きフルオートエアコンなどを装備。4WD車にはフロントシートヒーターも備わりました。ステアリングはチルト・テレスコピック調整に対応し、メーター中央にはマルチインフォメーションディスプレイを配置。この価格帯としては装備が充実している点が、実際のユーザーからも高く評価されていました。

欧州仕様の7インチタッチディスプレイは「Apple CarPlay」や「MirrorLink」に対応し、スマートフォンのマップや音楽アプリを使った操作、音声によるナビ操作や通話などが可能でした。

荷室はボード下にも収納スペースを備え、小物ならボードを閉じたうえでさらに上へ荷物を積むことができました。

後席は左右別々に倒せる分割可倒式で、スキーやスノーボード、ゴルフバッグといった長尺物も積みやすい設計です。
パワートレインとALLGRIP
日本仕様のエンジンは、1.6L直列4気筒(M16A型・1,586cc)を継続採用しました。最高出力117ps/6,000rpm、最大トルク151Nm/4,400rpm、JC08モード燃費は16.2km/L(2WD)/15.2km/L(4WD)です。欧州仕様には1.0L・1.4Lのブースタージェットや1.6Lディーゼルも用意され、日本にもダウンサイジングターボが載るのではと期待されましたが、実際には1.6L自然吸気が最後まで続きました。
| エンジン型式 | M16A型 |
|---|---|
| 種類 | 直列4気筒 |
| 排気量 | 1,586cc |
| 最高出力 | 117ps/6,000rpm |
| 最大トルク | 151Nm/4,400rpm |
| 燃費 | 16.2km/L(15.2km/L) |
※()内は4WDモデルの数値/JC08モード

4WD車には、走行モードを選べる「ALLGRIPセレクト」を搭載していました。

普段は2WDで走り、スリップを検知すると自動で4WDへ切り替わる「AUTO」

直進加速は4WD、コーナーでは2WD寄りに配分して旋回性を高める「SPORT」

雪道に適した「SNOW」

ぬかるみや雪ではまった際に脱出を助ける「LOCK」を加えた、4モードを備えていました。

加えて6速マニュアルモードのパドルシフトを備え、シフトレバーをMレンジに入れるとシフト操作を楽しめます。メーター内のインフォメーションディスプレイに現在のギヤが表示されるのも便利でした。
ライバル車(2017年当時)
2017年改良時点でのSX4 S-CROSSは、全長4.3mクラスで1.6Lガソリンを積むクロスオーバーSUVでした。国内で比較対象となったのは、ホンダ・ヴェゼルやマツダ・CX-3です。
ホンダ・ヴェゼル(当時)
マツダ・CX-3(当時)
| SX4 S-CROSS | ヴェゼル | CX-3 | |
|---|---|---|---|
| 全長 | 4,300mm | 4,295mm | 4,275mm |
| 全幅 | 1,785mm | 1,770mm | 1,765mm |
| 全高 | 1,595mm | 1,605mm | 1,550mm |
| ホイールベース | 2,600mm | 2,610mm | 2,570mm |
| 最低地上高 | 185mm | 185mm | 160mm |
| 排気量 | 1.6L | 1.5L | 1.5L |
| 4WD燃費 | 15.2km/L | 23.2km/L | 21.0km/L |
| 使用燃料 | ガソリン | ガソリン | 軽油 |
| 販売価格 | 200〜227万円 | 200〜290万円 | 230〜280万円 |
ボディサイズは三車ともほぼ同等でしたが、燃費や価格には差がありました。ヴェゼルはハイブリッドで燃費に優れ、CX-3はディーゼルで燃料代を抑えやすい一方、車両価格はやや高めという傾向でした。SX4 S-CROSSは、本格的なALLGRIP四駆を比較的手ごろな価格で持てる点が魅力でした。なお、ここで挙げたヴェゼルやCX-3はいずれもその後モデルチェンジや改良を重ねており、上記はあくまで当時の比較である点にご留意ください。
まとめ ── SX4 S-CROSSの後継はどうなった

SX4 S-CROSSの国内終了後、しばらくはエスクードがコンパクトSUVの枠を担っていましたが、そのエスクードとイグニスも2024年4月に国内販売を終了しました。これに代わって、インドのマルチ・スズキで生産されるクーペスタイルの「フロンクス」が2024年10月16日に日本へ投入されています。1.5LのK15C型エンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせ、日本仕様には専用の4WDも設定。価格は254万1000円〜273万9000円です。
さらに、エスクードの海外名「ビターラ」をベースにしたスズキ初の量産EV「eビターラ」が、2026年1月16日から国内で発売されました。SX4 S-CROSSそのものは日本のカタログから姿を消しましたが、四輪制御システム「ALLGRIP」を核に使い勝手のよいSUVを送り出すスズキの姿勢は、フロンクスやeビターラといった現行モデルへと受け継がれています。新型S-CROSSの日本導入は今のところ実現していないものの、その系譜は着実に次の世代へと引き継がれていると言えるでしょう。



















