新型エクストレイルに搭載されたプロパイロットの秘密
日産の人気SUV、エクストレイルの現行モデルには、先進運転支援技術である「プロパイロット」が搭載されています。プロパイロットとは、高速道路などの自動車専用道路で、アクセル、ブレーキ、ステアリング操作を支援してくれる技術です。これにより、ドライバーの負担を大きく軽減します。
現行のT33型エクストレイルは2022年7月に登場し、2025年9月のマイナーチェンジでフロントまわりのデザインとインフォテインメントが刷新されました。プロパイロットは現在、全車標準装備となっています。ここでは、エクストレイルに搭載されているプロパイロットの中身、搭載車種のラインアップ、そして自動運転技術の今後の展望について詳しくご紹介します。
プロパイロットとは日産が開発した先進運転支援技術のこと
日産の「プロパイロット」は、高速道路や自動車専用道路において、同一車線(同じ車線内)での運転操作を支援する技術です。車両に搭載された単眼カメラとレーダーが前走車との距離と車線の位置を把握し、加速、減速、さらにはステアリング操作まで支援します。
プロパイロットは、ドライバーの安全確保のため、一定時間ステアリングから手を離すと警告を発し、それでも操作がない場合は制御がスタンバイ状態に戻る安全装置が組み込まれています。この技術は、疲労が蓄積しやすい長距離運転や、停止と発進を繰り返す渋滞時にドライバーの負担を大きく減らし、判断の遅れによる危険を軽減します。
新型エクストレイルでプロパイロットをセットする方法
1.プロパイロットのボタンを1回押す
2.巡航したい速度を設定する
3.もう1度プロパイロットボタンを押して完了
セットできるのは車速が30km/h以上で走行しているときです。ステアリング上の青いスイッチを押し、レバーを「SET-」方向に操作すると、その時点の速度で制御が始まります。設定速度を上げたいときは「RES+」方向へ、下げたいときは「SET-」方向へ操作します。車間距離は長・中・短の3段階から選べ、交通量が多い区間では短めにすると割り込みを受けにくくなります。
いったん作動すれば、先行車が減速して停止するところまで追従し、停止状態を保持します。先行車が発進したあとはスイッチかアクセルで合図を送ると追従を再開します。渋滞のなかで何十回とブレーキを踏み替える操作がなくなるため、都市高速の渋滞区間で効果をはっきり感じられる機能です。
また、現行のエクストレイルは都会的なSUVとしてフロントマスクを刷新し、シャークフィンアンテナやバックドアのセンサーに足をかざして開けられるハンズフリー機能など、使い勝手の面でも進化しています。日産の電動化技術であるe-POWERを搭載し、前後にモーターを置くe-4ORCEを選べる点も特徴です。
他にも様々なドライバーサポートシステムを実装しています。
- 上から見下ろしたような映像をナビまたはルームミラーに表示してくれる「インテリジェントアラウンドビューモニター」
- 2・3列目のシートに人や荷物が乗っていても後方がクリアに見える「インテリジェントルームミラー」
- 駐車を支援してくれる「インテリジェントパーキングアシスト」
- ハイ・ロービームを自動的に切り替える「ハイビームアシスト」
駐車支援については、エクストレイルに「プロパイロット パーキング」も設定されています。駐車したい場所の真横で停車し、画面上のボタンをタッチすると、ステアリングとアクセル、ブレーキ、シフト操作を車両側が行います。縦列駐車が苦手な人にとっては、プロパイロット本体より出番の多い機能になります。
プロパイロットでできることと、できないこと
便利な機能である一方、万能ではありません。プロパイロットが前提としているのは、白線がはっきり見える高速道路や自動車専用道路での走行です。
作動が制限されやすいのは、次のような場面です。白線がかすれている区間、積雪や濃霧でカメラの視界が遮られる状況、工事で車線がジグザグに移設されている区間、急なカーブが連続する区間などが該当します。こうした場面では制御が解除され、ドライバーに操作が戻されます。解除されること自体は不具合ではなく、システムが自分の限界を知らせている状態です。
もう一点、使い始めに戸惑いやすいのが割り込みへの反応です。前方に別の車が入ってくると、設定した車間距離を確保するために減速します。車間設定を「長」にしていると、高速道路の渋滞手前などで減速の頻度が増えます。流れに合わせて設定を切り替える操作に慣れると、制御のクセは気にならなくなります。
長い下り坂では、設定速度を保つための減速が緩やかに感じられる場面もあります。システムが制御している間も、ブレーキはいつでも踏める状態にしておく必要があります。プロパイロットは運転を代わるものではなく、操作の負担を減らすものです。
日産の運転支援技術「プロパイロット」を搭載する車種
プロパイロットの第1弾として、2016年8月にフルモデルチェンジしたミニバンの「セレナ」に搭載され、市場に登場しました。セレナは定員8名のワンボックスタイプのミニバンで、家族を乗せて走る車に運転支援技術が搭載されたことで、当時大きな話題を呼びました。セレナは現在もプロパイロットを搭載する人気モデルです。
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2022年にフルモデルチェンジしたT33型エクストレイル -
T33型エクストレイルのスペック
プロパイロット搭載車種のラインアップは、その後も拡大を続けています。SUVの「エクストレイル」「キックス」、電気自動車(EV)の「リーフ」「アリア」、コンパクトカーの「ノート」「ノート オーラ」、さらには軽自動車の「デイズ」「ルークス」「サクラ」など、多くの人気車種へ採用されました。軽自動車にこの水準の運転支援を展開したことは、日産の先進性を示すものとなりました。
機能は一段階ずつ進化しています。2020年12月に発売されたノートからは「ナビリンク機能」が加わりました。ナビの地図情報と標識検知を組み合わせ、制限速度が変わったときに設定速度を切り替えたり、カーブの大きさに応じて手前から減速したりする機能です。初期型と区別して「プロパイロット1.5」と呼ばれることもあります。
注意しておきたいのは、同じ車種でも年式とグレードで中身が違う点です。エクストレイルの場合、2022年7月の登場時はナビリンク機能付きとそうでないものがグレードによって分かれ、2025年9月のマイナーチェンジでNissanConnectがGoogleビルトイン仕様へ切り替わった際にナビリンク機能は非設定となりました。その後の一部仕様変更で、プロパイロット自体は全車標準装備になっています。
プロパイロット2.0は何が違うのか
プロパイロットには、さらに進んだ「プロパイロット2.0」があります。2019年7月に発表された世界初の技術で、スカイラインのハイブリッドモデルに初めて搭載されました。
最大の違いはハンズオフ走行です。ドライバーが前方を注視し、すぐにハンドルを握れる状態であることを条件に、高速道路の同一車線内で手を離したまま走行できます。これを支えているのが、3D高精度地図データ、複数のカメラとレーダーとソナーによる360度センシング、そして衛星測位です。地図データは道路の形状や勾配をあらかじめ持っているため、カーブの手前から滑らかに速度を落とせます。
ナビで目的地を設定しておくと、本線合流後にルート走行が始まり、分岐や出口で必要な車線変更をシステムが提案します。ドライバーが承認すると車線変更を実行します。先行車が設定速度より遅い場合には追い越しを提案し、承認後に追い越して元の車線へ戻ります。
プロパイロット2.0を初搭載したスカイラインのハイブリッドは2022年に注文受付を終了しており、現在この機能を選べるのはアリア、セレナのe-POWER LUXION、リーフ、そしてエルグランドです。いずれも上級グレードや特定のパワートレインに限定されており、同じ車種名でも全グレードで使えるわけではありません。
ハンズオフができても、監視の責任はドライバーにあります。ドライバーモニターが視線を検知しており、よそ見が続けば警告が出て制御は解除されます。手が自由になることよりも、ステアリングを保持し続ける緊張から解放されることのほうが、長距離での疲労軽減に効いてきます。
プロパイロットは自動運転レベル2の段階
自動運転の技術は、レベル0からレベル5まで国際的に定義が設定されています。日産のプロパイロットは、加速、減速、操縦の複数の操作をシステムが同時に行う「レベル2」に該当します。ハンズオフが可能なプロパイロット2.0も分類上はレベル2であり、ドライバーが運転の主体であること、周囲を監視する義務があることは変わりません。
自動運転のレベルについて
レベル0:ドライバーが加減速・操縦全てを行っている状態
レベル1:加減速・操縦のいずれか1つをシステムが支援する状態。(自動ブレーキなど)
レベル2:加減速・操縦の複数をシステムが同時に行う状態。(プロパイロットなど)
レベル3:加減速・操縦の全てをシステムが行うが、緊急時はドライバーが運転を引き継ぐ状態(条件付き自動運転)
レベル4:特定の条件下で加減速・操縦の全てをシステムが対応し、ドライバーの介入が不要な状態
レベル5:あらゆる条件下で加減速・操縦の全てをシステムが対応し、完全自動運転となる状態
レベル3については、2020年4月に改正道路交通法が施行されて走行が可能になり、2021年3月にホンダがレジェンドを100台限定のリースで発売しました。高速道路の渋滞時に限ってシステムが運転を担う機能で、市販車としては世界初です。その後、日本の市販車でレベル3に対応した車種は続いていません。
レベル4は2023年4月の改正道路交通法で「特定自動運行」として制度化され、都道府県公安委員会の許可を受けた事業者が運行できるようになりました。同年5月には福井県永平寺町で全国初の運行が始まっています。現在運行されているのは、永平寺町、東京都大田区の羽田、北海道上士幌町、長野県塩尻市、千葉県柏市など、区間を限った小型・中型車両によるサービスです。自家用車は対象外で、個人が自分の車で使えるのは現時点ではレベル2までになります。
レベル4が広がった社会では、路線バスやタクシーの無人運行が現実的な選択肢になります。スマートフォンから配車を依頼し、会話なしで送迎が完了する移動も想定されています。自動運転技術は、交通事故の削減や、ドライバー不足が深刻な物流の効率化にも貢献します。
中古車でプロパイロット搭載車を選ぶときの確認点
プロパイロットは2016年から搭載が始まっているため、中古車市場にも搭載車が多く流通しています。新車より価格を抑えて運転支援を手に入れられる反面、車両情報の見方には注意が必要です。
最初に確認したいのは、標準装備かメーカーオプションかという点です。ノートのように全グレードでメーカーオプション扱いだった車種では、同じ年式・同じグレードでも装着の有無が分かれます。カタログに載っているからといって、目の前の個体に付いているとは限りません。車両情報の装備欄か、現車のステアリングにプロパイロットのスイッチがあるかで判断できます。
次に見ておきたいのが世代です。ナビリンク機能の有無で高速道路での快適さは変わります。制限速度の変化に合わせて設定速度が切り替わる機能は、速度規制が細かく変わる区間を日常的に走る人ほど恩恵が大きくなります。年式が新しいほど高機能とは限らず、エクストレイルのようにマイナーチェンジでナビリンク機能が外れたケースもあるため、改良前のモデルがあえて選ばれる場面もあります。
プロパイロット2.0を目当てにする場合は、対象がさらに絞られます。セレナは一部グレードのみ、スカイラインはハイブリッドモデルのみという条件があり、グレード名まで指定して探す必要があります。試乗できるのであれば、高速道路で実際にセットしてみて、車間距離の取り方やステアリングの補正量が自分の感覚に合うかを確かめておくと、購入後のギャップが小さくなります。
日産の技術「プロパイロット」は未来の自動運転に繋がる技術
エクストレイルをはじめとする多くの車種に搭載されたプロパイロットは、自動運転レベル2の運転支援技術です。日産はこの技術の延長線上で、さらに高度な支援と自動運転サービスの両方を進めています。
開発が進むのが「次世代プロパイロット」です。日産は2025年12月、英国のAI企業であるWayveと協業契約を締結し、同社のソフトウェア「Wayve AI Driver」と、次世代LiDARを活用した日産の「Ground Truth Perception」技術を組み合わせたシステムを発表しました。最初の搭載モデルは2027年度に国内で発売されます。支援の対象を高速道路から市街地へ広げ、出発地から目的地までを通して支援することを目指す内容です。
もう一方の軸が、ドライバーのいない移動サービスです。日産は横浜市のみなとみらい、桜木町、関内を含むエリアで自動運転モビリティサービスの実証実験を行っており、2026年10月からは一般モニターが参加する形で運行台数を拡大しています。2027年度には、都心部でドライバーレスのレベル4サービスを事業として開始する計画です。
レベル4の車が普及した未来は、目的地まで運んでもらうことが当たり前になり、車が自ら駐車スペースへ戻り、スマートフォンで呼べば指定の場所へ迎えに来る生活を意味します。そのとき「マニュアル車」という言葉は、トランスミッションの違いではなく「ドライバー自ら運転できる車」という意味に置き換わっているかもしれません。自分でハンドルを握りたいときはサーキットのような専用の場所へ出向くようになり、スポーツタイプの車は今よりもさらに趣味性の高い存在になる可能性があります。
残された課題もはっきりしています。雪道や豪雨、濃霧といった路面と視界が崩れる条件で、センサーがどこまで安定して周囲を把握できるか。工事や事故で日々変わる道路状況にどう追従するか。この2点が解けていくほど、支援技術が使える場面は広がります。今はまだ、高速道路でステアリングを保持しながら使う技術です。その前提を守って使うことが、結果としてこの技術を最も安全に生かす方法になります。