オーリスのモデルチェンジ

トヨタ オーリスは販売終了 2018年カローラスポーツへ 2020年7月に車名も完全消滅

オーリスはフルモデルチェンジしたのか、車名はなぜ消えたのか。ジュネーブショー2018で公開された3代目は日本でカローラスポーツ、欧州でカローラへ。2020年7月の台湾での改名までの経緯と、当時の予想がどう決着したかを検証します。

トヨタ オーリスは販売終了 2018年カローラスポーツへ 2020年7月に車名も完全消滅

オーリスは2018年に販売終了 後継はカローラスポーツ 2020年に車名も完全消滅

スプリンターからアレックス、そしてカローラ ハッチバックの後継モデルとして2006年に誕生したのがオーリスです。名車の系譜を受け継ぐ一台でしたが、日本では知名度も販売台数も控えめでした。一方で海外、とりわけ欧州へ目を向けると、ヴィッツ(現地名ヤリス)に次ぐトヨタの主力と呼べる存在でした。

2012年8月にフルモデルチェンジして2代目へ移行し、2015年4月のマイナーチェンジではトヨタ初となる1.2L直噴ターボ8NR-FTS型エンジンを搭載しました。そして2018年、日本仕様の後継は「カローラスポーツ」という新しい車名で登場します。日本国内でのオーリスの販売は、2代目をもって2018年3月に幕を下ろしました。

その後、欧州でも車名はカローラへ統合され、最後までオーリスを名乗っていた台湾仕様も2020年7月に改名されました。結果として、オーリスは3代14年で車名そのものが消滅しています。2026年現在、復活を示す公式なアナウンスはありません

2018年6月26日に発表・発売されたオーリスの後継モデル「カローラスポーツ」について以下で詳しく紹介しています。

ここから先では、「カローラスポーツ」という車名が明かされる前に語られていたオーリスのフルモデルチェンジ情報と、その予想が実際にはどう決着したのかを、現在の視点で振り返ります。

2020年7月、台湾でも改名しオーリスの車名が完全消滅

日本と欧州から車名が消えたあとも、オーリスの名は台湾に残っていました。台湾では2018年9月、3代目にあたるハッチバックが「AURIS(オーリス)」の名称で発売されています。日欧では消えた車名が、一つの市場だけで生き延びていたわけです。

しかし2020年7月、台湾仕様も年次モデルの切り替えに合わせて「COROLLA SPORT(カローラスポーツ)」へ改称されました。これをもって、世界のどの市場でもオーリスを名乗る新車は存在しなくなります。

初代の日本発売が2006年10月23日ですから、2006年から2020年まで、3世代・約14年で車名の歴史は終わったことになります。ラテン語で金を意味する「Aurum」と「Aura」から生まれた造語という、独特の存在感を狙った名前は、皮肉にもグローバルでの知名度という一点でカローラに及びませんでした。

とはいえ、車そのものが消えたわけではありません。中身はカローラスポーツ/欧州カローラとして継続しており、オーリスが欧州で積み上げた走りの評価やデザインの方向性は、そのまま後継へ受け継がれています。名前を捨ててブランドを取る――トヨタの判断は、Cセグメントの世界戦略としては合理的だったと言えるでしょう。

フルモデルチェンジを機に車名を廃止しカローラへ統一

欧州で販売好調だったオーリスは、フルモデルチェンジを機に車名の「オーリス」を廃止し、「カローラ」へ変更されました。トヨタモーターヨーロッパが正式に発表したのは2018年8月28日のことです。欧州だけの措置ではなく世界規模での統合だったため、実質的にオーリスの名前は消滅することになりました。

日本ではすでに同年6月26日、後継となるカローラスポーツがデビュー済み。欧州向けについては、当初「2019年モデルのオーリス」として2018年12月以降に発売する計画でしたが、これを取りやめ、他地域と同じ「カローラ」として2019年初頭に発売する形へ切り替えられました。

オーリスはヨーロッパで確かな人気を得ていましたが、世界全体で見ればカローラの知名度には遠く及びません。若返りを図るカローラの起爆剤として名前を差し出した格好で、この判断は結果的に成功だったと見ています。欧州でカローラは主力の座を維持し、日本でもカローラスポーツはハイブリッドを軸に定着しました。

ジュネーブモーターショー2018で公開された3代目のエクステリア

ジュネーブモーターショー2018で発表された3代目オーリスのエクステリア

2018年3月6日、スイスで開催されたジュネーブモーターショー2018において、3代目にあたるオーリス(オーリス ハイブリッド)が初公開されました。

ボディサイズは全長が40mm伸びて4,370mm、全高は25mm低い1,455mm、全幅は30mm広い1,790mmとなり、ワイド&ローを強調したプロポーションへ変わりました。伸ばされた全長40mm分はホイールベースに充てられ、後席の居住性向上に振り分けられています。

ジュネーブモーターショー2018で発表された3代目オーリスのリヤビュー

ジュネーブモーターショー2018で発表された3代目オーリスのフロントグリル

ジュネーブモーターショー2018で発表された3代目オーリスのサイドビュー

グリルメッシュはインパクトのあるデザインへ刷新され、ルーフとボディを塗り分ける2トーンカラーも用意されました。LEDヘッドライトも、それまでのトヨタ車にはない造形が与えられています。

欧州戦略の要を担ったオーリスは、トヨタのグローバルデザイン「キーンルック」を初めて身にまとった車でもあります。今やトヨタといえばキーンルック、というブランドイメージが定着したのは、欧州で名を馳せたオーリスの功績が大きかったのかもしれません。

その先鋭的なモデルが、フルモデルチェンジでさらにアグレッシブなデザインへ振り切りました

フロントタイヤ上部まで大きく切り込んだフロントフェイス、立体的な流線形のボディは、同じ世界戦略車であるC-HRと通じる方向性です。

C-HRのエクステリア

C-HRも欧州での評価が高く、販売台数を伸ばした車種でした。個性を強く押し出したエクステリアは狙いどおりで、Cセグメントのハッチバックとしては挑戦的なスタイルとして受け止められました

2代目オーリスのインテリア

2代目オーリスの内装1

2代目オーリスの内装2

2代目オーリスの内装3

欧州で支持を集めたオーリスは、遊び心のある内装も魅力でした。日本車では珍しい2トーンカラーのインテリアは、洒落たカフェにいるようなモダンな空気をまとっています。インストルメントパネルやフロントドアトリム上部にはソフトパッドが奢られ、質感の面でも欧州車を意識した造りでした。

フルモデルチェンジ前は2代目の路線を大きく変えず、装備の追加で内装を充実させるのではないかという見方が有力でした。人気車ほど大胆な変更を避ける、という自動車業界の定石があるためです。

その象徴がランドクルーザーでしょう。世界各国で絶大な人気を誇るフルサイズクロスカントリー車で、車名を変えずに販売され続けている日本車としては最古の歴史を持ちます。
2007年に登場した200系は、2度のマイナーチェンジを重ねながら14年もの長寿モデルとなり、2021年8月にようやく300系へフルモデルチェンジしました。

もっとも、結果から言えばオーリスの後継はプラットフォームから刷新されたため、内装も水平基調のインパネへ全面的に作り替えられています。「大きな変化はない」という当時の見立ては外れた形です。

フルモデルチェンジでツーリングスポーツを追加

オーリス ツーリングスポーツのエクステリア

フルモデルチェンジのタイミングでステーションワゴン「オーリス ツーリングスポーツ」も刷新されました。ツーリングスポーツは2代目の時点で欧州専売だったモデルで、2012年のパリオートショーで発表され、2013年4月に発売されています。全長は5ドアハッチバックより285mm長い設定でした。

当時は2018年秋のフルモデルチェンジで待望の日本導入があるのではと期待されましたが、オーリス ツーリングスポーツとしての日本発売は実現しませんでした。

ただし、ワゴンそのものは形と名前を変えて登場しています。欧州では2018年10月のパリモーターショーで「カローラ ツーリングスポーツ」が公開され、1.2Lターボと1.8L/2.0Lの2種類のハイブリッドを設定。日本では2019年9月17日に「カローラ ツーリング」が発売され、Cセグメントのワゴンが正式にラインナップされました。予想は車名を変えて当たった、と言ってよいでしょう。

フランクフルトモーターショー2017で公開された2代目オーリス ツーリングスポーツの特別仕様車「フリースタイル」は、専用サイドスカートにフロントアンダーガード、17インチアルミホイールを装着し、ワゴンでありながらSUVテイストを漂わせる一台でした。

オーリス ツーリングスポーツのリヤビュー

オーリス ツーリングスポーツのサイドビュー

レッドカラーのオーリス ツーリングスポーツ

SUVテイストのステーションワゴンといえばスバルのアウトバックが国内外で知られますが、この中間ジャンルはライバルが少なく、欧州でのオーリス ツーリングスポーツは堅実に台数を積み上げていました。

プラットフォームはTNGAを採用

3代目にも採用されたTNGAプラットフォーム

フルモデルチェンジにあたり、トヨタの新世代共通プラットフォーム「TNGA」(Cセグメント向けのGA-C)を採用。2代目までの新MCプラットフォームからの刷新により、静粛性と室内快適性が向上しました。低重心化と剛性向上で走行安定性も高まり、高速巡航での安心感は明確に増しています。

TNGAは当時、プリウス、C-HR、カムリの3車種で高い評価を得ていました。トヨタはモデルチェンジや新型車投入のタイミングで順次採用を広げると表明しており、オーリス後継もその流れに乗った形です。

TNGA採用に伴い、ボディは全長・全幅ともに拡大し、伸びた全長分がホイールベースに充てられたことで室内空間にも余裕が生まれました

予防安全装備は第2世代トヨタセーフティセンスを搭載

2代目オーリスには、2015年4月のマイナーチェンジでレーザーレーダーと単眼カメラを組み合わせた「トヨタセーフティセンスC」が採用されていました。フルモデルチェンジでは上位版の「トヨタセーフティセンスP」が載るという予想が支配的でしたが、実際にはこの読みは半分だけ当たりました。

後継のカローラスポーツが搭載したのは、PとCの呼び分けを廃した「第2世代トヨタセーフティセンス」です。ミリ波レーダーと単眼カメラを併用する構成はP相当以上で、昼夜の歩行者検知と昼間の自転車運転者検知に対応するプリクラッシュセーフティ、全車速追従機能付レーダークルーズコントロール、車線中央維持を支援するレーントレーシングアシスト、オートマチックハイビーム、ロードサインアシストまでを備えます。

結果として、名称は予想と異なるものの「上位版が載る」という中身の見立ては的中しました。加減速まで自動で行う追従クルーズが標準化されたことで、長距離移動の負担は世代を跨いで大きく軽減されています。

パワートレインは2種類のハイブリッドを設定

フルモデルチェンジ前には、2代目の1.2Lガソリン直噴ターボと1.8Lハイブリッドに加え、新開発の2.0Lハイブリッドを含む合計3種類のパワートレインが用意されるとささやかれていました。

注目は2.0Lの次世代ハイブリッドで、最大出力180hp級のスポーティな仕様になるという見立てです。
これは欧州仕様のカローラで現実になりました。M20A-FXS型2.0Lエンジンを核とするハイブリッドはシステム最高出力132kW(180PS)を発生し、1.8L(システム最高出力122PS)との2本立てが成立します。1.2Lターボを含めた3種類という構成も、そのまま実現しました。

一方で、日本仕様のカローラスポーツは登場時点で1.2Lターボと1.8Lハイブリッドの2本立てにとどまり、2.0Lハイブリッドは設定されませんでした。「日本にも180PSのホットなハイブリッドが来る」という期待は、当時の国内ラインナップでは満たされなかったことになります。

なお、2代目オーリスのハイブリッドは3代目プリウスと同じ2ZR-FXE型を積むリダクション機構付THS IIで、JC08モード燃費30.4km/Lを達成していました。

2代目オーリス(日本仕様)のエンジン
ハイブリッドモデル ガソリンモデル(120T)
型式 2ZR-FXE 8NR-FTS
総排気量 1.797L 1.196L
使用燃料 無鉛レギュラーガソリン 無鉛レギュラーガソリン
最高出力 73kw(99PS)
5,200rpm
85kw(116PS)
5,200~5,600rpm
最大トルク 142Nm(14.5kgm)
4,000rpm
185Nm(18.9kgm)
1,500~4,000rpm
モーター最大出力 60kw(82PS)
モーター最大トルク 207Nm(21.1kgm)

2代目オーリスのスペックをおさらい

夜道を走る2代目オーリス

最終モデルとなった2代目オーリスは、欧州で台数を伸ばしたコンパクトカーで、特徴的なキーンルックと欧州仕込みのしなやかな足回りが持ち味でした。
良い意味で日本車らしさから脱却した、オーリスHYBRID “G Package”(2016年4月改良型)のスペックを紹介します。

2代目オーリス HYBRID “G Package”(2016年4月改良型)のスペック
全長 4,330mm
全幅 1,760mm
全高 1,480mm
室内長 1,830mm
室内幅 1,485mm
室内高 1,180mm
車両重量 1,400kg
ホイールベース 2,600mm
最小回転半径 5.4m
最低地上高 140mm
エンジン型式 2ZR-FXE
総排気量 1.797L
最高出力 73kw(99PS)/5200rpm
最大トルク 142Nm(14.5kgm)/4000rpm
モーター最大出力 60kw(82PS)
モーター最大トルク 207Nm(21.1kgm)
乗車定員 5名
JC08燃費 30.4km/L
ボディカラー 全7色
価格 2,832,545円~(販売当時)

カローラスポーツの前身 オーリスのモデルチェンジ遍歴

オーリスはトヨタが販売していたCセグメントクラスのハッチバック・ステーションワゴンです。カローラの派生車種にあたり、新MCプラットフォームの採用で全幅が1,760mmとなったため、国内では3ナンバー登録となりました。車名はラテン語で金を意味する「Aurum」と「Aura」を掛け合わせた造語です。

オーリス 初代 E15#H型(2006年~2012年)

2006年10月23日、アレックスの後継車種として初代オーリスが日本で発売されました。月間目標販売台数は3,000台で、標準グレードの「150X」、上級グレードの「180G」というシンプルなグレード展開です。デザインは高く評価され、2007年度グッドデザイン賞を受賞しました。
2007年2月には欧州市場での販売を開始。日本では高級鞄ブランドとの共同開発モデル「TUMIバージョン」を1,000台限定で発売しています。
2008年1月、特別仕様車「150X Mパッケージ・グレージュセレクション」「180G グレージュセレクション」を設定。同年12月にはスマートエントリーの拡大などの一部改良を実施しました。
2009年10月13日、マイナーチェンジ。1.8L車をバルブマチック搭載の2ZR-FAE型へ変更し、6速MTを組み合わせた新グレード「RS」を追加しています。
2010年10月5日、一部改良で燃費性能を向上させ、1.5L・FF車が平成22年度燃費基準+25%を達成しました。
2011年10月5日、特別仕様車「150X ”M プラチナセレクション”」を発売。

オーリス 2代目 E18#H/18#W型(2012年~2018年)

2012年8月20日、キーンルックをたずさえて2代目の販売を開始しました。月間目標販売台数は2,000台で、グレードは初代から続く「150X」「180G」「RS」を基本としています。同月25日にはキャラホビ2012で「MS-186H-CA シャア専用オーリスCONCEPT」を出展し、大きな反響を呼びました。
2013年4月、欧州でステーションワゴンの「オーリス ツーリングスポーツ」が発売されました(日本には未導入)。
2014年5月7日、ネッツ店10周年を記念した特別仕様車「150X ”Blackish Lounge”」を発売。
2015年4月6日、マイナーチェンジを実施し、トヨタ初の1.2L直噴ターボ8NR-FTS型を積む新グレード「120T」を追加。あわせて「Toyota Safety Sense C」を採用し、全長を55mm拡大しました。同年7月17日には「MS-186H-CA02 シャア専用オーリスII コンセプト」「MS-185H 量産型ザクモデル コンセプト」を発表しています。
2016年4月18日、ハイブリッドの「HYBRID」「HYBRID ”G Package”」を追加。同時にグレード整理が行われ、「RS ”S Package”」を廃止、「180G」は「180G ”S Package”」へ統合されて「180S」に改称されました。「120T」には「120T ”RS Package”」が追加されています。
2018年3月、日本仕様の販売を終了しました。

オーリス 3代目 E21#LH型(2018年~2020年)

2018年3月6日、ジュネーブモーターショーで3代目にあたるオーリス ハイブリッドが初公開されました。同月30日開幕のニューヨーク国際自動車ショーでは「カローラハッチバック」として披露され、米国ではカローラiMの後継として2018年夏に発売されています。
日本仕様は2018年6月26日、東京でのイベントで新型クラウンとともに登場し、正式名称が「カローラスポーツ」であることが発表されました。
2018年8月28日、トヨタモーターヨーロッパが欧州でも車名をカローラへ統一すると発表。2019年初頭に発売され、日欧からオーリスの名が消えます。
一方、台湾では2018年9月にオーリスの名称で発売されましたが、2020年7月にカローラスポーツへ改称。ここでオーリスの車名は完全に消滅し、3代14年の歴史に終止符が打たれました。

オーリスのモデルチェンジ遍歴
オーリスのモデル 販売年表
初代 E15#H型 2006年~2012年
2代目 E18#H/18#W型 2012年~2018年(日本仕様は2018年3月終了)
3代目 E21#LH型 2018年~2020年(オーリス名は台湾のみ)

異彩を放ったオーリスが残したもの

オーリス

本場欧州で鍛え抜かれた走り、日本車らしからぬルックス、センスの光る内装。オーリスは日本の自動車市場のなかで、確かに異彩を放つ一台でした。

国内では同じCセグメントのプリウスや日産ノートに販売台数で後れを取り続けましたが、欧州ではヤリスに次ぐ台数を稼ぐ主力でした。その資産は2018年6月26日発売のカローラスポーツへ引き継がれ、日本では月販目標2,300台に対し発売1か月で約9,200台という好調な受注で滑り出しています。

そして2020年7月、最後の砦だった台湾仕様の改名により、オーリスという車名は世界から姿を消しました。名前は残らなくても、キーンルックを世に送り出し、1.2Lターボやシャア専用オーリスといった話題を提供し、欧州でトヨタの評価を押し上げた功績は残ります。今後この名が復活する気配は見えませんが、Cセグメントでトヨタが攻めに転じるきっかけを作った一台として、記憶に留めておきたいモデルです。