Nボックススラッシュのマイナーチェンジ

Nボックススラッシュ2020年2月生産終了 後継なしの一代限り 142万円からの最終型と特別仕様車を解説

Nボックススラッシュはなぜ生産終了したのか。Honda SENSING非搭載でS07A型エンジンのままだった点、N-ONEとの役割重複が背景です。噂された「ホンダ軽自動車撤退」の結末もあわせて検証します。

Nボックススラッシュ2020年2月生産終了 後継なしの一代限り 142万円からの最終型と特別仕様車を解説

Nボックススラッシュ(N-BOXスラッシュ)は2020年2月に生産終了 後継なしの一代限りで幕

Nボックススラッシュのサイドビュー

Nボックススラッシュは、初代N-BOXをベースにルーフを下げたスペシャリティ軽として2014年12月に登場し、2018年1月18日にマイナーチェンジを受けたモデルです。しかし2020年2月をもって生産を終了し、後継モデルが用意されないまま一代限りで姿を消しました。すでに新車での購入はできず、現在は中古車のみで探せる車種となっています。

ここでは、生産終了に至った背景と当時ささやかれた「ホンダ軽自動車撤退」の噂の結末を整理したうえで、2018年1月のマイナーチェンジで何が変わったのか、エクステリア・インテリア・搭載エンジン・装備・価格帯を振り返ります。

Nボックススラッシュが2020年2月に生産終了 後継モデルは登場せず

Nボックススラッシュは2020年2月に生産を終えました。2014年12月の発売から約5年2か月という短い商品寿命で、フルモデルチェンジは一度も行われず、後継車も設定されていません。Nシリーズ第5弾として鮮烈な個性を放ったモデルでしたが、結果として一代限りの存在となりました。

失速の理由は、この記事で扱っているマイナーチェンジの内容そのものに表れています。2017年9月に2代目へ進化したN-BOXがS07B型エンジンと先進安全装備Honda SENSINGを手に入れたのに対し、Nボックススラッシュは2018年1月のマイナーチェンジでもS07A型エンジンのままで、Honda SENSINGも搭載されませんでした。変更はボディカラー3色の追加とインテリアカラーパッケージの拡充が中心で、中身は初代N-BOXの世代にとどまったのです。安全装備が購入判断を左右する時代に、この差は決定的でした。

加えて、個性派の軽という枠内でN-ONEと役割が重なっていたことも大きいと見ています。生産ラインとリソースを考えれば、N-BOX・N-WGN・N-ONE・N-VANという主力四本柱を残す判断は自然でしょう。デザインもサウンドマッピングシステムも尖っていた一方、価格はマイナーチェンジ後で142万1,280円〜192万240円(当時の消費税8%込み)と、装備で優る2代目N-BOXと真正面から競合する水準でした。「良いクルマだが選ばれにくい」という構図から抜け出せなかった、というのが妥当な評価だと考えます。

Nボックススラッシュの主な歩み
時期 内容
2014年12月 初代N-BOXをベースに発表・発売(Nシリーズ第5弾)
2015年12月/2016年9月 カタログ上の仕様変更が実施される
2018年1月18日 マイナーチェンジ(新色3色追加、インテリアカラーパッケージ拡充、内装「ダークスタイル」新設)。発売は1月19日
2018年7月6日 特別仕様車「インディロックスタイル」発売
2018年11月2日 特別仕様車「ノヴァカントリースタイル」発売(発表は11月1日)
2019年10月 消費税率10%への引き上げに伴う価格改定・設定変更
2020年2月 生産終了。後継モデルの設定なし

「ホンダが軽自動車から撤退」の噂はどうなったのか 結論は完全な外れ

当時、次期Nボックススラッシュの開発凍結にとどまらず、「ホンダは軽自動車市場からの撤退を視野に入れており、N-BOXの開発すら行っていない」という噂までささやかれていました。その後の展開を追うと、この噂は明確に外れています。

ホンダは2023年10月5日にN-BOXをフルモデルチェンジし、10月6日に3代目を発売。価格は164万8,900円からで、軽の販売首位を維持し続けています。さらに2024年9月26日にはSUVテイストの派生タイプ「N-BOX JOY」を発表し、9月27日に発売しました。価格は184万4,700円〜226万500円です。皮肉なことに、スラッシュが担っていた「N-BOXの派生で遊ぶ」という役割は、屋根を下げるのではなくアウトドア方向へ振ったJOYが引き継いだ形になりました。

電動化でも軽が主役です。2024年6月13日に発表された軽商用EV「N-VAN e:」は同年10月10日に発売され、価格は243万9,800円〜291万9,400円、WLTCモードの一充電走行距離は245km。続く2025年9月11日には軽乗用EV「N-ONE e:」が発表され、9月12日に発売されました。バッテリー容量29.6kWh、WLTCモード航続距離295km、価格は「e: G」が269万9,400円、「e: L」が319万8,800円です。撤退どころか、ホンダは日本におけるEV展開の起点を軽自動車に置いたことになります。

一方で、「次期スラッシュは開発されない」という部分だけは的中しました。当時の観測は、軽全体の話としては誤りでしたが、スラッシュ個別の運命としては正しかったわけです。ホンダの軽ラインアップを俯瞰すると、N-BOX・N-WGN・N-ONE・N-VANに加えてBEV版が並ぶ構成で、スペシャリティ軽が復活する余地は現時点では見当たりません。Nボックススラッシュの後継が登場する可能性は低いと見ています。

N-BOXスラッシュに2018年11月1日特別仕様車「ノヴァカントリースタイル(NOVA COUNTRY STYLE)」を設定

Nボックススラッシュ「ノヴァカントリースタイル」のエクステリアブラウン基調のカントリースタイルが特徴的な特別仕様車

N-BOXスラッシュの特別仕様車ノヴァカントリースタイルは2018年11月1日に発表され、翌11月2日に発売されました。G・Lグレードをベースにしたブラウン基調の個性的な仕立てが持ち味です。
フロントグリル・ルーフ・ドアミラーをブラウンとし、ボディカラーは「プラチナホワイト・パール」「アッシュグリーン・メタリック」「サーフブルー」の3色から選べる2トーンカラーとなっていました。

N-BOXスラッシュの特別仕様車「ノヴァカントリースタイル」の装備

  • ブラウンペイントフロントグリル
  • ブラウンルーフ
  • ブラウンドアミラー
  • 14インチスチールホイール+ブラウン塗装カラードディッシュホイール
  • クロームメッキアウタードアハンドル
  • ブラウン基調の専用シート
  • ブラウンペイントインパネガーニッシュ
  • ブラウンペイントドアオーナメントパネル
  • 本革巻ステアリングホイール
  • ピアノブラック調ステアリングアッパーガーニッシュ
  • ピアノブラック調パワーウインドウスイッチパネル
  • クロームメッキインナードアハンドル
  • クロームメッキセレクトレバーボタン&シャフト
  • 専用Hondaスマートキー
  • 運転席&助手席シートヒーター(4WDは標準装備)
  • ステアリングヒーター

G・Lベースの特別仕様車「ノヴァカントリースタイル」の販売価格は、FF(2WD)モデルが1,589,760円、4WDモデルが1,720,440円でした。シートヒーターとステアリングヒーターを標準化しながら価格上昇を抑えており、寒冷地で使う人ほど価値を感じられる特別仕様車です。

Nボックススラッシュに特別限定車「インディロックスタイル」が追加

N-BOXスラッシュの特別限定車インディロックスタイル特別仕様車のインディロックスタイルはブラックを基調にしたクールな内外装が特徴

ブラックで統一した「インディロックスタイル(INDIE ROCK STYLE)」は2018年7月6日に発売されました。
個性やファッション性を前面に押し出すNボックススラッシュに加わったインディロックスタイルは、エクステリアのガーニッシュ(装飾)までブラックでまとめたクールな特別仕様車です。

N-BOXスラッシュの特別仕様車「インディロックスタイル」の装備

  • あんしんパッケージ
  • ブラックペイントフロントグリル
  • ブラックペイントリアライセンスガーニッシュ
  • ブラックペイントビレット
  • ブラックシート
  • ブラックペイントオーディオガーニッシュ
  • ピアノブラック調ステアリングガーニッシュ
  • ブラックペイントドアオーナメントパネル
  • クロームメッキ加飾
  • 14インチスチールホイール+ブラックディッシュホイール

ボディカラーはクリスタルブラック・パール、シャイニンググレー・メタリック、プラチナホワイト・パールの3色が設定され、プラチナホワイト・パールは32,400円高のオプションカラーでした。
インテリアカラーはブラックの1色のみで、低音から高音まで臨場感を生むサウンドマッピングシステムがオプション設定されています。

N-BOXスラッシュの特別仕様車「インディロックスタイル」の販売価格は、2輪駆動のFFが1,519,560円、4輪駆動の4WDが1,650,240円でした。

Nボックススラッシュ マイナーチェンジ後のエクステリア

後部座席のドアが開いているNボックススラッシュ

NボックススラッシュはベースのN-BOXに比べて全高を100mm下げ、リヤに向かってルーフが下がっていくクーペスタイルを与えられた軽自動車です。リヤドアはスライドドアではなく横開きのヒンジ式で、SUVのヴェゼルと同様にピラー付近へドアハンドルを隠すスタイリングを採用しています。

Nボックススラッシュのボディサイズ
全長 3,395mm
全幅 1,475mm
全高 1,670mm(4WDモデル:1,685mm)
ホイールベース 2,520mm
最低地上高 140mm
乗員定員 4人

フロントフェイスはノーマルのN-BOX、リヤスタイルはN-BOXカスタム譲りという構成で、マイナーチェンジによる形状変更はありませんでした。

Nボックススラッシュのボディカラーは、モノトーンカラーが7色、2トーンカラーが10色の全17パターン。マイナーチェンジによって「プラチナホワイト・パール」「プレミアムアガットブラウン・パール」「サンセットオレンジ2」の3色が追加されました。

  • Nボックススラッシュ「プラチナホワイト・パール」プラチナホワイト・パール(新色)
  • Nボックススラッシュ「プレミアムアガットブラウン・パール」プレミアムアガットブラウン・パール(新色)
  • Nボックススラッシュ「アッシュグリーン・メタリック」アッシュグリーン・メタリック
  • Nボックススラッシュ「クリスタルブラック・パール」クリスタルブラック・パール
  • Nボックススラッシュ「サンセットオレンジ2」サンセットオレンジ2(新色)
  • Nボックススラッシュ「シャイニンググレー・メタリック」シャイニンググレー・メタリック
  • Nボックススラッシュ「サーフブルー」サーフブルー
  • Nボックススラッシュ「プラチナホワイト・パール/ブラック」プラチナホワイト・パール/ブラック
  • Nボックススラッシュ「プラチナホワイト・パール/レッド」プラチナホワイト・パール/レッド
  • Nボックススラッシュ「プレミアムアガットブラウン・パール/ホワイト」プレミアムアガットブラウン・パール/ホワイト
  • Nボックススラッシュ「プレミアムアガットブラウン・パール/ブラック」プレミアムアガットブラウン・パール/ブラック
  • Nボックススラッシュ「アッシュグリーン・メタリック/ホワイト」アッシュグリーン・メタリック/ホワイト
  • Nボックススラッシュ「アッシュグリーン・メタリック/ブラック」アッシュグリーン・メタリック/ブラック
  • Nボックススラッシュ「クリスタルブラック・パール/レッド」クリスタルブラック・パール/レッド
  • Nボックススラッシュ「サンセットオレンジ2/ブラック」サンセットオレンジ2/ブラック
  • Nボックススラッシュ「シャイニンググレー・メタリック/ブラック」シャイニンググレー・メタリック/ブラック
  • Nボックススラッシュ「サーフブルー/ホワイト」サーフブルー/ホワイト

Nボックススラッシュ マイナーチェンジ後のインテリア

マイナーチェンジしたNボックススラッシュの内装

Nボックススラッシュのインテリアは6種類のパターンから選べ、それまでの軽自動車のイメージを覆すスタイリッシュな配色が魅力でした。2018年1月18日のマイナーチェンジでは、新たに「ダークスタイル」が追加され、ブライトロッドスタイルのシートカラーをモカへ変更するなど質感が引き上げられています。この作り込みの濃さが、生産終了後もファンから惜しまれる最大の理由でしょう。

  • Nボックススラッシュのインテリア「ダークスタイル」ダークスタイル
  • Nボックススラッシュのインテリア「ダイナースタイル」ダイナースタイル
  • Nボックススラッシュのインテリア「トレッキングスタイル」トレッキングスタイル
  • Nボックススラッシュのインテリア「グライドスタイル」グライドスタイル
  • Nボックススラッシュのインテリア「セッションスタイル」セッションスタイル
  • Nボックススラッシュのインテリア「ブライトロッドスタイル」ブライトロッドスタイル

ダークスタイルのステアリング

追加されたダークスタイルは、シートカラーだけでなくメーターカラー、ステアリング、ドアトリム、インパネまでブラックとシルバーアクセントで統一。黒好きにはたまらないシックな内装です。

Nボックススラッシュ マイナーチェンジ後の搭載エンジン

山を背景に道路を走るNボックススラッシュ

Nボックススラッシュに搭載されたエンジンは、自然吸気のNAとターボの2種類。駆動方式による違いはなく、グレードごとに搭載エンジンが決まる構成でした。

Nボックススラッシュの搭載エンジン
NAエンジン ターボエンジン
型式 S07A S07A
種類 直列3気筒 直列3気筒ターボ
排気量 658cc 658cc
最高出力 43kW(58PS)/7,300rpm 47kW(64PS)/6,000rpm
最大トルク 65N・m/4,700rpm 104N・m/2,600rpm
燃費(JC08モード・2WD) 25.8km/L 24.0km/L

燃費はいずれもJC08モードの2WD値で、4WDになるとNAが23.8km/L、ターボが21.8km/Lとなります。2018年1月18日のマイナーチェンジでも、2代目N-BOXが積むS07B型エンジンは採用されませんでした。この「中身は初代のまま」という選択が、後の生産終了へつながっていったと考えられます。

Nボックススラッシュ マイナーチェンジ後の搭載装備

Nボックススラッシュが装備するスピーカー

Nボックススラッシュには、スピーカー8個・サブウーファー1基・360Wパワーアンプで構成されるサウンドマッピングシステムが、Xグレードに標準装備されていました。作動には、サウンドマッピングシステム対応のディスプレイオーディオ、またはディーラーオプションナビの装着が必要です。

2台のNボックススラッシュ

安全面ではシティブレーキアクティブシステムやサイドエアバッグシステムを用意。シティブレーキアクティブシステムは約30km/hまでの速度域で、前方の車両に対して衝突回避や被害軽減を図る仕組みです。2代目N-BOXが標準装備していたHonda SENSINGは、最後まで搭載されませんでした。歩行者検知や高速域の追従支援を備えるHonda SENSINGとの差は大きく、これが販売面で重い足かせになったことは否めません。

燃費対策としてアイドリングストップシステムを標準装備し、ハンドルの重さを切り替えられるモード切替ステアリングも設定。ONにすると操舵力が軽くなり、扱いやすさが増します。

Nボックススラッシュ マイナーチェンジ後の発売日は2018年1月19日で価格は1,421,280円から

夜の街で駐車しているNボックススラッシュ

Nボックススラッシュのマイナーチェンジモデルの発売日は2018年1月19日で、価格帯は1,421,280円〜1,920,240円(当時の消費税8%込み)でした。内容はボディカラー3色の追加、インテリアカラーパッケージのラインアップ拡充、そしてインテリアカラーパッケージを全グレードで選べるようにした点が柱です。なお2019年10月の消費税率引き上げに伴い、その後は価格が改定されています。

Nボックススラッシュ マイナーチェンジ後の価格帯(消費税8%時点)
2WD 4WD
G 1,421,280円 1,551,960円
G・インテリアカラーパッケージ 1,469,880円 1,600,560円
G・L 1,501,200円 1,631,880円
特別仕様車 G・L インディロックスタイル 1,519,560円 1,650,240円
特別仕様車 G・L ノヴァカントリースタイル 1,589,760円 1,720,440円
G・L インテリアカラーパッケージ 1,549,800円 1,680,480円
G・L ターボ 1,601,640円 1,732,320円
G・L ターボ インテリアカラーパッケージ 1,650,240円 1,780,920円
X ターボ インテリアカラーパッケージ 1,789,560円 1,920,240円

Nボックススラッシュはドライブしながら音も楽しめる車だった

N-BOXスラッシュ

Nボックススラッシュは、ほかのNシリーズにはない「サウンドマッピングシステム」を備えたモデルでした。中音域スピーカー4つ、高音域スピーカー4つ、低音域のサブウーファー1つ、そして専用パワーアンプという構成で、軽自動車としては破格のオーディオ環境です。

作動にはサウンドマッピングシステム対応のオーディオかナビの装着が必要ですが、Xグレードには標準装備、G・Lインテリアカラーパッケージ(1,549,800円)にはメーカーオプションとして設定されていました。マイナーチェンジ後の価格帯は1,421,280円〜1,920,240円(消費税8%時点)です。

そのNボックススラッシュも2020年2月で生産を終え、後継は現れませんでした。現在は中古車でしか手に入りませんが、Honda SENSINGを持たない点を理解したうえで、内装の作り込みとサウンドを味わいたい人にとっては、いまも代わりの利かない一台だと考えます。逆に安全装備を重視するなら、Honda SENSINGを全車標準装備する3代目N-BOXやN-BOX JOYを選ぶほうが賢明でしょう。