ハイラックス ラギッドXは新型ハイラックスで豪州復活・48Vマイルドハイブリッド化、ただし日本への正規導入はなし
オーストラリア専売の本格オフロード仕様「ハイラックス ラギッドX(Hilux Rugged X)」は、2018年の登場後に波乱の道をたどりました。2020年8月の大幅改良を経て、2022年にいったん受注停止、2023年には上位版「GRスポーツ」へ主役を譲る形で姿を消しましたが、2025年12月に投入された新型ハイラックスのラインアップで復活し、48Vマイルドハイブリッドを積む現行フラッグシップとなっています。一方でラギッドXはオーストラリアなどごく一部の市場に向けた専用グレードで、日本には初代から一度も正規導入されていません。まずは最新の状況から順に整理していきます。
2025年12月、新型ハイラックスでラギッドXが復活。48Vマイルドハイブリッド化で現行フラッグシップに
オーストラリアでは2025年12月9日に新型ハイラックスが発売され、いったん姿を消していたラギッドXがフラッグシップとして復活しました。価格は71,990豪ドル(諸費用別)で、パワートレインは2.8Lディーゼル(1GD-FTV、150kW/500Nm)に48Vマイルドハイブリッド「V-Active」を組み合わせた6速ATのみとなります。電動パワーステアリングを新採用し、0-100km/h加速は約11秒、最高速は176km/h、複合燃費は7.6L/100kmとされています。従来ラインアップにあった2.4Lディーゼルと2.7Lガソリンは整理され、2.8Lディーゼルへ一本化された点も大きな変更です。
新型は「Tough×Agile」を掲げた新デザインで、薄型LEDヘッドライトや新しいグリル、刷新されたキャビンと大型ディスプレイを備えます。ラダーフレームやホイールベースは従来を踏襲しており、まったくの新設計というより通算9代目にあたる大規模刷新という位置づけです。フロント/リアの意匠はトヨタのオーストラリア拠点(Toyota Design Australia)が主導しました。なお、2023年に登場した高性能版「GRスポーツ」は今回いったんカタログから外れており、フォード・レンジャー ラプター対抗の最強版が新型でどう扱われるかは、本稿執筆時点で正式発表がありません。追って設定される可能性はあるとみられます。
電動ハイラックスも登場。BEVは2026年前半に投入予定
新型ハイラックスは、ブランド初のバッテリーEV(BEV)も設定します。オーストラリアではSR/SR5の4×4ダブルキャブを軸に2026年前半の投入が予定されており、欧州でも2026年春以降にBEVから展開が始まります。BEVはデュアルモーターの常時全輪駆動で、欧州発表値ではおよそ193ps・WLTP航続約240kmとされ、牽引・積載はディーゼルに譲るものの、フリート・鉱山・法人需要を主眼に置いた構成です。さらにトヨタは水素燃料電池(FCEV)版を2028年に投入する計画も明らかにしており、ハイラックスはディーゼル・48V・BEV・FCEVと多彩なパワートレインを持つモデルへと広がろうとしています。ラギッドXがこの電動化の流れの中でどう進化していくかも見どころです。
2023年7月、上位版「GRスポーツ」が登場しラギッドXは一旦退場
オーストラリアでは2022年5月、人気の上級グレードだったローグとラギッドXが、タイからの供給を需要が上回ったことを理由に受注を停止し、事実上ラインアップから外れました。その後継として2023年7月5日に投入されたのが、より強力な「GRスポーツ」です。2.8Lディーゼルを165kW/550Nmへと引き上げ(従来比で約10%増)、市販ハイラックス史上もっともパワフルなディーゼルを名乗りました。KYB製モノチューブダンパーやワイドトレッド化、四輪ディスクブレーキなどを与えられ、価格は73,990豪ドルと当時のレンジ最上位。ラギッドXはこのGRスポーツに主役を譲る形で、いったん歴史を閉じました。2025年の復活は、その空席を埋め直す動きといえます。
2020年8月の大幅改良でエンジンを150kW/500Nmへ強化
2018年に登場したラギッドXは、2020年8月のハイラックス全体の改良で中身を大きく更新しました。2.8Lディーゼル(1GD-FTV)は最高出力150kW/最大トルク500Nm(6速AT時。6速MTは420Nm)へと引き上げられ、登場時の130kW/450Nmから大幅な上乗せとなりました。大型ターボチャージャーや250MPaの新コモンレール、燃焼室やEGRの見直しにより燃費も最大11.1%改善し、4WD・AT車の牽引能力は3,500kgへ向上。ワイドグリルの新フロントフェイス、改良サスペンション、大型ディスプレイを備えた新内装も与えられました。この改良を機にラギッドXはMT設定が姿を消してAT専用となり、価格は69,990豪ドルへ。なお、鉄バンパー版だった姉妹グレード「ラギッド(無印)」はこのとき廃止されています。
オーストラリア専売グレードとして登場したハイラックス ラギッドX、日本仕様との違いは?
ここからは、ラギッドXがどんなグレードなのかを、2018年の登場時の内容をベースに紹介します。オーストラリアで販売されるハイラックスに追加された本格オフロード仕様がラギッドXで、日本の上級グレードZ(当時)に対して、なにが違うのか。エクステリアやインテリア、装備やエンジン、価格帯を見ていきましょう。
ハイラックス ラギッドXは日本仕様にはないオーストラリアならではの個性的なエクステリア
ラギッド Xはオフローダー装備を搭載したグレード
ハイラックス ラギッドXは、日本でいうハイラックスZ相当(豪州ではSR5がベース)に、シュノーケルやスチール製のフロントバー、フロントとリアにレッド塗装が施されたけん引フックなど、スポーティーかつオフローダーな装備が加えられています。
フロントの牽引フックと大型バンパー
標準装備されているシュノーケル
川などを渡るときに吸気口から水が入ってくると、エンジン内部にも水が入り込み、圧縮されてウォーターハンマーが起きてエンジンが壊れてしまいます。シュノーケルを装備していればルーフ付近の高い位置から吸気するため、多少の渡河でもエンジンが水を吸いにくく、走り続けやすくなります。
カバーが装備されているトーヒッチ
ブラック塗装されたスポーツバーも標準装備
ボール式のトーヒッチや黒く塗装されたスポーツバーも備わり、スタイリッシュに仕上がっています。見た目のインパクトも強く、人気の出そうなグレードでした。
ラギッドグレードには専用の17インチアロイホイールを装備
ホイールは17インチのRugged専用アロイを装着します。ローグ(Rogue)が18インチを履くのに対し、ラギッドXはオフロードに軸足を置くため1インチ小径としているのが特徴です。
ヘッドライト、フォグライト、ライトバーがLED化
ヘッドライトとフォグランプにはLEDが使われ、ラギッドXではバンパーにLEDのライトバーも組み込まれます。
登場時のボディサイズは、全長5,350mm、全幅1,885mm、全高1,815mm、ホイールベース3,085mmで、日本仕様のハイラックスより少しだけ大柄でした。
| ラギッドX | Z(日本) | |
|---|---|---|
| 全長 | 5,350mm | 5,335mm |
| 全幅 | 1,885mm | 1,855mm |
| 全高 | 1,815mm | 1,800mm |
| ホイールベース | 3,085mm | 3,085mm |
2.8Lのパワフルなディーゼルエンジンを搭載したハイラックス ラギッドX
ハイラックス ラギッドXに搭載されるエンジンは2.8Lディーゼルで、登場時は6速マニュアルと6速ATが選べました。型式は「1GD-FTV」、排気量2,754cc、登場時の最高出力は130kW、最大トルクは450Nmです。なお、後述のとおりこの数値は2018年登場時のもので、2020年8月の改良で150kW/500Nm(AT)へと強化されています。
| 型式 | 1GD-FTV |
|---|---|
| 種類 | 直列4気筒ディーゼルターボ |
| 排気量 | 2,754cc |
| 最高出力 | 130kW/3,400rpm |
| 最大トルク | 450Nm/1,600~2,400rpm |
| 燃費 | 11.6km/L |
搭載エンジンは日本仕様の2.4L(2GD-FTV)ではなく、ランドクルーザープラドと同系の2.8Lです。日本の2.4Lディーゼル(110kW/400Nm)に対し、登場時点で最高出力は20kW、最大トルクは50Nm上乗せされ、よりパワフルな仕上がりでした。
ハイラックス ラギッドXの登場時の販売価格は61,690豪ドルから
ハイラックス ラギッドXの登場時価格は61,690豪ドル(6速MT。6速ATは63,690豪ドル)で、当時のレートでおよそ505万円ほどでした(1豪ドル82円換算)。豪州の上級SR5に対して7千豪ドル前後の上乗せという位置づけです。
ボディタイプはダブルキャブ、2.8Lディーゼル、17インチアロイホイール、シュノーケル、トレーラーヒッチ、大型フロントバー、スポーツバーなどを備え、7つのエアバッグといった安全装備も搭載していました。
ゴツいカンガルーバーではなく、フロントバンパー自体をスチールバー一体型とすることで、すっきりとした見た目にまとめているのが特徴です。
姉妹グレードが備える大型バーのイメージ
ハイラックス ラギッドXのフロントまわり
大型のカンガルーバーを持たないぶん、ヘッドライトまわりやボンネットを開ける際の整備性も良く、スタイリッシュな見た目に仕上がっていると考えられます。
ハイラックス ラギッドXの日本導入は結局どうなったのか?

ラギッドXが登場した2018年当時は、日本仕様のハイラックスが発売されて間もない時期で、「ラギッドXがすぐ日本に来ることはないだろう」と見ていました。結論からいえば、その見立てのとおり、ラギッドXは初代から現在に至るまで日本へ正規導入されていません。硬いブルバー(カンガルーバー)は歩行者への被害が大きく、日本では純正設定が難しいため、仮に日本仕様が用意されるなら衝撃吸収型の柔らかいバンパーに置き換わるだろう、という当時の予想も、そもそも導入自体が実現しなかったため確かめる機会はありませんでした。
とはいえ、「オフロード志向の強いハイラックス」を望む日本の声に、トヨタが別の形で応えてきたのも事実です。日本では2021年10月に「Z“GR SPORT”」が追加され、専用サスペンションや加飾を備えたスポーティかつオフロード寄りのグレードとして展開されました。さらに特別仕様車「Z“Revo ROCCO Edition”」なども設定され、ラギッドXそのものではないにせよ、“最強ハイラックス”的なニーズはGRスポーツや特別仕様車が担ってきたといえます。
その日本のハイラックス自体も、2024年10月にディーゼルエンジンの認証手続きを巡る問題などを背景に受注を停止し、しばらく新車が事実上買えない状態が続きました。そして2026年には、電動化を織り込んだ新型ハイラックスが日本でも発売され、価格は498万800円からとされています。全長5,325mm・全幅1,885mmとひとまわり存在感を増し、動力性能や安全装備も大きく前進しました。日本でラギッドXの名を冠したグレードが登場する保証はありませんが、新世代でオフロード志向の上級グレードがどう用意されるかは、引き続き注目したいところです。
どうしても現地仕様のラギッドXが欲しい場合は、右ハンドル・左側通行のオーストラリアから輸入するという手段もあります。日本と同じ右ハンドルで流通しているぶん、並行輸入のハードルは比較的低め。気になる方は、そうした選択肢も含めて検討してみてはいかがでしょうか。

























