世界一の認知度!BMWのキドニーグリルの意味や歴史
BMWと言えば、その特徴的なフロントグリルです。一目で記憶に残る個性的なデザインは「キドニーグリル」と呼ばれていて、1933年から採用が始まり、今ではBMWの象徴となっています。このキドニーグリルは、自動車デザインの歴史において最も認知度が高いアイコンの一つです。
キドニーグリルは人気の反面、「豚の鼻」と言われるなど否定的な意見もありましたが、BMWのブランドを世界に確立させたデザインアイコンであることに間違いはありません。本記事では、BMWを象徴する「キドニーグリル」の意味や由来、歴史、そしてデザインの進化などを紹介します。
豚の鼻にも見えるBMWのキドニーグリルは「腎臓」を意味
キドニーグリルとは、BMWの車種へ一貫して採用されているフロントグリルの総称です。左右に2つ並んだフロントグリル(ラジエーターグリルとも呼ばれるエンジンを冷却するためのパーツ)が、人間の腎臓(じんぞう)に見えることから、腎臓を英語にした「kidney」を取り「キドニーグリル」と呼ばれるようになりました。この名称は、BMWの長い歴史の中で確立された、デザインの大きな特徴を表しています。
海外でも同様に「Twin kidney grille」と呼ばれて親しまれています。BMWのフロントグリルが何故「腎臓」を意味し、このデザインに採用が至ったのかは、公式の説明がないため正確には不明です。しかし、このデザインこそがBMWの顔としての役割を果たし、ブランドを際立たせています。
キドニーグリルは個性的なデザインで「豚の鼻」などと呼ばれるなど賛否両論ありますが、アウディ、メルセデス・ベンツと共にドイツのビッグ3として数えられることから、世界で確かな人気を獲得しています。BMWはデザインの大胆な変化を恐れず、常に革新を続けていることが、世界で認められる大きな理由です。
BMWはキドニーグリルのほかにも、後部のピラーの部分で曲線に跳ね上がったデザイン「ホフマイスターキンク」といった象徴的な意匠デザインが多い自動車メーカーとしても有名です。これらのデザイン要素の組み合わせが、BMWのブランドを構築しています。
キドニーグリルは1933年にBMWが初めて製造した「BMW303」から採用
BMWは航空機のエンジンメーカーとして1916年にグスタフ・オットーにより設立されました。その後、1923年には初めての2輪自動車「R32」の製造を開始し、自動車メーカーとしての第一歩を踏み出します。そして1933年、BMW初のオリジナル4輪自動車「BMW303」で、このキドニーグリルが初めて採用されました。
BMW303はBMW初の6気筒エンジンを搭載した車で、排気量1.175cc、最大出力30PS/3500rpm、総生産台数は2,300台でした。この記念すべきモデルで採用されたキドニーグリルは、縦長で細いデザインが特徴的でした。
その後BMWの全車種にキドニーグリルが採用され続け、現在に至ります。約80年以上も変わらない基本デザインを採用することで、「BMW=キドニーグリル」と認知されるようになり、BMWのブランド化に大きく貢献してきました。キドニーグリルのデザインは、時代とともに形状を変化させながらも、核となる個性を守り続けています。
フォルクスワーゲンのワッペングリル、アウディのシングルフレームグリル、レクサスのスピンドルグリルなど各自動車メーカーが採用するグリルの中で、キドニーグリルは最も長い歴史を持つアイコンの一つです。この歴史的な重みが、キドニーグリルの価値を高めています。
これからのキドニーグリルはアクティブ・エア・ストリームを搭載
キドニーグリルは、時代により大きさが変わりながらも基本を守る伝統的なグリルですが、機能面でも進化を遂げています。2015年10月7日から販売されたBMWのフラッグシップセダン「7シリーズ」で、キドニーグリルは大きな転換期を迎えました。
通常時は空気抵抗を抑えるために閉まり、エンジンの冷却が必要な時だけ自動的に開く、開閉式のキドニーグリルが採用されました。これは「アクティブ・エア・ストリーム」と呼ばれ、燃費性能と冷却性能を両立させる機能で、キドニーグリルの進化が感じられる特徴となっています。この新機能は、デザインと機能を融合させるBMWの姿勢を示しています。
このアクティブ・エア・ストリームは、新型5シリーズなどの上級モデルにも順次搭載されています。今後、モデルチェンジや新型車投入の際に、多くのモデルでアクティブ・エア・ストリームを搭載した新しいキドニーグリルを採用することとなるでしょう。キドニーグリルは、伝統を守りつつも最新の技術で進化を続けています。
EV(電気自動車)はエンジンを冷やす必要がないためキドニーグリルも新たなデザインに変更される可能性がある
2014年4月に日本で販売された「i3」はBMW初の量産電気自動車です。航続距離や充電時間は時代とともに進化していますが、このi3はBMWの電動化の方向性を示しました。i3のキドニーグリルは、他のBMWと違い縦のラインがなく、エンジンを冷却するための空間もありません。
電気自動車(EV)はモーターで走行するためエンジンを搭載していないため、本来の目的であるエンジンを冷やすためのキドニーグリルを必要としません。そのため、i3のキドニーグリルは、冷却の必要性がない「クローズドタイプ」のデザインを採用しています。枠をブルー、中をブラックで統一して、モダンな個性を主張しています。
BMWは電動化を加速しており、2025年までに多数の完全EVを展開する予定です。ガソリンモデルがEVモデルに置き換わるタイミングで、キドニーグリルも機能的な制約から解放され、新たなデザインに変更される可能性が高まっています。EV時代のキドニーグリルの進化に注目が集まります。
フランクフルトモーターショー2019で発表された「コンセプト4」では大型化されたキドニーグリルが話題に
フランクフルトモーターショー2019で4シリーズのコンセプトカーとして登場した「コンセプト4」は、キドニーグリルの大型化で大きな話題を呼びました。コンセプト4のキドニーグリルは格子状のデザインを採用し、従来よりも縦長に大型化しています。
縦長に大型化されたキドニーグリルは、ダイナミックで個性的なフロントエンドに刷新されました。このデザインは、その後の4シリーズやM3、M4といったモデルに採用され、賛否両論を巻き起こしながらも、BMWのデザインの方向性を明確に示しました。キドニーグリルの大型化は、BMWの象徴をより強調する戦略です。
BMWのアイデンティティ「キドニーグリル」の進化に注目
まさにBMWの顔と呼べるキドニーグリルは、エンジンを冷却するという本来の役割から、BMWのアイデンティティへ進化を遂げました。これは、エンジンを搭載しない電気自動車にもキドニーグリルを採用していることからも確認できます。
時代を経ても基本デザインは変わらないキドニーグリルは、電動自動車への移行という大きな波により、新たな進化を遂げようとしています。縦長の大型化や、EVにおけるクローズドなデザインなど、今後どのような形に進化するのか、BMWの象徴であるキドニーグリルの動向に注目しましょう。