ホンダ クラリティは2021年に生産終了 FCV・PHEVの歩みと現在
ホンダのクラリティは、水素で走る燃料電池車「クラリティ フューエルセル」を軸に、プラグインハイブリッドの「クラリティPHEV」、電気自動車の「クラリティ エレクトリック」を展開したセダンシリーズです。フューエルセルは2016年3月からリース販売され、1回の充填で約750kmの走行が可能、価格は783万円でした。PHEVは2018年7月20日に日本で市販されています。
もっとも、クラリティはフルモデルチェンジを受けることなく2021年に生産を終えました。この記事では、クラリティ フューエルセルやPHEVのエクステリア・インテリア、搭載装備やパワートレインを振り返りつつ、シリーズが最終的にどうなったのかを整理します。
クラリティは狭山工場の閉鎖により2021年9月に生産終了 後継FCVはCR-V e:FCEVへ
クラリティは、狭山完成車工場の閉鎖にともない2021年9月に生産を終了しました。フューエルセルとPHEVの日本仕様が9月中旬に生産を終え、9月30日に販売を終了。同じ工場で生産されていたフラッグシップミニバンのオデッセイ、フラッグシップセダンのレジェンドも生産終了となりました(このうちオデッセイは、のちに輸入車として復活しています)。北米仕様も同年12月に終了し、クラリティの商標は名実ともに消滅しました。
クラリティは2016年のフューエルセルに始まり、2018年にPHEVを追加しましたが、販売台数は伸びませんでした。とくにPHEVは販売期間が約3年2カ月と短命に終わっています。フルモデルチェンジのない1代限りのシリーズでしたが、水素をエネルギーに使うなど話題性のあるモデルでした。
クラリティの終了により、ホンダは日本市場でFCV(燃料電池車)から一度撤退する形となりました。しかしその後、2024年7月19日に6代目CR-Vをベースとする「CR-V e:FCEV」を発売し、約2年10カ月ぶりにFCVへ再参入しています。GMと共同開発した燃料電池システムを積み、プラグイン機能を備えるのが特徴で、水素での航続は600km以上、EV走行も60km以上が可能。価格は809万4900円で、実質的にクラリティ フューエルセルの系譜を受け継ぐモデルといえます。
クラリティ フューエルセルが2019年12月19日に一部改良
ホンダのFCV(水素を使った燃料電池自動車)であるクラリティ フューエルセルは、2019年12月19日に一部改良を受けました。ドアミラーをブラックに、アルミホイールをグレーメタリックへ変更。紫外線と赤外線をカットするガラスで室内の快適性も高めています。
ボディカラーは「プレミアムディープロッソ・パール」「プラチナホワイト・パール」「クリスタルブラック・パール」の3色で、ルーフはすべてブラックとした2トーンが特徴でした。
クラリティPHEVが2018年7月20日に日本で販売開始
ホンダのクラリティPHEVは2018年7月20日に日本で発売されました。クラリティシリーズは2016年発売のフューエルセル(FCV)に始まり、次に投入されたのがこのPHEVです。
クラリティフューエルセル(FCV)のエクステリア
クラリティフューエルセル(FCV)の流れるような形のエクステリア
2018年7月20日に発売されたクラリティPHEV ホンダで初めてのプラグインハイブリッド車
クラリティフューエルセルと共通デザインだがフロントグリルやリヤガーニッシュはPHEV専用
クラリティPHEVのヘッドライトと2つの素材を組み合わせた専用の18インチアルミホイール
クラリティPHEVのベースはフューエルセルで、フロントグリルやリアガーニッシュ、ホイールなどに専用デザインを採用。その他のエクステリアやインテリアは共通でした。
クラリティPHEVのボディカラーはフューエルセルより3色増えて6色
リース車両として誕生したフューエルセルはボディカラーが3色でしたが、個人向け販売のクラリティPHEVは3色増えて6色をラインナップしました。
プラチナホワイト・パール(44,000円高)
プレミアムディープロッソ・パール(44,000円高)
コバルトブルー・パール
スーパープラチナ・メタリック(44,000円高)
モダンスティール・メタリック
クリスタルブラック・パール
いずれも上級セダンで先進的なクラリティPHEVに似合う色合いで、なかでもプレミアムディープロッソ・パールやスーパープラチナ・メタリックは発色の良さが際立っていました。
ホンダ初のPHEVとして誕生した「クラリティPHEV」の特徴
三菱アウトランダーPHEVやトヨタ プリウスPHVに続く形で登場したのが、ホンダ初のPHEVであるクラリティPHEVです。
ステップワゴンやCR-Vに搭載される2モーターハイブリッド「SPORT HYBRID i-MMD」をベースに容量や出力を見直し、JC08モードで最大114.6kmのEV走行を実現しました。
プラグインハイブリッドのため、電力を使い切ってもガソリンで走行でき、安心感があります。電力を効率よく使うため、「EVドライブモード」「ハイブリッドドライブモード」「エンジンドライブモード」を自動で切り替えます。
クラリティPHEVのパワートレイン・スペック・燃費・販売価格
クラリティPHEVは「SPORT HYBRID i-MMD」とバッテリー(17kWh)を搭載し、EV走行だけで114.6km(JC08モード)走行できます。電力を使い切るとハイブリッドとして働き、JC08モードで28.0km/Lと優れた燃費を示しました。安全装備のホンダセンシングも標準装備です。
クラリティPHEVのホンダセンシングの内容
- 衝突軽減ブレーキ
- 歩行者事故低減ステアリング
- 誤発進抑制機能
- 路外逸脱抑制機能
- 標識認識機能
- LKAS車線維持支援システム
- 先行車発進お知らせ機能
- 渋滞追従機能付ACCアダプティブ・クルーズ・コントロール
| 全長 | 4,915mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,875mm |
| 全高 | 1,480mm |
| 室内長 | 1,950mm |
| 室内幅 | 1,580mm |
| 室内高 | 1,160mm |
| ホイールベース | 2,750mm |
| トレッド(前) | 1,580mm |
| トレッド(後) | 1,585mm |
| 最低地上高 | 135mm |
| 最小回転半径 | 5.7m |
| 車両重量 | 1,850kg |
| エンジン型式 | LEB 水冷直列4気筒横置 |
| エンジン最高出力 | 77kW(105ps)/5,500rpm |
| エンジン最大トルク | 134Nm(13.7kgm)/5,000rpm |
| 総排気量 | 1.496L |
| モーター型式 | H4/交流同期電動機 |
| 定格出力 | 65kW |
| モーター最高出力 | 135kW(184ps)/5,000-5,500rpm |
| モーター最大トルク | 315Nm(32.1kgm)/0-2,000rpm |
| 燃料タンク容量 | 26L |
| 燃料種類 | 無鉛レギュラーガソリン |
| ボディカラー | 6色 |
| 乗車人数 | 5名 |
| EV走行換算距離 | 114.6km |
| JC08モード燃費 | 28.0km/L |
| WLTCモード燃費 | 24.2km/L |
| 車両販売価格 | 5,989,500円~ |
ホンダ クラリティは3モデルを展開した
クラリティ フューエルセル(燃料電池車)
クラリティ エレクトリック(EV)
クラリティ PHEV(プラグインハイブリッド)
クラリティは、同一プラットフォームにFCV・PHEV・BEVという3種類の電動パワートレインを採用した、世界でも珍しいシリーズでした。日本では水素で走るフューエルセルをリース販売し、2018年にはPHEVを市販。EVの「クラリティ エレクトリック」は米国のカリフォルニア州などでリース販売されましたが、日本には導入されないまま2019年頃に終了しました。結果として日本で正式に販売されたのはフューエルセルとPHEVで、いずれも2021年9月に終了しています。
市販モデルのクラリティPHEVは、1.5Lガソリンエンジンとモーター、17kWhのリチウムイオン電池を組み合わせた構成でした。モーター出力は184PS、充電は200Vで約2.5時間、EV走行換算距離は114.6km(JC08モード)を実現していました。
ホンダ クラリティのエクステリア
クラリティ フューエルセル
日本で2016年3月からリース販売されたクラリティは「フューエルセル」と呼ばれるモデルで、水素を燃料とする4ドアセダンの燃料電池車です。ソリッドウィングフェイスを取り入れたデザインで、ルーフをブラックに塗り分けたツートンを採用していました。

リアビューはシビックを思わせるデザインで、テールランプの形状も似ています。エンブレム周りはブラックアウトされ、テールスポイラーにはハイマウントストップランプを備えます。

フロントは、メッキパーツがヘッドライトまで伸びるソリッドウィングフェイスを採用。ヘッドライトは9灯式LEDで、ロービームでもワイドな配光を実現します。ヘッドライト下の縦横のラインは導光式LEDポジションランプで、スッキリとした表情です。

サイドはスッキリとしたスポーティな造形で、ホイールは18インチ、タイヤは235/45R18。リアホイールハウスはタイヤに被せるようにデザインし、空力に配慮しています。
ボディサイズは全長4,915mm、全幅1,875mm、全高1,480mmとアコード級。5人乗りで、車両重量は1,890kgでした。
| 全長 | 4,915mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,875mm |
| 全高 | 1,480mm |
| ホイールベース | 2,750mm |
| 最低地上高 | 135mm |
| 車両重量 | 1,890kg |
| 乗員定員 | 5人 |
ボディカラーは全3色で、「ホワイトオーキッド・パール」と「プレミアムブリリアントガーネット・メタリック」の2色が特別塗装色でした。
ホワイトオーキッド・パール(44,000円高)
クリスタルブラック・パール
プレミアムディープロッソ パール(44,000円高)
ホンダ クラリティのインテリア

クラリティ フューエルセルのインテリアは、白基調と黒基調の2種類を用意し、センタークラスターもスッキリとしたデザインでした。
プラチナムグレー(ホワイト・ガーネット専用)
ブラック(クリスタルブラック・パール専用)
どちらの内装色も、加飾のミドルパッドに「ウルトラスエード」を使用。シートメインには本革、シートサイドには「プライムスムース」を用い、ステアリングは本革巻き、運転席・助手席にはパワーシートを採用していました。
ホンダ クラリティのパワートレイン

クラリティ フューエルセルのパワートレインは水素を使った燃料電池で、約3分の水素充填で約750kmの走行が可能でした。水素と酸素から電気をつくってモーターを回すため、走行中は水しか排出しません。
走りはEVと同様にモーターならではの力強いトルクが持ち味で、モーターの最高出力は177PS、最大トルクは300Nm、最高回転数は約13,000rpmに達しました。
| モーター型式 | MCF4 |
|---|---|
| 種類 | 交流同期電動機 |
| 燃料電池スタック | 固体高分子形 |
| スタック最高出力 | 140PS |
| モーター最高出力 | 177PS/4,501~9,028rpm |
| モーター最高トルク | 300Nm/0~3,500rpm |
ホンダ クラリティの搭載装備

クラリティ フューエルセルには、安全装備のHonda SENSINGが搭載されていました。
クラリティ フューエルセルのHonda SENSING搭載装備
- 衝突軽減ブレーキ
- 歩行者事故低減ステアリング
- 渋滞追従機能付きクルーズコントロール
- 車線維持支援システム
- 路外逸脱抑制機能
- 誤発進抑制機能
- 先行車発進お知らせ機能
- 標識認識機能
渋滞追従機能付きクルーズコントロールは0~約100km/hで作動する全車速タイプで、高速道路での移動が快適でした。
安全装備も充実し、運転席・助手席エアバッグに加え、前席サイドエアバッグ、後席まで対応するサイドカーテンエアバッグ、運転席ニーエアバッグの計7つを備えていました。
クラリティ フューエルセルの価格は783万円でリース販売のみ
クラリティ フューエルセルの価格は783万円で、リース販売のみでした。駆動方式はFF、燃料は水素のため、居住地の近くに水素ステーションがあるかを確認しておく必要がありました。
水素や電気で走るクラリティのモデルチェンジ遍歴
クラリティは、かつてホンダが販売していた、水素やガソリン+バッテリー、電気で走るセダン型のシリーズです。
クラリティ フューエル セル ZC4型/2016年~2021年
2016年3月、フューエル セルの日本での販売を開始しました。
2019年12月、一部改良でドアミラーとルーフカラーを同色に。ボディカラーの入れ替えと、アルミホイールのグレーメタリック塗装化が行われました。
2020年6月、個人向けリースを開始。
2021年9月、日本仕様車が生産・販売終了となりました。
クラリティ PHEV ZC5型/2017年~2021年
2017年4月、ニューヨーク国際オートショーで「クラリティ エレクトリック」とともに発表されました。
2018年7月、日本で販売を開始。グレードは「EX」のみのモノグレードでした。
2021年9月、日本仕様車が生産・販売終了となりました。
クラリティ エレクトリック/2017年~2019年
2017年4月、ニューヨーク国際オートショーで「クラリティ PHEV」とともに発表されました。米国のカリフォルニア州などでリース販売され、日本には導入されないまま終了しています。
| クラリティのモデル | 販売年表 |
|---|---|
| フューエル セル ZC4型 | 2016年~2021年 |
| PHEV ZC5型 | 2017年~2021年 |
| エレクトリック | 2017年~2019年 |
ホンダ クラリティは、未来の車につながる技術だった

ホンダの「クラリティ フューエルセル」は、水素を燃料に走る燃料電池車でした。国内のFCVはトヨタ「MIRAI」とクラリティが数少ない選択肢でしたが、クラリティは2021年に終了。現在、ホンダのFCVは2024年に登場したSUVの「CR-V e:FCEV」へと引き継がれています。
水素での発電による走行は、精製から充填・消費までの全体効率で見ると必ずしも有利ではありませんが、脱炭素へ向けた選択肢の一つとして未来につながる技術だと考えられます。
水素を充填する水素ステーションは、いまも都市部を中心とした展開にとどまり、地域によっては数が限られます。電気自動車の充電スポットと同様に、FCVが普及するには水素ステーションの拡充も欠かせません。
電気自動車とともに、燃料電池車もインフラ整備が進めば、より身近な選択肢になっていくと考えられます。



















