クーラント(LLC)は長い期間利用ができるエンジンの状態維持に欠かせない液体です
クーラントの正式名称は、LLC(ロング・ライフ・クーラント)と呼ばれるエンジンの冷却水です。ロング・ライフという名称が示す通り、従来の冷却水と比較して、長い期間の利用が可能です。
車を動かす過程で発生するエンジンの熱を下げるために、冷却水を循環させる必要があります。クーラントには、「寿命が長く」「凍結しにくく」「錆を発生させにくい」といった特徴があり、エンジンの冷却システムに欠かせない液体です。
今回は、クーラントの主な成分や交換時期、ご自身で点検する際に注意すべき点やカー用品店に依頼したときの費用などについて詳しく紹介します。
クーラントはエンジンを冷却しオーバーヒートなどの故障を防ぐ重要な役割があります
クーラントの主な役割は、車を動かす過程で発生する大量の熱を持ったエンジンを適正な温度に冷却することです。エンジンの熱を下げることで、オーバーヒートによる故障を防ぎ、適切な運動効率を維持することが可能となります。
エンジン内部では、車を動かす動力を作り出すために燃料の爆発が繰り返され、その過程で大量の熱が発生します。この熱は、冷却効果のあるクーラントをウォーターポンプによってエンジン内部に循環させることで冷やされます。エンジンから熱を受け取ったクーラントは、ラジエーターで冷やされ、再びエンジンの冷却に利用されるというサイクルを繰り返します。
オーバーヒート状態は水温計の針の位置でチェックできます
エンジンが許容範囲以上の熱を帯びてしまう状態をオーバーヒートと言います。オーバーヒートの状態が続くと、エンジンの歪みや焼き付きなどの深刻な故障リスクが高まります。
オーバーヒートの予兆は、運転席のメーターパネルにある水温計で確認できます。水温計の針がH(Hot)マークを越えていなくても、赤いエリアやHマークに近い位置に達していれば、オーバーヒートの危険性が高まっていると判断し、速やかに対処した方がエンジンに深刻なダメージを与えることを避けられます。
クーラントの主成分はエチレングリコールで、不凍性・防錆性などを兼ね備えています
クーラントの主成分は、エチレングリコール(またはプロピレングリコール)であり、他に防錆剤や消泡剤、色素などが含まれています。エチレングリコールを用いることで、液体の凝固点(凍る温度)を下げることができます。
クーラントには、エンジンの熱を下げる冷却効果だけでなく、不凍性(凍りにくい性質)が求められます。特に冬の寒さが厳しい地域では、氷点下20度以下という環境に車が置かれることもあります。液体が凍結して固体化すると体積が膨張します。もしクーラントが凍結してしまうと、膨張によってシリンダーブロック、シリンダーヘッド、ラジエーターなどを破損させてしまう恐れがあるため、凝固点を下げるエチレングリコールの働きが有効です。
また、クーラントには凝固点が下がるだけでなく、沸点(沸騰する温度)も上昇させる成分が含まれています。外気温が高くエンジンの温度が上昇する夏場であっても、クーラントは沸騰することなく冷却効果を発揮し、オーバーヒートを防ぐことができます。
さらに、防錆剤を混ぜ合わせることで、エンジン内部の配管系統や金属部品が錆びたり腐食したりするのを防いでいます。配管系統が錆びてしまうと、クーラントが外部へ漏れ出す原因にもなります。酸化抑制剤などを成分に含ませることで、クーラントの性能維持が長期化します。
クーラントの適切な交換時期は種類によって大きく異なります
従来の冷却水は、数ヶ月の利用で性質が低下していたため、年に数回程度の交換が必要でした。しかし、現在の一般的なLLC(ロング・ライフ・クーラント)は、車検時の交換、すなわち2年~3年に1度のタイミングが目安となっています。
さらに近年は、高性能な添加剤の採用により、耐久性が大幅に向上した「スーパーLLC」や「ウルトラeクーラント」といった商品が普及しています。これらスーパーLLCを利用すれば、新車時で7年~10年、または走行距離16万kmなど、非常に長いスパンでクーラントの交換が不要となります。近年の新車では、一度も交換せずに次の車に乗り換えるというパターンも多くなっています。
冬になる前にはクーラントの状態チェックが必要です
クーラントを長く使い続けていると、含まれている防錆剤や不凍液の濃度が薄まってきたり、性能が低下したりすることで、凍結を抑制する性質などが弱まってしまいます。
寒い地域で車に乗られている方は、気温が氷点下になる前にクーラントの濃度や状態をチェックし、凍結によるエンジンやラジエーターの破損を防ぐことをおすすめします。
自己点検するときは「量」と「色」に注目します
クーラントは、リザーバータンクと呼ばれる半透明のプラスチック容器に貯蔵されています。リザーバータンクは、ラジエーターのキャップとゴムホースで連結されており、エンジンルーム内に設置されています。
ボンネットを開けてクーラントの状態を確認する際は、運転席のメーターパネルにある水温計で、液体の温度が十分に下がっていることを確認してから作業を開始してください。クーラントが高温状態のままリザーバータンクの蓋を開けると、熱い溶液が噴き出して火傷をする危険があるため、必ずエンジンが冷めていることを確認しましょう。
リザーバータンクの液面ラインでクーラントの適量をチェックします
リザーバータンクの側面には、「MAX~MIN」あるいは「FULL~LOW」といった、クーラントが適量であるかを判断できる液面ラインがあります。
クーラントの残量がこの液面ラインの範囲内であれば問題ありません。もし、残量がMIN(LOW)のライン以下であれば、クーラントが不足しているため、補充または交換が必要です。
クーラントが減っている原因を突き止めるために、配管設備などに漏れがないか確認することも重要です。
クーラントの色が鮮やかなピンクや緑色をしているかをチェックします
クーラントの色は、主に赤(またはピンク)と緑の2種類があります。スーパーLLCでは青が使用されることもあります。
もし、リザーバータンク内のクーラントの色調が、新品の商品と比較して鮮やかさが足りず、濁りや茶色っぽい変色が生じていれば、防錆効果などが低下しているサインであるため交換や補充のタイミングと判断できます。
クーラントを補充する際には、現在入っているものと「同じ種類」「同じ色」を補充するのがベストです。異なる色や種類のクーラントを混ぜてしまうと、変色してしまい、色の変化による劣化の判断がつきにくくなるリスクがあります。
駐車場の液体だまりはクーラントの漏れかもしれません
駐車中の車の下に液体だまりを見つけた場合、それはクーラントが漏れ出ている可能性があります。
クーラントであるかどうかは、液体の色が「緑」・「赤」・「青」であるか、あるいは漏れた場所から「焦げ臭い」または「甘い」ニオイを発していないかで判断することができます。漏れが確認された場合は、整備工場などでの点検が必要です。
クーラントの代わりとして水を利用するのは、応急処置以外では危険です
クーラントの代わりに水道水を使用することは推奨できません。水はクーラントに比べて凍結しやすく0度以下で固体化してしまうため、凍結によるエンジン破損のリスクがあります。また、水は冷却システムの配管を錆びやすくしてしまうため、防錆効果のあるクーラントを使用する必要があります。
緊急事態時のオーバーヒートを防ぐための応急処置としての水の補充は有効です
冷却水警告灯が点滅し、クーラントの残量が著しく減少しており、付近に整備工場などがないという緊急事態時には、深刻なエンジントラブル等を招くオーバーヒートを防ぐための応急処置としての水の補充は、短時間であれば有効です。
冷却水が著しく不足している状態で車を走らせてしまうと、エンジンルームからの白煙や、水温の異常上昇といったトラブルの発生リスクが高まります。
ただし、応急処置として補充した水は、錆を防ぐためにもできるだけ早く抜き取って、適切な濃度のクーラント液に全量交換することが必要です。
クーラントの交換費用はカー用品店では工賃が2,000円台からです
クーラントの交換をカー用品店に依頼した際の工賃は、車種やエンジンの種類によって異なりますが、最低価格帯は2,000円台からです。作業時間も比較的短時間で済みます。
劣化したクーラントは産業廃棄物扱いとなります。そのため、ご自身で交換する際は、廃液を適切に処分する必要があり、この面倒を嫌ってカー用品店やディーラーなどの業者に依頼される方も多くいます。
カー用品店別・クーラントの交換工賃と作業目安時間(参考)
| カー用品店 | 工賃(1台あたり) | 作業目安時間 |
|---|---|---|
| オートバックス | 3,300円~ | 15分~ |
| イエローハット | 2,200円~ | 30分~ |
| ジェームス | 2,900円~ | 30分~ |
※上記は工賃の目安であり、クーラント本体の費用は別途かかります。実際の費用や作業時間は店舗や車種、クーラントの種類によって異なります。
クーラント液は自然に減るため、定期的に残量を確認し補充が必要です
クーラント液は、エンジンやラジエーターと連結するゴムホースの間を循環しながら熱交換を行います。経年劣化によってゴムホースに亀裂が入れば外側へと漏れ出す可能性がありますが、そうでなくても、クーラント液はわずかながら蒸発などによって自然と減っていくため、定期的に残量を確認し、必要があれば補充する必要があります。
クーラント液の補充は、全交換作業とは異なりご自身でも比較的簡単に実施できますので、緊急時に備えて確認しておきましょう。
1. 水温計でクーラント液の温度をチェックします
ラジエーター液とも呼ばれるクーラントの点検・補充作業は、運転席付近のメーターパネルに設置されている水温計で、エンジンが高温となっていないことを確認してから開始します。クーラントが高温状態のままリザーバータンクの蓋を開けると、溶液が急に噴き出して火傷してしまう恐れがあるため危険です。
2. リザーバータンクの位置と、自車に適したクーラントの種類を確認します
ボンネットを開け、リザーバータンクの位置を確認します。ウォッシャータンクと混同しないよう、タンクのキャップに「冷却水」「COOLANT」といった表示があるかを確認しましょう。
また、補充するクーラントの種類(LLCかスーパーLLCか)や色を、ボンネット裏のシールや取扱説明書で確認することが望ましいです。最近の新車では、初回交換時のタイミングが長く設定されたスーパーLLCを利用しているケースが多くなっています。
| 種類 | 主な入手先 | 耐用年数の目安 |
|---|---|---|
| スーパーLLC(S-LLC) | ディーラー、量販店 | 7年~10年程度 |
| LLC(ロング・ライフ・クーラント) | 量販店 | 2年~3年程度 |
冷却水の補充には、現在入っているものと同じ種類のクーラントを使用してください。異なる種類を混ぜると、内部パーツが錆びやすくなるなど、トラブルの発生リスクが高まる可能性があります。
3. クーラントの残量が「LOW 」「MIN」以下となっていたら補充します
リザーバータンクの目印「FULL/LOW」または「MAX/MIN」を確認し、残量が下限を意味する「MIN」または「LOW」以下であれば、クーラント液の補充を実施します。
量販店などで売られている商品には、水で希釈して濃度を調整する原液タイプと、そのまま使える補充液タイプがありますが、手軽に継ぎ足す際にはそのまま利用できる「クーラント補充液」が便利です。
4. クーラントを「FULL」「MAX」付近にまで継ぎ足してキャップを閉めます
リザーバータンクの容器の口から、こぼさぬように慎重にクーラント液を継ぎ足し、上限値の目安である「FULL」または「MAX」にまで達したら補充をストップし、リザーバータンクのキャップを閉めれば作業は終了です。
もし、定期的に補充しているにもかかわらず、いつもよりも溶液の減少量が多いと感じた場合は、ラジエーターやゴムホースなどからクーラントが漏れ出ている可能性が高いため、原因を特定してもらうためにディーラーや整備工場にメンテナンスチェックを依頼しましょう。
クーラントはエンジンの強い味方!定期的に状態チェックをしましょう
近年のクーラントは品質が向上し、こまめに交換する必要が少なくなりましたが、それでも長期間使い続ければ防錆性能などが低下してしまいます。クーラントは、エンジンの状態を適切に維持するためには欠かせないものです。
クーラントの自己チェックポイント
- クーラントの量が適量であるかどうか
- クーラントの色が鮮やかで濁っていないか
- 車両の下などにクーラントが漏れていないか
- 焦げ臭いまたは甘いにおいはしないか
寒さが厳しくなる冬が始まる前など、時期を決めてクーラントの状態を定期的にチェックすることで、より安心して車に乗り続けることができます。