ハイエース海外のモデルチェンジ

海外向けハイエース300系のモデルチェンジ情報:日本発売はグランエースのみ 2024年に終了

海外向けハイエースは日本で買えるのか。答えは新車では不可で、H300系ベースのグランエースも2024年に生産終了しました。2.8Lディーゼルと3.5L V6、コミューター・バン・ツーリズムの構成、2025年の豪州仕様大幅改良までまとめています。

海外向けハイエース(H300系)の現在 7年目も現行として販売継続、日本ではグランエースが2024年に終了

2019年2月にフィリピンで世界初披露された海外向けハイエース(H300系)は、その後もフルモデルチェンジや生産終了を迎えることなく、アジア・中東・アフリカ・オセアニア・中南米などで現行モデルとして販売が続いています。日本市場との関係でいえば、H300系そのものが「ハイエース」の名で正規販売されたことは一度もありません。ただし、そのショートボディを土台にした派生モデル「グランエース」が2019年12月から日本で売られており、こちらは2024年4月に生産を終えました。

したがって、日本で新車として買える海外向けハイエースは存在しません。中身が最も近かったグランエースも、すでに新車では手に入らなくなっています。ここからは、2019年の発表から現在までにH300系がたどった経緯を、直近の動きからさかのぼって見ていきます。

2026年の状況 H300系は継続、日本向け次期型はより短いボンネットで登場する見込み

H300系は生産・販売とも継続しており、生産終了や後継モデルに関する公式発表は出ていません。2019年の登場から7年が経ちますが、この種の商用バンとしてはむしろ標準的なライフサイクルの途中といえます。基本のパワートレインも、2.8Lディーゼルの1GD-FTVと3.5L V6ガソリンの7GR-FKSという発表時の構成が維持されています。

一方、日本向けの次期ハイエースについては動きが見えてきました。後述するジャパンモビリティショー2025のコンセプトが示すとおり、キャブオーバーからセミボンネットへ移行する方向は固まっているとみられます。ただしH300系をそのまま持ち込む形にはならず、ボンネットをH300系より短くした日本専用の設計になる見込みです。全幅1,950mmというH300系のサイズは日本の市街地や現場では扱いにくく、4ナンバー枠を維持したいという国内ユーザーの事情とも噛み合わないため、この使い分けは合理的だと考えます。登場時期は2026年後半から2027年前半が有力です。

電動化については、パワートレインの中心はハイブリッドになる方向とみられます。2023年に公開されたBEVコンセプトの流れは、商用バン市場の電動化ペースが想定より緩やかであることを踏まえ、いったん見送られる公算が大きい状況です。なお日本の200系ハイエースも2026年モデルで8インチディスプレイオーディオと7インチデジタルメーターの全車標準化などを受けていますが、その詳細は200系側で扱います。

2025年8月、豪州仕様が大幅改良 電動パワステ化でレーントレーシングアシストを追加

H300系にとって、発表以降で最も内容の濃い改良が2025年8月にオーストラリアで実施されました。目玉は油圧式から電動パワーステアリングへの変更です。これにより、アダプティブクルーズコントロール作動時に車線中央を維持するレーントレーシングアシストが使えるようになりました。従来のブレーキ制御による車線維持から、実際にステアリングで支えるタイプへ質が変わったことになります。

安全装備はほかにも、後方から接近する車両や自転車を検知してドアを開けないよう警告するセーフエグジットアシスト、アダプティブクルーズコントロール作動中にドライバーの無反応を検知するとハザードを点灯させて安全に停車させるドライバー異常時対応システムを追加。アダプティブクルーズコントロールは全車標準となり、MT車は高速域のみ、AT車は全車速で作動します。エアバッグは前席センターエアバッグの追加で標準8個、2列シートのクルーバンでは10個に増えました。

装備面では、メーター内のディスプレイが4.2インチから7.0インチのデジタルメーターへ拡大され、AT車には電子パーキングブレーキを採用。エアコンの冷媒も変更されています。これらに伴い価格は全車一律でA$2,994引き上げられ、A$51,880(LWB・MT)からA$63,190(SLWB)のレンジとなりました。納車は2025年8月下旬から開始されています。

エンジンは2.8Lディーゼルの1機種で、最高出力176hp、最大トルクはMTが420Nm、ATが450Nm。トランスミッションは6速MTと6速ATで、駆動方式は後輪駆動です。ボディはLWBとSLWBの2種類が用意されます。日本市場に導入される見込みはありませんが、H300系という車がいまどの水準まで来ているかを知るうえでは分かりやすい改良内容です。

2024年、グランエースが生産終了 H300系ベースの日本向けモデルが消滅

H300系のショートボディをベースに日本向けへ仕立てられたグランエースは、2024年4月に生産を終了しました。トヨタがそれを公表したのは半年後の2024年10月23日で、同時に販売も終了しています。発売から約4年半、大きな改良をほとんど受けないままの幕引きでした。

グランエースは、アルファードやヴェルファイアより大きなフルサイズワゴンとして企画されたモデルです。グレードは3列6人乗りで2列目にエグゼクティブパワーシートを備える「Premium」と、4列8人乗りの「G」の2本立て。エンジンは1GD-FTV型の2.8Lディーゼルで、価格は600万円を超えました。日本での年間販売目標は600台という、当初から限定的な規模の設定です。

終了の背景として大きかったのは、2023年にアルファードとヴェルファイアが40系へフルモデルチェンジし、レクサスLMも日本導入されて、上級多人数乗車モデルの選択肢が一気に厚くなったことでしょう。全幅1.97mというサイズと地味な外観に対して600万円超という価格設定は、この競合環境では説明が難しくなりました。直接の後継は設定されておらず、需要はアルファード/ヴェルファイアが吸収する形になっています。

この結果、H300系の中身を日本の正規ルートで手に入れる手段はなくなりました。海外向けハイエースは日本では売られないと語られがちですが、実際には2019年12月から2024年4月までの約4年半だけ、グランエースという形で買える期間が存在していたことになります。

2024年1月、1GD型ディーゼルの認証不正でハイエースが出荷停止 3月4日に生産再開

2024年1月29日、豊田自動織機は特別調査委員会の報告を受け、トヨタから開発を受託していた自動車用ディーゼルエンジン3機種の出力試験に不正があったと公表しました。量産用と異なるECUを使用して数値のばらつきを抑え、報告していたというものです。

対象エンジンを搭載する車両はグローバルで10車種、うち日本国内向けが6車種。H300系・200系の双方が使う1GD型が含まれ、ハイエースとグランエースが出荷停止となりました。ほかにランドクルーザー300、ハイラックス、ダイナ、日野デュトロ、マツダ・ボンゴブローニイバンなども対象です。ただし量産品の検証で基準を満たしていることは確認されており、使用中の車両を止める必要はないとされました。

その後、2024年2月27日に国土交通省が道路運送車両法の基準適合を確認して出荷停止指示を解除。トヨタは3月4日から、いなべ第1ラインと岐阜車体第1ラインの稼働を再開し、ハイエース、エース、グランエース、および同一ラインの救急車の生産が戻りました。約1か月強の停止で、H300系の供給にも一時的な影響が出た事案です。

2023年10月、H300系ベースの「グローバル ハイエース BEVコンセプト」を公開

ジャパンモビリティショー2023において、トヨタ車体がH300系をベースとした電気自動車のコンセプト「グローバル ハイエース BEVコンセプト」を出展しました。ベースは標準ルーフのボディで、全長5,265mm・全幅1,950mm・全高1,990mm・ホイールベース3,210mm。コンセプトはフロントまわりの意匠が量産車と異なり、全長は15mm伸びて5,280mmとなっています。荷室は幅1,715mm・高さ1,270mmを確保していました。

想定用途として示されたのは貨物輸送、観光客の送迎、そして救急車です。H300系は実際にマレーシア国防省が救急車として採用した実績があり、この提案はその延長線上にあるものでした。ただし、このコンセプトはその後市販化されておらず、商用バン市場の電動化が想定より緩やかに進んでいる状況を踏まえると、当面はハイブリッドが現実解になる見込みです。

2019年、フィリピンで発売開始 同年12月にはグランエースとして日本にも上陸

H300系の販売は、2019年2月18日の世界初披露からほどなくして始まりました。トヨタモーターフィリピンが2019年3月5日に発売を開始し、これがH300系にとって世界最初の市場となります。同年3月25日開幕のバンコクモーターショー2019にも出展され、そこから2020年にかけて、トヨタの計画どおり新興国を中心とした国や地域へ順次投入されていきました。オーストラリアやタイ、台湾、中東、アフリカ、中南米などが主な販売地域です。

そして2019年10月、東京モーターショー2019のトヨタ車体ブースで「グランエース」が初公開されます。H300系のショート(全長5,265mm)をベースに、日本向けの高級送迎ワゴンとして仕立て直したモデルで、同年12月に発売されました。日本の道路事情に合わないとされたロング(全長5,915mm)は導入されず、マイクロバス用途として海外専用のままでした。

車名としてのハイエースが日本に入らなかったのは事実ですが、車体そのものは形を変えて日本にも来ていた、というのが実際の経緯です。

ハイエース海外向けモデルの新型を発表 アジア地域など新興国を中心に販売開始

海外向けハイエースがフィリピンで世界初公開。
ハイエースは2019年にフルモデルチェンジの噂があり、2019年2月に入りフェイスリフトした新型ハイエースの目撃情報がSNSなどに投稿されていました。

この目撃情報の中には「港に向かって輸送していた」などという情報もあり、新型ハイエースではなく海外向けモデルなのではと考えられていましたが、トヨタ公式から「海外向けのハイエースをフルモデルチェンジ」したという発表があり、日本の新型ハイエースではないことが確定しました。

日本では従来の200系ハイエースの継続販売が決まり、海外向けのH300系ハイエースはどのようなスペックになっているのでしょうか。エクステリア・インテリア・諸元・販売価格や燃費など、海外向けハイエースのモデルチェンジ情報を紹介します。

海外向けH300系ハイエースはキャブオーバーからセミボンネットへエンジンの位置を変更

2019年2月にフィリピンで世界初公開した海外向けハイエース(H300系)は、同年3月にフィリピンで発売されました。

海外向けのハイエースが2019年2月18日にフルモデルチェンジを発表、東南アジアのフィリピンでワールドプレミアしました。
ハイエースが世界で人気になった理由でもあるキャブオーバー式レイアウトをセミボンネット式レイアウトにエンジンの位置を変更したのが最大の変更点です。
エンジンを下に置くキャブオーバーは室内を広く使えること、大きなボディのハイエースでもボンネットが短くなることで、視野が広く見切りの良い視界を確保できることでした。

しかしボンネットにエンジンがないため衝突安全性に問題があり、現在では世界を見渡してもキャブオーバーを採用する車種はごく僅かになっています。
H300系ハイエースも安全な車に進化するためキャブオーバー式からセミボンネット式へ移行しました。

また、H300系はボディ骨格の見直しによって剛性を高めており、TNGAの設計思想に基づいて刷新された専用プラットフォームとトヨタセーフティセンスを採用。厳しい欧州の安全基準「Euro NCAP」の5スター相当という、クラス最高レベルの安全性能を獲得しています。ここでいう専用プラットフォームは、乗用車用のTNGAプラットフォームそのものではなく、商用バン向けに設計されたものである点に注意が必要です。

アジア地域などの新興国は未舗装路も多く、剛性の高いボディや安全性の確保は急務と言えるため、H300系ハイエースの価値は従来モデルよりもさらに高いものになりました。実際、この安全性能の高さが、のちに救急車や公共交通用途で採用が広がる下地にもなっています。

海外向けH300系ハイエースはプロボックスのような信頼性を感じるエクステリア

H300系ハイエースは「働くクルマ」として設定され信頼性や安全性の高さが魅力

海外向けのH300系ハイエースは働く車に重点を置いたスタイリングで、日本で販売する商用車の「プロボックス」や「サクシード」をミニバンにしたようなエクステリアが特徴です。

新興国では物流や観光客を乗せる乗り物として人気があるため、家庭用乗用車として購入する方は殆どいません。
そのため押し出しの強い迫力のある外観というよりも、飛び石などに強く交換が容易な樹脂製のフロント/リヤバンパーを採用し信頼性をアピールするエクステリアになっています。

海外向けH300系ハイエースと200系ハイエースのボディサイズ比較
ショート・標準ルーフ ロング・ハイルーフ
全長 5,265mm(200系から+570mm) 5,915mm(200系から+535mm)
全幅 1,950mm(200系から+255mm) 1,950mm(200系から+70mm)
全高 1,990mm(200系から+10mm) 2,280mm(200系から-5mm)
ホイールベース 3,210mm(200系から+640mm) 3,860mm(200系から+750mm)

H300系ハイエースのボディ形状は「ショートボディ・標準ルーフ」と「ロングボディ・ハイルーフ」の2つを用意、乗客を乗せるバスなどに使う最大17人乗りの「コミューター」、荷物を運ぶのに便利な「バン」、快適装備と専用インテリアを備えた「ツーリズム」グレードを設定しています。

全幅1,950mmという寸法は、200系の標準ボディより255mmも広い数字です。海外の幹線道路や送迎用途では利点になりますが、日本の狭い現場や住宅街では扱いづらく、日本向け次期型がH300系をそのまま使わずボンネットの短い専用設計を選ぶ理由も、この一点に集約されます。

目的により「コミューター」「バン」「ツーリズム」を選べる海外向けH300系ハイエースのインテリア

最大17名乗りハイエースコミューターの内装

海外向けH300系ハイエースは使用用途により車内のレイアウトを変更できます。
コミューターは乗員10名~17名のバスのようなレイアウトになっています。交通網の整備がされていない新興国では車移動が主流のため、住民の足として活躍します。

荷物を載せるのに便利なハイエースバンの内装

バンは運転席と助手席のみのレイアウトもあり、車内を広く使えるのが特徴です。2名~6名乗りで荷物を沢山載せられる働く車で、アジア地域に多い移動販売などにも使えるため、実際にこの構成が各国の物流を支える中心になっています。

専用インテリアと快適装備が揃うハイエースツーリズムの内装

ツーリズムは快適装備が揃い専用の内装を持つ豪華な10名~14名乗れるレイアウトです。海外から来た観光目的の人を乗せるため、コミューターほど人は載せず車内にも気を使いたい方に向いたレイアウトになります。
使い方により最適な車内レイアウトを選べるのはハイエース最大の魅力です。この考え方は日本向け次期型のコンセプトにも受け継がれています。

海外向けH300系ハイエースは2.8Lディーゼルと3.5Lガソリンを設定

海外向けハイエースのパワートレインは2.8Lの直列4気筒ディーゼルエンジン「1GD型」と3.5LのV型6気筒ガソリンエンジン「7GR型」の2つを用意しています。この構成は2019年の発表以来変わっておらず、現在も継続しています。

ディーゼルエンジンの1GD型は最高出力177ps・最大トルク45.9kgmで、ガソリンエンジンの7GR型は最高出力280ps、最大トルク37.2kgmを発生します。
ツーリズムとバンのトランスミッションはATとMTの両方を用意しています。
燃費は仕様や仕向地で大きく変わるため一概には言えませんが、発表当時はディーゼルモデルで13.5km/L前後が目安とされていました。

海外向けH300系ハイエースの主なスペック
ディーゼル 1GD-FTV型 2.8L 直列4気筒ターボ/177ps・45.9kgm
ガソリン 7GR-FKS型 3.5L V型6気筒/280ps・37.2kgm
トランスミッション MT/AT(仕向地により6速MT・6速AT)
駆動方式 後輪駆動
ボディタイプ ショート・標準ルーフ/ロング・ハイルーフ
用途別グレード コミューター(10〜17名)/バン(2〜6名)/ツーリズム(10〜14名)
安全性能 Euro NCAP 5スター相当、トヨタセーフティセンス搭載
世界初披露 2019年2月18日(フィリピン)
発売 2019年3月5日にフィリピンで発売、2020年にかけて新興国へ順次拡大

H300系ハイエースは2019年3月のフィリピンを皮切りに世界各国へ順次デリバリー 日本は200系ハイエースを継続販売

H300系ハイエースは2019年3月に東南アジアのフィリピンで発売され、そこから2020年にかけて、その他の新興国を中心に順次販売網を広げていきました。
日本では既存の200系ハイエースを継続販売する方針が示されたため、海外向けハイエースを日本で新車として購入することはできません。ただし前述のとおり、H300系のショートボディをベースにしたグランエースが2019年12月から2024年4月まで日本で販売されており、この車体を日本で買える唯一の機会となっていました。

日本のハイエースもフルモデルチェンジが迫っており、2025年10月からのジャパンモビリティショー2025では、次期型のコンセプトモデル「ハイエースコンセプト」が公開されました。
エンジンレイアウトは海外向けモデルと同じセミボンネットを採用していますが、ボンネットはH300系より明らかに短く、日本の道路事情に合わせた別設計であることがうかがえます。展示されたのはロールーフのバン仕様と、ハイルーフのリモート診療車仕様の2台。ロールーフは4ナンバー枠に収まるサイズ、ハイルーフはH300系のスーパーロングと同等とされています。乗用車やキャンピングカーとしての需要もある日本では、商用車とは別に華やかな仕様が用意されるかもしれません。

  • ハイエースコンセプト
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日本のハイエースは海外向けハイエースとは違う独自路線でモデルチェンジ

2019年2月、アジア地域などを中心にした新興国向けのハイエース(H300系)がワールドプレミアしました。このモデルは日本には導入されないことがアナウンスされ、日本のハイエースは独自路線を進むことになりました。その方針は7年経ったいまも変わっておらず、H300系は海外専売のまま現行モデルとして販売が続いています。

日本の次期ハイエースも、エンジンを下に置くキャブオーバー式から、エンジンをボンネットの中に収めるセミボンネット式へ変更されます。これは安全基準に対応するための構造で、H300系が先に採った道と同じ方向です。ただし日本向けはH300系よりボンネットを短く抑え、全幅も日本の現場に合わせた設計になる見込みで、両者は「同じ思想の別物」という関係に落ち着きそうです。

なお、H300系の車体を日本で正規に買えたのは、グランエースが販売されていた2019年12月から2024年4月までの約4年半に限られます。現在この車体を日本で新車として入手する手段はなく、H300系の動向は引き続き海外市場のニュースとして追いかけることになります。