スパークプラグの交換

スパークプラグの寿命(交換時期)・工賃の目安・種類

スパークプラグ(点火プラグ)とはエンジンの燃焼室に設置され、ガソリンと空気を一定比率で混ぜ合わせた混合気に点火を行って車を動かすきっかけを作る装置。先端部材質の「イリジウム」や「白金」などのスパークプラグの種類の解説、適切な交換時期やカー用品店に依頼した時の工賃。

スパークプラグ(点火プラグ)とは?役割、種類、寿命、交換を解説します

スパークプラグは、ガソリンエンジン内で燃料である混合気に点火する役割を果たす、車を動かす上で必要不可欠な部品です。スパークプラグの寿命を超えて交換時期を過ぎてしまうと、車の加速力が弱まる、燃費が悪化するなど、様々なトラブルが発生する原因となります。最悪のケースでは、劣化したスパークプラグが原因でエンジンが始動しなくなることもあります。

そこで今回は、スパークプラグの装置の役割や種類、適切な交換時期、交換費用などについて詳しく解説します。

スパークプラグは圧縮された混合気に点火する重要部品です

スパークプラグは、エンジンの燃焼室に設けられ、空気とガソリンを一定の比率で混ぜ合わせた「混合気」に点火する役割を担っています。スパークプラグが点火すると、混合気が瞬間的に爆発・燃焼し、そのエネルギーがピストンを押し下げて、車の動力となる回転力を生み出します。

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スパークプラグは高電圧による火花放電で着火させます

ガソリンエンジンの混合気は、自発的に燃焼することがありません。そのため、着火させるための火花をスパークプラグから与える必要があります。スパークプラグは、イグニッションコイルによってバッテリーの12Vの電圧を数万ボルト(2万V~3万V)の高電圧に変換し、その高電圧を先端部の電極間に流すことで、強力な火花放電(スパーク)を起こして混合気に点火しています

ガソリンエンジンが動力を得る4つのサイクル(行程)

  1. 吸入行程:混合気を取り込む
  2. 圧縮行程:混合気を圧縮する
  3. 燃焼(膨張)行程:スパークプラグで点火しエネルギーを取り出す
  4. 排気行程:燃焼後のガスを排気する

エンジンはこの4つのサイクルを繰り返し、動力を獲得する内燃機関です。エネルギーを得るためにガソリンが燃焼すると、化学変化によって水蒸気や二酸化炭素などの燃焼生成物が発生します。これらの燃焼生成物が電極周辺に残ると、高電圧の妨げとなり点火性能を低下させるため、排気行程でシリンダーからエキゾーストマニホールドを介して排出されます。

電極の先端が摩耗し丸くなると交換時期です

火花放電の強弱を決めるスパークプラグの先端部分は、高電圧による放電を繰り返すことで徐々に摩耗し、電極の先端が鋭利な形状から丸みを帯びた形状へと変化します。電極が摩耗して丸くなると、火花を飛ばすために必要となる電圧(要求電圧)が上昇し、点火性能が弱まります。その結果、失火(着火ミス)が起こりやすくなり、エンジン効率に悪影響を与えてしまうのです。

スパークプラグを取り外して点検し、電極の先端が摩耗している状態であれば交換のタイミングと判断できます。

スパークプラグの定期的な交換でエンジンの不調を防ぎます

スパークプラグの状態が悪化してしまうと、混合気への着火能力が低下します。これにより、エンジンのかかりが悪くなる、アイドリングが不安定になるといった症状が現れます。それ以外にも、運転中に以下のような異常が発生することがあります。

スパークプラグの劣化で起こり得るエンジンの不調

  • 加速力が低下する
  • 燃費が悪くなる
  • エンジンの振動が不規則になる(失火による)

スパークプラグの劣化を放置すると、最悪の場合はエンジンが始動できなくなることもあります。エンジンが常に最高の状態を維持するためには、スパークプラグを定期的にチェックすることが大切です。また、スパークプラグを物理的な消耗の限界まで使用し続けることは、未燃焼ガスが増えることによる排ガス浄化装置(触媒)の故障を招くリスクもあるため、メーカーが推奨する寿命を目安に交換することが望ましいです

スパークプラグの種類:中心電極の材質で寿命と性能が異なります

スパークプラグには、自動車メーカーが開発・製造を行う純正品と、自動車部品メーカーが開発・製造を行う社外品があります。スパークプラグの基本的な外形的な特徴に大きな差はありませんが、中心電極に使われている金属の種類によって分類され、耐久性や点火能力に違いが生じます。

スパークプラグの主な種類~「一般プラグ」「白金プラグ」「イリジウムプラグ」

スパークプラグは中心電極に使われている金属の種類によって、主に以下の3つのタイプに分けられます。

一般プラグ(ニッケル合金プラグ/レジスタープラグ)

電極にニッケル合金を使用した、最も一般的なプラグです。電極を細く加工することが難しいため、着火性能は他の貴金属プラグに劣ります。また、耐久性も低いため寿命が短く、短い走行距離での交換が必要です。多くの場合、カーラジオなどのノイズを抑制するためのセラミック抵抗体(レジスター)を内蔵しているため、「レジスタープラグ」とも呼ばれます。

白金プラグ(プラチナプラグ)

電極の先端部に白金合金(プラチナ)を使用したプラグです。白金はニッケル合金よりも耐久性に優れているため、電極の消耗が少なく、長寿命(長期間利用できる)という特徴があります。白金は貴金属であるため、一般プラグに比べて商品の価格は高くなります。

イリジウムプラグ

中心電極にイリジウム合金を使用したプラグです。イリジウム合金は非常に耐久性が高く、加工しやすいため、中心電極を極限まで細くすることが可能です。電極が細いほど火花が集中し、強力で安定した点火が可能になるため、着火性能に優れています。また、白金プラグと同様に耐久性に優れており、長寿命タイプが多いです。

スパークプラグの適切な交換時期は種類によって大きく異なります

スパークプラグの交換目安は、以下の表の通り、プラグの種類によって大きく異なります。特に軽自動車は、普通自動車に比べてエンジン回転数が高くなる傾向があるため、プラグにかかる負担が大きく、交換サイクルが短くなります。

主なスパークプラグの交換時期目安
種類 寿命目安(普通車) 寿命目安(軽自動車) 特徴
一般プラグ(ニッケル) 1.5万~2万km 0.7万~1万km 標準的な寿命。
イリジウムIXプラグ(NGK)
イリジウムパワー(DENSO)
1.5万~2万km 0.7万~1万km 高性能な着火性を追求した短寿命タイプ。
白金プラグ
イリジウムMAX(NGK)
イリジウムタフ(DENSO)
7万~10万km 4万~6万km 耐久性を重視した長寿命タイプ。
プレミアムRXプラグ(NGK) 12万km 6万km NGKの高性能・超長寿命タイプ。

例えば、長寿命タイプの白金・イリジウムプラグであれば、普通車で年間走行距離を1万kmと仮定すると、7年から10年間は利用し続けることが可能ですが、一般プラグや高性能を追求した短寿命のイリジウムプラグは、1年から2年ごとの交換が必要となります。

ただし、上記の走行距離はあくまでも目安であり、アクセルを多用する運転や、渋滞の多い市街地走行など、外部環境や運転方法もプラグの使用期間に影響を与えてしまいますので、定期的な点検をおすすめします。

スパークプラグの交換費用:専門店に依頼するのが安心です

スパークプラグの種類は豊富で、交換の際にどの商品を選べば良いか迷うこともあります。また、ご自身で交換することも可能ですが、後述のリスクがあるため、自信のない方はディーラーやカー用品店、整備工場などの専門店に依頼することをおすすめします

交換にかかる費用は、「プラグ本体の部品代」と「交換作業の工賃」の合計です。プラグ本体は一般プラグで1本数百円~、長寿命の白金・イリジウムプラグで1本2,000円~4,000円程度が目安です。工賃は車種やエンジンの気筒数(プラグの交換本数)によって異なりますが、プラグの部品代と工賃を合わせた総額として、1台あたり1万円~2万円程度を目安に見積もっておくと良いでしょう

全国に展開する大手有名カー用品店の工賃例(参考)
カー用品店 工賃(1本あたり) 作業目安時間
オートバックス 1,100円~
※特殊車種や脱着作業が多い車種は別途
20分~
イエローハット 660円~ 30分~
ジェームス 2,000円~(車種タイプによる) 30分~90分

※上記工賃は店舗や車種によって異なります。あくまで参考情報としてご参照ください。

スパークプラグを自分で交換する際のリスク

スパークプラグの基本的な交換手順

  1. エンジンを冷やし、カバーを外します。
  2. イグニッションコイルを固定しているボルトを外し、カプラーを抜いてコイルを取り外します。
  3. プラグレンチでスパークプラグを緩めて取り外します。
  4. 古いプラグの先端の摩耗や焼け具合を確認します。
  5. 新しいプラグを手で回して入れ、真っすぐ入っていることを確認してから、規定トルクで締めます。
  6. イグニッションコイルとカプラー、エンジンカバーを取り付けて完了です。

スパークプラグの交換作業自体は、手順通り行えば特に難しいことはありません。しかし、イグニッションコイルのカプラーは破損しやすい部品であり、最も注意すべきはスパークプラグをエンジンにねじ込む際に、プラグホール(ネジ穴)のネジ山を斜めに入れてしまう「ねじ山のかじり」です。ネジ山を破損させてしまうと、エンジンのシリンダーヘッドの修理が必要となり、非常に高額な費用が発生しますので、ご自身での交換に自信がない場合は、専門の業者に依頼することを強く推奨します。

スパークプラグは性能と安全を維持するために定期的な交換が必要です

「エンジンがかからない」というトラブルは、バッテリー上がり以外にもスパークプラグの寿命が原因であることも考えられます。エンジン停止という最悪のケース以外でも、スパークプラグの性能が低下することで、燃費が悪化し、パワーロスが起こってエンジン出力がダウンしてしまいます。

車を安全に動かし、エンジンの状態をベストに維持するためにはスパークプラグが欠かせません。エンジンの調子が優れないと感じたら、前回スパークプラグを交換した時期を確認しましょう。交換目安時期が近づいている場合は、早めに点検・交換を検討されることをおすすめします。

「スパークプラグの交換」に関連するFAQ

スパークプラグを長持ちさせるコツは?

自分の条件に最適な熱価のプラグを選択したり、くすぶり汚損に対して強いプラグ使用するのが長持ちする。チョイノリや低速走行ばかりだと、スパークプラグは「くすぶり」「かぶり」というカーボンで電極全体が汚れた状態になり、失火が起こることでエンジンの挙動が不安定になる。また熱価の低いプラグで高負荷運転を繰り返すとプラグは白く「焼けすぎ」の状態になり電極の溶解や異常燃焼によってエンジンの損傷が起こることもある。

スパークプラグを物理的な寿命まで使ってもいい?

スパークプラグにはメーカーが推奨する経済寿命と、物理的な消耗まで使用する物理的寿命の2種類があるが、物理的な寿命まで使用することは、車の損傷の原因となったり燃費が悪化するなどがあるので、物理的寿命の前に交換するのが良い。

同じ素材でも軽自動車の方がスパークプラグの寿命が短くなるのはなぜ?

軽自動車と普通車のエンジンの常用回転数の違いによるもの。軽自動車はエンジンの回転数が高いため、スパークプラグの火花を散らす回数も増え、軽自動車は普通車に比べてスパークプラグの寿命が短くなる。

古いスパークプラグを使うデメリットは?

スパークプラグが古くなり着火性能が落ちてくるとアイドリング回転数が不安定になったり、燃費が悪化したり、車の加速性が悪化したり、排ガスの二酸化炭素の量が増えたりする。経済的デメリットを回避するためにも寿命が来る前の交換が望ましい。

レーシングプラグ(レース用プラグ)の寿命は?

レーシングプラグ(レース用プラグ)は使用状況によって寿命が異なり、各メーカーで経済寿命を明示していないが、耐久性のある素材で作られたレース用プラグであっても過酷な状況で使用することが想定されており、1万kmを寿命の目安としていることが多い。

ディーゼル車にスパークプラグがないのはなぜ?

ディーゼル車は加圧し軽油の着火点まで温度を上昇させた空気に、軽油を霧状に噴射して圧縮着火で爆発的な燃焼をする。
ガソリン車は空気とガソリンの混合気を圧縮し、スパークプラグによって火花点火することで爆発燃焼する。
内燃機関の原理の違いによってディーゼルエンジンにはスパークプラグが使用されていない。