デ・トマソ パンテーラのモデルチェンジ

デ・トマソ パンテーラは1994年に生産終了 アレスの復活版パンサーは21台限定で日本未導入

パンテーラは復活したのか。アレスの「パンサー・プロジェットウーノ」が650PSのV10を積んで21台限定で生産されました。製作元は経営危機を経て2026年にアレス・アトリエとして再出発。パンテーラを名乗る新型車は2026年時点で未発表です。

デ・トマソ・パンテーラのオマージュ「アレス・パンサー」は21台限定で生産 本家は2025年にP72で復活

1970年代に日本のスーパーカーブームを牽引した「デ・トマソ・パンテーラ」を現代に翻訳する試みは、イタリアのカロッツェリア、アレス(当時のアレスデザイン)による「パンサー・プロジェットウーノ」として結実しました。2019年5月にコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステでプロトタイプが公開され、翌年から21台限定で生産されています。

ただし、その後の道のりは平坦ではありませんでした。製作元のアレスは2024年に深刻な資金難に陥り、2026年に「ARES Atelier(アレス・アトリエ)」として体制を一新して再出発しています。一方、デ・トマソというブランド自体も復活し、2025年に新型「P72」の市販仕様を公開しました。

現在の状況を整理すると、パンテーラの名を冠した新型車は2026年時点で発表されておらず、パンサーもP72もごく少数の限定生産で、日本への正規導入はありません。デ・トマソはイタリアの自動車メーカーで、創業者であるアレッサンドロ・デ・トマソの名前がそのままブランド名になっています。

ここでは直近の動きを追ったうえで、パンサーのエクステリアやインテリア、パワートレイン、そして初代パンテーラの歴史までを順に見ていきましょう。

2026年6月 アレスは「アレス・アトリエ」として再出発

パンサーを手がけたアレスは、2026年6月に社名と体制を改めて再スタートを切りました。新しい名称はARES Atelier(アレス・アトリエ)。筆頭株主にはProma Groupが入り、独立系投資家のBoris Collardi氏も参画しています。運営の指揮は、フェラーリで10年以上の経験を持つ機械エンジニアのAntonio Trotta氏が執ります。拠点はこれまでどおりモデナで、イタリアのモーターバレーに根を張ったままです。

再出発の背景には、2024年からの深刻な経営危機がありました。4月に資金繰りが悪化して給与の支払いが滞り、従業員は60名から40名へと減少。7月末には破産を回避するため事業継続型の再建手続きに入り、9月から11月末まで全従業員が一時帰休となりました。10月には未払いだった5か月分の給与を支払い、株主による増資で手続きを終える再建計画が労働組合に示されています。

それでも旧法人は立ち行かず、2025年には司法清算へ移行。事業は新会社Ares Operationsが引き継いで受注残の消化を進め、そこから今回の体制刷新につながりました。新生アレス・アトリエは複数の新規プロジェクトを進めていると公表しており、活動の再開はモナコGPの場を皮切りに国際的な露出を取り戻す構えです。ビスポークの超少量生産という難しい事業を、今度は生産計画と品質管理を整えたうえで軌道に乗せられるかが焦点になります。

パンサー・プロジェットウーノは21台限定で生産、スパイダーは登場していない

パンサー・プロジェットウーノの生産台数は21台に限定されました。2020年に量産モデルへ移行し、モデナの工場で1台ずつ手作業により仕立てられています。アレスの「Legends Reborn」プログラム第1弾として、同社の名を世界に広めた一台であり、carrozzieri-italiani.comが選ぶ2019年のコーチビルダー・カー・オブ・ザ・イヤーにも選出されました。

2021年モデルでは3か所に手が入っています。最大の変更点は、H型ゲートを備えた電動アクチュエーター式のマニュアルシフト「LCME(Leva Cambio Manuale Elettroattuata)」です。ステアリング裏のパドルと連動したアクチュエーターが作動し、シーケンシャルミッションのような感覚を残しつつ、往年のスーパーカーに近い手応えを狙ったものです。あわせて排気系をX字型に改め、3つのモードを持たせるとともに、脚まわりもよりスポーティな設定に変更されました。

オープンボディのスパイダーについては、2021年2月にアレスが数か月後の発表を予告していました。しかし正式な発表や納車の記録は確認できておらず、パンサーはクーペのみで推移しています。アレスがその後に手がけたオープンモデルは、シボレー・コルベットC8をベースとする「S1プロジェクト・スパイダー」(2020年10月発表、24台限定)でした。

本家デ・トマソは2025年に「P72」で復活

パンテーラを生んだデ・トマソというブランドそのものも、この間に息を吹き返しました。2019年7月のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでコンセプトが公開された「P72」がそれです。1965年のP70をモチーフとしたミッドシップ2シーターで、生産計画は二転三転しましたが、最終的にドイツ・アッファルターバッハに自社工場を構え、2024年12月から試作組立が始まりました。

2025年5月14日には量産仕様が公開されています。カーボンの一体成型モノコックに5.0Lのスーパーチャージド・フォードV8を搭載し、最高出力は約700馬力。6速MTを組み合わせ、車内にディスプレイを一切持たないアナログな作りが特徴です。生産は車名どおり72台のみで、1台あたり約160万ユーロという価格ながら全数が完売しました。納車は2025年末から始まっています。

2026年2月には、元CEOとの間で争われていた訴訟でデ・トマソ側が全面勝訴し、P72の本格展開に向けた不確定要素が一つ減りました。もっとも、パンテーラの車名を復活させる計画は2026年時点で公表されておらず、デ・トマソが手がけるパンテーラの後継は現時点で存在しません。

イタリアのアレスが手がけるパンサーは、かつてのスーパーカーであるデ・トマソ・パンテーラを現代に復活させたモデル

デ・トマソ・パンテーラを思わせるアレスのパンサー

アレスが手がけるスーパーカーを現代によみがえらせるプログラム「Legends Reborn(レジェンズリボーン)」の第1弾として進められたのが「プロジェクトパンサー」です。パンサーという名称ですが、見た目は1970年代に一世風靡したデ・トマソのパンテーラそっくりで、ベース車両にはランボルギーニのウラカンを使っています。

ヘッドライトにはリトラクタブル式LEDヘッドライトを採用

ヘッドライトにはリトラクタブルで展開するLEDヘッドライトが搭載されていて、LEDテールライトやDRL(デイタイムランニングライト)などの最新装備も揃えています。アルミとカーボンファイバーで新造されたこのポップアップライトは、2004年にシボレー・コルベット(C5)とロータス・エスプリが姿を消して以来、新造の量産車としては久々の採用例です。ボディサイズは全長4,668mm・全幅1,977mm・全高1,185mmの超ワイドボディです。

アレス・パンサーのボディサイズ
全長 4,668mm
全幅 1,977mm
全高 1,185mm
ホイールベース 2,620mm
車両重量 1,423kg

ホイールはブラックのリボルバーデザインで、タイヤはピレリの「P ZERO」を装着

ホイールデザインは真っ黒カラーに5つの空間があいたリボルバーデザインを採用していて、フロントには20インチ・リアには21インチのホイールが装着されています。タイヤサイズは255/30ZR20(フロント)、325/25ZR21(リア)の超偏平タイヤを履いています。

リアデザインは尻上がりになっていて左右2本ずつ、合計4本のマフラーエンドが見える

リアビューはグッと上がったバンパーが特徴的で2本出しのマフラーがデュアルに分かれているデザインで、合計4本のマフラーエンドが見えます。ボディパネルはすべてカーボンファイバーで、アルミとカーボンを組み合わせたハイブリッド構造のシャシーに、高張力鋼のロールケージと補強が加えられています。

インテリアはランボルギーニ・ウラカンをベースにレトロ調の意匠を重ねる

アレスのパンサーのインテリアは、ベース車のウラカンの構造を活かしている

パンサーのインテリアは基本的にウラカンの構造を活かしたもので、スポーティかつラグジュアリーな内装になっています。センターコンソールにはたくさんのスイッチが並んでいて、その中でも目立つのが中央のエンジンスタートボタンです。赤いフラップを開ければボタンが押せるようになっていて開け閉めの動作が必要ですが、この操作をすることにより「これからスーパーカーを運転する」という気分にさせてくれます。

ダッシュボードはレトロ調にまとめられ、そこに最新世代のデジタルディスプレイが組み込まれます。内装素材はレザーとアルカンターラを中心としたビスポーク仕立てで、オーディオにはアレス専用に設計されたDaniel Hertz製の高解像度システムが与えられました。21台という台数から、内外装の仕様は1台ごとに作り分けられ、同じ個体は基本的に存在しません。

パンサーのパワートレインはカーボンファイバーのシャーシを使い、エンジンにはV10の5.2Lを搭載!価格は615,000ユーロ

パンサーが搭載するエンジンは5.2LのV10エンジンでウラカンと同様のものだが、若干スペックが違う

アレスが現代に復活させたデ・トマソ・パンテーラの搭載エンジンはウラカンと同様のV10エンジンで排気量は同様の5.2Lですが、ECUと排気系の変更によりスペックが向上していて最高出力は650PS、最大トルクが600Nmになっています。組み合わされる7速デュアルクラッチと4WDシステムはベース車から受け継ぎつつ、より直接的な反応が得られるよう手が加えられました。

パンサーとウラカンのエンジンスペック比較
パンサー ウラカン
エンジン種類 V型10気筒
排気量 5,204cc
最高出力 650PS/8,250rpm 610PS/8,250rpm
最大トルク 600Nm/6,500rpm 559Nm/6,500rpm

時速0-100kmの加速は3.1秒、最高速度は325km/hに達します。

価格は615,000ユーロに設定され、発注から納車までは約3か月とされました。ベース車両となっているウラカンの倍以上という水準で、カーボンボディの新造と1台ごとの仕様変更にかかる手間を考えれば、コーチビルドの世界では順当な価格設定といえます。

伊米合作のスーパーカー デ・トマソ・パンテーラのモデルチェンジ遍歴

パンテーラは「豹」を意味し、イタリアのデ・トマソが販売していたスーパーカーです。ボディはイタリア製でエンジンはアメリカ製という、デ・トマソとフォードによる合作のスーパーカーです。コストダウンで大量生産し、廉価なスポーツカーとして販売することを目的として開発されました。デザインはカロッツェリア・ギアに在籍したトム・チャーダ、セミモノコック構造の設計はランボルギーニ・ミウラを手がけたジャンパオロ・ダラーラが担当しています。総生産台数は7,260台で、そのうち5,000台以上が北米で販売されました。

パンテーラ /1971年~1972年

1971年、パンテーラが誕生します。エンジンはフォード社の5.8L水冷V型8気筒OHVエンジン(351クリーブランド)を搭載。前期型と後期型に分かれており、目標生産台数は4,000台。最盛期の1972年では2,700台以上を販売。目標台数には達しなかったものの、フェラーリやランボルギーニの半値という価格で、成功と呼べる販売台数となりました。

パンテーラL/1972年

1972年にパンテーラLが追加されました。「L」は「Lusso」の略で、イタリア語で豪華や贅沢という意味です。アメリカ市場での販売を想定されたモデルです。

パンテーラGTS/1973年

パンテーラGTSは1973年に登場したハイパフォーマンスモデルです。最高速度は290km/hで外観も派手な印象となりました。日本にも輸入されましたが、ノーマルエンジンにGTSデザインのアメリカ仕様でした。

パンテーラGT4/1974年

パンテーラGT4は1974年に6台のみ生産されたモデルです。特殊グランドツーリングカーカテゴリーへの参戦条件が「連続する12か月間に最低500台の生産」というグループ4に参戦すべく生産されたモデルで、レース仕様をそのまま市販すべく生産されたモデルです。

パンテーラGT5/1980年

1980年、思い切ったイメージチェンジで追加されたパンテーラGT5。軽量化のためにFRPで成型されています。一般公道で扱いやすくするために、330馬力にエンジン出力をダウンさせています。

パンテーラGT5S/1984年

1984年、パンテーラGT5のマイナーチェンジとして追加されたモデルで、フェンダー一体型の滑らかなスタイルになっています。エンジンは標準仕様で300馬力、ハイパフォーマンス仕様は350馬力になっています。

パンテーラSI(90 Si)/1991年

1991年のトリノショーで発表された、パンテーラの最終型にふさわしい改良が施されたモデルです。スタイリングはマルチェロ・ガンディーニが担当し、全体的に滑らかなラインとブリスター風のフェンダーを備えた姿に生まれ変わりました。エンジンは同時期のフォード・マスタングと共通の5.0HOを搭載。出力は247馬力・40.8kgmとされ、これまでに比べて控えめな仕様となっています(305馬力とする資料もあります)。ブレーキにはフェラーリF40と同じブレンボ製キャリパーが与えられました。
製造されたのは41台のみで、うち2台は衝突試験に、1台はデ・トマソの博物館に充てられたため、一般に販売されたのは38台です。1994年にはそのうち4台が、ミラノの車両製造会社Pavesiによってタルガトップへ改造されました。「SIタルガ」がパンテーラのラストを飾る公式バリエーションとなりました。

デ・トマソ・パンテーラのモデルチェンジ遍歴
デ・トマソ・パンテーラのモデル 販売年表
パンテーラ 1971年~1972年
パンテーラL 1972年
パンテーラGTS 1973年
パンテーラGT4 1974年
パンテーラGT5 1980年
パンテーラGT5S 1984年
パンテーラSI(90 Si) 1991年~1994年

中古市場での評価は堅調です。日本国内では2026年時点で1,800万円台からの個体が流通しており、タマ数は数台という水準にとどまります。海外のオークションでも、2025年にはオリジナル度の高い初期型が約2,040万円、最終型の90 Siが31万3000ドルで落札されました。生産台数が7,260台と多めのモデルだけに、オリジナル性と整備状態による価格差が広がっているのが現在の傾向です。

現代によみがえったデ・トマソ・パンテーラはアレスが手がけるパンサーというモデル 21台限定で生産された

イタリアのアレスの手によって現代にスーパーカーをよみがえらせるプロジェクトである「Legends Reborn」の第1弾に選ばれた車種が、1970年代にスーパーカーブームを巻き起こしたデ・トマソのパンテーラです。

公開されたエクステリアはデ・トマソ・パンテーラそのもので、ヘッドライトにはリトラクタブルを採用しています。灯火類はすべてLEDを使用していて最新技術が導入されています。搭載エンジンはウラカンと同様のV10エンジンで排気量も同じ5.2Lですが、最高出力と最大トルクがそれぞれ40PS・40Nm向上しています。

生産台数は21台に限定され、価格は615,000ユーロ、発注から納車までは約3か月とされました。オープンボディのスパイダーは計画が示されたものの登場せず、製作元のアレスは経営危機を経て2026年に「アレス・アトリエ」として再出発しています。一方、デ・トマソというブランド自体も2025年にP72で市販車の世界へ戻ってきました。パンテーラの名を継ぐ新型車が現れるかどうかは、2026年時点では未発表のままです。