グランエースのモデルチェンジ

グランエースは2024年4月に生産終了 モデルチェンジせず約5年・累計約3000台で廃止 後継は設定されず

グランエースはなぜ短命に終わったのか。価格の高さと用途の中途半端さで販売が伸び悩み、2024年に生産終了しました。Premium6人乗りとG8人乗りの装備、2.8Lディーゼル、海外名グランビア/マジェスティまで振り返ります。

トヨタ・グランエースは2024年4月に生産終了 モデルチェンジせず約5年で幕を閉じた大型高級ワゴン

トヨタのグランエースは、2019年12月に発売された全長5mを超えるフルサイズの高級ワゴンです。海外で商用車として売られるH300型ハイエース(セミボンネット)をベースに、ラグジュアリーな乗用ワゴンへ仕立てた一台で、「Premium」と「G」の2グレードが設定されていました。アルファードやヴェルファイアを上回る大きさと3列目までの快適性が話題を集めました。

しかしグランエースは、一度もフルモデルチェンジを受けることなく、2024年4月に生産を終えました。トヨタは2024年10月23日に生産終了・販売終了を正式発表しています。約5年の販売期間で、累計販売はおよそ3000台にとどまりました。後継は設定されず、上級ミニバンの役割は、2023年に40系へフルモデルチェンジしたアルファード/ヴェルファイアや、日本導入されたレクサスLMが担っています。

グランエースは2024年4月で生産終了 モデルチェンジも4WD追加もないまま終了

グランエースは、アルファードやヴェルファイアを超えるラグジュアリーなフルサイズワゴンとして2019年に登場しました。3列6人乗りと4列8人乗りという豪華なパッケージングが特徴でしたが、改良をほとんど受けないまま生産を終えています。

販売が伸び悩んだ背景には、価格と用途の中途半端さがありました。上級のPremiumは最終的に672万1000円に達し、送迎車として定番のハイエース グランドキャビン(約374万円)を大きく上回ります。マイクロバス的な性格で一般ユーザーには大きすぎる一方、送迎用途には車内が使いにくいという評価もありました。発表時の販売目標は月平均50台でしたが、実績はそれを下回る水準で推移。2023年にアルファード/ヴェルファイアが40系へ刷新され、レクサスLMも加わるなど上級多人数車が充実するなかで、グランエースは役目を終えた格好です。マイナーチェンジや4WD追加を期待する声もありましたが、いずれも実現しませんでした。

2023年10月の一部改良で8インチディスプレイオーディオを標準装備

グランエースは2023年10月に一部改良を受け、8インチのコネクティッドナビゲーション対応ディスプレイオーディオへと切り替わりました。グレード体系やボディカラー、内外装に変更はありません。価格は22万1000円上昇し、Gグレードが642万1000円、Premiumグレードが672万1000円となりました。

2021年6月の初改良で可倒式ヘッドレストと助手席パワーシートスイッチを追加

2021年の一部改良で助手席パワーシートスイッチを追加し利便性を向上

発売後初の一部改良は2021年6月28日に実施されました。後席からの視界を確保する助手席可倒式ヘッドレストを追加し、助手席の運転席側上部にパワーシートスイッチを設けることで、ドライバーが助手席を調整しやすくなりました。内外装や安全装備に変更はなく、価格は620万〜650万円で据え置かれました。

グランエースはどんな車だったか 迫力の内外装と上質な走り

グランエースは2019年12月16日に発売された

グランエースは東京モーターショー2019で公開され、2019年11月25日に発表、12月16日に発売されました。ここでは、その内外装や走りといった中身を振り返ります。

エクステリアは華やかで存在感抜群のセミボンネット

グランエースのエクステリア

エクステリアはセミボンネット形状で、巨大なラジエーターグリルがヘッドランプと一体化した迫力あるフロントマスクが特徴です。車名の「グラン(大きな、偉大な)」を体現した堂々たる佇まいで、メッキ加飾で押し出し感を強調しています。

迫力のあるフロントマスク

LEDデイタイムランニングランプはヘッドランプに突き刺さるように配置され、プロジェクター式2眼LEDヘッドランプはクロム加飾フレームで囲まれます。金属調の加飾モールはリヤバンパー下部まで連続し、低重心で雄々しい印象を与えます。

大きなスライドドアで乗り降りしやすい

どこから見ても高級感があふれている

リヤマスクもフロント同様に迫力がある

リヤも存在感のあるLEDコンビネーションランプを高い位置に配し、迫力と風格を演出しています。全長5mを超えるフルサイズワゴンで、センチュリークラスの堂々たるサイズです。

ラグジュアリーなアルミホイール

足元は17インチで、金属調塗装のスポークデザインアルミホイールが高級感を高めます。ワイドボディながら最小回転半径5.6mを実現し、見た目に反して取り回しやすさも備えていました。

  • ブラック
  • ホワイトパールクリスタルシャイン(オプション色 33,000円高)
  • グレーメタリック
  • シルバーメタリック

ボディカラーは、ブラック、ホワイトパールクリスタルシャイン(オプション色 33,000円高)、グレーメタリック、シルバーメタリックの4色。ベーシックな色を中心とした、飽きのこない高級感が持ち味でした。

グランエースのボディサイズ
全長 5,300mm
全幅 1,970mm
全高 1,990mm
ホイールベース 3,210mm
室内長 3,290mm
室内幅 1,735mm
室内高 1,290mm

ゆったりとした室内空間 Premiumは6人乗り、Gは8人乗り

広々としてゆとりのある室内空間

グランエースの室内は広々として、ゆったりくつろげる空間でした。「Premium」は6人乗りの3列シートで、2列目と3列目に専用のエグゼクティブパワーシートを採用。ロングスライドやパワーリクライニング、パワーオットマン、温熱シート、格納式テーブルまで備え、車内とは思えない快適さを実現していました。

メッキ調・木目調加飾の上質なコックピット

乗降性にも配慮し、幅広のステップを低く設置、開口幅は1,000mm。ステップランプ付きで夜間の乗り降りも安心でした。2列目は手動レバーでリクライニングやスライドを素早く操作でき、3列目へのアクセスも良好です。

エグゼクティブパワーシートの操作ボタン

「G」は8人乗りの4列シート。エグゼクティブパワーシートは2列目のみで、3列目はレバー操作のリラックスキャプテンシート、4列目は6:4分割チップアップシートとし、状況に応じて荷室を広げられました。

ロングドライブでも疲れにくいシート

Gは4列8人乗り

グランエースのコックピット

黒基調のインストルメントパネルは低くワイドに構え、金属調加飾の空調吹き出し口や助手席の木目調加飾で上質感を演出。本革巻きステアリングは木目調加飾と組み合わされ、ステアリングスイッチでメーターやオーディオを操作できました。

前後独立温度コントロール機能つきオートエアコン

オートエアコンは前後独立温度コントロールに対応し、ダイヤル式で操作性も良好。

収納に便利なセンターコンソールボックス

運転席と助手席の間には、カップホルダー2個を備えたセンターコンソールボックスを設置。

優しい光を放つLEDサイドカラーイルミネーション

スライドドアは1,000mmの開口幅を確保。木目調加飾がフロントシート後部からサイドリムへ続き、LEDサイドカラーイルミネーションが温かみのある光を添えました。全車にスマートエントリー&プッシュスタートを採用し、予約操作しておけば近づくだけでスライドドアが開く機能も備えていました(予約有効時間は約20分)。

2.8Lディーゼルターボで上質な乗り心地 静粛性も高い

パワートレインは、最高出力130kW(177PS)/3,400rpm、最大トルク450Nm(46.1kgfm)/1,600〜2,400rpmを発揮する2.8L直噴ディーゼルターボ(1GD型)に、6速オートマチック(6 Super ECT)を組み合わせます。駆動方式は後輪駆動の2WDで、4WDは設定されませんでした。

エンジンが車内空間から独立しているため静粛性に優れ、高密度遮音層や合わせガラスで遮音性を追求。アイドリングストップや、低燃費走行時も車内温度を保つ蓄冷エバポレーターも備えていました。

安全装備はトヨタ・セーフティ・センスを全車標準装備

グランエースは予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」を全グレードに標準装備していました。主な機能は次のとおりです。

トヨタ・セーフティ・センスの主な機能

  • プリクラッシュセーフティ
  • レーンディパーチャーアラート
  • レーダークルーズコントロール
  • オートマチックハイビーム
  • ロードサインアシスト

このほか、パノラミックビューモニター、先行車発進告知機能、ブラインドスポットモニター、リヤクロストラフィックオートブレーキ、インテリジェントクリアランスソナーなど、走行から駐車までを支える装備を全車に用意。エアバッグや後席シートベルト非着用警告灯、カメラ洗浄機能付きデジタルインナーミラーなども備えていました。

DCMとディスプレイオーディオを備えたコネクティッドカー

グランエースはディスプレイオーディオとDCM(専用通信機)を標準装備し、スマートフォンとの連携を強化。ナビやオーディオ、メッセージ、通話などを車内で利用できました(当初はSDL対応、2023年の改良で8インチのコネクティッドナビ対応版へ刷新)。テレビとApple CarPlay/Android Autoのセットや、T-Connectナビキットなどはオプション・販売店装着オプションでした。

登場の経緯と海外名 「ハイエース改名」の噂はどう決着したか

海外では「グランビア」「マジェスティ」の名で展開された

グランエースは、海外で販売される高級ミニバンと基本を共有しています。台湾やオーストラリアでは「グランビア」、タイでは「マジェスティ」の車名で、いずれもH300型ハイエースをベースとしたモデルです。日本仕様がグランエースにあたり、右ハンドルで生産拠点も日本という関係でした。

海外仕様グランビアの姿

トヨタが2018年8月に「グランエース」の商標を出願したことから、登場前には「次期フルモデルチェンジの300系ハイエースが、200系との混同を避けるためにグランエースへ改名するのでは」という噂が広まりました。しかし実際には、この改名は起きていません。グランエースは海外ハイエースをベースとする独立した高級ワゴンとして登場し、日本の商用ハイエースはその後も200系が継続販売されています。300系(H300型)ハイエースは日本に商用車として正規導入されておらず、「ハイエース=キャブオーバー」というスタイルは日本市場で維持されました。

かつて「ミニバン版クラウン」と呼ばれたグランドハイエース

なお「グランドハイエース」は、1999〜2002年に販売された高級ミニバンの車名で、初代グランビアの姉妹車として当時のトヨタ・ミニバンの最上級モデルでした。グランエースも、この上級ミニバンの系譜を現代的に受け継ぐ存在だったといえます。

セミボンネットを採用する欧州の商用車プロエース

グランエースが採用したセミボンネットは、運転席の前にエンジンを置く形式で、衝突時のクラッシャブルゾーンを確保しやすく、静粛性にも優れます。一方、歴代ハイエースが採用してきたキャブオーバーは、運転席の下にエンジンを配し、室内を広く取れるのが利点です。両形式の特徴は次のとおりです。

キャブオーバーとセミボンネットのメリット・デメリット比較
  メリット デメリット
キャブオーバー ・小回りが利く
・室内スペースを広く設計できる
・前方視界が広くなる
・衝突時のダメージが室内に伝わりやすい
・振動や騒音が室内に伝わりやすい
セミボンネット ・衝突時のダメージが分散される
・静粛性が高い
・室内スペースがキャブオーバーよりも狭くなる

グランエースのモデル遍歴

グランエースはトヨタの超大型ミニバンで、海外向けハイエースをベースとする、全長5mを超えるフルサイズワゴンでした。

グランエース GDH303W型/2019年〜2024年

2019年12月、初代グランエースを発売。台湾・オセアニアでは「グランビア」、タイでは「マジェスティ」として販売されました。6人乗りの「Premium」と8人乗りの「G」の2グレード構成です。
2021年6月、一部改良で助手席可倒式ヘッドレストとパワーシートスイッチを追加。
2023年10月、一部改良で8インチのコネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオへ刷新。
2024年4月、生産終了(トヨタは同年10月23日に生産終了・販売終了を正式発表)。モデルチェンジを受けないまま、約5年・累計約3000台で幕を閉じました。

グランエースのモデル遍歴
グランエースのモデル 販売年表
GDH303W型 2019年〜2024年

グランエースは短命に終わったフルサイズ高級ワゴン 独自の存在感を残した一台

グランエースは、海外向けハイエースをベースにセミボンネットのボディをまとった、全長5.3mのフルサイズ高級ワゴンでした。3列目までゆとりのある居住性や、Premiumの独立エグゼクティブシートなど、アルファード/ヴェルファイアを上回る上級の仕立てが魅力で、送迎車としては屈指の存在でした。

一方で、価格の高さと用途の中途半端さから販売は伸び悩み、モデルチェンジや4WD追加を望む声はあったものの実現しませんでした。2023年に40系アルファード/ヴェルファイアが登場し、レクサスLMも加わるなど上級多人数車が充実するなかで、グランエースは2024年4月に生産を終え、約5年・累計およそ3000台という短い歴史を閉じています。後継は設定されませんでしたが、その独自のパッケージングは、トヨタのミニバンラインナップのなかで確かな存在感を残しました。