S660のフルモデルチェンジはいつ?2代目は登場せず2022年3月に生産終了
ホンダが販売していた2シーターの軽自動車S660は、フルモデルチェンジして2代目が発売されるのでしょうか。結論から言えば、S660の2代目は登場していません。ホンダは2021年3月12日に2022年3月での生産終了を正式発表し、その約20日後には残る生産枠がすべて予約で埋まりました。
2026年7月時点でも、S660の後継となるモデルはメーカーから発表されていません。ここでは、S660がどのように終わりを迎えたのか、現在の中古市場はどうなっているのか、そしてホンダの小さなスポーツモデルがいまどこへ向かっているのかを、過去に販売されていた2シータースポーツカーの販売期間もあわせて確認していきます。
S660の後継BEVは2026年7月時点で未発表 ホンダの小型EVスポーツはSuper-ONEというかたちで登場
S660の生産終了後、ボディサイズを軽自動車規格から世界標準へ広げたBEV(電気自動車)として後継が復活するという見方が、たびたび取り沙汰されてきました。トヨタのGR86(全長4,265mm、全幅1,775mm、全高1,310mm)よりコンパクトな全長3,570mm、全幅1,500mmクラスの2シーターになる、といった具体的な予想も語られています。
ただし2026年7月時点で、ホンダからS660の後継車に関する正式な発表はありません。2022年に示された2台のスポーツEV構想(NSXとS2000の後継と目されるモデル)についても、市販モデルとしての発表には至っていない状況です。
その一方で、ホンダの「小さくて走りが楽しいクルマ」という文脈は、まったく別のかたちで動き出しました。2025年10月29日のジャパンモビリティショー2025で、小型EV「Super-ONE(スーパーワン)」のプロトタイプが世界初公開されたのです。2025年9月に発売された軽乗用EV「N-ONE e:」をベースに、軽自動車の枠を超えて全幅を拡大した専用シャシーを与えた普通車登録のモデルで、車名には「これまでのEVや軽自動車規格の枠を超越する存在(Super)」「ホンダならではの唯一無二(One and Only)の価値」という意味が込められています。
市販モデルは2026年4月16日に予約受付を開始し、5月21日に正式発表、5月22日から全国のホンダ販売店で発売されました。価格は339万200円で、CEV補助金の対象です。一充電走行距離は274km(WLTCモード)、車両重量は1,090kgに抑えられています。ワイドタイヤを包むブリスターフェンダーと専用エアロを与え、トレッドはN-ONE e:から40mm拡大。専用の「BOOSTモード」では出力を引き上げたうえで、仮想有段シフト制御とアクティブサウンドコントロールを連動させ、有段変速機を持つエンジン車のような高揚感を演出します。ホンダはN-VAN e:、N-ONE e:、INSIGHTに続くEVとしてSuper-ONEを位置づけており、2028年中にはN-BOXのEV版投入も予告しています。
Super-ONEはミッドシップの2シーターオープンではなく、前輪駆動のコンパクトハッチという成り立ちで、S660の直接の後継とは言えません。それでも、ホンダが「軽をベースにした小さくて楽しいスポーツ」という路線を電動で再構築してきた事実は、S660の後継を待つ人にとって最も具体的な手がかりです。S660のようなMRレイアウトの2シーターが再び登場するかどうかは、Super-ONEの反応次第という側面もあり、当面は続報を待つことになります。
S660の中古相場は平均223万円台 プレミア価格は沈静化しつつある
新車で買えなくなったS660を手に入れる方法は中古車のみです。2026年5月時点の中古車情報サイトによると、平均本体価格は223.6万円、平均走行距離は38,075km。価格帯はおよそ90.8万円から365.0万円と幅があり、上位は500万円を超える個体も存在します。新車価格が203.1万〜315.0万円だったことを踏まえると、いまなお高い水準を保っていることがわかります。
グレード別の傾向はかなりはっきりしています。標準グレードの「β」と「α」に対して、コンプリートモデルの「Modulo X」が突出して高く、最終特別仕様車の「Modulo X Version Z」は500万円超のプライスが掲げられることも珍しくありません。標準グレードでも、メーカー特別保証期間が残る2022年の最終モデルは260万円以上を維持しています。一方で、走行距離が5万kmを超えた個体や2015年〜2017年頃の初期モデルは、徐々に価格が落ち着き始めており、生産終了直後のプレミア相場は沈静化に向かっていると見てよさそうです。
選び方の目安としては、2020年1月のマイナーチェンジは外観や装備の変更が中心で走行性能に大きな違いはないため、年式とコンディションで判断するのが合理的です。なお「β」は流通台数が少ないぶん、下位グレードでありながら平均価格が「α」より高くなる傾向があり、中古で積極的に選ぶ理由は見つけにくいところです。オープンモデルゆえの雨漏りやロールトップの状態、修復歴の有無は、必ず現車で確認しておきたいポイントになります。
S660が2022年3月に生産終了 2021年3月には予約が殺到して生産枠を完売
S660の公式ホームページでは、2021年1月の時点で「一部カラーがお選びいただけない場合があります。詳しくは販売会社にお問い合わせください。」という表示が出ていました。そして2021年3月12日、ホンダは2022年3月でS660の生産を終了することを正式発表。同日、最終特別仕様車「S660 Modulo X Version Z」を発売しています。
生産終了の理由は、今後厳しくなる安全・環境規制への対応が困難だったことです。軽自動車にも衝突被害軽減ブレーキの搭載、タイヤを含む騒音規制への対応、衝突安全基準の達成が求められるなか、S660が搭載していたのは低速域のみで作動するシティブレーキアクティブシステムでした。大量に売れる車種であれば多額のコストをかけて対応するところですが、2020年の届出台数は2,747台。月平均にすると229台という規模で、投資に見合う台数ではなかったのです。
かねてからS660の生産終了の噂はありましたが、希少な2シーターの軽スポーツの終了アナウンスは衝撃的だったようで、発表からわずか20日ほどで2022年3月までの生産枠がすべて予約で埋まりました。
その後、2021年11月1日に650台の追加販売が公式発表され、追加分の600台を一般販売枠として、50台をオンラインの抽選枠として2021年11月12日から12月5日まで受け付けています。これがS660を新車で購入できる最後の機会となりました。
2015年4月のデビューから2022年までの累計生産台数は38,916台。ホンダの公式サイトでも、S660は「2022年3月終了モデル」としてアーカイブに移されています。
S660は2020年1月にマイナーチェンジ 安全装備のホンダセンシングは搭載されず
ホンダが販売していたS660は、2015年に初代が発売されビート再来として話題となりました。2015年の販売開始から毎年、ホンダや無限から特別仕様車の発売や改良が行われ、こつこつとアップデートされています。そんなS660は、CVT車にシティブレーキアクティブシステムを搭載していましたが、2020年1月のマイナーチェンジでもHonda SENSINGの搭載は見送られました。この改良は2020年1月開催の東京オートサロンで披露され、内外装の変更と環境性能の強化が中心となっています。
| 2013年10月 | 東京モーターショーにてコンセプトモデルが発表 |
|---|---|
| 2015年3月 | S660が発売・特別仕様車のコンセプトエディションが発売 |
| 2016年5月 | S660 MUGEN RAが発売 |
| 2017年5月 | ブルーノレザーエディションが発売 |
| 2017年10月 | コモレビエディションが発売 |
| 2018年5月 | S660 Modulo Xが発売 |
| 2018年8月 | S660ネオクラシックキットが発売 |
| 2018年12月 | トラッドレザーエディションが発売 |
| 2020年1月 | マイナーチェンジを実施(内外装の変更、環境性能の強化) |
| 2021年3月 | 最終特別仕様車 S660 Modulo X Version Zが発売、2022年3月での生産終了を発表 |
| 2021年11月 | 650台の追加生産を発表 |
| 2022年3月 | 生産終了 |
S660に搭載されていたシティブレーキアクティブシステムは、時速5km〜30kmの間で作動するブレーキシステムのため、Honda SENSINGの時速100km以下に比べると心もとない内容でした。この安全装備の差こそが、のちに生産終了の直接の引き金になります。S660は発売から3年後の2018年に一部仕様変更を実施し、2020年1月に最後のマイナーチェンジを受けましたが、Honda SENSINGが与えられることは最後までありませんでした。
S660のフルモデルチェンジが実現しなかった背景とモデルチェンジ遍歴
S660を5ナンバー枠へ広げたS1000という構想もあった
S660の派生・発展系として、かつて話題にのぼっていたのがS1000でした。S660を小型自動車の5ナンバー枠で設計したモデルとされ、全長4,100mm×全幅1,695mm×全高1,190mmという、ルーフが低いフィットに近いサイズ感が語られていました。世界戦略車として開発するなら5ナンバー枠にこだわらず、全幅1,700mm以上のワイドボディになるという見方もありました。
搭載が想定されていたのは直列3気筒の1.0Lターボで、最高出力128PS、最大トルク196Nmというスペックです。
| 種類 | 直列3気筒VTECターボ |
|---|---|
| 排気量 | 998cc |
| 最高出力 | 128PS |
| 最大トルク | 196Nm |
S1000という車名の市販車は登場していません。ホンダが小型スポーツとして世に送り出したのは、内燃機関ではなく電動の「Super-ONE」でした。
ビートやS2000の販売期間を振り返るとS660も1代限りで幕を下ろした
S660はビートやS2000と同様に、1代限りのモデルとなりました。ホンダは2018年にインサイトを復活させ、その後もラインナップの入れ替えを続けていますが、S660の名前が新車として復活することはありませんでした。
趣味性の高い軽自動車スポーツのビートや、ホンダの車両として珍しいFR車のS2000は、いずれも5年から10年ほどで販売を終え、1代限りで役目を終えています。久しぶりに復活したS660も、約7年で同じ道をたどることになりました。
ビートやS2000、S660の販売期間
- ビート:1991年~1996年(5年)
- S2000:1999年~2009年(10年)
- S660:2015年~2022年(7年)
ホンダの2シータースポーツは、いずれも規制の強化や販売規模の壁に突き当たって姿を消してきました。S660もその例外ではなく、走りの完成度ではなく、安全・環境規制への対応コストと台数のバランスが終わりを決めたかたちです。裏を返せば、規制対応の負担を電動プラットフォームで吸収できるようになった今後こそ、小さなスポーツが再び成立する余地が生まれるとも言えます。Super-ONEがその第一歩になるのかどうかが、これからの見どころです。
2人乗りK-Carのホンダ・S660のモデルチェンジ遍歴
S660はホンダが販売していた軽自動車で、2人乗りのオープンカーです。かつてホンダで販売していたビート以来の軽規格のオープンスポーツカーで、実に19年ぶりとなりました。東京モーターショー2013で公開されたコンセプトカー「Honda S660 CONCEPT」のデザインイメージを受け継いでいます。本田技術研究所設立50周年を記念した商品企画提案をきっかけに開発がスタートした異色のモデルで、660ccのDOHCターボエンジンを乗員の後ろに置くミッドシップレイアウトという、専用設計の塊のような一台でした。
ホンダS660 JW5型/2015年~2022年
2015年3月、S660のデビューと共に、特別仕様車「S660 CONCEPT EDITION」を発売。「β」と上級モデルの「α」をラインナップ。
2017年6月、11月までの期間限定受注の特別仕様車「Bruno Leather Edition」を発売。同年11月、2018年1月までの期間限定受注の特別仕様車「#komorebi edition」を発売。
2018年5月、一部仕様変更と共に、コンプリートモデル「Modulo X」を新設定。同年12月、特別仕様車「Trad Leather Edition」を発売。
2020年1月、マイナーチェンジを実施。内外装の変更の他、環境性能が強化されました。
2021年3月12日、最後の特別仕様車として「Modulo X Version Z」を発売。同時に2022年3月での生産終了を発表し、その約20日後には残る生産枠が完売しました。同年11月、想定を上回るスピードで完売したことを受け、「β」と「α」の650台の追加生産が発表されます。
2022年3月、生産を終了。惜しまれつつ7年の歴史に幕を下ろし、累計生産台数は38,916台となりました。
| ホンダS660のモデル | 販売年表 |
|---|---|
| JW5型 | 2015年~2022年(2022年3月生産終了/累計38,916台) |