リトラクタブルヘッドライトとは?

リトラクタブルヘッドライトはなぜ愛された?かっこいいリトラ搭載の旧車オススメあり!

リトラクタブルヘッドライトを搭載した車は現行車には存在せず、法律で禁止された訳ではないものの規制が厳しいため復活の可能性も低い。人気を集め廃止された経緯を解説しトヨタ、マツダ、ホンダ車などリトラクタブルライト搭載のおすすめ旧車とその後の車検を説明。

リトラクタブルヘッドライトとは?格納式ライトはどのように愛されて、消えていったのか?

リトラクタブルヘッドライトとは、主に自動車に採用されていたボンネットに格納できる前照灯の形です。リトラクタブル(Retractable)とは、日本語で「格納する、引っ込められる」といった意味で、昼間など必要のないときはボンネット内部にヘッドライトを収納でき、夜間など必要なときのみ電動、稀に手動でライトが展開します。

格納式ライト、リトラクタブルライト、リトラクタブルヘッドランプといった呼び方もあり、車好きの間では「リトラ」と略されたりもします。

リトラクタブルヘッドライトが人気となった経緯は?格納式ライトはスポーツカーの象徴!

リトラクタブルヘッドライトは、1960年代以降、世界中で広まり、日本でも多くの車種に採用されました。リトラクタブルヘッドライトが人気となった背景を見ていきましょう。

リトラクタブルヘッドライトは1937年に誕生し、1963年登場のロータス・エランによって世界的にメジャーな存在に!

トヨタ・2000GTの設計やマツダ・ユーノスロードスターのデザインにも影響を与えたロータス・エラン。

日本では70年代後半から90年代にかけて人気を集めるリトラクタブルヘッドライトですが、その歴史は意外に古く、世界で最初のリトラクタブルヘッドライト搭載車は「コード・フロントドライブ モデル812」という1937式のアメリカ車です。

日本でもヒストリックカーとして、トヨタ自動車博物館に展示してあります。しかし、この時点ではリトラクタブルヘッドライトは流行しませんでした。

本格的にリトラクタブルヘッドライトの採用が検討されるようになるのは、イギリスのロータス・カーズが販売したオープンカー、ロータス・エラン以降となります。

項目 内容
初の搭載車 1937年式「コード・フロントドライブ モデル812」(アメリカ車)
日本での展示 トヨタ自動車博物館に展示
当初の評価 当初は流行せず
普及のきっかけ 1963年発売の「ロータス・エラン」が採用し、世界的に注目される
日本車への影響 トヨタ2000GTやマツダ・ユーノスロードスターのデザインに影響

日本初のリトラクタブルヘッドライト搭載車は国産車初のスーパーカー・トヨタ2000GT

日本で初めてリトラクタブルヘッドライトを搭載したのは伝説的な名車2000GT。

日本でリトラクタブルヘッドライトを初めて採用した車は、1967年に市販化されたトヨタ2000GTです。「クラウンが2台買える。カローラなら6台買える」といわれた当時の国産車最高のスポーツカーです。

トヨタがヤマハ発動機と共同開発し、本体価格は現在の価値にして2000万円以上ですが、広告費的な意味を兼ねていて実質これでも赤字販売でした。当時の自動車メーカーが持てる技術をすべて注ぎ込んだ世界的な名車が初のリトラクタブルヘッドライト搭載車だったのです。

項目 内容
日本初搭載車 トヨタ2000GT(1967年市販)
共同開発企業 トヨタ自動車 × ヤマハ発動機
価格 当時「クラウン2台分」、現在の価値で約2,000万円
販売目的 技術力のアピール・広告戦略(実質赤字)
意義 国産初のスーパーカー/世界に誇る名車

70年代後半からスーパーカーブームが到来し、80~90年代はリトラクタブルヘッドライトが大流行!

スーパーカーブームで特に人気の高かったランボルギーニ・カウンタックもリトラ搭載車!

マイカー所有率の増加、漫画『サーキットの狼』などの影響もあり、日本では1970年代後半にスーパーカーブームが到来します。当時人気の高かったスーパーカーとえば、ランボルギーニ・カウンタック、フェラーリ・512BB、ランチア・ストラトスなど、リトラクタブルヘッドライト搭載車たちです。

日本車では1978年にマツダがトヨタ2000GT以来のリトラクタブルヘッドライト搭載車サバンナRX-7を販売。初代RX-7は「プアマンズポルシェ」と呼ばれ、米国などにとっても無視できない存在のスポーツカーとして注目を集めました。

こうしてリトラクタブルヘッドライトは、スーパーカーやスポーツカーの象徴となり、80年代、90年代にかけて多くの国産車でもリトラクタブルヘッドライトを採用するようになりました。

時代背景 概要
1970年代後半 スーパーカーブームが到来。『サーキットの狼』などの影響でリトラクタブルヘッドライト搭載車が注目を浴びる。
人気の海外車種 ランボルギーニ・カウンタック、フェラーリ・512BB、ランチア・ストラトスなど
日本での展開 1978年にマツダがサバンナRX-7を発売。トヨタ2000GT以来のリトラ搭載車として話題に。
初代RX-7の評価 「プアマンズポルシェ」と呼ばれ、手ごろなスポーツカーとしてアメリカでも人気に。
80〜90年代の流行 リトラクタブルヘッドライトがスポーツカーの象徴として多数の国産車に採用される。

リトラクタブルライトはスーパーカー世代の憧れ!リトラ搭載の自転車も存在!

1970年代後半にスーパーカーブームが到来するも、庶民で本物のスーパーカーが買えるのは一握のため、子供たちを中心に『スーパーカー消しゴム』などスーパーカーをモチーフにした商品が流行します。

『スーパーカー自転車』、通称デコチャリもその一つでした。小中学生向けのジュニア自転車に、なんとリトラクタブルライトを採用。スイッチを押すと、ウィーンと機械音が鳴り、ライトが展開されて進行方向を照らします。

この自転車のリトラクタブルライトは当時「スーパーカーライト」と宣伝されました。
まさに人々にとって「リトラクタブルライト=スーパーカー」というイメージだったことが分かるエピソードです。

時代背景 概要
1970年代後半 スーパーカーブームが巻き起こるが、本物を購入できるのは一部の富裕層に限られた。
子ども向け商品 スーパーカー消しゴムやスーパーカー自転車など、憧れを形にしたグッズが流行。
スーパーカー自転車 ジュニア向けの自転車にリトラクタブルライトを装備。スイッチ操作でライトが展開。
機能と印象 展開時に「ウィーン」という音を立ててライトが点灯。実用性と遊び心を両立。
広告表現 ライトは「スーパーカーライト」と呼ばれ、リトラ=スーパーカーという認識が定着。

リトラクタブルヘッドライトを「半目」や「片目」にして楽しむカスタムも登場

サバンナRX-7を皮切りに、日本でもリトラクタブルヘッドライトの車が増えてからは、自分好みにカスタムする人も増えてきました。

ポップアップしたリトラクタブルヘッドライトは、まるで顔のパーツの目に見えることから、完璧に収納せずライトをやや開いた状態にしておく「半目」、片方のみライトを展開させておきウィンクのように見せる「片目」などが定番のカスタムで、「半目キット」など専用のグッズも販売されたほどです。

リトラクタブルヘッドライトは閉じているときはカッコいいのですが、展開しているときはややファニーフェイスになります。こうしたギャップがあるからこそ、カスタムのし甲斐があり、車好きのハートを掴んだのでしょう。

リトラクタブルヘッドライトの魅力とは?世界中で採用された背景

リトラクタブルヘッドライトの車が世界中で製造されたのには、車の「デザイン」と「保安基準」という2つの大きな要因があります。

カスタム名 内容
半目 ライトをやや開いた状態で固定し、眠そうな表情を演出。専用の「半目キット」も販売された。
片目 片方のライトのみを開いて「ウィンク」させたような見た目を楽しむカスタム。
人気の背景 閉じた状態のスマートさと開いた時のユーモラスな表情のギャップが魅力となり、個性表現として定番に。
世界的な採用理由 車両デザインの自由度向上と、当時の保安基準(ライトの高さ制限など)を両立する手段として普及した。

ヘッドライトの形や位置に捉われずに車のエクステリアをデザイン

リトラクタブルヘッドライトが世界中で流行した背景には、ライトを格納することで「車のデザインの自由度が増す」という点が1番に挙げられます。

前方を照らし、後続車に存在を伝えるヘッドライトは車にとって欠かすことのできない部品ですが、デザイン上の制約にもなります。現在でも、フロントからエクステリアを見るときに、ヘッドライトが与える印象は非常に大きく、カーデザイナーも非常に頭を悩ませる部分です。

しかし、消灯時はボンネットに格納できるのなら、エクステリアのデザインは大きく自由度を増します。リトラクタブルヘッドライトの採用は、自動車メーカーにとってメリットが大きいものでした。

項目 内容
半目 ライトをやや開いた状態で固定し、眠そうな表情を演出。専用の「半目キット」も販売された。
片目 片方のライトのみを開いて「ウィンク」させたような見た目を楽しむカスタム。
人気の背景 閉じた状態のスマートさと開いた時のユーモラスな表情のギャップが魅力となり、個性表現として定番に。
採用理由①
(デザイン性)
消灯時はヘッドライトが格納されるため、ボディラインを崩さずに自由度の高いフロントデザインが可能。
採用理由②
(保安基準対応)
当時の保安基準(ヘッドライトの高さや照射角)を満たす手段として有効だったため。

スポーツ走行を実現しつつ、「最低地上高」など自動車の保安基準をクリア

一般的にスポーツカーは車高が低く、空気抵抗を避けるように設計されています。
しかし、実はヘッドライトの位置には、多くの国で保安基準があり、この条件に適合しない車種は販売不可。日本の場合、ヘッドライトは「50cm以上、1.2m以下」と規定されています。

リトラクタブルヘッドライトなら、フロントノーズを低くとりつつ、必要時にはヘッドライトがボンネット上部に盛り上がるようなデザインが可能です。

規定は守らなくてはならない。しかし、スポーツ走行のためにはボンネットは低い方が空気抵抗が少なくて良い。そうした結果、産み出され、多くの車に採用されるようになったのがリトラクタブルヘッドライトだったという訳です。

ポイント 内容
スポーツカーの設計 車高を低くし空気抵抗を減らすようにデザインされている。
ヘッドライトの規定 多くの国に保安基準があり、日本では高さ50cm〜1.2mと定められている。
リトラクタブルライトの利点 ライトを必要時にだけ上げることで、デザインと基準を両立できる。
低ボンネットの効果 空気抵抗を抑え、スポーツ性能を向上させる。
採用の背景 デザインと保安基準を両立し、リトラクタブルライトが多くの車に普及。

リトラクタブルヘッドライトの市販車はもう出ない!廃止された理由

日本では2002年のマツダRX-7の生産終了、世界的にはシボレー・コルベット5代目が6代目にフルモデルチェンジする2005年以降、リトラクタブルヘッドライトの市販車は姿を消しています。

リトラクタブルヘッドライトそのものを禁止する法律はないのですが、現在の保安基準では推奨されるものではなく、またかつて言われていたメリットも現在はあまり認められていないのが衰退の理由です。

リトラクタブルヘッドライトは事故時の「歩行者保護」に問題がある

リトラクタブルヘッドライトは、格納時はいいのですが、ライト点灯時はボンネット上に盛り上がるような形状のものも多く見られます。

もし衝突した場合、ボンネット上に突起物があると、人体への衝撃・かかる負荷は大きくなります。歩行者保護の観点からはあまり推奨されないデザインです。

格納式のため製造コストが増すにもかかわらず、凍結や故障のリスクが高い

リトラクタブルヘッドライトは、通常のライトに比べて装着のための部品点数が多いです。ライトを展開するためのモーターや配線も必要ですので、故障のリスクも上がってしまいます。

点灯時の空気抵抗増、ライトの重量増で、結果としてスポーツ走行には不向きと判明

かつてはスポーツカーの象徴、空気抵抗を減らせるデザインと言われていたリトラクタブルヘッドライトですが、現在は「スポーツ走行へのメリットはあまりない」と知れ渡ってきました。

1つ目は、もとから言われていたことですが、ライト格納時はともかく、ライト展開時に空気抵抗がかえって増してしまうからです。

2つ目は、そもそもリトラクタブルヘッドライトを採用することで、車両重量は増してしまいます。しかも、ボンネット中央ではなく、左右の重量が増すことで、ハンドリング性能が悪くなります。

リトラクタブルヘッドライトは、スポーツカーのイメージを象徴するデザインですが、性能的にはさほど意味を持たないというのが現在の通説です。

昼間のヘッドライト点灯が義務の国もあり、格納式にすると海外での販売に影響が出る

日本ではまだあまり普及していませんが、海外、特に高緯度の国では、車の視認性を上げるために昼間のライト点灯が推奨されていたり、法令で定められている国があります。
昼間もライトを点灯させなくてはならないのなら、格納する暇はなく、リトラクタブルヘッドライトは無意味です。

フィンランド、スウェーデン、ノルウェーなどの北欧諸国、カナダなどの北米、ブラジルなどでは法令によって昼間点灯が既に義務化されています。

現在は日本の自動車メーカーも国内専売車というのはあまりないですし、今後他国の法令がどう変わるかわからないなかであえてリトラクタブルヘッドライトを採用する会社は現れないでしょう。

米国のヘッドライト規制が緩和し、リトラクタブルにして「最低地上高」を稼ぐ必要がなくなった

リトラクタブルヘッドライトが流行した背景には、フロントノーズを低くとりつつ、「ライトの最低地上高」が定められた保安基準をクリアできるからでした。
特に基準が厳しかったのがアメリカで、ライトの形にも様々な規制がありました。

しかし、1970年代~1980年代にかけて、アメリカのヘッドライトの基準は少しずつ緩和されていき、必要時にボンネット上に展開して、最低地上高を稼ぐリトラクタブルヘッドライトがそもそも必要なくなったのです。

項目 内容
リトラクタブルヘッドライトの市販車の消滅 日本では2002年のマツダRX-7生産終了、世界的には2005年のコルベット6代目発売以降、市販車から姿を消した。
禁止規定の有無 禁止する法律はないが、現在の保安基準では推奨されず、メリットも減少しているため廃れた。
事故時の歩行者保護問題 ライト展開時はボンネット上に突起ができ、衝突時の人体への衝撃が大きく歩行者保護上不利。
製造コストと故障リスク モーターや配線など部品が増え故障のリスクが高く、製造コストも増大する。
空気抵抗と重量増 ライト展開時に空気抵抗が増え、車両重量も増大。左右に重量が偏るためハンドリング性能も悪化する。
昼間ライト点灯義務の影響 北欧や北米、ブラジルなどで昼間ライト点灯が義務化され、リトラクタブルの利点が減少し販売に影響。
米国のヘッドライト規制緩和 1970~80年代に規制が緩和され、最低地上高を稼ぐためのリトラクタブルライトは不要となった。

リトラクタブルヘッドライトがかっこいい車は?人気の旧車6選

実際はさほどスポーツ走行に影響を与えず、現在では重量面からかえって不利ともされるリトラクタブルヘッドライト。しかし、やはりデザインが好きだったり、憧れがある人も多いはず!リトラがかっこいい日本の名車を紹介します。

最後のリトラクタブルヘッドライト搭載の国産車となったRX-7

2002年に生産終了となったリトラクタブルヘッドライト搭載車RX-7。

トヨタ2000GT以来、おおよそ10年ぶりに国産車としてリトラクタブルヘッドライトを採用した初代サバンナRX-7。アンフィニRX-7、マツダRX-7など、時代ごとに名前は変わりましたが、歴代モデルすべてにリトラクタブルヘッドライトを搭載し、3代目FD3S型の生産中止をもって日本のリトラクタブルヘッドライトの歴史は幕を下ろしました。

ロータリーエンジン搭載のピュアスポーツカーとして国内外にファンが多い名車で、今なお復活を望むファンの声は絶えません。ただもしRX-7が復活しても、リトラクタブルヘッドライトは搭載できないというのは少しだけ寂しい気もします。

項目 内容
リトラクタブルライト搭載の国産車最終モデル マツダRX-7(3代目FD3S型)が2002年に生産終了し、国産車のリトラクタブルヘッドライト搭載車は姿を消した。
歴代RX-7のライト 初代サバンナRX-7から3代目まで、すべてリトラクタブルヘッドライトを搭載していた。
RX-7の特徴 ロータリーエンジン搭載のピュアスポーツカーで、国内外に多くのファンがいる名車。
現在のファンの声 RX-7の復活を望む声は多いが、復活してもリトラクタブルライトの搭載は難しい状況。

リトラクタブルヘッドライト好きならこちらを選ぶシルビアの姉妹車180SX

中古市場でも数の多い180SX中期型。

180SXはシルビアS13型の姉妹車の3ドアハッチバッククーペです。1989~1998年まで10年間発売されました。

歴代最大のヒットであり、ドリフトカーとしても有名なシルビアS13型に対し、180SXは角型2等式のリトラクタブルヘッドライトを採用しているのが特徴です。最近では「フロントマスクが好きだから」とあえて180SXに狙いを定めて購入する旧車好きも増えています。

項目 内容
車名 180SX
車種 シルビアS13型の姉妹車、3ドアハッチバッククーペ
発売期間 1989年から1998年までの約10年間
特徴 角型2等式リトラクタブルヘッドライトを採用し、シルビアとは異なるフロントマスクを持つ
人気の理由 ドリフトカーとして有名なシルビアに対し、フロントデザインを好んで購入する旧車ファンも多い

セリカA60型には日本唯一のポップアップ式ヘッドランプ採用の前期型とリトラクタブル採用の後期型が存在

セリカA60型の直4モデルの前期型は国産車唯一のポップアップ式ヘッドランプを採用。

初代は「ダルマセリカ」と呼ばれ、70年代にはスペシャリティーカーとして愛されたトヨタのセリカ。1981~1985に販売された3代目A60型は1983年のマイナーチェンジまで斜め上向きにヘッドライトを置き、点灯時に進行方向に展開するポップアップ式ヘッドランプを日本車で唯一採用していました。

厳密にはポップアップ式ヘッドランプはリトラクタブルヘッドライトとは別物なのですが、その後セリカA60型は1963年のマイナーチェンジで、通常のリトラクタブルヘッドライトを採用します。やや珍しい遍歴を辿ったモデルです。

項目 内容
車名 トヨタ セリカ A60型
販売期間 1981年~1985年
前期型特徴 斜め上向きのヘッドライトを持ち、進行方向に展開するポップアップ式ヘッドランプを日本車で唯一採用
後期型特徴 1983年のマイナーチェンジ以降、通常のリトラクタブルヘッドライトを採用
備考 ポップアップ式はリトラクタブルとは異なるが、同モデルで両方のタイプが存在する珍しい例

リトラクタブルヘッドライト採用のエクステリア変更で華やかになった2代目プレリュード

元祖デートカーとしてホンダの大ヒット車種となった2代目プレリュード。

デートカーというジャンルを築いたホンダ・プレリュードですが、実は初代(1978~1982年)は海外需要が8割で日本での存在感は薄いクルマでした。

プレリュードが人気を博すのは2代目(1982~1987)以降。リトラクタブルヘッドライトを採用し、エクステリアを刷新。車高が低く、スタイリッシュで、女性の評価も上々。このモデルで「デートカー」というジャンルを開拓していったのです。

項目 内容
車名 ホンダ プレリュード 2代目
販売期間 1982年~1987年
特徴 リトラクタブルヘッドライト採用によるエクステリア刷新で華やかに
車高 低くスタイリッシュなデザイン
人気の背景 女性からの評価が高く「デートカー」という新ジャンルを開拓
初代との違い 初代は海外需要が多く、日本での存在感は薄かった

セミ・リトラクタブルヘッドライト搭載の31型フェアレディZ

格納時にもライトが少しだけ見えているセミ・リトラクタブルヘッドライトのZ31型。

日産フェアレディZの31型(1983~1989)は、格納時にも上半分ほどライト部分が見えているセミ・リトラクタブルヘッドライトを採用しています。
他にもホンダ・バラードスポーツCR-Xやいすゞ・ピアッツァなどに見られる特徴的なデザインです。

項目 内容
車名 日産フェアレディZ 31型
販売期間 1983年~1989年
ヘッドライトタイプ セミ・リトラクタブルヘッドライト(格納時にライトの上半分が見える)
特徴 ホンダ・バラードスポーツCR-Xやいすゞ・ピアッツァなどにも類似デザインが見られる

スバルで唯一のリトラクタブルヘッドライト搭載車アルシオーネ

スバルで唯一リトラクタブルヘッドライトを採用した車アルシオーネ。

スバル車唯一のリトラクタブルヘッドライトを搭載しているのがアルシオーネ(1985~1991)です。特徴的なボディは空気抵抗を徹底的に少なくするために計算を尽くした結果の賜物。カタログでも、空力性能を全面に押し出すという当時の国産市販車としては異色モデルでした。

項目 内容
車名 スバル アルシオーネ
販売期間 1985年~1991年
ヘッドライトタイプ リトラクタブルヘッドライト(スバル唯一搭載)
特徴 空気抵抗を極限まで抑えたボディデザインを持ち、当時の国産市販車としては異色の空力性能を強調したモデル

リトラクタブルヘッドライトの旧車を購入した場合の車検はどうなる?

新車での製造・販売はされていないリトラクタブルヘッドライトの車ですが、違法な改造などを加えていなければ車検は通ります。

ネット上で「警察官がリトラクタブルヘッドライトを知らなかったために、改造車扱いされた」という話が流布していますが、この話は単に警察官が間違えてしまっただけのこと。「リトラクタブルライトだから」という理由だけで車検に通らないということはあり得ません。

光軸検査をパスすればリトラクタブルヘッドライトの車には何も問題はない

ヘッドライトは重要な部品ですので、「光軸検査」にパスしなければなりません。専用の機械で明るさを測定し、ライトが照らす位置にずれはないかなどが検査されます。

光軸検査をパスできない、上手く展開しない?リトラクタブルライトの維持はやや大変

日本で最後にリトラクタブルヘッドライトを搭載したのは2002年のマツダRX-7です。このクルマでも20年近い月日が経っているわけですから、リトラクタブルヘッドライト搭載の旧車も状態の良いものが減ってきているのは間違いありません。

車検時に光軸検査をパスできなかったり、配線のトラブルでライトの展開や格納がうまくいかなくなることもあり得ます。

リトラクタブルヘッドライト搭載の車は珍しくないので純正部品がデッドストック(廃番)していても、リビルト品(再生品)があることが多いため修理できないことは少ないですが、パーツ全体やモーターごと取り換えが必要なケースもあり、修理費・維持費は高くつく覚悟はした方が良いでしょう。

項目 内容
車検の可否 違法改造がなければリトラクタブルヘッドライト車でも車検は通る
誤解の例 警察官がリトラクタブルライトを知らず改造車扱いするケースがあるが誤り
光軸検査 ライトの明るさと照射位置の検査に合格すれば問題なし
維持の難しさ 経年劣化で光軸ずれやライトの展開不良が起こる場合がある
修理の現状 純正部品は廃番でもリビルト品があり修理可能だが費用は高め

現代風リトラ車?リトラクタブルヘッドライトを思わせるデザインの車

光岡ロックスター 1970年代にリトラを搭載していたアメ車がモチーフ

保安基準の問題があり、市販化が難しい格納式のリトラクタブルヘッドライト。実際の搭載は無理ですが、リトラクタブルヘッドライトを思わせるデザインの車は存在します。

例えば、2018年11月に光岡自動車が200台限定販売したロックスター。ベース車両は、マツダ・ロードスター(ND系)で、LEDライトを極力小さく、目立たなくすることで、「リトラ車っぽいルックス」を演出しています。

現在の技術なら、小さなライトでも、保安基準が求める明るさをクリアできることが証明された点も特筆すべきでしょう。本物のリトラクタブルヘッドライトの搭載は無理でも、リトラ車を思わせるデザイン・スタイルの車は今後も登場しそうです。

項目 内容
現代のリトラ風デザイン車 リトラクタブルヘッドライトは保安基準で市販化が困難
代表例 光岡自動車のロックスター(2018年11月、200台限定販売)
ベース車両 マツダ・ロードスター(ND系)
デザイン特徴 LEDライトを小型・目立たなくし、リトラ車風のルックスを演出
技術的意義 小さなライトでも保安基準の明るさを満たすことが証明された
今後の展望 本物のリトラクタブルライトは難しいが、リトラ風デザイン車は登場し続ける可能性が高い

リトラクタブルヘッドライトの復活は難しいが、ライトのデザインは多様化している!

かつて日本でも多くの車種に採用されていたリトラクタブルヘッドライト。見られなくなったことに寂しさを感じますが、残念ながら復活の可能性は低いと言わざるを得ません。

衝突時の安全性に問題がある以上は自動車メーカーは簡単に採用できませんし、昼間のライト点灯が義務化される国が増えることを考えれば、数年に及ぶ新開発は二の足を踏むでしょう。
また現在はLED化をはじめ、運転手を支援し、対向車へ配慮できるヘッドライトの在り方も模索されています。こうした新システムとリトラクタブル形式を融合する必要性も感じられません。

しかし、見方を変えればリトラクタブルヘッドライトが廃止されて以降、クルマのヘッドライトのデザインはより多様化し、自由度を増してきています。次世代の新たなヘッドライトの形、かっこいいデザインに期待しましょう。